ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編   作:Rakusai

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6.帝王出陣

「そうか、バットが逝ったか」

 

 薄暗い空間をオレンジ色の明かりが照らす石造りの玉座の間で、帝王ゴールは瞑目して手にした杯を掲げた。

 それから亡きバット将軍を悼むようにゆっくりと中身を飲み干していく。

 

「ガレリィ」

 

 名を呼べば、恐竜帝国の科学者である小柄な老人が頭を垂れて口を開いた。

 

「メカザウルス軍団へのゲッター線対抗処置、完了してございます。後は、帝王陛下の号令を待つばかり」

「うむ……バットが稼ぎ出した時間、ゲッターロボの戦闘不能、この機を逃すつもりはない」

 

 玉座から立ち上がったゴールは、その巨体を悠然と進ませ玉座の間に集った臣下たちを睥睨する。

 

「マシーンランドを浮上させよ! 今こそ空と大地を我が手に! 恐竜帝国軍、全軍出撃っ!」

 

 ゴールの声とともに、杯が床にたたきつけられて砕け散る。

 そして、その音を掻き消すようにハチュウ人類たちの歓声が、恐竜帝国本拠地要塞『マシーンランド』に満ち溢れていった。

 

 

ゲッターロボ大決戦! 早乙女達人編

 第六話:帝王出陣

 

 

 水上を行くメカザウルスの巨体が水面をゆらし、空には黒雲のように飛行型メカザウルスの群れがひしめいていた。

 早乙女研究所で両腕の修理を終えたゲッターゼロを飛ばし、僕は既に戦端の開かれている太平洋上空へと急ぐ。

 

「各機、接近戦は避けろ! ミサイルを撃ったら後退だ! ディアボロ1、FOX2!」

 

 空自の戦闘機隊が懸架していたミサイルを発射して旋回し、後退にかかる。

 切り離されたミサイルは高速で飛翔し、空中のメカザウルスに命中するも爆発に巻き込まれた小型種を除くと損害は大きくないように見えた。

 自衛隊の装備は対メカザウルスを見越してゲッターミサイルになっているのだが、これは恐竜帝国もゲッター線への対抗策を得たと見るべきだろう。

 

「自衛隊の戦闘機、聞こえますか? こちらは早乙女研究所所属のゲッターゼロ、後退を援護します」

「ゲッターロボか! 助かる! 伊豆のほうで手ひどくやられたときいたが、無事のようだな」

 

 僕は自衛隊機に通信を入れながら、戦闘機を追撃する飛行型メカザウルスに向かってゲッターマシンガンを掃射した。

 

「コンテナミサイル、発射!」

 

 そしてさらに、背中に背負った"そいつ"の発射スイッチを押し込む。

 外見は名前どおりの巨大なコンテナであり、高推力のブースターで無理やり飛ばしている姿は不恰好ですらあった。

 しかしゲッターロボの装甲板を貼り付けたそいつは中々に頑丈であり、十分に速度を乗せると迎撃をものともせず敵中に突っ込んでいく。

 

 そして爆発の花が咲いた。

 

 一定数の敵を範囲内に捕捉したコンテナミサイルはその外装を吹き飛ばし、内部に満載された小型ミサイルを花火のようにぶちまけたのだ。

 小型の敵を中心にして、飛行型のメカザウルスがミサイルの雨を浴びてぼろ切れのように吹き飛ばされていった。

 それでも撃墜に至らない敵に対しては、ゲッターマシンガンを直接撃ち込んでトドメを刺す。

 間もなくして、恐竜帝国航空部隊の先陣は壊滅した。

 

「間に合わせの武器にしては、良い具合だったな」

 

 間に合わせ、と言うのは先のコンテナミサイルのことで、アレはガワのコンテナを含めてゲッターのパーツや武器を使ってでっち上げた物だからだ。

 そして使用したものの大部分は、竜馬たちのゲッターロボのものである。

 ゲラとの戦いの影響は大きく、機体はフレームを除いて解体状態。パイロットの竜馬と隼人も、僕が出撃した時点では目を覚ましていなかった。

 

