ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編   作:Rakusai

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11.5.幕間:研究所の戦い

ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編

 第十一話・幕間:研究所の戦い

 

 

 百鬼帝国による早乙女研究所襲撃に対して、地上部施設の放棄は早い段階で決定されていた。

 これは迫る百鬼メカの軍勢に対抗可能なゲッターロボが不在であり、残るBT-23では複数の敵を相手に戦うことが困難と判断されたためだ。

 

「紙の資料は焼いとけ。機械類は撤収した後に発破かけんぞ!」

 

 警備班のリーダーである竜二は、その状況下において地下への避難を指揮するとともにバリケードの設置と迎撃の準備を整えていた。

 装甲服に身を包んだ警備班の面々はその指示を受け、恐竜帝国との決戦時につちかった経験を生かし即席ながら重厚な陣地を組み上げて行く。

 地下の重要区画につながる通路はメインとなる大通路を残して埋められ、残った唯一の道は百鬼帝国を待ち受ける殺し間へと姿を変えていった。

 

「おお、竜二、ここにおったか!」

「敷島博士!? 早乙女博士と一緒に奥に避難したんじゃなかったのか? なんでここに!」

「ばっかもん! ワシの作った可愛い武器たちの晴れ舞台の鉄火場じゃぞ! この目で見れんでどうすると言うんじゃ!」

 

 ケケケと笑う敷島博士に、竜二は頭痛をこらえながら「知るかよ」と小声でぼやいた。

 博士の背後からは、見た目は普通の物から見るからにゲテモノまで大量の兵器がリモコンカートで持ち込まれており、さながら軍事博覧会だ。

 

「ハァ……とりあえず使い方を教えてくれや。使えるもんは使わねえとな」

「ひょひょひょ、まかしとけぃ。ホントは上の方に据えつけてある砲台の様子も見てきたかったんじゃがな」

 

 「仕方ないから無人制御にしてきたわい」と博士が口にするや地上部から轟音が鳴り響き、さらにそれを連続した砲撃音が上書きしていった。

 竜二たちの現在位置は地下深くというほどではないにせよ、それなりの厚さの天井と隔壁越しの爆音に老人一人を除いて頬を引きつらせる。

 

「うむ、この音はクラスター砲じゃな。拡散する高性能爆弾を連続で撃ちだすイカしたヤツじゃ」

 

 竜二が陣地に据えられていた外の様子を映し出すためのモニターを覗くと、列を成して押し寄せていた百鬼メカが粉々になっていく場面だった。

 ついでに放棄したとはいえ早乙女研究所の施設の一部や背後の森林に丘陵が穴だらけになっている。

 もっともそれで怒られるのは敷島博士なので、竜二はとりあえず敵が減るならいいやと思って諦めた。

 

「竜二くん、今のは何の音!?」

 

 そう言って慌てた様子で顔を出したのは、大通路の中央に陣取らせたBTに乗った渓だった。

 竜二は首を左右に振ってから、傍らでカメラ越しに外の様子を見て奇声・歓声を上げている敷島博士を指差してやる。

 それで全てを察したのか、渓もまた疲れた表情になってため息を一つついた。

 

「うん、把握」

「うっす。姐さんの方の準備はどうっすか?」

「姐さんはやめてってば。BTの調子は良好よ。追加装甲も貼り付けたから、重火器相手の盾にしてね」

 

 その言葉通り、球状、あるいは饅頭のようなBTには追加で装甲が施されていた。

 元となったのはゲッターゼロが沖縄で使用した特殊鋼製のシールドであり、それを切り出してくくりつけた形だ。

 重量が増したために機動性は下がったが、百鬼メカが侵入できない場所での防衛となればさほど問題はない。

 

「渓ちゃーん、武蔵さんが応援にきたぜー。それと竜二、ついでに使えそうなもんは持てるだけ持ってきてやったぜ」

 

 浮ついた声と共に武蔵が、通路の奥からバリケードの素材に使えそうな物を抱えてノシノシと歩いてきた。

 そうやって持ち込まれた滑車付きの荷台に乗せられた鋼板などは、警備班の面々が適切な位置に据え付けていく。

 

「む、カメラがやられたぞい。地上はもうダメじゃな」

 

 そうしている内に、敷島博士がつまらなそうな表情でそう言って覗き込んでいた監視装置から離れた。

 博士はいたって軽い調子だったが、その言葉によって警備班の緊張は高まりBTもハッチを閉めて敵襲に備える。

 果たして、間もなく通路の先から爆発音とともに複数の足音が鳴り響いた。

 

