ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編   作:Rakusai

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4.バット将軍の挑戦・前

 恐竜帝国の地上侵攻に置いて、その標的の中心となっているのは日本である。

 日本を除く各国に対しても攻撃は行われているが、それは沿岸部への襲撃や通商破壊等の限定的な物に終始していた。

 これはハチュウ人類にとって天敵であるゲッター線及びそれによって稼動するゲッターロボの存在を重要視していると言うのが大方の予想だ。

 日本以外の国々でも戦闘用ロボットの実用化は進んでいるが、その動力はプラズマエネルギー反応炉でありゲッター炉心の導入は進んで居ない。

 たとえば同盟国であるアメリカへは技術供与も行われていたが、運用ノウハウと専門技術者の不足から本格的な導入は見送られている。

 実は大学在学中に一年と少しの間、僕はアメリカへ留学をしていた事があるのだが……これについては今後に語ることもあるだろう。

 

「だから、より高出力の炉心が必要じゃと言っとろうが!」

「無茶苦茶を言わないで下さいよ博士! そんなのポンと作れるわきゃあないでしょ!?」

 

 さて、そんなゲッター線関連技術研究の最前線の最先端である早乙女研究所の格納庫。

 そこで声を荒げて僕に食って掛かるように詰め寄ってくるのは、白衣をまとい顔に大きな古傷の残る小柄な老人。

 この人こそ我が研究所が誇るマッドサイエンティスト第二号(一号は父さん)、ゲッター線応用兵器開発のパイオニアである敷島博士だ。

 

「このゲッタービームランチャーが完成すれば、恐竜帝国なぞ一網打尽なんじゃぞ!?」

「それは分かりますけどね、ゲッターロボに乗せるサイズの半分で出力は落とすなとか言われても困ります!」

「ええい、早乙女の息子なら何とかせんかい! 親父の方は新型に夢中で話しも聞きやせん!!」

 

 ゲッタービームランチャー。敷島博士が手の平でバンバンと叩いている巨大な金属製構造物がそれだ。

 その名の通りにゲッタービームを撃ち出すための大砲で、ゲッターロボが両手で保持してちょうどいいサイズのライフル型をしている。

 問題点は敷島博士の言う通り、砲に内蔵するゲッター炉心の出力不足。

 これを解消するには量産型ゲッターロボに使われていた炉心と同程度の出力を、半分強のサイズで実現しなくてはならない。

 正直言って、今すぐに実現するにはハードルが高すぎる案件だ。

 

「うぉーっす、達人さん。飯持ってきたぜ」

「あ、ああ、武蔵。悪いね出前の真似事させちゃって。ふぅ……敷島博士、みんなも飯にしよう」

 

 格納庫のドアが開き、武蔵が岡持で定食を持ってきたことで、敷島博士も不承不承と言った様子でテーブルの上を片付けはじめた。

 どんな時でも腹がへったら飯を食うのは、早乙女研究所の職員にとって重要な決まり事なのだ。

 

「んあ? なあ達人さん、あそこの時計電池切れてないか?」

「あ、本当だ。後で換えておかないと」

 

 持ってきた食事をテーブルの上に置き終わると、武蔵はそう言って部屋の隅に置かれていた置時計を指差した。

 その言葉通り秒針は完全に止まっていて、かなり前に電池が切れたらしいことが見て取れる。

 

「面倒くさいよなあ、電池交換って。コンセントなら刺しっぱなしでいいのによ」

 

 そして、本人は何の気なしにポロリと口に出しただろうその言葉に、部屋に居た研究者全員が硬直した。

 僕もまた、無言のまま敷島博士に視線を向ける。

 

「行けますか?」

「行けるじゃろ」

 

 互いに頷きあって、目の前の食事をかき込むように胃袋の中に収めると、研究スタッフたちがバタバタと慌しく端末や書類に向かい始める。

 ものすごい勢いで食事を平らげる様子に目を白黒させていた武蔵の背中を、僕はトンと叩いてやる。

 

「ありがとう、武蔵。こんど何か奢るよ」

「へ?」

 

 首を傾げてポカンとする彼を後目に、僕もまた自分の仕事に取り掛かるのだった。

 

 

ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編

 第四話:バット将軍の挑戦・前

 

 

 恐竜帝国の軍勢、日本列島へ侵攻す。

 

 この報告が研究所にもたらされたのは、沖縄の事件からしばしの時が経過した日のことだった。

 日本近海、小笠原諸島沖に出現したメカザウルスの大群は、迎撃に出た海自空自の足止めを受けつつも伊豆半島の東に上陸した。

 首都東京をうかがう姿勢を見せつつも侵攻を停止した恐竜帝国に対し、自衛隊及び在日米軍はミサイル攻撃を継続しつつも防衛線を構築。

 一方で、要請を受け厚木基地にまで進出していたゲッターチームを主力にした攻撃が決定された。

 

「飛行可能な竜馬たちのゲッターと、僕のゼロが先行。弁慶のゲッター3と南風くんのBTは撃ち漏らしの掃除と竜二くんのトレーラーの護衛だ」

「兄さん、私は?」

「コマンドマシンは、先行組に追従しつつ索敵と通信補助を頼む」

 

