ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編   作:Rakusai

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11.研究所を救え

 北海道の橘研究所に向かった達人と竜馬たち三人を除いた早乙女研究所の面々は、恐竜帝国との決戦で受けた損害の回復に務めていた。

 とは言えゲッターゼロとゲッターロボGが不在であり、オリジナルのゲッターロボも大破状態から修復が進んではいない。

 量産型ゲッター3に至っては達人の予測通りにスクラップ行きが決定されて、再利用可能な部品を抜き取って解体されている。

 そしてそれを勝手に持ち出した武蔵は、北海道行きを希望するも却下され研究所内を雑用として走り回っているのだった。

 

「武蔵、三番のケーブルをもってこい! いいかあ、三番じゃぞ!? 三十番でも三百番でもなく三番!」

「分かってるよ! そうそうなんべんも言わんでも! 三番だろ三番! くそぅ、敷島の爺さんめ、この武蔵様を遠慮なくこき使いやがって」

 

 ブチブチと文句を垂れ流しながら、武蔵は指定されたケーブルの入った箱を資材置き場から持ち出して工作スペースへと戻った。

 本来は数人がかりで運搬する巨大な箱を軽々と担ぎながら歩く姿にも職員たちは慣れたもので、軽く挨拶を交わしながらすれ違って行く。

 そうして敷島博士の下に戻ってくると、そこでは先程まではいなかった人間が一人、博士にどやされながら工具を握っていた。

 

「竜二よぉ、お前も大変だよなあ。変な爺さんに気に入られっちまってさあ」

「やかましい! 荷運びくらいしかできん武蔵、お前と違って竜二のヤツは中々見込みがあるんじゃ!!」

「ま、まあ、教えてくれって頼んだのは俺だからよ。……ここまでこき使われるとは思わなかったけど」

 

 強面の顔に困ったような表情を浮かべているのは神竜二。隼人の従兄弟で、早乙女研究所の警備班のリーダーでもある男だ。

 それがどうにも先の戦いが縁になって敷島博士に気に入られた様子で、ここ数日はほとんど助手のように連れまわされる姿が目撃されている。

 竜二が輸送トレーラーや作業用クレーンなどの扱いも学んで、いつの間にかマルチな人材になっていたこともあるだろう。

 ……もちろん、『敷島博士係』と言う大変面倒くさい仕事を押し付けられている面もあったりする。

 

「俺はゲッターには乗れねえが、車に近いBTなら何とかなる。それで修理装置を動かせりゃあ、南風の姐さんが他に回れて皆が楽できるってもんさ」

 

 竜二はそう言って、少し照れくさそうに口元を指でこすった。

 BTは渓が専属パイロットを務めている状況だが、彼女はゲッターのパイロットもこなせるため代わりが居れば人材に余裕が生まれるのだ。

 

「姐さんとか言うと、渓ちゃんまた怒るぜ? ところで敷島の爺さん、こいつは何を作ってるんだい?」

 

 武蔵は警備班のゴツイ面々に姐さん扱いされて顔を引きつらせる渓を思い出しながら、運んできたケーブルが取り付けられた機械を手で叩いた。

 作っているのが敷島博士なので確実に武器の類なのは分かるのだが、まだまだ形になっていないので完成系は予想が出来なかった。

 

「こいつはな、修理中のゲッターロボに乗せる予定の武器じゃよ。ただ直すだけではツマランからな」

「修理中のゲッターってことは、おいらのゲッター3のことか!!」

「……まあ、そうなんじゃが。ゲッター炉心も強化型に入れ替えると言うとったし、パワーアップは間違いないわい」

 

 愛着のあるオリジナル・ゲッターロボの復活と強化を知って、武蔵は「ひゃっほーぃ」と声を上げて喜んだ。

 敷島博士は、ゲッターGから得たデータで旧来の炉心を改修して出力を向上させ、それでも不足する分の攻撃力は武装で補う計画だと語った。

 そして目の前で作られているのは、ゲッター3に搭載予定のゲッターミサイルの改良型であると。

 

