ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編   作:Rakusai

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0.序章

 ゲッターロボに登場する、早乙女達人と言うキャラクターをご存知だろうか?

 

 その名前から分かるとおり早乙女博士の息子であり、早乙女ミチルや元気の兄に当たる人物だ。

 (作品にもよるが)割とスポットの当たる早乙女一家の中では地味な存在であり、登場作品もあまり多くは無い上にほぼ死んでいる。

 印象に残るのは、せいぜい新ゲッターにおいてプロトゲッターのパイロットとして登場し鬼になって死亡した時くらいだろうか?

 ありていに言って、敵の強大さと戦いの悲惨さ演出要員である。

 

 さてそんな脇役・早乙女達人、実は俺である。

 俺である。

 マジかよ。

 

 簡単に説明すると、父さん、つまり早乙女博士の研究中にゲッター線で爆ぜたケーブルに頭を打って昏倒、起きたら前世の記憶がカムバックしたのだ。

 いやもう、頭を抱えたね。

 先述の通り、ゲッターロボに就いて一通りの知識は有している。触れたきっかけはスパロボだったが、OVAは見たし原作漫画もだいたい読んだ。

 つまり、その、なんだ、イデオンとエヴァンゲリオンと同じくらいには来たくない世界だったよゲッター世界。

 

 一種の転生を果たしたのはゲッター線のせいだから仕方ないとして、人格的には前世の"俺"と今生の"僕"(達人)が混ざったような状況にある。

 達人の性格は、前世から客観的に見ると真面目で努力家、父を特に尊敬する家族思いの青年と言った具合だ。

 端から見ると完璧な好青年なのだが、いかんせんゲッター世界で生き延びるには爽やかすぎる(断言)。

 "俺"はイモリだかトカゲだかにたかられて父さん(早乙女博士のことである一応)に焼き殺されるのも、鬼に噛まれて鬼になるのもゴメンだ。

 

 となればこれはもう自らを鍛えるしかない。

 

 幸いにして現在の早乙女達人=僕は、中学卒業を間近に控えた年齢だ。学校に通いつつ身体を鍛える余裕も年齢的な発展性も十分にある。

 大学卒業して研究所勤めになるまでの、おそらく十年弱、それまでに最低限野犬の首を素手で引き千切れるくらいにはならないと死ぬ(真顔)

 

 

 そんなわけで、東京の学校に進学すると同時に空手の道場へ入門する事を決めた。

 そう空手の道場である。

 ちょっと師範の苗字が流って言うだけの空手の道場である。師範の息子の名前が竜馬ってだけのなっ!

 修行は死ぬほどキツかったけど、なあに、コレに耐えられなかったらどうせ死ぬ。死ななきゃ安い。死ね師範。

 ちなみに修行の一環として出場したスポーツ空手の大会は無事出禁になった。実践空手だからね。しかたないね。

 師範の現役時代と違って、僕は父さんに迷惑かかるから後遺症残るような攻撃はして無い。相手も弱かったので手加減は楽だった。

 

「達人さん、飯!」

「ちょっと待ってろ欠食児童。毎度毎度バクバク食いやがって」

「達人、飯だ!」

「おう、小学生の息子と一緒に茶碗叩くな不良道場主!!」

 

 以上、流道場の日常風景である。夜になると道場主の方は「酒!」になる。

 なお、声変わりした息子さんは神谷ボイスでした。最近、体が出来てきて道場で相手するのがスッゴイ辛い。気を抜くと容赦なく急所に拳が来る。

 まあ蹴り返すわけだが。

 

「野郎ぶっ殺してやる」

「このクソガキ」

「後ろだガキども」

「「死ねクソオヤジ」」

 

 統計的に笑顔の絶えない素敵な道場です。

 

 

 道場で飯作って修行して大学で勉強して時々早乙女研の手伝いして論文書いて、アルバイトとアルバイト(物理)でお金稼ぐ、だいたいそんな生活。

 凄いな命燃やして生きてるよ俺! クッソハードなスケジュールなのだが、鍛えた身体は揺るがない! やったぜ人体。

 

 怪しい薬(ゲッター線)やってるとか言われたら否定しきれないけど。

 

 でまあそんな生活を数年続けて、大学卒業するころには早乙女研究所の職員として恥ずかしくないスキルを身につけることに成功していた。

 息子さん……もう竜馬でいいや。竜馬も空手の全国大会に出場し無事出禁になり、現在は普通に高校生をやっている。

 ちなみに勉強は僕が教えたので成績はかなりいい。元々、学習能力は飛びぬけているので、家庭教師のバイト先と比較しても優秀なくらいだった。

 あ、クソ師範もピンピンしてます。栄養状態が改善したせいで入門当時より強くなってやがる。ヤクザいぢめ楽しそうっすね。発案したの俺だけど。

 

 とまあ、順調にゲッター世界に染まった俺は、大学を出た後に一年ちょっとの海外留学を経て早乙女研究所の研究員になった。

 所長が父さんなのであからさまなコネと言えなくもないが、あの人、人材の能力に対する判定はシビアだ。

 いくら息子とは言え、能力が足りなければ容赦なく雑用行きだろう。

 少なくとも、今目の前に張り出されている巨大な設計図……人型の"それ"に堂々と関われる程度には評価されたいものだ。

 

 

 

ゲッターロボ大決戦!