 各員からの了解の返答を受け取ると、僕はゲッターゼロのフットペダルを蹴り上げてゲッターウイングを展開する。

 前方では、既に竜馬たちの乗るゲットマシンが3機、編隊を組んで飛び立っていた。

 

「よし、ゲッターゼロ、出撃」

 

 白いゲッターウイングを翻し高度を上げると、白い雲に混じって黒煙が散り、気の早い三人組みが敵の先鋒と砲火を交えているのが見えた。

 飛行型の小型メカザウルスは戦闘力こそ大したことは無いが数が多く、ゲットマシンの動きからはわずらわしさが見て取れる。

 

「各機散開!」

 

 通信機に呼びかけると、弾けるように竜馬たちのゲットマシンが急激な軌道で散開する。

 そして僕は、敵だけが居残った空間に向けてゲッターゼロの両手で抱えていた"それ"の砲門を突きつけた。

 

「ゲッター、ヘビーマシンガン!」

 

 機体越しにも感じられるような腹に響く重低音を響かせながら、巨大な回転砲身とそこに開いた四つの砲門が唸りを上げる。

 吐き出された弾丸は直撃した飛行型メカザウルスを容易く粉々に砕き、あるいは至近距離で爆発を起こしてズタズタに引き裂いていく。

 もちろん敵も回避軌道をとるが、この武器の真骨頂の前には無駄な抵抗だった。

 『空中で軌道を変えた』弾丸が逃げようとしたメカザウルスに追いすがり、その背中を穿ったからだ。

 ゲッターヘビーマシンガン。敷島博士謹製のこの武器の通称を、ミサイルマシンガンとも言う。

 

「ひゅう、ご機嫌な武器だな達人さん。あとで貸してくれよ」

「ダメ。竜馬に渡すと撃ちまくるだろ。弾が高いんだよ、これ」

 

 楽しそうなおもちゃを見つけたような竜馬の声に、僕はカラッポになったドラム型の弾倉を交換しながら応じた。

 このミサイルマシンガン、見ての通り制圧能力は恐ろしく高いのだがその分だけ弾保ちが最悪に近いのだ。

 

「ミチル、敵の状況は……」

 

 そうして露払いを済ませ、機体をさらに前進させながら後方のコマンドマシンに連絡を入れようとした時だった。

 操縦席の通信用ディスプレイにノイズが走り、映像と音声が出力されてきたのだ。

 

《聞こえているかね、ゲッターチームの諸君。私はバット、恐竜帝国地上侵攻軍のバット将軍である》

 

 画面に現れたのは、いつかの宣戦布告でゴール帝王の隣に立っていた翼竜に似た頭部を持つハチュウ人類の男だった。

 バット将軍。その姿は"原作"の知識におけるものとおおよそ一致している。

 

《この通信は私からの挑戦状である。我々の位置は既に明らかであろう? 私は、ここで万全を期して諸君を迎え撃とう》

 

 そう言いながら、画面の向こうの将軍はどこか大仰な仕草でマントを翻してみせた。

 外見の個体差の大きいハチュウ人類の中では我々の姿に似たその表情からは、強い自負が通信越しにも感じ取れる。

 

「へっ、面白ぇ……トカゲ野郎どもにも、ちったあ骨のありそうな奴が居るじゃねえか」

 

 通信に、喜悦を含んだ好戦的な竜馬の声が入り混じる。画像は出て居ないが、どうせ歯をむき出しにして悪い顔で笑っているのだろう。

 眼下遠くには多数のメカザウルスの影と、恐らくは砲台だろう構造物の姿が見て取れた。

 バット将軍の言に偽りはなく、彼等は上陸してから準備を重ねていたのだろう。ゲッターロボを待ち受けるために……。

 

《来るがいいゲッターロボ。このバット、そして恐竜帝国の精兵たちが貴様らに引導を渡してくれようぞ!》

 

 通信が切れると同時に、三機のゲットマシンがブースターを吹かして突撃を開始した。

 まったくいやになるほど息が合ったフォーメーションで、敵地に向かって最高速だ。

 

「竜馬、あまり食い過ぎると遅れてくる弁慶たちに悪いぞ!」

「そんときゃあ、謝っといてくれよ達人さん! いくぞ隼人、武蔵!! チェェェンジゲッタァァァァワン!!」

 

 どうせ止めても無駄なので発破をかけながら、合体して上昇するゲッター1とは分かれる形で僕はゼロを下降させた。

 そして地面を舐めるように低空を飛び、土ぼこりを上げながら前方で戦列を成したメカザウルスに向かってミサイルマシンガンを一斉射する。

 敵砲台からの応射を回るような軌道で回避してさらに一斉射。そこで弾丸が底を突く。

 

「チェェェェンジゲッター、ツー!」

 

 と、同時に上空から落ちてきた三つの影が一つに重なり、ミサイルの嵐で足並みを乱されたメカザウルスの群れの中で人型をとった。

 一緒に落ちてくるメカザウルスの残骸をみれば、空の上で竜馬が散々暴れたのがよく分かる。

 

