素晴らしき世界と鬼島津   作:吉田松陰

3 / 4
自己解釈、ネタバレあります。
あと雑な文章注意。
感想評価圧倒的感謝。
ここ違うよってとこは教えてくだされば作者がない頭ひねって言い訳考えるか素直に直します。


三話

 

 「赤い服と十字に丸……赤い服と十字に丸……」

 

 最近この世界に送り出されたらしい男を探すため、女神【エリス】はアクセルに来ていた。

 古い時代の人間を送り出したことによる影響と、その人間のサポートが理由だ。

 今の日本ならまだ知れず、戦国時代の日本から来た人間がこの世界になじめるかどうか心配になった神々と、面倒事になるのを怖がった先輩であるアクアに頼まれエリスは装いを変え【クリス】としてギルドへ向かっていた。

 

___先輩の話だと分かりやすい恰好をしているみたいですけど……

 

 アクア曰く、「赤いジャケットのような服に、いろんなところに十字をまるで囲ったようなマークがあるからすぐ見つかるわよ」とのことらしい。

 それなら聞き込みを行う必要もなし、ギルドに張り込んでいようとエリスは考えた。

 そうしてギルドのドアの横で張り込むこと数十分。ようやくそれらしき男が見えてきた。

 

___赤い服と十字に丸。あれが戦国からき、た……?

 

 確かに、男は聞いていた通りの装いだった。

 赤い服と丸に十字、そして腰には日本の戦国の武士らしく太刀を下げている。

 しかし、彼が引いているリアカーの中身が問題で___

 

 「おお、やっとついた」

 

___その中には、ジャイアントトードの頭がいくつも積み重なっていたのである。

 思わずクリスが唖然としていると、ギルドの中から受付嬢の【ルナ】が血相を変えて飛び出してきた。

 

 「うわあぁぁぁ!!モンスターの頭はギルドには持ってこなくていいって言ったじゃないですかトヨヒサさん!!」

 

 「獲物ん首をもってこんで、どげんして確認する」

 

 真顔で言い張る豊久に、ルナは怒鳴り飛ばす。

 

 「だから、冒険者カードに討伐数は記載されるって言ったじゃないですか!大体血だらけで街の中歩き回らないでとも言ったはずで……」

 

 

 「じゃからぼうけんしゃかぁどちいうのもようわからん。実物で確認したほうがよか」

 

 「だ!か!ら!街やギルドが汚れるので今後はカードで確認します!次持ってきたら町中の掃除をしてもらいますからね!!」

 

 ルナの言葉にうなる豊久。そうなってしまえば首を獲る時間も減るだろうと考える。

 

 「わかった。次からは首は持ってこん」

 

 「わかったら早く戻してきてください!!ああああ待って待ってまず血を落としてからで……」

 

 そのまま引き返そうとする豊久に慌てて止めるルナ。

 その様子を眺め、これは骨の折れそうだとクリスは嘆息した。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「貴方が最近冒険者になったって人?私はクリス。職業は盗賊だよ」

 

冒険者ギルドの酒場のカウンター席で一人酒を飲んでいる豊久の隣に、クリスは話しかけながら座った。

 

「なんじゃおまえ」

 

「いや、最近話題の男を一目見てみたくてね」

 

そう言い、自らも酒を呷るクリス。

 

「なんでも細くて片刃の剣を巧みに操り、首を切り落とすことにこだわる姿からついたあだ名は【首狩りモンスター】」

 

そう言い笑うクリスに豊久は口を開く。

 

「島津中務少輔豊久、島津家久が子じゃ」

 

そう言った豊久に、クリスはにっこりと笑った。

 

「トヨヒサだね!ところでなんだけど、明日ってなんのクエストにいくの?せっかくだから実力もこの目で見てみたいな」

 

 にやにやとしながら聞くクリスに、豊久はさらりと返す。

 

「初心者殺しちいわれとる、大きな猫じゃ」

 

「初心者殺しね……初心者殺しぃ!?」

 

大きな声で騒ぐクリスを横に、豊久は「ふん」と鼻を鳴らし酒を呷った。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「ね、ねぇ……ほんとに初心者殺しを討伐するの?せめてパーティ組んだほうがいいって」

 

 翌日、二人はアクセル近くの森に入ってた。

制止するクリスの言葉を全く聞かずに街を出た豊久に、たまらずクリスがついてきたのである。

 

「じゃから、何回も行っちょるじゃろう。ひとりでよか」

 

「まずいって……もう」

 

道中ですら何度も止めてくるクリスに、さすがの豊久も疲れてきている。

 しかしクリスの≪敵感知≫のスキルに反応があると、その会話も中断される。

 

 「やばい……来ちゃった」

 

 「んん……おぉ、(ふて)ぇ猫じゃな」

 

 クリスの言葉の直後、白い毛と大きな牙もつ大柄の動物が茂みから飛び出してきた。

 

 「太ぇ牙じゃな……じゃが、所詮は畜生」

 

 そう言い、太刀を抜く豊久。

 

 「その首、置いて行ってもらうど」

 

 慌てるクリスをよそに、豊久は一気に駆けだした。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「オォオォオォオオォ!!!!」

 

 猿叫ともとれる声をあげながら走る豊久。それと同じタイミングで初心者殺しも飛び出した。

お互いに途轍もない速さだが、やはり豊久は人であり四足で駆ける初心者殺しに軍配が上がる。

 しかし、これは速さを競うものにあらず。生き物の生存競争である。

 寸分違いなく相手との間合いをつかんだ豊久は、太刀を振りかぶる。

正面から向かってくる豊久に対し、初心者殺しの選択はさらにスピードを上げることであった。

 是非もなし。真っ向からかみ砕いてやろうと進む初心者殺しと、豊久の目が合う。

 そして気付く。

 豊久の目に宿る、揺らぎなき闘志に。

 

