ソードアート・オンライン - トワイライトブレイズ -   作:弥勒雷電

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第18話『狂想組曲 前編 -共闘-』

30分前…

 

何かおかしい。あたしじゃないあたしが存在している感覚。まるでドッペルゲンガーに出会ったような焦燥感を感じる。

 

あたしはあのラズエルと言う男を知っている。でもどこにもその足跡はない。もちろんあれから何度もフレンドリストを確認した。そこには今では話すこともないフレンドまで登録が残っているに、ラズエルと言う名前はない。

 

あと店の顧客名簿も見直した。でも大抵の客はフレンド登録はしている。そしてメールの履歴もSAO開始当初まで見直した。

 

でもラズエルと言う名前はどこにも出てこない。

 

「完全に八方塞がりだな」

 

あたしはそう呟くと天井を見上げた。そして少し逡巡すると立ち上がる。

 

結論、彼にもう一度会って話を聞く事にした。彼は確実にあたしの事を知っているし、いつも何かを言いたそうにしている。確かにこの世界で女性プレーヤーをしている以上、客から言い寄られる事もあるし、ストーカーをされた事もある。

 

側から見れば彼の雰囲気はそれに近いかもしれない。でも確実にあたしの中では一線を画している。あたしの中の何かが何かを訴えかけている。それが事実、でもそれが何か分からないのがむず痒い。

 

彼はおそらく黒曜石を取りにフィールドに出るのだろう。多分それに付いていくのが手っ取り早いとあたしは思った。もちろん彼からは断られるかもしれない。

 

でも試してみる価値はある。

 

あたしは意を決して、ラズエルがまだいるであろう宿屋に向かった。

 

 

 

 

 

「………記憶戻ったらしいナ?」

 

彼の部屋の前まで到着した時、部屋の中から女性の声が聞こえた。親しげに話をしている事がその声色から分かる。

 

ズキン…

 

胸が少し痛くなるを感じる。もうそんな感情の変化を気にしている余裕はあたしにはなかった。でもあたしは扉を開けようかどうか一瞬迷ったけどしばらくこのまま聞き耳を立てる事にした。これじゃ、あたしがストーカーみたいじゃないっていう脳内のツッコミを搔き消す。

 

「あぁ、でも黄昏の茶会事件のことだけや。その後の半年の記憶はまだ曖昧」

 

「ま、そう焦らなくてもそのうち戻るんじゃないナ」

 

女はそう言うと笑った。語尾が特徴的でどこかで聞いたことのある声だと感じる。

 

「まぁな。それで依頼した件だが??」

 

しかしその時、急に彼が話を変えた。依頼した件という事は相手の女性は情報屋なのだろうか?とあたしは考えを巡らせる。確かに彼の言葉の節々には女性への親しさは感じられず、ビジネスライクな雰囲気を感じる。その様子に少しホッとしている自分がいるが、気にしない事にした。

 

「黒曜石って意外と希少金属なんだよナ。ドロップするモンスター一覧とクエストの情報はメールに送るケド、たぶん一人で1日は難しいゾ?」

 

やっぱり黒曜石の情報だった。あたしも黒曜石の入手経路はよく分かっていない。いつも戦利品でエギルの店にある時に調達している。彼曰くモンスタードロップしか手に入れる術はないらしい。

 

「『狂想組曲』」

 

そんな時彼が聞き慣れない言葉を発する。そして彼の声が徐に沈んでいくのを感じた。何かのクエストの名前だろうか。あたしは聞いた事もないクエストの名前を小さく呟く。

 

「このクエストをやるしかないのか」

 

「すぐに欲しいのならそうなるナ。モンスタードロップは殆ど期待しない方がいい」

 

成る程。彼は何故か武器調達を焦っていた。悠長にモンスタードロップを待つ事も出来ないのだろう。その事情はよく分からないが…

 

「基本はタンクとアタッカーの4人パーティーで挑むのが最低条件。お前さんはソロだよな?まず仲間を集めないとね」

 

「俺のレベルでは単独クリアは難しいか?」

 

「難しいだろうネ。弓スキルだけだと」

 

女性の言葉にあたしは居ても立っても居られず、扉を勢いよく開いた。彼と情報屋の女性は驚いた表情であたしを見る。

 

「あたしが手伝ってあげるよ」

 

こんなチャンスは逃すわけにはいかない。あたしはそう心に決めていた。

 

————————————

 

突然の出来事に一瞬思考が遮られる。

なんでリズがここにおる?

なんで手伝うとか言い出す?

