ソードアート・オンライン - トワイライトブレイズ -   作:弥勒雷電

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第4話『償いの刃』

ーー4時間ほど前…

ーーアインクラッド第50層 エギルの故買屋

 

「え?アスナとキリトくんが?」

 

あたしはアスナに紹介してもらったエギルという商人クラスの男性が経営する故買屋に来ていた。もちろん自分の作った品で売れ残ったものを品定めしてもらうためである。そこでアスナとキリトくんがパーティーを組んでいることを知った。

 

「マジか……」

 

なんか差を開けられてる気がする。

もう2人は手の届かない所へ行ってしまう気もする。

 

ふとカウンターの端の箱の中のレシートに目が止まった。そこに書かれている名前を見て目を見開く。

 

「エギルさん、ラズエルと知り合いなの?」

 

その言葉にエギルは少し虚を突かれたように顔を上げると「あぁ」と首を縦に振る。

 

こんなところに知り合いがいるなんて運が向いてきたと思った。彼とフレンド登録しとけばよかったとこの3日間少し後悔していた。

 

「まぁ、彼は数少ない狩人だからな。レアモンスターの狩りを時々頼む中だ。まぁ、キリトとは別の意味で奴自体変わった野郎だからな。俺とはそれ以上でもそれ以下でもないビジネス上の関係ってとこ」

 

エギルはそういうと伝票に今回の買取額を記載し、私に渡して来た。金額的には安く叩かれてる気がするけど、まぁ店に飾っていても売れる保証のない品々だ。

 

それしてはいい値を付けてくれてると思う。

 

甘んじて売買契約書にサインをすると、コルをエギルから受け取った。その時、頭の中に妙案が浮かんだ。

 

「あ、そうだ!じゃ、彼のホームの場所、知ってる?」

 

その問いにエギルは「え?」っと顔を上げると訝しむようにあたしの顔を見る。

 

「お前、キリトからあいつに乗り換えるつもりか?やめとけ、やめとけ!あいつの闇はキリト以上だぞ?」

 

「え?何か知ってるの?」

 

あたしはカウンターに体を乗り出して彼に尋ねるが、「まぁ、直感だよ」と答えると私から視線をはずす。

 

「乗り換えるとかそんな気はさらさらないけど、あいつには命を助けてもらった借りがあるんだよね。だからお願い!教えて?」

 

仏を拝むようにエギルに頼み込むと彼は困ったように頭を掻き、苦笑いを浮かべた。

 

 

—————————-

 

 

ーーアインクラッド第42層 サバナの街

 

『ラズエルは第42層のサバナの街を拠点にしてるって話だよ。どこに住んでるのかまでは分からない。ってか、お前も好きだな?あーいう男が。まぁ、頑張りな!』

 

サバナの街にたどり着いた。

エギルの最後の一言にイラつく。

 

「キリトくんをあいつと一緒にするなっての」

 

サバナの街の雰囲気はどこかリンダースに似ている。

都会過ぎず、田舎すぎず、かといって不便ではない。

 

「さて、まずは情報収集だけど、やっぱりここかな」

 

まず最初に向かったのは酒場だ。

情報が集まる場所と言えばそこだろう。

 

酒場に入るとなんとも言えない匂いが鼻を突いた。

まだ昼間だと言うのに多くのプレイヤーが酒に似た飲み物を楽しんでいる。私はテーブルの間をすり抜けるとカウンターに腰を下ろした。

 

「初めて見る顔だな?この層の住人じゃないな?」

 

マスターらしき髭男が私の前に立ち話しかけてくる。

 

「えぇ。少し人を探しててね。とりあえずメニューもらえる?喉が渇いたの」

 

髭男は「ふふっ」っと鼻で笑うとバックヤードに入っていく。この小娘がとの上から目線の態度に少し苛立つ。

 

髭男はバックヤードから片手にメニューらしきもの、もう一方にグラスに入ったのみ物を手に戻って来た。

 

「お嬢ちゃんに俺からのプレゼントや」

 

そう言って男は私の前に琥珀色の飲み物を置いた。

グラスを手に持ってみる。見た目は普通、匂いもしない。

 

「あ、ありがとうございます。頂きます」

 

ひとくち口に含んでみた。途端に喉が焼けるような感覚にむせ返る。ゲホゲホと席をしながら、マスターを一瞥する。

 

「これ、なんですか?」

 

マスターはまだ咽せているあたしの様子を見て笑いながら琥珀色の飲み物が入ったグラスを下げる。

 

「さっきのはウィスキーの味を限りなく再現したバーボンだ。あれが飲めないとここで酒を楽しむ資格はないぞ?」

 

そういうと別のグラスを目の前に出して来た。

 

オレンジジュースに似たその色…

だが、先ほどの一件が私に変な警戒心を抱かせる。

 

「普通のオレンジジュース味のドリンクだよ。それを飲んだら帰りな!皆が珍しがって仕事にならねぇよ」

 

その言葉に後ろを振り返える。そこにいた男性客のほとんどが私から慌てて視線を外す。あたしは苦笑いを浮かべながらため息を吐くとオレンジジュース味のドリンクを一気に飲み干した。

 

「ねぇ、この街にラズエルって狩人いない?」

 

その問いにマスターの左眉がグイッと上がる。

 

「なんだ?あいつに用があるのか。あいつならここから商店街をまっすぐ北の展望台に向かった突き当たりの右手にある道具屋の二階に居候してるよ」

 

マスターのいった内容をメモに取ると「ありがとう」とお礼を言い、酒場をそそくさと後にした。

 

外に出ると如何にこの酒場の中の空気が悪かったか分かる。

あたしは大きく深呼吸をすると、二度と来るかと心の中で悪態をつき、マスターに教えてもらった道を歩き始める。既に陽は西に落ち始め、夕暮れの陽光がまた違った趣を街に与えている。