「ほれ分かったらとっとと出ていかんか。お前の図体でつっ立っていられても邪魔じゃ邪魔」

「ひっでぇなあ、でも新しいゲッター3は期待してるぜ爺さん」

 

 しっしと手を振って追い出された武蔵は、鼻歌を歌いながら踊るような足取りで工作スペースを出て行こうとした。

 しかしその時、早乙女研究所に警報が鳴り響く。

 

『緊急警報! 緊急警報! 浅間山の地下より百鬼メカ出現! 目標は早乙女研究所! 繰り返す、敵の目標は早乙女研究所ッ!』

 

 敵襲を伝える放送に、武蔵は振り返って敷島博士と竜二と顔を見合わせる。

 現在の早乙女研究所には、ほとんど戦力らしいものが残されていない。防衛用の砲台やBT、警備班の歩兵装備くらいだ。

 

 そして折り悪くも、北海道の橘研究所が襲撃を受けたのはつい前日の出来事だった。

 

 

 

ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編

 第十一話:研究所を救え!

 

 

 早乙女研究所襲撃されるの報告を受けた僕は、呼び出しを受け慌てて橘研究所の管制室へと駆け込んだ。

 魔竜鬼はじめとした百鬼メカの攻撃を受けたことの後処理と、ゲッターロボGへのゲッター炉心搭載作業が始まってすぐのことである。

 

「橘博士、早乙女研究所は!?」

「来たか達人くん! 敵は地下道を使って侵攻をかけたようだ。早乙女からは籠城すると連絡が来ている」

「おそらく地上設備は捨てるつもりでしょう。研究所の地下設備は強固なので、しばらくは保つと思いますが……」

 

 それでも増援無しで立てこもれば、その内に守りを破られてしまうことは想像に難くない。

 最深部のシェルターにまで逃げ込めば相当な時間を稼げるのだが、その場合は地下設備も含めて早乙女研究所は壊滅となる。

 今後の戦いを考えてもそれは避けたいし、何より研究所は僕にとって自分の家にも等しい場所だ。

 

「博士、僕はゲッターゼロで出ます」

「うむ。哨戒任務中の茜たちも呼び戻して向かわせる。それまで無茶はするな」

 

 僕は橘博士の言葉に答えを返さず、ただ頭を下げてきびすを返した。

 竜馬たち三人は、ゲッターロボGの炉心搭載とその後の調整に立ち会うためにNISAR側の施設に行っているため不在。

 全工程終了までには、丸一日はかかる予定でどれだけ短縮しても救援には間に合わないだろう。

 

「達人さん」

「翔か。今日は休みのはずだろう?」

 

 管制室から出て通路を早足に進んでいると、後ろから追いついてきた翔に声をかけられた。

 彼女たちのゲッターロボは初陣を済ませたばかりで、その稼動データ収集のために大規模整備中だったはずだ。

 パイロットの面々も非番のはずで、実際に翔もごく簡素な飾り気のないブラウスにパンツスタイルの私服姿をしている。

 

「無茶は、しないで下さい」

「親子だな。さっき博士からも同じことを言われたよ」

「達人さんに何かあればミチルが悲しみます。……もちろん私も。どうか無事に」

 

 「帰ってきてください」とそう続けられた言葉に、僕は翔が何を思っているのかを察することができた。

 ずっと昔、僕が前世の記憶というやつを思い出すよりも前に出かけて、いまだ帰ってきていない橘家のもう一人の家族のこと。

 

「大丈夫。こう見えても鍛えてるんだ、鬼が相手でもそう簡単にはやられないさ」

 

 努めて自信を見せながら、僕はそう言って笑って見せた。

 翔もそれ以上は何も言わず、格納庫の入り口でペコリと小さく頭を下げて研究所の本棟に戻って行く。

 