「ドリルストーム! ゲッタービジョン!」

 

 声とともに敵中で嵐のような衝撃波が走り、次いで白と赤の残像がその周辺を駆け巡った。

 メカザウルスたちは吹き飛ばされ、あるいは迎撃のために発した攻撃で味方を傷つけ、隙を突かれてドリルによって風穴を開けられる。

 恐竜帝国の前衛は大混乱に陥り、そしてその合間にゼロは弾薬の交換を終えていた。

 

「オープン、ゲット!」

 

 こちらからの合図も要らず、ゲッター2がゲットマシンに分離して空に舞う。

 代わりに降りそそぐのは再びのミサイルの雨。重装甲型の敵が前に立ってこれを受け止めるが、再びの弾切れまでに敵の数は半減していた。

 上空では、ゲッター1に変形した竜馬たちが飛行型のメカザウルスと交戦している。

 流石に再度の弾薬交換は難しく、僕はミサイルマシンガンをゲッターゼロの肩部ハードポイントにマウントした。

 

「ゲッター、キャノン!」

 

 そして迫りくる敵を、後方から降りそそいだ砲弾がなぎ倒していく。

 コマンドマシンの観測による、量産型ゲッター3の肩に搭載されたキャノン砲による遠距離砲撃だ。

 

「よし、後続部隊はそのまま支援を継続してくれ! 竜馬、突っ込むぞ!」

「あいよっ! おい弁慶、味方に当てんじゃねえぞ!」

「任せといてください!」

 

 弁慶の頼もしい返事とともに、空中型の大型メカザウルスを全てなぎ倒したゲッター1がトマホークを両手に構えて敵中に踊りこんでいく。

 小型の飛行型メカザウルスはまだ残っているが、これは南風くんBTや竜二くんの歩兵隊が持つミサイルランチャーで対処可能だ。

 ミチルのコマンドマシンも、余裕を見てバルカンで翼竜型のそれを叩き落している。

 

「ゲッターマシンガン!」

 

 そして僕も、ゲッターゼロの腰にマウントしていた二挺の銃を引き抜きながら竜馬の後に続いた。

 ゼロが手にしているのは、ゲッターロボの"原作"の一つ『世界最後の日』においてゲッター1が使用していた大型機関砲だ。

 ミサイルマシンガンに比べると地味ではあるが、雨のような大口径弾はメカザウルスの装甲を引き裂くに十分な威力がある。

 

《GIYAAAAAA!》

「おっと」

 

 とは言え、重装甲型のメカザウルスの中には弾丸の雨を抜けてこちらに接近してくるものもいる。

 が、僕は慌てずそれに向かってゲッターマシンガンの銃身を一閃。

 

「ゲッターバヨネット、ってところかな」

 

 ゲッタートマホークと同様の素材で出来た肉厚の銃剣が、首長竜に似た相手の頭部を打ち砕く。

 

「大雪山おろしぃ! こんにゃろぉぅ!」

 

 血しぶきの向こう側では、武蔵のゲッター3がいま首を飛ばした相手と同じ重量級を軽々と投げ飛ばし、さらに体当たりで敵の陣地を粉砕している。

 ミサイル陣地だっただろう恐竜帝国の防御設備が、大爆発を起こして敵歩兵ごと燃えていった。

 

「オープンゲット!」

 

 武蔵は陣地の奥から押し寄せる敵増援に囲まれる前に分離、空中へと退避、そしてそこに集まった敵を弁慶の砲撃が耕していく。

 戦端が開かれてから僅かな時間で、前衛を務める2機のゲッターロボは恐竜帝国の防御陣地の半分程度に食い込んでいた。

 

「見えたぜ大将首。……しかし、なんだありゃあ、クラゲか?」

 

 そんな竜馬の言葉とともに上空から送られてきた映像は、なるほどクラゲかそうでなければ半透明のタコのような姿をした敵だった。

 僕は、周囲の敵にマシンガンを叩き込みながら目にしたその姿に、僅かな違和感を感じる。

 

《我が陣をこうも容易く食い破るとは、ゲッターロボ恐るべき力よ。そして、貴様らももはやただの猿に非ずと言うことか……》

「へっ、何なら白旗でもあげてみるかい? バット将軍さんよ」

《ふ、戯言を。帝王ゴールより使命を受けしこのバット、そして帝国の技術を結集したメカザウルス・ゲラの前に、ゲッターロボは敗れ去るのだ!》

 

 再びの通信に対して挑発的な言動をとる竜馬に、しかしバット将軍は余裕のある面持ちを崩さなかった。

 自らの登場するクラゲ型メカザウルス、ゲラと言うらしいそれに対しての絶対の自信を語る言葉。違和感がさらに強くなった。

 恐らくはゲラが"原作"にも登場していた故のものなのだろうが、その正体は判然としない。

 

「そうだよな、そうこなくっちゃ面白くねえ! 行くぜ! チェンジゲッター!」

 

 もはや遠い記憶に思考を向ける間もなく、気合一声、合体し上空から急降下したゲッター1がトマホークを振りかざしてゲラを強襲するのだった。

 

 

 NEXT バット将軍の挑戦・後

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