「これは、ちょっとキツイかもな……」

 

 レーダーに切れ目なく示される敵の後続を示す赤い点の数に、背を嫌な汗が伝うのが分かる。

 飛行可能で足の速いため先行したが、ゲッターゼロ単機でどこまで敵の侵攻を遅らせることができるか……。

 

「こちら護衛艦しまかぜ! メカザウルスの攻撃を受けている! 救援求む、救援求む!」

 

 通信機から飛び込む音声。レーダー画面に目を凝らして発進元を確認すると、幸いにもごく近い距離にいることが分かった。

 すぐにゲッターゼロの進路を変更すると、前方に水中から伸びた触手に対して砲火を向ける護衛艦の姿が見えた。

 相手はメカザウルス・ジガ。

 恐竜とタコを組み合わせたような奇怪な外見のメカザウルスであり、日本近海を中心に船舶を襲撃し流通を混乱させている主犯的相手だった。

 

「ゲッター、バヨネット!」

 

 僕はフットペダルを踏み込むと、ゲッターゼロを触手と護衛艦の間に割り込ませて波間に見えるジガの胴体に銃剣を突き刺した。

 そしてそのまま引き金を引き絞る。

 

《GIYAAAAA!??》

 

 胸部装甲を破壊され、体液を撒き散らしながら絶叫したジガは、ヌルリとした動きで海中へと退避した。

 

「爆雷投下!」

 

 僕はそこで、ゼロの腕に装着していた爆雷を投下。間もなく盛大な水柱が吹き上がった。

 空からは、ジガの残骸の一部と海水が雨のように降りそそぐ。

 

「こちら護衛艦しまかぜ、援護に感謝する! おかげで損害軽微!」

「まだまだ敵の増援が接近しています。無理をせずに沿岸部まで後退を」

 

 沿岸部では恐竜帝国の上陸予想地点を中心にして、陸上戦力による防衛線が敷かれている。護衛艦も組み込まれているはずだ。

 陸路で出発した早乙女研究所の戦力、弁慶のゲッター3や南風くんのBTもそろそろ到着している時間だろう。

 

「了解した。君はどうするんだ?」

「僕は、もう少し敵の数を減らしてから向かいます」

「そうか……幸運を祈る」

 

 回頭を終えて本土に向かう護衛艦を見送って、僕はゲッターゼロのフットペダルを踏み込むと東に向かって空を舞わせた。

 進路上には、再び集結した恐竜帝国の飛行型メカザウルス軍団が群れを成している。

 携行してきた火器を使いきるまでは粘れるだろうが、それでどれだけの時間を稼ぎ、どれほどの敵を減らせるものかは分からない……。

 それでも戦うしかないのだ。今は、ただ。

 

 

 

「っく! 食らえ!」

 

 弾の切れたマシンガンの銃剣でメカザウルスの首を裂き、背後から攻撃してくる敵を銃床で殴り飛ばす。

 持ってきた爆雷も使いきり、重大な損傷こそ無いものの装甲の各所には被弾の後も目立ち出していた。

 

「こちらミチル! 兄さん、補給の準備が整ったわ! 指定地点まで後退してください!」

「了解! 悪いがさっそく準備を頼む。全弾からっぽだ!」

 

 すでにかなり押し込まれ、目視で味方の歩兵の姿が見える程度にまで後退していた僕は、ゼロを大きく降下させて撤退にかかった。

 当然のようにメカザウルスの追撃を受けるが、沿岸部からミサイルなどによる味方の支援攻撃が届く距離でもある。

 

「ゲッターミサイル、じゃなくてキャノン、発射ぁ!」

 

 しかし、そんな中で、本当なら聞こえないはずの声が僕の耳に届いた。

 通信元は量産型ゲッター3。ゲッターキャノンから対空砲弾を発射しているその機体には、本当なら弁慶が乗っている、はずだった。

 