「……すまない、翔」

 

 思わず口から謝罪の言葉が零れ落ちていた。

 翔が僕と重ねていた人の、幼い頃の僕にとっても兄のようだった人の、その行く末を知っていたから。

 時系列を考えればどうしようもないことだと分かりつつも、抱かざるをえない喪失感にふと"原作"の知識が恨めしくなる。

 

(とにかく今は早乙女研究所を守らないと)

 

 全てを守れるほどに僕の手は多くも長くもなく、目の前にある自分ができることを一つ一つこなして行くしかない。

 それを自分自身に言い聞かせながら僕はゲッターゼロのコクピットに乗り込み、早乙女研究所へ向けて機体を発進させるのだった。

 

 

 ……。

 

 

 北海道の北東部に位置にする橘研究所を飛び立ってから30分余り、ゲッターゼロは浅間山を望む見慣れた景色を上空から望んでいた。

 だがレーダーには百鬼メカを示す複数の赤点が表示され、早乙女研究所の特徴的なタワー型施設も倒壊して黒煙を上げている。

 やはりと言うべきか、研究所の地上の施設はその多くが破壊されていて、防衛線は地下まで引き下がって抵抗を続けている様子だ。

 

「早乙女研究所、聞こえるか! こちらゲッターゼロ、早乙女達人だ! 応答を頼む!」

 

 通信機に呼びかけるが、返ってくるのはノイズだけだった。

 一方で地上で破壊活動を行っていた百鬼メカはこちらを捕捉して、数機が迎撃のために上がってくる。

 機種は半月鬼。その名の通り半月型の胸部を持ち高い飛行能力を持つ白兵型の百鬼メカだ。

 

『百鬼ブラァァァイ!』

「邪魔だ!!」

 

 雄叫びを上げて接近してくる敵を、僕はゲッターゼロを急上昇させて回避すると即座に機体を降下させて背中に蹴りを見舞った。

 無防備な背後からの攻撃を受けた半月鬼の一体がバランスを崩して味方とぶつかり、双方ともにもつれ合うようにして地上に向かって落下していく。

 

「ゲッターマシンガン!」

 

 そうして一まとめになった敵に向かって片手のマシンガンの連射を打ち込んで破壊すると同時に、残った敵に向けてけん制射を放ち接近を防ぐ。

 落下していった二体の爆発を確認すると、僕は弾幕をくぐりぬけてきた半月鬼の胴体を銃剣で貫いた。

 飛行可能で高機動性能を持つ半月鬼だが、それと引き換えにするように他の百鬼メカに比して軽装甲で脆いという欠点がある。

 前日の戦闘でも北方から接近していた敵の主力であったため、水樹くんと隼人の手によって明らかになった情報だ。

 

「落ちろ!!」

 

 そうして串刺しにした半月鬼を、僕はそのまま残った敵に向かっての盾にして強引に押し込んで投げつけた。

 反射的に味方を受け止めてしまった残る一体の半月鬼を、至近距離からの弾丸が抱きかかえた機体と一緒に蜂の巣にする。

 

「こちら早乙女研究所、ゲッターゼロ、聞こえますか! 兄さん!」

「ミチル、無事だったか! 研究所の状況は?!」

 

 爆風を抜けて早乙女研究所に接近する中で、ようやく待ち望んでいた返信が通信機から届いた。

 発信元は地下のシェルター区画で、やはり相当に押し込まれているのだろう。

 

「お父様も、みんなも無事よ。今は通路に硬化剤を流し込んで足止めをしているわ。戦いは武蔵くんや竜二くんが頑張ってくれているけど……」

「ん、地上の百鬼メカか、よし何とか排除してみる」

「新型の百鬼メカも確認されているわ。兄さん、無理はしないで」

 