 

『百鬼、ブラァァァイ!』

 

 

 大帝を称える雄叫びを上げながら飛び込んできた百鬼兵を出迎えたのは、銃弾のシャワーだ。

 並の人間に比べて頑強な鬼であったため、撃たれたとしてもしばらくは前進を続ける者もいたが、それもさらに弾丸を浴びせられると動かなくなる。

 据え付け式の重機関銃やBTの配備された大型機関砲に至っては言うまでもなく、鬼が相手でもその威力を存分に発揮して血煙を量産していた。

 

「レーダーに反応!」

 

 BTの外部スピーカーから渓の声が響き、通路の先からキャタピラの音とともに百鬼帝国の小型戦車が顔を出した。

 サイズを見れば百鬼メカには及ばないまでも、その防御力は歩兵用の小銃などでは歯が立たない。

 そこで竜二は、即座に対装甲用のロケットランチャーを持った班員に攻撃の指示を出そうとした。

 

「よし武蔵、撃てぇい!」

「任せろぉい!」

 

 出そうとした。

 ……のだが、敷島博士の合図とともに武蔵の手で放たれた拳銃のようなナニカによって、敵戦車は正面装甲を貫通されて爆発してしまった。

 戦車の周囲を固めていた百鬼兵も爆発に巻き込まれて吹き飛び、そこに半ば反射的に叩き込まれた警備班の銃撃を受けて動かなくなる。

 竜二はぎこちない動きで後ろを振り返り、銃身から吹き上がる煙を格好つけて吹き消している武蔵と、その後ろで爆笑している敷島博士を見た。

 

「どうじゃ! 特製ハンドミサイルガンの威力はぁ!」

「いきなり爆発物を撃つんじゃねえ! 言えよ、使う前に!!」

 

 トンデモ兵器の威力については諦めつつも、とりあえずいきなり使われて隙を作る危険を避けるために竜二は叫んだ。

 しかしそんな叫びの効果も虚しく、警備班の面々はこの後もたびたび敷島ウエポンの驚異に心臓を跳ね上げる羽目になるのだった。

 

 

 

 鬼が来る。鬼が死ぬ。鬼が来る。鬼が死ぬ。鬼が来る。鬼が死ぬ。

 時おり混じる装甲車両や特異な改造が施された百鬼兵も、銃砲の前に等しくその命を散らしていった。

 いまのところ早乙女研究所側に損害らしい損害はなく、幾つかのトラップと弾薬の損耗だけで切り抜けることができていた。

 

「くそ、切りがねえ」

 

 だがそれでも絶え間ない敵の襲撃にさらされることで、疲労がジリジリと味方の戦力を削いでいく。

 地上への逆侵攻は百鬼メカの存在によって妨げられており、いつ終わるとも知れない守勢は肉体だけでなく精神にも消耗を強いていた。

 そしてついに誰か、ではなく全員の集中力に隙間が出来たその一瞬を突かれる事態が発生してしまう。

 

『キシャァ!!』

 

 小柄で手足の長い奇怪な形状の百鬼兵が、天井に張り付き跳躍することでバリケードを突破してしまったのだ。

 幸いにも銃器の類を所持していなかったために被害はでなかったが、これまで破られなかった防備を抜かれたことで警備班の面々が動揺する。

 

「ひょ?」

「しまった! 敷島博士!?」

 

 そしてその動揺の合間にも、百鬼兵はその長い手足で敷島博士の皺だらけの首を捉えてしまった。

 この場に似つかわしくない老人を、重要人物と見取っての行動だろう。

 百鬼兵は、人質であることを示すようにしてニタニタと笑いながら、敷島博士の首に鋭い爪を突きつけて見せた。

 

「竜二ぃ、何しとるか、撃て、撃たんか!! ワシごと撃つんじゃ!」

「な、なに言ってんだ博士ぇ!?」

 

 敷島博士の言葉に竜二の上ずった声が重なるが、コレは別に我が身を犠牲にしようとする博士の言葉に心動かされたわけではない。

 恍惚とした表情で自分を撃てと言って笑うその姿が、極め付けに気持ち悪かったのである。

 

「ワシゃあ自分が作った武器で惨たらしく死ぬのが夢なんじゃぁ! ほらなにしとる、お前の持っておる銃なら骨も脳みそもグチャグチャじゃあ!!」

 

