ソードアート・オンライン - トワイライトブレイズ -   作:弥勒雷電

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第20話『狂想組曲 後編 -弓剣-』

状況は最悪やった。

 

正直このボスモンスターの広範囲攻撃には肝を冷やした。殺傷能力と効果範囲が半端ない。初見殺しと言われ兼ねないレベルである。

 

今もたった3発を食らっただけでHPはレッドゾーン近くまで行ってしまった。もう一回食らったらほんまやばい。

 

しかも最悪なことに今の速射で矢も使い切ってしもた。

 

今の手持ち武器はロングナイフ2本と短剣6本のみ。これやったら敵の普通の攻撃でも耐えきれへん。昨日鍛冶屋でこういう事も見越してリズの業物の剣でも買っておくべきだったと後悔した。

 

「痛っ…」

 

すると徐々にナイフの刺さった脇腹と足、肩に痛みが増していく。俺は痛みに耐えきれず思わずその場に膝をついてしまう。

 

そして更に最悪な事に目の前で敵が俺をロックオンし、向かって突進してくるのが見える。まぁ、この状況でアルゴやリズに向かわれるよりはましやろうけど、このままじゃ、あのモンスターの斬撃を受け止めきれへん。

 

刹那、死の文字が頭を過ったのは言うまでもない。

 

「ラズエル!立ちなさい!ユリさんの敵取るんでしょ!」

 

だかその時、思いもよらない言葉が耳に飛び込んできた。俺はその言葉に顔を上げ、リズを見る。言った本人の彼女も不思議そうな顔をしている事から記憶が戻った訳じゃないやろう。

 

でもそれでも俺にはその言葉で充分だった。彼女は記憶を失ったんやない。俺と一緒で何らかの足枷みたいなもんで思い出せないだけなんやろうと。痛む足を抑えながら立ち上がる。

 

「ラズエル!!」

 

その俺の様子を見てか、リズが何やら武器らしきモノが俺の方に投げてきた。ガシッと手に取るとその特異な構造を持った武器に驚愕する。

 

「あたしの今の最高傑作の試作品なんだから壊したら怒るわよ」

 

リズの言葉にこれが何なのかを達観し、確信する。記憶は失っていてもリズはリズやなと。そしてリズが俺を思い出すまでは俺はやはりこんな所では死ねへん。

 

それにユリの仇を目の前にしてやられるなんてごめんや。

 

手にある武器はリズがずっと試作研究を続けていた弓と剣の合成武器の試作品。アイテム名には『エーペ・ルダ・アルク(弓剣)』と表示されている。名前も機構も気に入ったが、問題はどうやって使うか分からへん。

 

とりあえず迫り来たモンスターの右からの斬撃を俺はその弓の先の部分で受け止める。どうやら弓の真ん中、手で持つ部分の外側は刃になっているようだ。その刃も見た目以上に頑丈。敵の攻撃を受け止めるにも耐え得る。相手の攻撃を力強く跳ね返すと、相手が一瞬スタンし無防備になった。

 

その時、どう操作したかわからないが、ガチャっと音が鳴り、弓の両サイドが折れ、真ん中で合わさる事で、大剣に似た刀身と柄が現れた。俺はその柄を両手で持つと力を込めて大きく振りかぶる。

 

その刹那発動したソードスキルに思わず笑みがこぼれる。どうやらこの剣の形態は両手剣としてシステム認識はされているようである。

 

両手剣ソードスキル 『ダブル・サイクロン』

 

まずは左から右へと力一杯なぎ払い、その返す刀で右から左へと横薙ぎの斬撃を繰り出す。共にスタンしているモンスターの胸部に当たったが、正直手応えは小さい。

 

しかし、その時ふと目に入った相手のHPゲージを見て驚く。今の今まで気がつかなかった。この攻撃での減りは微々たるものだったが、さっきまでバー2本満タンだったもが今は1本だけ…しかも3分の2まで減っている。