 誰も彼も似たようなことを言われる日だと苦笑しながら、僕はミチルに「了解」と返事をして機体の高度を落とした。

 近づくいてみると、早乙女研究所の地上施設が思った以上に破壊されていることがわかる。

 もっとも研究所側も無抵抗でやられた訳ではないようで、防衛用の砲台に潰された百鬼メカの残骸の数も多い。

 

「人の家を好き勝手してくれる!」

 

 僕は破壊活動を続ける一角鬼を上空から強襲してその背中を銃剣で刺し貫き、そのまま踏みつけて破壊してやる。

 その行動でこちらを発見したらしい敵、同じく一角鬼が角から発射したレーザーをゲッターウイングで弾くと接近して足払いをかけた。

 それによって倒れ込んだ敵に対して銃剣の一刺しを見舞い、コクピット部分を貫いて沈黙させる。

 

「……あれは、ミチルの言ってた新型か」

 

 地上に降下したゲッターゼロを、研究所の敷地を占拠していた百鬼メカが包囲する構えを見せ始める中で、一角鬼とは異なるシルエットを見つけた。

 特徴的な三つの頭をもったややアンバランスな人型で装甲とパワーのありそうな外見をしている。名前はとりあえず三頭鬼とでもしておこう。

 僕はまず様子見として正面からマシンガンを撃ち込んで見るが……。

 

「やっぱり硬いか」

 

 一角鬼の装甲を撃ち抜いたゲッターマシンガンの弾丸も、三頭鬼の正面装甲に対しては有効ではなく火花を散らすだけで終わる。

 こちらの攻撃を防いだ敵は両腕を振り上げて跳躍して襲い掛かる、が動作はさほど俊敏ではなく回避は容易だ。

 

「なら、こいつはどうだ!」

 

 僕は手近な場所に居た一角鬼の頭部を銃剣で破壊すると、残った胴体を三頭鬼に対して蹴りつけてやった。

 三頭鬼は一角鬼の残骸を軽々と受け止めて見せたが、そのタイミングで弾丸を見舞ってやる。

 すると動力炉を破壊された一角鬼が爆発を起こし、三頭鬼を大きく傾がせた。損傷は少ないが、それでも隙が生まれた。

 

「ゲッター、バヨネット!!」

 

 僕は叫ぶとともにゲッターゼロを宙返りさせ、三頭鬼の上を飛び越えると背後からその特徴的な三つ並んだ頭部の左右二つを貫いた。

 そして、そのままマシンガンの銃身を跳ね上げて首を飛ばすと、クルリと銃口を下に向けて接合部から無防備な胴体内部に銃弾をそそぎ込む。

 胴体内部を蹂躙された三頭鬼は、やがて機能を停止させると残った一つの頭を内部からの爆発で吹き飛ばしながら倒れ伏した。

 

「よし、次は……!? ぐっ!??」

 

 三頭鬼を撃破して次の敵へと向かおうとしたその瞬間、地面を突き破って巨大な影と衝撃がゲッターゼロに襲いかかった。

 その影はゲッターゼロよりも一回り以上も巨大で、四脚の足と肉食獣を髣髴とさせる頭部を備えた百鬼メカだ。

 その姿には、おぼろげだが覚えがある。

 たしか"原作"において高層ビルに偽装して都市部に潜伏していた機体だ。

 

「くっ、このっ!」

 

 巨大百鬼メカは、その巨体に接続された六本の節足動物のそれに似た腕でゲッターゼロを拘束していた。

 僕はどうにかそこから脱しようと試みるが、その大きさは見かけ倒しではなくゼロのパワーでは対抗できそうにない。

 六本の腕でギリギリと締め上げられるとともにフレームが軋み、装甲の一部がひしゃげて歪みだす。

 このままでは押しつぶされる!