 そう言ってグヒョヒョと笑う敷島博士に、竜二は一瞬だが本当に撃った方がいいんじゃないかと思ってしまった。

 余りと言えば余りの姿に捕まえている百鬼兵ですらビクリと肩を揺らしたほどだから、その慄然たる雰囲気たるやお察し願いたい。

 

「ふんぬー!!」

「あっ」

 

 そして抱えていた不気味な老人に意識を取られた百鬼兵は、後ろから近づいてきた武蔵の手によって首をゴキリと回されて息絶えた。

 拘束から解放された敷島博士は、派手にしりもちをついて悲鳴を上げる。

 

「いやー、敷島の爺さんも演技派だよなあ。おいら思わず本気かと思っちまったぜ」

「なに言っとるんじゃ、ワシは本気で……」

「そうだなー、いやー、博士が無事でよかったよかった!」

 

 何とも言えない奇妙な雰囲気の中で、まったく感情のこもってない声で言う武蔵に竜二が追従する。

 敷島博士は自分の本気ぶりを訴えかけようと口を開こうとしたが、その場に居た面々が戦闘に戻るとそっぽを向いて座り込んでしまった

 こうしていったんは窮地を脱したものの、やはり疲労の蓄積は大きく徐々に負傷も増えだし一部には重傷を負って搬送される者も出てきた。

 

「ちっ、この場所はここまでだな。こちら竜二、シェルター聞こえるか? 防衛ラインを下げる」

「こちらシェルター、ミチルです。了解。さっき橘研究所からゲッターゼロが出撃したと連絡があったわ。もう少しだけ耐えて!」

 

 シェルターに設置された司令室に連絡を入れて、竜二は警備班の面々に撤収の準備を命じた。

 撤退用に設置されていた爆薬が起動され、敵の進出を一時的に押し止めるとともに各々が荷物を抱えて後方へと駆け出して行く。

 

「姐さん、しんがりを頼んます!」

「了解。みんな、気をつけてね! それと姐さんは止めてってばぁ!」

 

 そう言いながらも、渓はこれまでは固定砲台だったBTを急速前進させて敵兵を吹き飛ばしていく。

 竜二はまだ座り込んでいた敷島博士を担ぎ上げると、入れられるだけの物資を入れた輸送用カートを引っ張る武蔵とともに撤退を始める。

 肩の上では敷島博士が「最近の若いのは」とブチブチと文句を垂れていたが、気にしている余裕はなかった。

 

「こちら竜二、後退完了!」

 

 携帯通信機に叫ぶように言うと、前線に突入していたBTが脚部を折りたたんで機関砲を撃ちながら急速後退してきた。

 そして百鬼兵の軍勢が雪崩れ込むと同時に、防衛陣地だった場所の周辺が爆音とともに吹き飛んだ。

 BTが通り抜けた後には隔壁が下ろされて道を塞ぎ、そこでようやく戦闘を乗り切った警備班の面々は腰を下ろして休憩に入った。

 

「ふうー。これで時間が稼げるな。敷島博士、いつまでもいじけてないでくださいよ」

「ふんっ! まあええわい、死ぬのは次の機会まで延期にしてやるわ」

 

 竜二の肩から下りた敷島博士は、そう言うとズカズカと歩いてシェルターのある奥に向かって去って行ってしまった。

 厄介なご老人の退席によって、一同は文字通り肩の荷が下りたような気分になる。

 

「そんで、これからどうするよ。なんなら、おいらがBTかコマンドマシンで外の敵をやっつけちゃるぜ?」

「達人さんのゲッターゼロが向かってるんだから、そんな無茶する必要もねえよ。それにその二機じゃ、袋叩きにされるだけだろ」

「まあそうだよなあ。あーあ、おいらのゲッター3があればよぉ」

 

 ふんすと鼻を鳴らしての言葉を竜二に首を振って否定された武蔵は、ガックリと肩を落としてしまった。

 オリジナルのゲッターロボは今回の襲撃に際して修理が間に合っておらず、完全に封鎖された地下整備場に運び込まれている。

 そのため地下施設が完全に壊滅とでもならなければ無事であろうが、今すぐに直せるものでもなく戦力としては数えられなかった。

 

「ん?」

「おう、どうしたい竜二……おい、何か揺れてねえか?!」

 

 ふとした違和感に竜二が周辺を見回していると、それの様子を気にした武蔵もハッとして周囲を見回した。

 他の面々もそう言われて視線をさまよわせ、たしかに細かな振動が部屋全体を襲っていることに気が付く。

 