 

「ここか…」

 

目的の道具店はすぐに見つかった。

が、店は休業中であり、脇の入口をノックするも中に誰かがいる気配がない。

 

「あのーどなたかいらっしゃいませんかー?」

 

声をかけてみるが反応もない。どこかに狩りに出ているのだろうか?しばらく待っても反応がなく、また夕暮れ時だった空は既に暗くなり始めたので諦めて帰ろうとした。

 

「あ、ここ寄ってみよ」

 

すると道具店の隣にあった萬屋に入ってみる。

こういう時にこそ掘り出し物があったりする。

 

「あ、これ…」

 

案の定、店内で物色をしていると、珍しい鉱石らしき岩が陳列棚に並んでいる。私は慎重にそれを手に取ると鑑定スキルを発動した。

 

『ミスリル鉱石』

 

鑑定結果を確認するとちょうど手元にたらない鉱石だった。ミスリル鉱石を買うと決め、萬屋の店主に少し相場よりも高めのコルを払った。

 

「へぇ~展望台からの景色か…」

 

萬屋の店主からこの街の展望台から見える景色がオススメと教えられた。萬屋を出てとりあえず向かう事にする。既に街は夜闇に包まれていた。街中を進み、大通りを横切ると展望台が見えてきた。正面の階段を登ると広場に出る。広場にある売店は既に店じまいをしており、人の姿も見当たらない。

 

「え?まじ?」

 

せっかく来たのだからいい景色くらいは拝まないとと思って来てみたが、この寂しさには少しテンションが下がる。売店の向こう側が展望広場につながっているようでそちらに足を向けた。

 

「誰だ!」

 

誰かの声がした。とっさに体がびくつく。

何やら只ならぬ雰囲気である。

 

あたしは興味本意に展望広場を覗いてみた。

そして飛び込んで来た光景に目を見開いた。

 

「ラズエル?」

 

黄緑色のシャツを来た男性が倒れている。

どこからどう見てもラズエルその人だった。

 

「え?ラズエル?え?え?どうしたの?ねぇ?」

 

急いで駆け寄り、体をさするが反応がない。

 

「麻痺毒?」

 

彼のHPパラメータが赤く点滅している。やばい解毒結晶なんて持ってない…周囲に人の姿も確認できない…でもどうして圏内で麻痺?

 

「ラズエル、大丈夫?一体誰にやられたのさ」

 

だが、ラズエルは完全に意識を失っている。

傍に何かメモらしきものが落ちているのを見つけた。

 

「何これ?……ツグナイノ……」

 

すべて片仮名で書かれた文字、それをすべて読もうと声に出したその時、背後に気配がした。

 

とっさにメモをポケットにしまい込む。

 

「ちょっとどいて!」

 

その時、白髪痩躯の男性が割って入って来た。

即座に見たこともないポーションをラズエルに与える。

 

「あの…ラズエルは大丈夫なんですか?」

 

白髪痩躯の男性は私に気がつき驚くとじっと私の顔を覗き込む。思わず私は目を逸らした。

 

「お前、こいつの何だね?これか?」

 

と小指を立ててくる。その意味を悟り、急に恥ずかしさと怒りが込み上げる。

 

「そんなんじゃないわよ。ただの知り合い」

 

私の返答に男は大きく頷くと笑みを浮かべる。

 

「だったら今日は帰りな。こいつは神経性の麻痺毒にやられちまったが、俺の解毒薬で持ち直した」

 

その言葉に一応安堵する。でも神経性の麻痺毒なんて聞いたこともない。そして彼はなぜこんな目に遭ったのかも分からない。

 

彼はラズエルの体を肩に担ぐ。この細い体のどこにそんな力があるんだろうと不思議に思う。

 

「こいつに話があるなら明日出直して来てくれ。どっちにしても今日はもう話はできないさ」

 

男はそういうと私に背を向け展望台を後にする。私はそれをただの見送ることしかできなかった。

 

————————-

 

ーー翌日

 

俺が目を覚ますと自室のベッドで寝かされていた。頭がぼーっとする。首筋がチクリと痛む。

 

そうか。俺は確か街の展望台で変な奴らに襲われ…

 

「……ミツケタゾ……」

 

その時、あの時の言葉とてもにあの悍ましい仮面の姿が脳裏に浮かぶ。そして再び脳内のすべての感覚が彼が危険だと警告してくる。

 

あの男はなんだったのか。確かにどこか見覚えのある姿ではある。でも思い出せない。かなり前に会った事があるのかもしれない。

 

「まだ朝にはなってへんのか」

 

俺はこれ以上、この家にも迷惑をかけれないという想いが強くなる。俺は重たい体を起こし、必要最低限の荷物をまとめる。

 

スキルのハイドステップを発動し、周りに気づかれないように家の外に出る。路地裏に入ると転移結晶を手にした。これ以上、ここにいるのはヘルブレッタさんに迷惑をかけることになる。

 

「こんな形で離れる自分を許してください」

 

小さくそう呟くと俺は転移結晶を掲げた。

 

「転移……………」

 

刹那俺の体を紫の光が溢れ出す。空間が割れ、俺の体が吸い込まれるように同化していく。

 

刹那、俺の視界が暗転した。

 

正直行く当てなんてない。

俺は多分誰にも頼ったらダメな人種だったのだ。

それがわかっただけでも良い。

 

俺は記憶のどこかが欠落している事を思い出す。

その記憶と関係があるのだろうか?

 

そうであればあの男にもう一度会う必要がある。

俺はそう心に決め、目的の場所に降り立った。

——-第4話『償いの刃』 完

 

 

 

 

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