 

『合わせ、風車っ!!』

 

 僕の背中を脂汗が伝ったその時、気合一声、縦一文字に刃が空を裂いて巨大百鬼メカの腕を切断すると地面へと突き刺さる。

 それは巨大なブーメラン状の武器であり、二本の曲刀を柄の部分で連結したものだった。

 そしてその剣の持ち主は……。

 

「達人さん、大丈夫ですか!?」

「水樹くんか! すまない、助かった!!」

 

 僕は後ろ蹴りの勢いでゼロを巨大百鬼メカの拘束から逃れさせると、降下して一角鬼を踏みつけて叩き潰したゲッター烈火に向けて礼を言った。

 機体のエラー表示を見る分にはまだ問題がないものの、あのままでは機体ごと潰されて死んでいただろう。

 

「新型の相手は私達に任せて下さい。達人さんは他の敵を!」

「すまない、頼む!」

 

 武器の制約もあり、ゲッターゼロのパワーでは巨大百鬼メカの相手は厳しいと判断して、僕は水樹くんの言葉に甘えることにした、

 すれ違うように位置を交代したゲッター烈火は、六本から四本へと減らした敵に向かって果敢に突進する。

 

「花乱舞!」

 

 敵の胴体に肩からの体当たり、そこから流れるようにサマーソルトキックを打ち込み、宙へと舞って頭部への踏みつけ。

 一連の格闘攻撃を受けた巨大百鬼メカは、衝撃に怯みながらも四脚ならではの安定性で体勢を崩すことなく両目から光線を放って反撃を行った。

 

「オープンゲット!」

 

 しかしゲッター烈火はオープンゲットによってこれを見事に回避してみせる。

 そしてバルカンでのけん制で巨大百鬼メカを撹乱した三機のゲットマシンは、地を這うように飛んで再び合体する。

 

「チェンジ、ゲッター紫電! 受けなさい、蛇旋光!」

 

 秋山くんの声と共に、ゲッター紫電のドリルから、渦を巻くように幾つものビームエネルギーの光弾が放たれる。

 球状のエネルギーは、連なって蛇のようになりながら巨大百鬼メカの脚部に向かって軌道を変えていく。

 誘導型ゲッタービーム『蛇旋光』は、巨体を支えている四本の脚を前に分裂・拡散してその基部を正確に撃ちぬいて破壊した。

 脚部を失い地響きを立てて倒れた巨大百鬼メカは、それでも頭部から光線攻撃で抵抗を続けているが既に死に体でしかなかった。

 

「余り見苦しいのは嫌いだわ」

 

 怜悧にそう放った秋山くんが、ゲッター紫電のドリルをその頭部に突き入れて回転させ巨大百鬼メカの胴体を半ばまで貫き通していく。

 ゲッターエネルギーをまとったドリルによって分割されるように穿孔された敵は、そのまま煙を吹き上げて動かなくなった。

 

「よし、百鬼メカはこれで壊滅させた。地下の敵をどうにかしないと……」

 

 ほぼ同時に、僕のほうも周囲の百鬼メカの排除も終わり研究所の地上部は解放された。

 問題は地下に避難した父さんや所員たちの救助だが、地上部を抑えてしまえば増援は防げる。あとはジワジワと押しつぶしていけばいい。

 そう考えながら百鬼兵の橋頭堡をゲッターゼロでなぎ払い、地下への道を確保した時だった。

 

「っ!? なんだ!?」

「達人さん! 周辺のゲッターエネルギーが急激に上昇しています!!」

 

 ゲッターのコクピット内部に鳴り響いた警告音とともに、水樹くんからの通信が入る。

 それを聞いて僕もゲッターゼロの計器を確認すると、確かにゲッター線の異常放射を示す数値が表示されていた。

 

「こちらミチル、聞こえますかゲッターゼロ!!」

「こちらゲッターゼロ、ミチル、何が起きている? このゲッター線の量は!?」

「ミチル、わしが代わる。達人、聞こえるか? 連中、動力炉を自爆させるつもりじゃ」

 