「武蔵、どうしてここにいるんだ!? 研究所で待機のはずだろう?!」

「へっへ、竜馬も隼人も寝込んじまって武蔵様まで居ないんじゃあ、みんなも寂しいと思ってよ」

「ごめんなさい兄さん、弁慶くんと入れ替わってたらしくって、気がついた時には……」

 

 ミチルから聞かされた事情に、思わず頭を抱える。武蔵のヤツ、量産型ゲッター3を乗っ取って出撃したらしいのだ。

 なお、簀巻きにされて格納庫の隅に転がされていた弁慶は、整備員によって無事発見されたとのこと。

 

「ああ、もう、馬鹿! この馬鹿っ!」

 

 あまりと言えばあまりの行動に、気付くと僕の口からは語威力が消失した罵声が飛び出していた。

 とは言え今さら帰って弁慶と交代しろとも言えない。

 

「ミチル、あと南風くんも、フォローしてやってくれ……」

「ええ、はい、分かってます」

 

 どこか疲れた様子の南風くんの声を通信機越しに聞きながら、僕は補給のために用意された整備スペースにゲッターゼロを着地させた。

 すると、すぐに陸戦隊のメンバーが補給用のコンテナから物資を運搬してく作業に取り掛かる。

 僕はその様子を眺めながら、カラカラになっていた喉を座席下から取り出した飲料のボトルで潤し、束の間の休息に体を休めた。

 

「……なんだ、あれ?」

 

 そんな折、輸送用の大型トレーラーの車列の中に、妙なシルエットをした車を一台見つけてしまった。

 基本的には普通のものと変わらないくせに、荷台の上には装甲板で雑に守られた箱が一つと、どこかで見た覚えのある砲身が乗っかっている。

 

「おお、達人! 無事じゃったか!」

「ぶっ!?」

 

 そして、またもや予想外の人間の声が通信機から飛び込んできて、僕は飲み水を噴出す羽目になるのだった。

 

「し、敷島博士! なんでここに?!

「研究所におってもやる事がなくてな。新兵器抱えて応援に来てやったぞ!」

 

 なるほど、見れば補給物資の中に幾つか見慣れない武装が存在している。

 やることは突飛だし言動はエキセントリックだが、博士が持ってきたと言うことは役に立つことは間違いないのだろう。

 

「ところで博士、そのトレーラーは?」

「おお、これはなゲッタービームランチャーの砲身と竜馬たちのゲッターのパーツで組み上げた、ゲッタービームキャリアよ」

 

 敷島博士によれば荷台の箱の中にはゲッター炉心が収まっており、移動可能なゲッタービーム砲台として機能するらしい。

 

「ただし、照準システムまでは間に合わなんだから、狙うのは渓ちゃんのBTに頼むことになるんじゃがな」

「が、頑張ります」

 

 砲手を任されて緊張がちの南風くんの声が聞こえた。BTは荷台の上に陣取って砲を操作することになるようだ。

 見た目は不恰好と言うか急造感あふれる一品だが、この状況下でゲッタービームの火力支援は非常に助かるのは間違いない。

 

「達人さん、補給終わったぜ」

「ああ、ありがとう竜二くん。悪いけど敷島博士のお守りを頼むよ、放っておくと自分で武器持って敵に突っ込みかねないから」

「あいよ。隼人が寝てる分は、俺が働かねえとな。へへっ」

 

 僕は下で補給作業をしていた竜二くんからの通信に返事をして、作業員達が退避するのを待つ。

 再出撃の準備を終えたゲッターゼロは、両腕にマシンガン用の弾帯を、両肩と両脚には使い切りのロケットポッドをそれぞれ装備していた。

 重量はかさむものの、これから押し寄せる恐竜帝国の軍勢を考えればこれでも足りないくらいだろう。

 

「コマンドマシンより各機、大規模な敵集団が接近中! 迎撃を開始して下さい」

 

 ミチルの管制を受けて、僕は格納していたゲッターウイングを展開して再びゲッターゼロを空に浮かべた。

 上空から見える沿岸の味方陣地からは、猛烈な砲火とミサイルの噴煙が走り迫り来る敵を迎撃している。

 

