ソードアート・オンライン - トワイライトブレイズ - 作:弥勒雷電
•プロローグ〜第6話
ALO編オリ主のCPは誰?
•第7話〜第15話
ALO編オリ主の種族は?
•第16話〜最新話
ALO編オリ主の旅の相棒は?(CP以外)
ALO編プロット見直しの参考にさせていただきます。
あなたの一票で物語を紡ぎましょう
ーーアインクラッド50層 アルゲード 主街区
まだ朝日が昇り始めた頃、まだ薄暗い主街区は人通りもNPCもおらず、閑散としている。
俺は主街区の奥に向かうと目的の店の扉を叩いた。
「おいおい、どうした?こんな朝早くから」
エギルは驚いた顔をドアの隙間から出してきた。無理もない。こんな早朝にドアをどんどんと叩かれたんだから。
「すまん。少し匿ってくれ」
俺はそういうとエギルの故買屋の中に体を滑らせた。エギルは何も言わずに奥の部屋に通してくれた。誰にも頼ってはならないと思い立ったそばからエギルに頼らざる得ない自分に嫌気が指す。
一瞬、リズの顔が浮かんだのも確かである。彼女の武具店なら矢の補充にも困らない。だが、彼女を俺の勝手で危険に巻き込むわけにはいかなかった。
それにあのじゃじゃ馬なら協力するなど言いかねない。
「まったく、俺の家は駆け込み寺じゃないんだぜ」
エギルはそう笑いながら紅茶を手に部屋の中に入ってきた。シンプルな内装にベッドと丸テーブルが置いてある。エギルはその大きな巨体を俺の前に下ろすと両腕を丸テーブルに置き、口を開いた。
「さて、どういうことか説明してもらおうか?」
まぁ、確かにそういいたい気持ちもわかる。俺はこれまでの記憶の欠落と昨日の得体の知れない襲撃者の事を話した。
「それって、おまえ…」
エギルは俺の話を聞いて顔をしかめる。
「殺人ギルドの仕業じゃないのか?お前何かしたのか?」
その問いに俺は首を左右に振る。殺人ギルドと関わったことなんてない。いや……正確にはないはず…
「でも確か殺人ギルド『ラフィンコフィン』は攻略組の精鋭チームとの戦いで壊滅したんじゃ?」
確かそのような話を聞いたことがあった。
殺人を生業にするギルド『ラフィンコフィン』は攻略組の中にスパイを潜り込ませて内部から崩壊させようとしたり、無差別に中層プレイヤーギルドを壊滅させたりとゲーム攻略をして現実世界に帰ろうとしていた攻略組からすれば、目の上の瘤のような存在だった。
だが、ラフィンコフィンは攻略組の有志メンバーとの壮絶な戦いにより双方に多数の犠牲者を出し、ほとんどが監獄牢に送られ、結果壊滅したと聞いている。
「だがまぁ、首魁の男を始め、数人を取り逃がしたとも聞いているしな。油断は禁物だ」
エギルの言葉に俺は小さく頷く。
「でも俺の記憶の抜け落ちてる部分にやつらが関係してるんやったら俺はもう一度やつらに会わないとあかん」
俺は決意を新たにエギルにそう伝える。
エギルは俺をじっと見つめると小さく頷く。
「俺で協力できることだったら協力しよう。武防具とアイテムの準備なら任せてくれ。」
エギルには感謝しても感謝しきれない。
「ありがとう。この借りはラグーラビットの肉で返すから。少し奴らの情報を集めてみる。また半日後に戻ってくる」
そういうと俺は立ち上がる。
「分かった。次は照り焼きで頼むぜ」
エギルはそういうと笑みを返した。
俺は立ち上がると部屋を出て、店の入口に向かった。
その時、けたたましい勢いで扉が開かれた。
刹那、俺は後ろに飛ぶと男性プレイヤーが店内に飛び込んで来る。黒衣を身にまとった剣士である。彼を見て少しだけ心の中がざわつく。
「あ、悪い。おーい。エギル!」
黒衣の剣士は俺を一瞥して一言詫びるとエギルを呼んだ。エギルは部屋から出て来ると彼の顔を見て驚く。
「どうしたんだ?キリト?」
俺はその名に再び黒衣の剣士の顔を見た。
確かにあのキリトである。
「ん?」
彼と視線が合った。胸の中がざわつく。
なぜか彼とは会ってはいけないとの想いが先走る。
俺は急いでエギルの店から飛び出した。
既に空には太陽が昇り、主街区はたくさんの人が行き来を始めていた。俺は人ごみの中に体を滑らせると次の目的の場所へと向かった。
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ーーアインクラッド第42層 サバナの街 同刻
あたしは再びあの道具屋の前に来ていた。
まだ休業中の看板が出ている。確かにまだ朝の8時だ。
少し早すぎたのかもしれない。
昨日の出来事を思い出す。
今でも信じられない。圏内で人を襲うような奴がいること。そして襲われたのがラズエルだったこと。
そしてこの手紙……
ポケットにしまった手紙を取り出す。血のように赤い何かで書かれたその文字列は不気味さを醸し出している。
何度見ても気持ち悪い
ツグナイノヤイバガホシケレバ
アノバショニコイ
キサマノツミヲツグウホウホウハ
オマエガイチバンワカッテイルハズダ
マッテイルゾ B.A
『償いの刃が欲しければ、あの場所に来い。貴様の罪を償う方法はお前が1番分かっているはずだ。待っているぞ。B.A』
そこにはこう記されていた。
償いの刃って何?あの場所ってどこ?ラズエルの罪って何?一体貴方は何者なの?