「こちらシェルター、ミチルよ! 竜二くん聞こえる?!」

「ミチルさん! 何が起きてるんです!?」

「百鬼帝国は地下への入り口を無理矢理作る気よ! 早くそこから退避して! 百鬼メカが来るわ!」

 

 ミチルの通信が終わるかどうかの一瞬に、隔壁が存在していた場所を巨大な金属の杭にも見える何かが打ち貫いた。

 やがて突き刺さっていたその金属が瓦礫を撒き散らしながら引き上げられ、天井のあった場所からは空が垣間見える。

 そして見上げた先に存在したの、は巨大な獣の頭部と節足動物のものに似た手足をもつ巨大な百鬼メカの姿。

 

「撤収! 急げ!」

 

 絶叫にも似た竜二の声とともに、その場に居た人間は奥に向かって脱兎のごとく駆け出していった。

 開口部に腕を差し込んで強引に穴を広げようとする百鬼メカが撒き散らす瓦礫を、最後尾のBTが受け止める。

 両腕の機関砲を連射して抵抗を試みもしたが、砲弾は厚い装甲に阻まれて通用していなかった。

 

「きゃっ!?」

 

 逆に百鬼メカの頭部から放たれた光線による反撃がBTを捉えるものの、こちらも幸いにして追加装甲に阻まれて被害はない。

 すると敵は再び六本の腕の一つを振り上げて叩き落とし、それによってBTを破壊しようと試みた。

 

「姐さん! 無茶だ! 早く後退を!!」

「っぅ……」

 

 悔しげな声を噛み殺しながら、渓はBTを後退させて大通路の最奥部、シェルター区画の入り口を塞ぐようにして停止させた。

 百鬼メカが開けた穴からは、その間にも百鬼兵が次々と降りてきている。

 竜二たちは、ハッチを開いて脱出した渓を迎えると隔壁が封鎖して時間を稼ぎにかかった。

 

「竜二だ。脱出には成功したが、防御用の物資は全滅。BTも放棄した」

「こちらミチル、みんな無事でよかった。とにかく奥へ避難して。避難が済み次第、通路に硬化液を流し込んで封鎖するわ」

「了解。……くそ」

 

 通信を切ってから、竜二は奥歯を強く噛みしめた。

 負傷者を支えながらシェルター区画への道を移動する面々の表情にも、無力感がにじみ出している。

 避難完了と同時に通路内に硬化液が注入されて敵の侵入を防ぐが、それも先程のような攻撃を受ければどこまで保つか分からない。

 士気が落ち込んで座り込む者も出る中で、再び竜二の通信機に着信があった。

 

「竜二くん、聞こえる? 兄さんが、ゲッターゼロが来てくれたわ!」

 

 通信機からもれる声に、皆の顔が上がっていた。

 ゲッターロボの到着を耳にして、下がりきっていた警備班の士気は僅かなりとも回復を見せる。

 

「ゲッターが来たなら鬼どもの百鬼メカだって敵じゃねえ! おいらたちも座ってる場合じゃねえぞ!」

 

 そのタイミングを見て、武蔵の声が響いて発破をかける。

 座り込んでいた面々が誰からともなく立ち上がって、前を向いて防衛のための作業に取り掛かっていく。

 

「よっし、やるぞお前ら! 俺たちの家を守るんだ!」

 

 たぶんに空元気を含みながらも、にやりと笑って見せた竜二につられて警備班のメンバーも歯を見せて笑った。

 ヒデェ顔だと、竜二は思う。どいつもこいつも悪党面で、なんとも不敵に笑っている。

 そしてそれは竜二自身にも言えることだ。きっと鏡を見れば、従兄弟と同じようにひどく悪い笑みを浮かべているだろう。

 

(そうだ。この場所を守る! 隼人や、他の誰がどうとかじゃねえ、俺自身が守りたいからだっ!)

 

 襲い来る百鬼兵に銃を向けながら、竜二は自分にとって唯一の居場所だった学び舎の思い出を振り切った。

 

(隼人よ。俺は、ようやくお前の校舎から卒業できたのかもしれねえ……)

 

 ……。

 

 早乙女研究所を巡る戦いはゲッター斬の来援と地上の百鬼メカの一掃をもって終結した。

 研究所の動力炉が暴走させられるという事態が発生したものの、エネルギーを宇宙に指向することで被害を極限することに成功。

 竜二たちは、若干名の重傷者を出しながらも最後まで敵の侵入を許さずに地下の重要設備と研究所のスタッフを守りきった。

 そしてこの後、早乙女研究所は復興とともに反撃の準備を整えていくこととなる。

 

 

 

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