ざわざわ・・・
「静粛にしてください。まもなく式場への入場が開始されます。各自、所定の場所に移動してください。なお、今から読み上げる生徒は・・・」
私は入学式の新入生側にいる。私は大声で『なぜだ!もうこの学校に入って四年目だぞ!去年までは在校生側にいさせてくれたのに!』と、心の中で叫んでいる。
さすがに留年しすぎなのか?学校側も私みたいな奴がはじめてなんだろう。というか記録上こんなやつはいない。
少し気が弱くなったか?いかんいかん。今年こそはきれいに単位を取って進級するのだから、こんなに些細?なことを気にしてはならない。
おっと、入場が始まったぞ。所定の位置は・・・。
場所を探し始めようとしたら
「ねえ、さつきちゃんだよね?」
『この声は、まさか、“ゆり”かっ!』と少し震えながら
「ええ、立川 さつきですが。どうしまs・・・グハッ」
いきなりハグしてきやがって!痛いから、もう少し優しくお願いしたい。
「わー!!さつきがいる!変わってない・・・最高」
ああ“ゆり”だわ。この声は間違いない。そしてにおいも懐かしい。あれ、でも少し変態になってないかな。特に最後の「最高」は聞き捨てならんな。んー?なんかちょっとヤヴァい。
離脱しなければ・・・ヤられる!(色んな意味で)早く移動させなければ。私は苦しいながらも必死に声を出す。
「ねえ、うれしいけど・・・そろそろ並ばないと・・・ね?あっ」
ウワー。教官がこっちを見てるー。こわーい。鬼みたいな顔なんだが。というか離れねえぞ、ゆり。もうこうなったら無理やり引き剥がそう。そうしよう。
「どっせい!」ドン。やっと離れ・・・あっ。今度は教官かー。どーしよ。
「さーつーきーさーん?あとで職員室に来なさい」
ひいい。それ一番怖い名前の呼び方なんです(私のなかで)。しかも吉原教官かよっ。一番怖いよ。チッラ・・・スっ。ゆり、逃げやがったな。
気付いたらめっちゃ注目を集めていた。早くなんかアナウンスしてほしい。視線が痛いので。レクチャー台に人がいる。やっとか。
「皆さんが所定の位置に移動したことを確認しました。それでは式を始めていきます。 来賓入場・・・これにてすべてのプログラムが終了しました。生徒の皆さんは順番にクラス振り分け表をみてもらいます。ではA-1列より誘導します。誘導員の指示に従ってください。保護者の皆様は・・・」
あー、やっと終わった。クラス分けどうなるかなー。できれば航洋艦の機関科の一人が良いかな?
「では、B-2列の方々ー、こちらになりまーす。」
15人ほどが歩き始める。どれどれ“立川 さつき”は・・・っと、ん?後ろを一度見て、深呼吸。もう一度みる・・・!本当か。マジで言ってます。学校さん。
そこには“艤装実験航洋艦 皐月・艦長 立川 さつき
・副長 一橋 ゆり ”
だってさ。うおん、よりにもよって艦長かよ!しかも副長ゆりだし!現実を知った私は絶望した。そして私の意識がヴァルハラに召される寸前に声がかかった。
「それでは、1100に各艦教室に集合ですので遅刻しないようにお願いします。特に皐月の艦長。」チラッチラッ
皆してなんで私をみるのさ。・・・さてはこの誘導員(教官)、クラス分け担当のグルだな。覚えてろよ。
う~ん、やっぱり無理!あと一分しか集合時間までの時間がないけど、めっちゃお腹痛い。トイレなう。大体、留年しまくりの私に艦長を任せるのが悪い。ストレス耐性ないし、時間守れないし、前に立って何かするとかやったことないし。おまけにさっきは四人の教官に怒られるし。
あ、時間過ぎたわ。新入生としての初日としては最高だわ←どこがだよ
ピンポーン・・・
「お゛い゛立川 さつきさん、、、このチャイムは遅刻者がいるときにしかならない。貴様なら知っているはずだ。あと十秒で集合場所にこい。」
はあ、仕方ない行ってやるか。
ガチャリ・・・
「し、しつれいしまーす。うっ」
もう帰りたいよお。こんな空気耐えられない。担当が吉原教官とはっ、まったくついてねーぜ☆。こっちをドスをきかせた顔で教官以下生徒が睨んでいる(一部を除き)。私は入ってすぐにその場で硬直していた。すると吉原教官が話し始めた。
「えーではこのポンコt・・・うっうんとても頭は、いえ頭だけが良くて、しかも集合初日に遅れてくるダメな・・・あまり態度がとても良くない艦長からひと言自己紹介とこの艦をどんな家にしたいか語ってもらいますね。」
えっ、今この空気で!?私を社会的に殺す気か、いやもう死んでるから関係ないな。
「わ、私は艤装実験航洋艦 皐月の艦長を拝命しました、立川 さつきです。遅れてきてすみません。今のうちに言っておきますが私はっ「待ちなさい」
吉原教官がこっちを心配そうな顔で見ている。さっきの鬼の形相はどこにいったんっだか
「あなた、本当にいいの?」
教官は聞いてきた。えっ悩む、ぐるぐる色々な思いが頭の中を回る。