昨晩家でこの手紙を読んだ時、いろんな疑問が頭の中を飛び交い、眠れなかった。そしてこの手紙はラズエル宛の手紙なのだろう。
彼にこれを渡した方がいい気がして、朝早くからこの場所に来ている。半ばストーカーである。
その時メッセージボックスに未読履歴がある事に気付いた。エギルからの武具の注文である。
短剣10、片手剣5、矢30x4セット、斧3……
それぞれの武器の種類と名前が記されている。
かなりの分量だ。しかも納期は今日の夕方……
正直今すぐ取り掛からないと間に合わない。
ここに残るべきか、帰るべきか思案していると道具屋の扉が開いた。昨日の白髪痩躯の男性が外に出て、休業中の看板をはずす。
「あの…」
声をかけると彼は顔をあげ、私の顔を見て驚く。
「またお前か?早いな」
男はそういうと辺りを見回して誰もいないことを確認すると、中に入れと親指を立て店の中を指差した。
「あたしの名前はリズベット、リズで良いわよ?」
店の中に入ると道具屋のカウンターに腰を下ろした白髪の男に話かける。
「私の名前はヘルブレッタという。この街で道具屋兼薬屋を営んでいる。」
道具屋兼薬屋という表現に違和感を持ったが、昨日の見たこともない解毒ポーションを見る限り、調合スキルを鍛えている薬師なのだろうと容易に想像できた。
「それで、こんな朝から何の用だ?」
ヘルブレッタは伝票らしき帳面を棚から出し、カウンターの上に置くとその無表情な瞳を向けてくる。
その心の通ってなさそうな瞳を見てはっとする。
あたしはヘルブレッタにラズエルと同じ瞳を見つけ、一瞬たじろぐ。だが、ここまで来て何もせずに帰るわけにもいかない。
「ラズエルは……彼は大丈夫なの?」
その問いにヘルブレッタは少し悲しい目を見せた。
「あいつは早朝、朝日が昇る前に出て行ったよ。おそらくもうここには戻らない感じだろう」
その言葉に私は一瞬胸が痛くなるのを感じた。
「貴方は何か知っているの?昨日だって特別なポーションを持ち歩いていた。貴方はラズエルが襲われる事を知っていたのでは?」
あたしの問いにヘルブレッタの手が止まり、口元に笑みを浮かべる。
あたしはヘルブレッタはラズエルのことで何かを知っていると確信した。だから彼と同じような悲しい瞳をしているのだと気がついた。
「貴方は彼の何を知っているの?」
カウンターをドンと叩くとヘルブレッタに迫った。だが、ヘルブレッタほそんなあたしの剣幕にも怯むことなく、じっと顔を見つめてくる。
「償いの刃という武器を知っているか?」
ヘルブレッタの言葉にあたしはあのメモの事を思い出した。でもこれが武器の名前だとも気がつかなかった。
もちろんそんな武器の名前は聞いたことがない。
魔剣かレアアイテムの類だろうか?
そんなあたしの様子を見て、知らないと確信したのだろう。
ふっと口元に笑みを浮かべるとヘルブレッタはそれ以上は何も話そうとはしなかった。
「これ以上は深く関わるな。もうあいつのことは死んだと思うんだな。そして用が済んだなら帰ってくれ」
ヘルブレッタにそう言われ、有無を言わさず私は道具屋の外に押し出された。そして扉が固く閉ざされ、再び休業中の看板が掛けられる。
しばらく道具屋の扉を叩いたり、ヘルブレッタの名を読んだりしたが、反応がない。
ふと道具屋の向かいの壁にもたれ掛かる。普段なら爽やかに感じるだろうそよ風がショートボブの髪を揺らした。
ラズエルの手がかりも失ってしまった。
最初は弓剣の被験者を頼むだけのはずだった。
なぜこんな事になっているのかただただ不思議ではある。
でも乗りかかった船、仕方ない。
そんなことを考えていると、また目の前にメッセージの着信を知らせる音とアイコンが現れた。エギルからの準備を急かすメールである。
「はぁ、このままここにいても埒があかないか」
あたしはエギルの用が済んだらまたここに来ると心に言い聞かせ、納得いかない想いを胸にヘルブレッタの道具屋を後にした。
ラズエルがなんと言おうと、このままでは後味が悪すぎる。乗りかかった船、もう簡単には引き返えさない。
-第5話『抜け落ちた記憶』 完
ALO編でオリ主とCP組むとしたら誰?
-
リズベット
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アスナ
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リーファ
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ユウキ
-
オリヒロイン