 早乙女達人編

 

 

 

 さて、"僕"が早乙女研究所に勤め始めてから一年ほどが経過した頃、ようやくにもゲッターロボの起動試験は成功した。

 いわゆるプロトゲッター、灰色のゲッター1と言うべき外見のそれの起動は、当初予定されていた三分の一の出力で行われている。

 そこから問題点を探し出して改良、さらにゲットマシン構想による分離合体変形機構を組み込んだ正規版の設計が行われた。

 そうして実機の製造が始まると、同時にパイロットの選定も行われた。

 本来なら自衛隊からの出向を要請することになるのだが……。

 

 今の時点で、父さん以外にとってのゲッターロボは宇宙開発用の大型作業機械だ。ここに軍事的な要素を加える自衛隊の要員は好ましくないとされた。

 政府筋からも予算を盾にされたため、出向の話は流れてしまう。

 そうなると研究所独自で搭乗員を探す必要があり、加えて最終手段として研究所職員による搭乗まで考慮され始めた。

 具体的には僕が航空機の操縦免許を取った。父さんも取った。大学に通いながら父さんの秘書のような事をやっていた妹のミチルも取った。

 早乙女家アグレッシブすぎませんかねえ。

 

 とは言え。

 

 まさかゲットマシンに所長と研究員と秘書が乗るわけにもいかず、父さんは年齢的な理由で長時間の搭乗が出来ないこともあり、人員募集が行われた。

 ところが、コレがまた難航する。

 民間のパイロットは、ゲットマシン用のシミュレーターに乗るとそろって音を上げたのだ。

 ちょっと超音速で飛行しながら合体変形するくらいでだらしねえな! うん感覚が麻痺している自覚はある。

 しかし、出来ないものは仕方がない。シミュレーションですら音を上げる人間を実機に乗せるわけにもいかない。死ぬので。

 

 それならどうするか。

 

「ジジイ! いきなり、こんなところに連れて来やがって! 何のつもりだ!」

 

 はい。こちら麻酔銃ぶち込んで強制連行してきた流さん家の竜馬君となります。

 高校卒業控えたちょうどいい時期だったので、もういいかなって。

 

「や、久しぶりだな、竜馬」

「! 達人さんか! くっそ、やけに手際がいいと思ったらそう言うことかよ!」

「ちなみに師範は了承済みだ。契約金チラつかせたら一発だった」

「クソ親父ィ!」

 

 今頃、高い酒でも飲んでる父親でも想像したのだろう、天に向かって吼えつつこっちに殴りかかってくる竜馬。

 ちなみに真正面から話を持っていくと言う手もあったが、変なひねくれを起こされても困るので強制連行となりました。

 試験代わりの殺し屋? 無意味に怪我人出すだけだろ。

 

「で、なんだって俺をこんな場所に連れてきたんだよ? そっちの白髪の爺さんが達人さんの親父だってのは分かったけどよ。ペッ! クソ口切った」

「ああ、竜馬に仕事を頼みたくてな。師範の道場を継ぐにしても、時間はあるだろうし……ゲホッ、本気で殴りやって。父さん、いいかな」

「う、うむ。ところで達人、お前東京で何やっとったんじゃ」

 

 そう言って案内を始めた父さんは、じゃれ合い(殴り合い)を終えて平然と会話を交わす僕たちの姿にちょっとだけ引いていた。

 大丈夫だって、まだ喉より下から血は吐いてないから。

 そうしている間にも、研究所の地下部分に存在する巨大な鉄扉が音を立てて開き、その向こう側があらわになる。

 

「……ッ! 巨大、ロボット?」

 

 さすがの竜馬も、目の前に現れたゲッター1の上半身を見て息を呑む。

 早乙女研救助地下格納庫には、他にも作業用の小型ロボットが走り回っているのだが、やはりゲッターのインパクトは大きい。

 加えて、彼が"流竜馬"である以上、ゲッターに対してなにかしら感じるものがあるのかも知れないが。

 

「流竜馬、君にはこいつに乗ってもらう。この、ゲッターロボにな」

 

 父さんの言葉を聞いているのかいないのか、竜馬はゲッター1を見上げたまま動かない。

 ただポツリと、その口から言葉が漏れる。

 

 「ゲッターロボ」と。

 

 

 

 

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