「これはマリス殿。お早いご帰還で」
マクロス・スフィア強襲に失敗したマリスのバルキリー部隊はオリオン銀河皇国軍宇宙強襲艦『モネラ』に帰還した。
「…作戦は失敗した。次の行動に移る」
オリオン銀河皇国軍宇宙強襲艦『モネラ』艦長『モルドレッド・ファイナンス』は不敵な笑みでマリスに詰め寄った。
「オリオン銀河皇国国王親衛隊である『ペガサス騎士団』騎士長『マリス・ルクセンブルク』殿にしては些か芳しくない結果ですな」
「…」
「態々本国からお越し頂いて。指揮権までマリス殿にお渡しして差し上げたのに、もう少し自ら立案された作戦について検討のし直しをされてはいかがですか」
「ご安心をモルドレッド殿。舟一隻2月かけて見つけられなかった貴殿の部隊の能力と我々の驕りを鑑み、既に修正し立案しております。次の作戦では一定の成果をお見せしましょう」
「うぬぬ…」
「では失礼」
何食わぬ顔で立ち去るマリスの背中にモルドレッド苛立ち持っていた扇子をへし折るのであった。
「全くあの髭オヤジ。自らの失態を棚に上げてマリス様に嫌味を言うなど」
「そういうなキャロル。我々が作戦に失敗したのは事実。批判を受けるのはやむ終えないことだ」
「ですか…」
「ここのパイロット連中に次の作戦のミーティングを3時間後に行うことを伝えてきてくれ、私は定時報告に行ってくる」
「わかりました」
自室に戻り、モニターをつけるマリス。
「ご無沙汰しております。メーア様」
「マリス。お勤めご苦労様です、上手く進んでいますか」
「対象の敵艦は発見しましたが、撃墜とはいきませんでした。詳細は後程報告が上がるはずです」
「そうなのですね、あの依頼していた件はどうでしたか」
「まだ、確認出来ておりません」
「そうですか…すみません私事で」
「私のここでの目的はメーア様の願いを果たす為です。気にされないでください」
「ありがとう。マリス」
「メーア様。その通信は兄上ですか」
後ろから粋のいい若者が顔を覗かせる。
「…クリス。務めはしっかり果たしているのだろうな」
「勿論だぜ兄上。兄上の代わりにメーア様の身辺警護はしっかり務めているよ」
「ならばいい、気を緩めるなよ。ではメーア様。失礼致します」
「はい。マリス貴方のお早い帰還を待っております」
「最善を尽くします」
モニターを切り、長い髪を結いマリスは自室を後にした。
その頃。マクロス・スフィアではガイアが初めてマクロス・スフィアに乗る二人に艦内の案内をしていた。
「お二人もマクロス級に乗られたことあるんですよね」
「えぇ。どこか懐かしさを感じるわ」
「ここがドックになります。隊長お二人をお連れしましたよ」
「初めまして、カナメさん。ミラージュさん。マクロス・スフィアのバルキリー部隊スフィア小隊隊長コニー・マカロニ大尉です」
「よろしくお願いします」
「いやぁー。伝説のアイドル『ワルキューレ』の初代リーダーとそれを守護したΔ(デルタ)小隊のパイロットにまさかこのような形で御会い出来るとは、特にミラージュさんにはスフィア小隊に参加して頂けるということで、感謝しております」
「実戦を離れて暫く経つのでお役に立てるかはわかりませんが、よろしくお願い致します。ところで他のスフィア小隊のパイロットはどちらに」
「…。ケイオス所属として復隊したガイアと私、最近志願してパイロットになった彼『ガナード・ロン』の3人です。他のパイロットはこれまでの戦いで皆…逝きました」
「そうでしたか…」
「ミラージュさんには是非。ガナードの指導をしてやって欲しいのです。ようやくバルキリーで飛べるようになった新人ですので、生き残る術をみっちり仕込んでやってください」
「わかりました。よろしくお願い致しますガナード…」
「俺は軍人じゃねぇ」
ガナードはガイアを睨み付けその場所を立ち去った。
「私。彼の気に障ることを」
「気にせんでください。こんな環境に置かれたんです。相当ストレスを抱えているのでしょう」
(むしろ、原因は俺か)
「じゃあ隊長。もう少し俺は二人を案内してきますね」
「わかった。では私はこれで失礼します」
コニーはバルキリーの調整に戻った。
「報告では聞いていたけど、想像以上な戦力不足ね」
「拠点であるサークル船団を奪われたので、補給もままならない状態です」
「…」
突然なるアラート
「敵…」
「スフィア小隊のパイロットは至急発進準備を整えてください」
「艦長。何事です」
「スフィア小隊は、たった今見つかった。サークル船団から脱出したと思われる輸送船の救助に向かってくれ」
漂流する一隻の舟。船内にいるのは…