 

俺は再び敵と打ち合いながらその意味を考えアルゴを見る。一撃一撃でのダメージはそう多く与えられない。でもそれ以上に敵のHPゲージが減っている理由…彼女も同じ考えを持っていたのか小さくうなづいた。

 

俺はそこから更に斬撃を繰り出し、相手と打ち合う。という事は今はこいつに攻撃を仕掛け続けるしかない。そしてなんとかもう一度、こいつにソードスキルを使わせる。突破口はもうそこにしかなかった。

 

何合ほど打ち合っただろうか。リズやアルゴとスイッチを繰り返し、なんとか敵をフロア中央まで押し戻した時、敵は先ほどと同じように両の剣の手が後ろに回り、ソードスキルを発動する構えを取る。

 

刹那、俺は叫んでいた。

 

「2人とも敵のソードスキルが発動したら背後に回れ!!」

 

俺の言葉とともに両サイドに陣取っていたリズとアルゴは急いで敵の背後に回る。そして俺も全力で駆けた。

 

「…5、4、3、2…」

 

敵がソードスキル発動態勢に入ってから発動までおよそ10秒…アルゴが発動までの時間をカウントダウンしてくれる。俺は態勢を低くすると背後に両手剣を地に突き立て、思い切り体を前に押し出した。地に突き立てた両手剣を軸に押し出される形となった俺の体はソードスキル発動で動きが固まった相手の股下にスライディングの要領で滑り込む。股下にも伸びていた剣を鼻先1つですり抜けるとちょうど敵の背後に出た。

 

ちょうどその時、敵のソードスキルが発動、俺たちの元いた場所に無数の短剣が放たれた。それと同時に敵のHPゲージが大量に減少を始める。敵の攻撃が終わった時、そのHPゲージは既に数ドットにまで減っていた。

 

つまりはこのソードスキルは諸刃の剣、広範囲の強力な攻撃ゆえにその反動が自分にも帰ってくる自爆技、しかも攻撃範囲は前方のみ。発動までに10秒、攻撃時間もおよそ10秒。背後にさえ回れれば攻撃はかわすことが可能。且つ、敵のHPゲージを見る限り、二度の攻撃が限度…。

 

タネを分かって仕舞えば、なんて事はない。

 

最初にタンクとアタッカーの4人パーティが基本仕様とアルゴが言っていた意味がよく分かった。

 

「よし!今や!」

 

そして俺たちは背後から敵に襲いかかった。

 

両手剣ソードスキル『バルタム・アーツ』

片手棍ソードスキル『パワー・スプラッシュ』

クロー系ソードスキル『アキュート・ヴォールト』

 

3人の渾身のソードスキルが残りのHPを削り切り、敵、剣の道の騎士(Load knight of sword)のHPゲージは真っ黒に染まる。そして咆哮とも呼べる断末魔とともにポリゴンと化し四散した。

 

『Congratulations 』の文字が眼前に舞う。俺たち3人はその文字を目にしてその場に座り込んだ。

 

————————————-

 

「何とかなったネ。いい戦闘データが取れたヨ」

 

アルゴは満足気にそう言うと記録結晶を手に取る。そしてその中に記録された映像を確認している。

 

「いや、アルゴがちゃんと敵の特徴を見てくれていたおかげやわ。あのHPゲージによく気付いたな」

 

「まっ、情報収集と分析力に関したらアーちゃんやキー坊にも負けないさ」

 

彼女の言うアーちゃんとはアスナ、キー坊とはキリトの事である。あの2人はアルゴからの情報によると22層で2人で暮らしているらしい。その情報をゲットするのに1000コルを取られたのとリズが帰り道に一言も口を聞いてくれなかったのはまた別の話である。

 