 父さんの言葉を聞いて、僕は自分の血の気が引くのが分かった。

 早乙女研究所のメインシャフトには、超大型のゲッター炉心が発電用として設置されている。

 これはゲッターロボに搭載されている物とは方向性こそ違うが膨大なエネルギーを産出しており、もちろん爆発すれば甚大な被害が生じるだろう。

 あくまで予想の範疇だが、最大限の出力で暴走が発生した場合の破壊力はシャインスパークに匹敵する……。

 

「わしらは最終シェルターまで避難する。あそこなら最大規模の爆発が起きても耐えられる。達人、お前達もできるだけ遠くまで避難するんじゃ!!」

 

 最終シェルターへの避難、それは早乙女研究所の地下設備も含めた施設の全壊を覚悟したことを示している。

 逃げ込めば、父さんの言う通りに動力炉の爆発にも耐えることができるだろう。

 だけどもそれはあくまで計算上であり、また爆発した動力炉が放出する膨大なゲッター線がどのような影響を及ぼすか分からない。

 脳裏をよぎるのは、"原作"で見た廃墟となった早乙女研究所。ゲッター線に飲み込まれて、誰もいなくなってしまった無人の廃墟。

 

「父さん、まだ手はあるはずだ」

「達人?」

 

 スッと脳裏が明瞭になるのを感じた。早乙女研究所の構造と、メイン動力炉の性能についての記憶が次々に思い出されてきた。

 場所はメインシャフト、ヒントとなるのは恐竜帝国の使った恐竜戦艦。

 

「動力炉のゲッターエネルギーに指向性を持たせて、メインシャフトを砲身にして宇宙に放出……これなら行けるはずだ」

「たしかにこれならば研究所周囲の被害は極限できるが、危険すぎる! 作業のためには直接動力炉に向かわねばならんぞ!!」

 

 父さんのお墨付きがもらえたことで、僕の意志は固まった。

 爆発寸前の動力炉、失敗すれば元より成功したとしても指向性を持った膨大なゲッター線……超弩級のゲッタービームが至近距離で発射される。

 

「大丈夫だ、父さん。メインシャフトにはゲッターゼロで降りられる。作業終了後にコクピットまで戻れれば問題ないさ」

「達人……無茶苦茶を言いおって。止めるつもりはなさそうじゃな」

「これで割と頑固者なんだよ。父親に似たんでさ」

 

 冗談めかした言葉を告げて、僕はシェルターとの通信を切断した。その間際に父さんが告げた言葉に目頭が熱くなる。

 頼むと。任せると。そう言って送り出してくれたことが、信頼が嬉しかった。

 

「秋山くん、頼みがある。今から指定する場所をドリルで掘削してゲッターが通れる程度の穴を開けて欲しい」

「話しは聞いていたわ。……位置情報受信、掘削開始する」

「達人さん、私達が代わりに行くわけには行かないの?」

 

 ドリルによってメインシャフト直上の鋼板と地面が破壊されて行く中で、水樹くんからの気遣わしげな通信が届いた。

 そう言ってくれる気持ちは嬉しいが、こればかりは彼女達に任せられない理由がある。

 動力炉の制御用端末にアクセスするにも、その後の操作を行うにも、研究者としての技能がいるからだ。

 それに……。

 

「これは僕の仕事だからね。少しばかり意地があるのさ。秋山くん、助かった。君達もできるだけ遠くへ避難してくれ!」

 

 そう言い残して、僕はゲッター紫電が空けてくれたメインシャフトへの侵入口にゲッターゼロを突入させた。

 そうして、シャフトに突入した僕を向かえたのはゲッター線の放つ緑色の輝きだ。最深部の動力炉の光が、既に上部まで届いている。

 徐々に徐々に強まる光を浴びながら、狭いシャフトの中にゲッターゼロを慎重に降下させて行った。

 

「見えた」

 

 最深部、鎮座する研究所の動力炉は煌々と出力を上げていて、緊急停止は間に合いそうにない。

 やはり当初のプラン通りに宇宙に向けてエネルギーを解放する必要があるだろう。

 僕はコンソールに近い位置にゲッターゼロを着地させると、パイロットスーツのヘルメットをフルフェイスの物に替えて外へと飛び出した。

 

