鬼滅の刃ー彼岸の剣士—   作:キモ傘

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相当期間が空いてしまい、本当に申し訳ない。これから数日間は投稿できると思います


修行

 俺の名前は宮本明。国会議事堂へと向かう途中で謎の高熱に襲われて意識を失ってしまい、目が覚めると見知らぬ山の中にいた。

 ああ、自分でも訳の分からない事を言っているとは思う。マリコの幻覚に引っかかった、と言った方がまだ現実味があるし。

 だが、これは現実だった。

 見知らぬ山で、見知らぬ邪鬼(おに)と出会った。その在り方は、どちらかというと邪鬼というよりかは、アマルガムだったが。

 その邪鬼を倒す為には日輪刀という特殊な刀で首を切らなければならず、およそ俺が知っている吸血鬼の生態とは全くと言って良いほど違ったものだった。

 その邪鬼をなんとか倒し、その場にいた鬼殺隊という邪鬼を殺す為にある組織の一人である田中健也と共に山を下山し、諸々の事情を聞き、そして今———謎の男、鱗滝左近次と一緒に別の山を登っている。

 

ハァハァ

 

「しかし、随分と登るんだな」

 

 健也と離れてから、体感だが6時間は経過しようとしていた。山に入ってからは大体3時間ほど。まだ登るのか、と若干億劫になる。

 

「いいからついて来い。呼吸を習得するには、様々な試練を乗り越える必要がある」

 

 山籠り、というと師匠との修行を思い出す。思えば、この鱗滝という男も師匠も仮面をつけているな。なんの因果だ。

 

「ここだ」

 

 と、鱗滝は小屋の前で止まった。どうやら、ここで寝泊りをするらしい。

 

「なるほど、ここに住んでいるのか。それで、修行は?」

「焦るな。始めるには始めるが、もうすぐ夜だ。夜には鬼が出る。まあ、お前にはあまり問題ないかも知れんが」

 

 それでも、と。明日の早朝から始めるぞ、と。疲れもあるだろうしな、と。

 一先ずは晩ご飯をご馳走になることになった。

 出てきたご飯は、ご飯に漬物、焼き魚に味噌汁と、一般的な日本食だった。ふむ、いただきます。

ズズッ

もぐもぐ

 気がつけば完食していた。断食には慣れているつもりだったが、昨日から何も食べていないのは思っていたよりも体に影響を与えていたらしい。

 

「それでは寝るぞ。明日は早い。お前も早く寝ておけ」

 

 食器を片付け洗い物を終えた俺に、鱗滝はそういった。そして布団を敷くと、寝た。

 俺も横になって目を瞑った。

 その夜は、泥の様に眠りに落ちた。

 

 ***

 

「起きろ。時間だ」

 

 まだ外が暗い中、鱗滝は俺を叩き起こした。修行、という事で興奮していた俺は、パッチリと目を覚ますことが出来た。

 

「最初は何をするんだ?」

 

 俺は着ていた服を脱ぎ、手渡された和服に裾を通すと、外に出た。

 呼吸、と言うくらいなのだから、恐らくは一秒間に十回の呼吸を出来る様にする、みたいな物だと思うのだが、どうなのだろうか。

 

「お前には、まず素振りをやってもらう」

「え」

 

 素振り、と言ったか。確かに大切な物だ。俺も時間ができればよくしている。

 だが、今やる物なのだろうか。健也の言っていた呼吸の技術。それを会得する為に来たのに、まずは素振りなのだろうか。

 

「鱗滝さん。言ってはなんだが、俺は既に剣術のいろはは掴んでいる。それよりもまずは呼吸法を」

「まずは素振りだ。それをやらないのであれば、お前を鍛える事はない。お館様に歯向かう事になるのであまり気は向かないが」

 

 ……そこまで言うのならやってやろうじゃねえか。

 俺はそこに置いてあった刀を拾うと、抜いてザンッと木を一刀両断した。

 素振り、ではなかったが。納得はしてくれるだろう。さあ、早く呼吸を。

 

「見事だ。だが、荒削りな剣だ。普通の敵を殺すのには最適な剣術だろう。だが、我らが相手取るのは鬼。ただ斬るだけでは殺す事はできん」

「へえ、これでも不十分って訳か」

「否。不十分なのではない。違うのだ。根本的にな。鬼を斬るには、日輪刀で奴等の首を絶たねばならぬ」

 

