___豊久、豊久!!
___初陣で侍首か
___良か!!良かにせじゃ!!
___すごかな武者振り、ただ上帯んきびり方はこうすっとじゃ
___よう聞け。もし軍に勝って討死せんな、こん上帯は我が解こう。だが今日ん軍で屍を戦場に晒す時は、切った上帯を見て、島津が家に生まれた者ん思い切ったっ所作と敵も知り、我もそん死を喜ぼう
___ょひさっ!とよひさっ!
「豊久っ!」
「退くのじゃッ!豊久ぁッ」
征野に猛将の声が響き渡る。
慶長5年、関ヶ原鳥頭坂。
天下分け目の戦いは西軍の敗北という結果に終わり、最後まで残り続けた島津軍も敗走。
そこで島津軍は東軍へ突撃を敢行、徳川本隊の横をすり抜け伊勢路方面へ撤退していた。
自身の伯父でもあり、島津軍の大将でもある島津義弘にかけられた声に、【島津中務少輔豊久】は振り向かずに返す。
「天運は既に窮まっ!戦うちゅうも負けは明らわっぜ!我もこけ戦死しよう。義弘公は兵を率いて薩摩に帰られじゃ。国家ん存亡は公ん一身にかかれり」
「おいも兵子もここで皆死んでも、こん戦
「お退きあれ!!ここは、お豊におまかせあれ!!」
「さあ兵子ども!!射ち方構えぃ!!」
「敵は徳川最強赤備え、相手にとって不足なし」
____命捨てがまるは、今ぞ!!
号 ッ ! !
太刀を抜き放ちながら上げた豊久の声に、薩摩隼人が応える。
そこに、徳川最強と名高い『井伊の赤備え』、【井伊侍従直政】が追撃にかかる。
「奴らを生かして薩州に帰さば、井伊徳川の恥ぞ!!」
迫りくる追撃を前に、島津軍は座禅陣、「捨て
その中、義弘はたまらず叫んだ。
「待っておるぞ豊久!!」
「待っておるぞ薩摩で!!」
「死んだら許さぬぞ!!豊久ぁ!!」
その声に、思わず豊久は破顔する。
___良か
___豊久は幸せもんだわ
___よぅし!ここは一番武者働きせねば
そして、両軍が激突した。
「放てぇ!!」
豊久の号令とともに、鳥頭坂に轟音が鳴り響く。
その一瞬後に、豊久は土煙をあげながら走り出した。
火縄銃に倒れる徳川軍の間を駆け抜け、その勢いで騎兵を馬ごと両断する。
「島津中務少輔豊久、推参!!」
堪らぬ口上に、直政は漏らした。
「おお、美事也」
そのまま、豊久は馬上の兵の首を切り捨てた。
そして直政の目の前までたどり着くと、直政が馬上から吐き捨てる。
「死兵め、貴様らはもう負けたのだぞ」
「その首、俺の手柄となれい」
豊久が中段に構えながら返す。
「何言いやがるクソボケが」
「首になるのは
須臾にも満たぬ時間ののち、両者は激突した。
「阿呆が!!」
一合、二合三合。
直政の槍と、豊久の太刀がぶつかる。
「直政様!!」
「殿を!!守れ!!」
「応!!」
___応!!
大将の危険を感じた徳川軍が直政の前に槍衾を敷く。
それを前に、豊久は頬を伝ってきた自分の血をぺろりと舐め、笑みを浮かべる。
「応、良か兵子じゃ」
そして、槍衾へ自ら飛び込んだ。
「こ……こやつ……ッ!」
当然のように豊久は槍で貫かれ、あやされる赤子のように突き上げられた。
「……阿呆が!」
何本も槍が突き刺さり、三度宙を舞う豊久を前に直政が吐き捨てる。
しかし、豊久の動きは止まらず。
「阿呆は
そう叫び、腰に差していた火縄銃を抜き放った。
「!?……おぉオ!!」
「はッはァー!!やったど!!」
弾は直政の左肩に中り、思わず直政は落馬する。
それにより槍衾の手もゆるみ、豊久も地面に落ちた。
大将の負傷、徳川軍に動揺が走る。
「直政様!!」
「殿!」
「殿ぉ!!」
徳川軍の兵たちが直政に駆け寄る。
「退け!!退くのだ!!」
直政を担いだ兵らは、来た道を引き返し徳川本軍の元へ引き返していった。
「待てぇ!!直政!!」
「ふざけるな、ふざけるなよ手前!!」
「首おいてけ直政ぁ!!」
日が落ち、雨が降り出す
豊久は一人歩いていた。
周りにいた薩摩隼人は皆倒れ、ただ一人薩摩を目指し歩いていた。
___ここは…ここはどこだ……
___おいは帰るのだ……ッ!!薩州へ!!
しかし、その思いは敵わず。
島津中務少輔豊久は、関ヶ原、島津の退き口にて討ち死となった。
「死後の世界へようこそ島津豊久さん」
「不幸にもあなたは亡くなりました」
「な、なんじゃあ……ッここは……ッ」
そして、駄女神と対面する。
誰か代わりに書いて