ドロップアイテムは

黒曜石の欠片 x 5

ハイポーション x 8

グリーフ・ジャベリン(悪魔の爪) x 1

トワイライト・ブレイズ(黄昏の陽炎) x 1

アミリシェータ(光妖精の軽鎧) x 1

 

どうやら初回ドロップだったのか、かなりのレアアイテムが手に入った。俺たちは悪魔の爪はアルゴ、黄緑色のコートは俺、光妖精の軽鎧はリズがゲットした。約束通り黒曜石もリズに渡す。

 

「それにしてもこれ初回ドロップやろ?なんでアルゴはこのクエで黒曜石が取れるって知ってたんや?」

 

洋館の出口に向かう中、俺はアルゴに尋ねる。

 

「フンフフンフン、あー内緒!フンフフンフン」

 

かなりのご機嫌なのか鼻歌交じりにそう返してくる。どうせ麓の街の住人から仕入れた情報で、何度か他パーティーをけしかけて情報収集、その後、俺に話を持ってきたんやろう予想し、俺はそれ以上の追求をやめる。

 

「じゃ、オイラはこの辺で失礼するヨ!後はお若いお二人さんデ」

 

「おい!茶化すな!」

 

俺の叱責を交わすようにアルゴは麓に降りる山道を駆け下りていく。

 

2人取り残された俺たちはもう空が暗くなりかけていたこともあり、麓の街で一泊する事にした。

 

——————————-

第38層 始まりの街 リーストウッド 宿屋兼酒場

 

「なぁ、リズ。まだ怒ってるのか?」

 

目の前に座っている彼はそう馴れ馴れしく話しかけてくる。あたしはその問いに答える事なく、スープを口に運ぶ。今は話をしたい気分ではない。それはまぁ、アルゴとか言う情報屋がさっき言っていた事が原因と言えば、たしかに人間は小さいと思う。

 

まさかアスナとキリトが一緒に暮らす。しかも戦線を離脱してまで…。その事実にあたしはそこまで差をつけられていた事がショックで仕方なかった。

 

「はぁ」

 

彼はあたしの様子を見て小さくため息を吐くと同じ仕草でスープに口を運ぶ。妙な沈黙が2人の間に流れる。正直気まづいが、あたしも何も話す気は無い。

 

「試作品、壊してしもてごめん。でもあれはかなり画期的な武器やったわ。今回は剣形態しか使えんかったけど次は弓形態も試してみたい」

 

彼はあたしの不機嫌さがさっきのクエスト攻略の中で最高傑作の試作品を壊してしまった事が原因だと思っているのだろう。

 

「あれはいいの。また作ればいいし、やっぱりギミックの所の強度が課題ね」

 

あまりにも気にしている彼が不憫でつい口を開いてしまった。と言いつつもあたしはさっきの戦闘を思い返す。

 

キリトも凄いと思ったけど彼もやっぱり凄いと思った。あの戦術眼と作戦立案をあの極限の中でやってのけた。おそらく今攻略組に入っても見劣りはしないかもしれない。

 

「ねぇ、ユリさんてどんな人だったの?」

 

あたしはふとさっきの戦闘の中で不意にあたしが叫んだ顔も知らない女性のこと聞いてみる。

 

だが、その時逆に彼の顔を曇るのが見てとれた。おそらく不用意な質問だったんだろう。

 

そこからは逆に彼が食事が終わるまで無言を貫き、食事を終えてそれぞれの部屋に戻った。

 

『ラズエル!立ちなさい!ユリさんの敵取るんでしょ!』

 

やはりあたしは彼の事を知っている。でもどうして記憶が抜け落ちたりなんてするのかしら。システム上のバグ?とも考えられるけど分からない。

 

そんな事を考えてるうちに猛烈な睡魔に襲われ、あたしは眠りに落ちた。

 

 

 

第20話『狂想組曲 後編 -弓剣- 』 完

 

ALO編オリ主の旅の相棒は?(CP以外)

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  • キリト
  • クライン
  • アルゴ
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