 ん? 違和感がある。邪鬼は別にそんな回りくどい事をせずとも殺せる。

 だが、昨日のアマルガムの様な邪鬼は殺せなかった。

 これは、何か重大な食い違いがあるような。

 

「鬼を殺すには、太陽の力が必要だ。だからこそ、日の光を吸収した特殊な鉱石を用いて作られた日輪刀を使って殺す必要があるのだ」

 

 その後、俺は鱗滝に色々と聞いた。その結果、色々なことが分かった。

 まず俺が出会ったのは、邪鬼ではなく、『鬼』と呼ばれる人食いの化け物だった。人を食う、と言うところで言えばほぼ違いはないが、話を聞くにこちらの鬼の方が強い。血鬼術と呼ばれる特殊な技を使う者もいるらしい。まるでゲームの様だ。

 そして、俺の剣は鬼を殺すのにはあまり向いていないそう。昨日の奴のようなあまり強くない鬼ならば勝てるだろうが、十二鬼月と言う桁違いに強い鬼と出会った時には手も足も出ないだろう、と。

 それを聞いた時、俺は決めた。この人の元について修行をさせて貰おう、と。

 師匠や兄貴、彼岸島のみんなと鍛えた剣術を否定されてムカついたが、それは一旦脇に置いておいて。

 まずは力だ。力が必要だ。

 そして、俺の修行の日々は始まった。

 

 ある日は罠だらけの山を下った。初めてやった日はなんとか無事に下山できたが、次の日からあからさまに罠のレベルが上がった。それからどんどん上がっていき、果てには殺す気だろ、と言いたくなるほどまでにはハードモードになっていた。

 

 ある日は素振りで一日が終わった。久々に遺恨の数々を忘れる程に基礎に集中でき、この日は疲れたが何か心地よい気分で寝ることが出来た。

 

 そして、ある日は呼吸を教えてもらった。それと同時に、型を。どうやら呼吸法と型は切っても切り離せない物らしく、これを覚えるのが一番大変だったかも知れない。だが、半年経った頃にはある程度はマスターする事が出来ていた。

 

 それと同時に、義手の仕込み刀を使わない戦い方も教わった。と言うか、慣れさせられた。隊長に作ってもらったコレを使わないとなると途端に戦い辛くなって来たが、鱗滝との模擬戦の数が百を超える頃には、なんとか慣れる事が出来ていた。

 

 そして、俺が山籠りを始めてから二度目の冬が来た。

 雪が積もり、木々は寒々としている。霜柱が立っている地面を踏めば、サクサクとした感触が足裏に伝わってくる。

 悴んだ手を握りしめ、毎朝の素振りをしようと外へ出る。

 そこには、もう見慣れた天狗面の男が待っていた。

 

「もう教える事はない」

 

 そう言うと、鱗滝はついてこいと歩き出した。

 何だろう、と大人しくついていくとそこには。

 

 しめ縄で締められた大きな丸岩があった。

 

「これを斬る事ができれば、合格だ。鬼殺隊の入隊試験に行くのを認めよう」

「俺は別に鬼殺隊には興味はないが……いいだろう。この岩を斬り、貴方の修行が完成した事をここに示そう」

 

 俺は、まだ抜かれていない刀を腰に当て、目を閉じる。

 思い出すのは、友であり、先輩であり、そして最大の好敵手であった斧神との一戦。

 奴の体は、鉄並みの硬度を保っていた。

 思い出せ、あの時の感覚を。

 

 一閃(ザンッ)

 

 再び目を開いた時、そこにかつての丸岩の姿は無く。

 真っ二つに斬られたそれが転がっていた。

 

「合格だ。試験の日は一週間後。七日間鬼の蔓延る山の中で生き延びれば良い」

「やってやろうじゃねえか。肩慣らしには丁度良い」

 

 俺は鱗滝さんからお守り代わりの狐面と、動きにくいだろうからと着流しを受け取り、試験へと旅立った。




丸い月が輝くいつかの夜。日本のどこかの山に、白い男が現れた。

「ここが……なるほど、確かにここは私の世界では無い」

訳の分からないスーツに、オセロ版のようなシャツを着ている男は、静かに笑うと高らかに叫んだ。

「待っていろ宮本明。この世界では以前のような間違いはせん。日本を滅ぼす事なく、貴様を見つけ、そしてその成長を楽しんでやる」

この日から日本には、鬼の始祖が二人存在するようになった。
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