鬼滅の刃ー彼岸の剣士— 作:キモ傘
藤の花が咲いている階段を上り、試験会場へと向かう。
それにしても綺麗な花だ。良い匂いもする。もし花を育てる余裕ができれば育ててみようか、と色々考えているうちに、辿り着いた。階段を登った先は簡単な広場になっていて、そこにはたくさんの少年少女が……
年齢層低くないか?
「皆さま、今宵は最終選抜にお集まりいただきありがとうございます。この藤襲山には生け捕りにした鬼たちが野放しになっております」
「山の麓から中腹にかけて、鬼の嫌う藤の花が一年中くらい咲いているからでございます」
「しかしここから先、藤の花は咲いておりません」
「ここで七日間生き延びる、それが最終選抜の合格条件でございます。では、いってらっしゃい」
その瞬間、集まっていた奴らは一気に散った。
今ので開始なのか。もっと大々的に開始するのかと思ったが、まあいい。
俺は狐面をつけると、鞘を腰につけ、抜身の刀を手に山へと入っていった。
「ぐへへ、こいつだけなんかでかいぞ」
「きっと食べ応えがあるんだろうなァ!」
「ふん、鬼も吸血鬼とあまり変わらない、か」
ザンッ
適当に斬りすて、先に進む。このレベルの鬼ばかりなら楽勝だな。
と、そんな事を考えている矢先。
「ぎゃぁぁぁぁ! なんだあいつは! なんだあいつはなんだあいつはァ!」
最終選抜を受けに来たと思われる一人の少年が、草むらから慌てた様子で飛び出してぶつかってきた。
「落ち着け、どうしたんだ」
「い、異形の。異形の大型が」
と、その少年は飛び出してきた方を指差して震えている。
「そうか、分かった」
俺はそう言うと、その指さされた方へと進んだ。
武者震いがする、久々の感覚だ。
姑獲鳥と戦った時以来のこの感覚。死を掻い潜る様なゾクゾクとした悪寒。
間違いない、その先にいる鬼は、確実に強敵だ。どれほどの敵なのか、楽しみで、怖くて、嬉しくて、堪らなく震える。
だんだんと腐臭が強くなっていった時、そいつは現れた。
いくつもの手を持ち、丸々と太った鬼が、そこには居た。
日輪刀を堅く握るとすぐに跳びかかり、その鬼の首を撥ねようと剣を振るう。
「ガァァァァァァ!」
「おいおい、いきなり首か。せっかちだな」
鬼は余裕でその一撃を防ぐと、何がおかしいのかニヤニヤとしながらそう言ってきた。
とりあえず無視する。
「おい、狐面。今は明治何年だ?」
「さあな、俺も知らん」
鬼はキョトンとしたかと思うと、ニヤニヤ笑いを続けながらこう言った。
「十一……十二……十三……で、お前で十四だ」
「なにがだ?」
「お前、鱗滝の弟子だろ」
ああ、と頷く。
「そうかそうか、やっぱりな。その狐面、たしか"厄除の面"だったか。その面が目印なんだ。俺は昔鱗滝に捕まえられて、この山に閉じ込められた。江戸だ。江戸の慶應だ。何年間……何年間だと思うッ!! 年号が変わるのを何度も経験しているッ!! ああ、
台詞が進むにつれ、段々と機嫌が悪くなっていった。最後には、鱗滝さんの名前を連呼して発狂して呂律も回らなくなって。
「御託はいい。さっさと始めるぞ」
開戦の狼煙がわりに、そこにあったみかんを投げつける。何のダメージも与えられないが、それでも挑発には十分だった。
「うがぁぁぁぁぁ!」
刹那。目の前が奴の腕で埋め尽くされた。上、下、右、左、前。およそ視界の全てが腕……その全てが俺に向かって風をきりながら向かってくる。
何も問題ない。
「全集中、水の呼吸」
呼吸をする。体全体に空気を行き届かせるイメージで、筋肉を普段の何倍も使う想像で。呼吸をする。
先程の雑魚レベルなら呼吸を使わなくても良かった。
だが、こいつには。全力を出すべきだと、体が判断した。
「陸の型。ねじれ渦」
刀を振るった後、一瞬遅れてシャッという音と共に腕の壁がバラバラに落ちていく。
これは、鱗滝さんから教わった斬り方とは大きく違っている。型の動きはある程度はマスターできたのだが、完成までには至らなかったのだ。
だから、俺が今まで培ってきた技術と合わせて新しい斬り方を生み出した。名前をそのままにしているのは、ご愛嬌だ。どちらの方が呼吸と噛み合ってるかと言われればもちろん鱗滝さんが教えてくれた型なのだが、どちらの方が俺に合ってるかと聞かれればこちら、と答えるしかない。
「な、何だその型は。知らないぞ、俺はそれを知らないぞォ!」
もう分かった。この鬼は、そこまでの実力ではなかったようだ。残念だ。
「くそぉぉぉぉァァアア!」
やけくそになったのか、ガムシャラに腕を伸ばしてくる。だが、そんな攻撃でやられる訳がない。避け、時に腕を切り落とし、奴に接近する。
そして
「壱の型。水面斬り」
ザンッ
この日、約五十年もの間生き続け、そして約五十人の子供を食べてきた鬼が、一人の鬼狩りの手でこの世を去った。