 豊久が扱う刀法は、【タイ(しゃ)流】とよばれ、カタカナのタイの部分には様々な言葉が入るという。

 待ちを捨てるという意味での「待捨」、体を捨てるという意味での「体捨」。

 その一刀は、相手を斬ることのみ考え、自分の死を考慮しない。

 猿叫を上げながら太刀を振り下ろす豊久に、初心者殺しは恐怖する。 

その狡猾な脳をもって狩ってきた数多の獲物らは、どれも恐怖をもっていた。

しかし、目の前にいる人間からは微塵も感じられず。

わけのわからない存在に対する恐怖は、初心者殺しの身体に一瞬の硬直を与える。

命のやり取りにおける刹那の隙は、それだけで致命的なものとなり___

 

 「イエアアァアァ!!!!」

 

___初心者殺しの首を、寸分違わず斬り落とす結果となった。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「はン、他愛なか」

 

 そう言って、残心をとき太刀に付いた血を振り払い納刀する豊久。

 その横で、人知れずクリスは戦慄する。

 

___この人、すごい

 

 恐るべきは力や速さ、剣術ではなく。

 戦いにおいての勝負勘、価値をつかみ取る嗅覚である。

 おそらく、初めて相対するであろう敵。

 その相手の容姿、一挙手一投足におけるすべてを観察、読み取り。

 勝利する上での絶好の機会をつかみ取る。

 まさに戦乱を戦い抜いた武士である。

 ともすれば、その刃は誰が先へ向かうのか。

 それが、人間でないとは限らないのである。

 

___誰かが、この人の手綱を握らなければ

 

 クリスは決意する。

 

 「さ、かえって飯食うど、坊主」

 

 女神である自分が、この人を導かなければと。

 

 

 

 

 

 「って、あれ?今聞き間違えじゃなければ、坊主って言った?」

 

 「おう。そんな細い腕で、ようやるもんじゃ」

 

 「ちょっとぉ!?私女なんだけど!おんな!」

 

 「わははよう言う」

 

 「ねえきいてる!?女の子なんですよ!?あまりにも失礼だと思いませんか!?」

 

 いつか一発殴ろうとも、クリス(エリス)は誓ったのであった。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 「おう、また会ったな坊主」

 

 次の日、ギルドの依頼掲示板前に豊久はいた。

 何か依頼はないかと探しに来たところ、待ち構えていたようなクリスと会ったのである。

 

 「あのねぇ……私は女だって何回言えば……」

 

 「まあそんなもんはどうでもよか」

 

 「どうでもよくない!」

 

 騒ぎ立てるクリスを横に、豊久は掲示板をみる。

 

 「うむむ……今日はやめた」

 

 「やめたって……今日は依頼受けないの?」

 

 渋い顔でつぶやく豊久に、クリスが尋ねる。

 

 「刀の手入れをせにゃならん。種子島用のたまも欲しい」

 

 そう言ってクリスに向き直る。

 

 「クリス、店に案内して欲しか」

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「なんだ?たまぐすりって」

 

 ところ変わってここは武器商店。

 クリスの案内で来たはいいが、目当てのものを見つけることができずにいた。

 

 「刀剣用の油ならあるが、そのたまぐすりってやつは置いてないな」

 

 「ほうか……」

 

 店主の言葉に豊久は悩みこむ。

 すると、クリスが豊久に向かって訪ねる。

 

 「ねえねえ。その種子島ってやつちょっと見せてよ」

 

 「こいがか」

 

 クリスの言葉に、豊久は腰にさす火縄銃を抜き取った。

 

 「この筒で黒色火薬(たまぐすり)ば爆ぜさせて、鉛の弾を打ち出す」

 

 「これって……マッチロック式の銃!?どうしてこんなものを……」

 

 「こっち来るときに一緒に持ってきただけぞ」

 

 豊久の言葉に、クリスは思わず頭を抱える。

 

___先輩ぃぃ!?なにやってるの!?

 

 本来、この世界にやってくる日本人は各々が選んだ武器を持っている。

 それには理由があった。

 それは、この世界に技術を持ってこさせないためである。

 この世界では魔法が発達しているため、科学はあまり発達していない。

 想像してみてほしい。

 もし、この世界に古式の銃を持ってきた者がいたら。

 その銃がこの世界で量産されたら。

 確かに魔王を打ち倒す確率は上がるだろう。

 しかし、その先にあるのは人間同士が銃を向けあう修羅の世界である。

 そのため、異世界の来訪者の持ち物を制限し、技術と文化の持ち込みの制限を行ったのである。

 そんな思いを抱え、一人うなだれるクリスをよそに、店主は言った。

 

 「そのたまぐすりってやつは爆発するものなのか?だとしたら一つ心当たりがあるが」

 

 「どこじゃ、店主」

 

 店主の言葉に、豊久は喜色混じりの声を上げる。

 

 「ウィズっつー嬢ちゃんがやってるマジックアイテム屋なら、何かあると思うぞ」

 

 

 

 




ちょっと説明。
自分は原作は三巻までしか読んでないんですけど、このすばって結構能天気な人が多いじゃないですか。
その理由は神が制御してたからって感じで行こうと思ってます。
ただ、悪魔とか所謂【魔族】とかってやつがかかわってくると問題になって、そういう意味でも魔族やアンデットって神々に嫌われやすいって感じで進めていきます。









あともじすうもうすこしがんばる
追記:九州出身の友人が参戦
   これで先に進める。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。