「南風より各機、これよりゲッタービームを発射します!」

 

 そうした迎撃をくぐりぬけメカザウルスの群れが水上に姿を現すと、ゲッタービームキャリアの砲台に収まったBTから通信が届いた。

 程なくしてゲッタービームの桜色の閃光が放たれ、さらに照射状態のまま横になぎ払う動きで敵陣を切り裂いた。

 ゲッター線への耐性を得たとは言え、単純に高威力のゲッタービームによって多数のメカザウルスが破壊されていく。

 

「ゲッタービーム照射終了! 再発射までは時間が掛かります! 皆さん気をつけて!」

 

 南風くんの言葉通りに、砲身の冷却に入ったゲッタービームキャリアを背に僕は機体を前に向けて飛ばした。

 まずは先程のゲッタービームで損傷を受けた敵にマシンガンでトドメを刺していく。

 

「ゲッターキャノン! どーだい、見たかミチルさん!」

 

 後方では武蔵の量産型ゲッター3が大雑把に砲撃を撃ち放ち、榴弾を炸裂させてメカザウルスの足止めを行っている。

 射撃が苦手なことを心配していたが、どうやらミチルが上手く誘導してくれているらしい。

 

「飛行型メカザウルス多数、高速で接近中! 兄さん!」

「了解! これより迎撃に移る」

 

 通信を受けてゲッターゼロの高度を上げれば、上空、高高度から急降下してくる敵の姿が見えた。

 巨大な翼を備えた翼竜型の敵は、その腹部に見るからに巨大な爆弾を抱えている。

 

「ロケット弾、全弾発射!」

 

 それを見て、僕はためらうことなく両肩のロケットポッドの発射ボタンを押し込んだ。

 装填されたロケットが時間差で次々に打ち出され、降下してくる敵とすれ違いざまに炸裂する。

 

「ゲッターマシンガン!」

 

 僕は空になったロケットポッドを切り離すと、回避に成功した敵に対してマシンガンの弾を集中的に浴びせかける。

 地上の陣地からも対空砲火が上がり、ロケット弾で損傷し失速した敵を破壊していた。

 

「ゲッタービームキャリア、冷却終了! ゲッタービーム、発射!!」

 

 そうしている内に再びのゲッタービームが発射され、海上の敵をなぎ払った。

 この時点での戦局は人類有利に進んでいるように思えるが、敵の勢いが衰える様子もない。

 

「!! 海中から大型メカザウルスの反応! みんな、気をつけて!」

 

 そして、激戦の最中にそれは現れた。

 ヌラリとした黄色の光沢を持つ表皮を海水に濡らし、水中から飛び上がるように出現したメカザウルス。

 その外見は、他の敵とは明らかに異質な雰囲気をまとっている。

 

「脚部ロケット、発射!」

 

 背筋にゾワリとした感覚を感じて、僕はその敵に対してゲッターゼロの脚部に搭載していたロケット弾を集中して撃ち込んだ。

 連続して爆発が連なり、黄色いメカザウルスの全身が炎に巻かれる。

 

「……敵のダメージ、軽微!」

 

 しかし、通常のメカザウルスであれば撃破ないし大きな損害を与えたはずの攻撃は、黄色いメカザウルスに大きな影響を与えてはいなかった。

 装甲……だろうヌラリとした質感の部分に若干の焦げあとが見えるが、その程度でしかない。

 

「こちら南風! 新型メカザウルスにゲッタービームを照射します!」

 

 その結果を見て、南風くんのゲッタービームキャリアが砲身を黄色いメカザウルスへと向けた。

 桜色の閃光が奔り、空を引き裂いて敵の装甲にぶつかり火花を散らす。

 

「えっ?!」

 

 だが、それでも次の瞬間には呆気にとられたような南風くんの声が通信機から届いた。

 直撃したはずのゲッタービームは、黄色いメカザウルスの体表から吸収されるようにして飲み込まれ消失してしまったのだ。

 