「大丈夫ですよ教官・・・続けますね。私は小学校卒業と同時にこの学校に飛び級しました。しかし、私はこの通り新入生としてここにいます。長い間留年してきた身です。それでも今年は学校側の支えと考えもあり、艦長になりました。いままでとある物の研究をしてきました。それはもうじき完成します。この三年間私はその研究とやらに没頭して、ほかの物をないがしろにしてきました。そんな皐月の艦長です。みんなはいいですか。こんな体たらくな学校生活をおくってきた艦長で。この後配られる生徒手帳の‟乗艦規定”の項目に‟全生徒の三分の一の署名、もしくは声明があれば艦長を変更もしくは下船させることができる”」と書いてあります。嫌ならそうしてください。でもっ、私は今回艦長を拝命したからには最後までやり通したいと考えています。・・・よくみんなで考えてください。それにこの艦には私なりの思いがあります。私はこのクラスを艦を強いものにしたいです。以上です。」
私は指定された席に座る。
「次に副長、自己紹介を」
「はい、私の名前は一橋 ゆりです。よろしくお願いしますね。私はもともとさっちゃん・・・さつき艦長とは小学校のときから仲がよくて、本当のことを言うとさつき艦長に会うためにこの学校に入りました。まあ、どんな結果になろうとも私は楽しくやっていきます。よろしくお願いしますね。」
「次の人からは科の所属と名前と本当の一言だけでではまず航海科」
「はいっ、航海科所属の吉田 結です。よろしくお願いします。」
そのあとは全員の自己紹介だった。この艦は技術研究学校の生徒もいるので一クラス33名になる。
航海科 以下八名
・立川 さつき
・吉田 結
・川原 奏
・辻 栞
・永井 ふみ
・山中 美咲
・中西 桜
・沢井 凛
砲雷科 以下九名
・一橋 ゆり
・石原 美玲
・森本 紗良
・吉岡 七海
・北野 鈴
・竹本 彩葉
・宮原 優里
・大江 翠
・市原 百花
機関科 以下八名
・岩渕 楓
・矢口 ひかり
・川辺 ひまり
・雨宮 葵
・石坂 つむぎ
・北沢 莉央
・沖 加菜子
・田所 美羽
主計課 以下五名
・富田 陽菜
・平本 琴葉
・竹中 結衣
・広川 澪
・松島 心音
技術科 以下三名+艦長
・栗田 希
・中島 唯奈
・朝田 莉子
一通り終わった後に教官が話す。
「通常の海洋学校ならば各艦に一人の教官だが、ここは技研の学校でもあるのでもう一人教官がつく。海鳩教官入ってきてください。」
スラっとした見慣れた教官だ。私たちを一通り見た後に話し始めた。
「紹介いただいた海鳩です。さつきの研究には初めから参加しています。発表すれば世界を変えてしまいます。それほどおおきなものを研究しているんです。きっと、機関科と砲雷科の娘たちには良いものだとおもうよ。あっ、ちなみにこの艦は二年前に進水してブルーマーメイドの試験航行にも合格しているんだが、設計者の一人にさつき艦長が入っているんだ。それほど凄いやつだ。不良だが。まあ、なにがともあれよろしくお願いする。」
「世界を・・・」あたりからみんな私を見ているんだが、いろいろ和解するために残ろうと思っていたが、これは逃げねばならんな。
「では解散します。艦長号令」「はいっ、起立、礼!」「「「ありがとうございました。」」」
スっ(頭を上げる)クルっ(クラスメイトが私を見る)ダっ(走って向かってくる)ビュン(私、逃走)バン(扉を開ける)ダっ(私、走る)
砲雷科の北野が物凄い勢いで扉から出てきて
「地獄の果てまでおい続けろーー!」
その後続に砲雷科と機関科が出てきて
「「「待てええーー」」」
ひいっ、怖いんだが。桟橋にとび降りて走る。私は今、暗黒面に堕ちた16人に追われている。とりあえず研究室か!?いや、すぐにバレる。このままではヤられる。海鳩のヤロウ覚えてろよ。あっ、確か艤装研究棟ならば技研の生徒以外は入れないからそこに行くしかない!
「フっ、どうやら始まったようね。海鳩に頼んでおいてよかったわ。」
そんな姿を笑みを浮かべながら見ている人がいた。大湊女子海洋学校の校長の‟立川 ゆず”である。
北方の海洋学校のまとめ役であり、さつきの叔母である。権力を行使すればさつきを自動的に進級させることもできたが、おもしろそうだと考えたために(もちろんさつきが不良なのもあるが)そうしなかった。
「さつきとその仲間がつくった新型レーダとか飛行機とやらが今後どんな風に影響を与えていくのか興味深いわね、教頭先生。」
「ええ、その通りですね。」
かくして艤装実験航洋艦 皐月のメンバーたちの日々は始まった。
予告:さつきの指導の下、航洋艦には次々と新型の艤装が取り付けられていく。そしてその中でさつきはクラスメイトに飛行機についての話をしていく。衝撃を受けるクラスメイト達だったが・・・次回「空への夢と価値」