 

俺は一瞬だがアルゴをみる。その悪戯っ子のような目にこいつはリズの存在に気がついていたと気付き、一瞬手が出そうになる。

 

「おっと。これは鍛冶屋のねーちゃん。確か…」

 

「リズベットです」

 

そんな俺の様子を意に介さず、アルゴは飄々と言葉を発するが、それをき消すようにリズが声を被せてくる。

 

「あはあは。俺がラズ坊と仲良くしてる風なのが気に入らないって感じかな?じゃ、俺はそろそろ消えるかナ…」

 

アルゴの言葉にリズの顔が紅潮する。だが、そんなリズの様子をアルゴは気にするそぶりもなく、部屋の出口へと向かう。

 

「後は若い2人でごゆっくり…二ヒヒヒヒ」

 

卑しい笑みを浮かべながらアルゴは部屋を出て行った。俺は多分相当渋い表情をしていたのだろう。リズは俺に視線を合わせず下を向いている。

 

「あ、ラズ坊。」

 

その時、再びアルゴがひょっこりと顔を出し、ニヤリと笑う。。

 

「まだ何かあるんか?」

 

俺は不快感満載にそう答えるとアルゴは少しだけ真剣な眼差しを俺に向けた。

 

「思い出せない記憶なんて忘れてしまった方がいい事もあるゾ」

 

そう言ってアルゴは再び姿を消した。俺は唐突に投げつけられたその言葉に一瞬で遅れたが慌てて部屋の外に彼女を追う。だが、もちろん既にそこに彼女の姿はなかった。

 

「もうなんやねん。あいつ」

 

俺は舌打ちをしながら部屋の中に戻る。彼女の言い草、あれは俺の記憶について何か掴んだということの現れであるように思える。だが、その情報屋が忘れた方が良いと言う過去…

 

そこまで考えて俺はリズがまだ立ったままな事に気がついた。

 

「あ、ごめん。まぁ、座ったら?」

 

彼女は言われた通りベッド脇の椅子に腰を下ろす。ふと先程のヘルブレッタの家での彼女の体温が蘇ってきた。借りてこられた猫のように小さくなっている彼女の瞳を見ると抱きしめたくなる衝動に駆られる。

 

「あの…さ」

 

そんな俺の邪な思考を遮るようにリズが口を開いた。

 

「あたしがそのクエストに付いて行ったら迷惑かな?」

 

正直、リズの言葉に俺は反応に困る。今の俺とリズの関係性ももちろんあるけど、アルゴは確かタンクとアタッカーの4人パーティが基本と言った。という事は打撃系の武器を扱うボスか攻撃力の高いクエストボスの可能性が高い。

 

いくらマスターメイスだからと言って安全である保証はない。

 

「いや、でも。危険やと思う」

 

1人で乗り込もうとしてた自分が何を言うてるねんと突っ込みたくなるがそれは自分の中にだけで留めておく。リズは俺の返答に少し思案する素振りを見せ、俺に視線を向けた。

 

「でもあたしはあなたと一緒に行きたい。行かなきゃならないって直感的に思うの。今のこのモヤモヤを取り除くにはもうこれしかないと思う」

 

リズは必死に俺に訴えかけてきた。そこにかつての自分がいた。大事な記憶を失い、悩んでいた頃の俺とリズの儚げな姿が妙にダブる。

 

「分かった。でも無茶は絶対にせーへん事。いいな?」

 

断れるはずもなかった。俺の事を短い時間ではあったけど支えようとしてくれた女性。そこ彼女が今当時の俺と同じ苦しみ、モヤモヤを打破しようとしているのだ。

 

断れるはずもなかった。

 

「じゃ、フレンド登録しよ?」

 

俺はリズの同行を許可した。するとリズがフレンド登録をしたいと言ってきた。もちろんこれも断る理由がない。

 

俺たちは1日ぶりぶりにフレンド登録を交わすとこれまた1日ぶりにパーティーを編成した。

 

————————-

第38層 洋館ダンジョン『バルエシラーペ』

 

俺たちは古びれた洋館の中枢にまで足を運んでいた。ここまでは至って順調。ポップするモンスターは亡霊やゾンビ系が多かったが、俺たちのレベルでは踏破できないものでもない。

 

清軍と休憩を繰り返し、俺たちはおそらく最期の扉の前に立っている。すると扉の向こう側からけたたましいピアノの音色が聞こえてくる。耳から直接脳を抉るように鋭敏な音。

 

俺たちは耳を抑えて少し蹲る。これじゃ前に進めない。

 

その時親指の先程の大きさの何かが俺たちの目の前に転がってきた。

ふとその出所に視線を向ける。そこにはこのアイテム、耳栓を投げた張本人である情報屋の姿があった。

 

 

第18話『狂想組曲 前編』 完

 

 

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