「げ、ゲラと同じじゃねえか……」

 

 武蔵の震えた声を耳にした早乙女研究所所属の人間は、僕を含めてきっと彼と同じ感情を共有しただろう。

 先の戦いで相手取り、決死の作戦の末に打ち破った難敵、ゲラ。

 あの黄色いメカザウルスが、そのゲラと同様の特徴を持っているかもしれないと言う恐れを。

 

《GIYOooooo!!!》

 

 必殺のゲッタービームを防ぎきったメカザウルスは、その外見に相応しい奇怪な声を上げこちらの陣地に向けて突進してくる。

 そして赤く輝く長大な爪を振りかざしマシンガンやミサイルによる迎撃を跳ね除け、真っ直ぐにゲッタービームキャリアに向かっていった。

 

「まずい! 南風くん、竜二くん、逃げろ!」

「え? あ、は、はいっ!」

 

 南風くんのBTが転がるようにゲッタービームキャリアの荷台から離脱すると同時に、メカザウルスの爪がその砲身を完全に破壊した。

 

「おい、こら、爺さん、暴れんじゃねえ!」

 

 運転席に居た竜二くんも、敷島博士を担ぎ上げて脱出に成功したようだ。

 通信機越しに、何やら「折角の惨たらしく死ぬチャンスが……」などと言う声が聞こえるが……。大丈夫だろう、たぶん。

 

「こんにゃろぉぃ! よっくも渓ちゃんを!」

 

 そこで至近に位置していた武蔵の量産型ゲッター3が、ゲッタービームキャリアを破壊する黄色いメカザウルスに組み付いていく。

 竜二くんや近場に居た陸戦隊、整備スタッフの離脱を援護するためにギリギリと相手を締め上げている。

 

「ゲッターバヨネット!」

 

 僕もまた海側の迎撃を一時中断して、黄色いメカザウルスの対処に回り武蔵のゲッター3と組み合うその背中に銃剣を突き入れた。

 

《GIOoooo!!!》

 

 振るわれたゲッターバヨネットは、黄色いメカザウルスのヌラリとした表皮を貫通しその装甲に亀裂を生むという予想外のダメージを与えた。

 だがダメージを受けたことで狂乱したメカザウルスは暴れだし、爪を振り乱し、またその口から怪しげな液体を撒き散らして抵抗を始めた。

 

「うぎゃっ!?? ば、ばっちぃ!」

 

 そうなると、当然のように飛散した液体は正面から押さえ込んでいた量産型ゲッター3に降りかかることとなる。

 武蔵の悲鳴とともに、液体をかぶった箇所の装甲が白煙を上げているのが見えた。どうやら、液体の正体は溶解液であるらしい。

 

「武蔵、離れるんだ! そのままだと溶かされるぞ!」

「うわっち、そりゃあゴメンだい! 達人さん任せたっ!」

 

 空中にゲッターゼロを退避させながら声をかけると、武蔵は敵への拘束を解き放つと同時に相手を引き倒して量産型ゲッター3を急速後退させた。

 上手い。普段から大雑把な面が目立ち、実際にそうなのだが、こと格闘戦における武蔵の機転と呼吸の名人芸は真似ができない。

 その隙を逃がさぬため、僕は倒れ伏す黄色いメカザウルスの背中に向かってゲッターバヨネットを大上段から叩きつけるように振るった。

 

《GYOGYOoooo!??》

 

 遠距離からの攻撃には強固な防御力を誇っていた黄色いメカザウルスの装甲が、バッサリと切り裂かれる。

 悲鳴を上げて爪を振り回すメカザウルスからバックステップで距離を取り、僕は敵のヌラリとした素肌の奥に金属質な光沢を見た。

 

「なるほど、そういう……」

 