「っぅ……これは、結構こたえるな」

 

 動力炉周辺は、超過運転によって放射される熱でサウナがマシな程度には気温が上昇していた。

 僕は体中から噴出す汗を感じながらもコンソールに取り付くと、ロック機構をIDで解除して数値の書き換えを始めた。

 作業自体はそれほど難しいものではなくすぐに終了する。後はタイマーをセットして……。

 

「まずった。限界まで思ったより短い。……ハハッ、生きて帰れるかな」

 

 僕は、乾いた笑いを漏らしながら最低限の時間を入力してすぐにプログラムをスタートさせ、自身はゲッターに向かって駆け出した。

 走る間にも動力炉内の気温は上昇し、さらにゲッター線の光も揺らめくように以上な様相を呈する。

 コクピットから垂らされた搭乗用のウインチまであと5m、4m、3m、そこまで来て背後でパキリと音が鳴るのが聞こえた。

 

 

 

 光の柱が天を撃ち貫く。膨大なゲッター線の奔流が渦を巻いて宇宙へと放出されていた。

 早乙女研究所は、メインシャフト周辺から大きな被害を受けているものの地下施設の崩壊は観測されていなかった。

 達人の作戦は成功したのだ。

 

「兄さん! 兄さん! 返事をして、兄さん!」

 

 シェルターではミチルが通信機に向けてまくし立てるが、雑音が返るばかりで返事はない。

 高熱で炙られ、蒸気を上げるメインシャフトの跡地に、避難していたゲッター烈火がゆっくりと降下していく。

 底部の動力炉は完全に機能を停止して灰色に冷えているが、周囲を見ればこの場所を膨大なゲッターエネルギーが襲ったことは想像できた。

 そして……。

 

「……ッ! こちらゲッター烈火、ゲッターゼロを発見!!」

 

 ゲッターゼロは、そこにいた。間近で放射された超弩級の威力を持つゲッタービームによって装甲は溶解し、一部はフレームをさらしている。

 まるで"コクピットを守るように"構えられた両腕は、ゲッター烈火がその場にたどり着くと煙を吹いて脱落した。

 茜はそこにゲッター烈火を慎重に近づけると、熱で歪んだコクピットハッチをゆっくりと引き剥がしていく。

 

「達人さん?」

 

 コクピットの中でグッタリとしたフルフェイスヘルメットのせいで顔色の見えない相手に、茜が呼びかける。

 反応は、ない。

 

「達人さん!」

 

 再び呼びかける。ピクリと、右腕が痙攣するように動いた。

 腕はゆっくりと上がって、ヘルメットを外して投げ捨てると再び脱力して投げ下ろされる。

 

「生きてるよ。なんとか」

 

 通信の繋がっていたシェルターから聞こえる歓声と、安堵の声、コクピットから飛び出してくる茜の姿を見ながら、達人は目を閉じる。

 彼は、『間に合わなかった』のだ。

 コクピットに飛び込むことは出来たが、ハッチを閉鎖するには何秒かの時間が足りなかった。

 そうして本来なら焼け死ぬところを救ったのは、ゲッターゼロだった。

 ゼロは操作をしていないはずなのに、勝手に両腕が動いて強引にコクピットハッチを閉鎖。そしてまるでそこを守るように身を固めてみせた。

 

(まだ、生きろってことか……)

 

 それがゲッター線の意志とやらなのか、それとも"ゲッターゼロ"自身の意志なのか、それは分からない。

 だがとりあえずは今までの戦いを共にした相棒に感謝の念を送って、達人は今度こそ意識を暗闇に落とすのだった。

 

 

 

 NEXT ファーストコンタクト




活動報告の方に、オリジナルメカについて走り書きを追加しました。
興味のある方はどうぞ。
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