 どうやら、このメカザウルスはゲラのものに似た装甲を"着込んで"いるらしい。

 加えて恐らくは技術的な制約によって、ゲラが持っていた再生能力を保持していない。少なくともヤツほど圧倒的ではないのだろう。

 また爆発の衝撃やゲッタービームへの耐性こそ強力だが、その他の物理攻撃、特に斬撃に対してはそこまで強固ではないようだ。

 対処法は、ある。

 

「行くぞっ!」

 

 こちらを振り向いて爪と溶解液を使って暴れる敵を、マシンガンのけん制射によって誘導しつつ、僕は敵の背中を取るようにゼロを宙返りさせた。

 

《GYoIIii?》

 

 そうして一瞬こちらを見失ったメカザウルスを背に着地し、ゲッターゼロを回転させ横薙ぎに銃剣の刃で襲う。

 銃剣の刃はヤツのヌラリとした質感の"皮"を僕の目論見どおりに切断し、先の物も含めて十字に引き裂くような傷が生じた。

 

「どぉっっせぇい!」

 

 直後、機械質の本体があらわになったメカザウルスにむかって、雄叫びとともに武蔵の量産型ゲッター3が突っ込んだ。

 伸縮するゲッターアームが唸りを上げ、黄色いメカザウルスをきりもみ回転させてその"皮"を剥いでいく。

 

「大・雪・山おろぉぉし!!」

《GI!? Gigigigigigigi!???》

 

 完全に機械の体を露出させられたメカザウルスが地面に向かって叩き付けられ、叫び声を上げる。

 苦痛にのたうつ姿は哀れを誘うが、当然それを見逃してやる必要はない。

 

「目標新型メカザウルス、総員撃て!」

 

 ゲッターマシンガンの号砲に続き、南風くんのBT、竜二くんたち陸戦隊の重機関銃や手持ちミサイルがメカザウルスへと降りそそぐ。

 "皮"を失って防御力を失っている敵は、猛烈な弾丸の風に吹かれて瞬く間に風化していった。

 

「敵のエネルギー消失! やったわ、みんな!」

 

 上空のミチルからも撃破の確認が届き、一息を吐く。

 幸いにも、ゲッターが抜けていた間も味方の防衛線は維持できている様子だ。

 そして、僕らが再び襲い来る恐竜帝国の軍団に向けて攻撃を再開しようとしたその時。

 

《ゲッターチーム並びに人類を名乗る諸君、まずはお久しぶりと言っておこうか》

 

 広域通信に割り込む形で流れた映像と音声が流れた。

 翻訳機械越しに聞こえるしゃがれた声と、映し出されるキングコブラに似た頭部を持つ豪奢な衣装を身につけたハチュウ人類の男。

 いつか見たその顔、忘れもしない。その名は……。

 

「帝王、ゴール……」

 

 通信機から聞こえた誰かの声に応じるように、ゴールはその鋭い牙を持つ口を笑みの形に形作ってみせた。

 あざ笑うような、あるいは挑発的な感情が、種族を隔てても理解できるように。

 

《さて、諸君が我が帝国が自信を持って送り出したメカザウルス・ピグドロンを破ったことは見事と褒めておこう》

 

 そこまで口にして間を置いたゴールは、クワッとまなじりを見開くと両腕を広げ食らい付かんばかりにその口を大きく開いてみせる。

 

《故に、様子見は終わりだ! 貴様ら猿どもを殺しつくすため、我が恐竜帝国、このゴールの全力を持って相手をしてやろう!》

 

 ゴールの言葉が終わると同時にレーダー上に幾つもの反応が現れ、海中から飛び出して来る。

 

「おいおい、嘘だろぉ?」

 

 武蔵の呆然としたような声が耳に届く。

 ……新たに出現したメカザウルスは、先ほど倒したばかりの強敵、ゴール曰くピグドロンとまったく同じ姿をしていた。

 

《クッククク、さて、ゲッターチームの諸君、このピグドロンを相手に他の猿どもをどれほど守ることができるか、お手並み拝見といこうではないか!》

 

 甲高い高笑いとともに通信が切断され、それと同時にピグドロン軍団が進撃を開始するのだった。

 

 

 

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