ロクでなし魔術講師と学生警備官(仮)   作:一徒

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07.開戦02

 魔術で施錠された教室へ辿り着いたグレンが目にしたのは教室内を覆う強い発光と転送陣の中央で消えていくルミアの姿、そして手を伸ばすも間に合わなかったシスティーナだった。

 

「白猫っ!!」

 

 状況を聞き出す為にシスティーナに近寄るグレンだったがシスティーナの様子がおかしい。

 グレンの声が聞こえていないような表情のまま、ルミアの消えた何もない空間を呆然と見つめている。

 このままでは攫われたルミアの行き先どころか戦闘に巻き込まれて怪我をしかねないと判断したグレンがシスティーナの頬を叩き、強引に自分を気づかせる。

 新雪のように白い肌に薄く赤い痕が残り、頬から伝わる痛みにシスティーナは頬を押さえて漸くグレンに気づくと瞳からぽろぽろと涙を零していく。

 

「あ……せん、せい……?」

「ス、スマン……ちょっと緊急事態だった、痛かったよな? ホ、ホントにスマン!?」

 

 流石に急すぎたかと自分の手段を素直に謝ろうとするもシスティーナはグレンの前で俯き項垂れてしまう。やり過ぎたと狼狽えたグレンに対し、システィーナは涙を零しながら自分の不甲斐無さを訴えた。

 

「ごめんなさい……私、何も出来なかった……あの時から、何も変わってない……」

 

 システィーナの肩が小刻みに震えるのは恐怖と悔しさ。優秀だと持て囃されてようといざという時に自分一人では何もできないという自分の無力さが、あの頃とちっとも変わっていないという自分自身への失望。

 自分の大切な家族まで巻き込み今度こそ取り返しのつかない間違いを犯してしまったのだと彼女は自分を責めてしまう。

 

「魔術を学んでも、私には何も出来ない……出来ないままでした……こんなの、こんなもの何の意味もない……」

「泣くなバカ、こんなもん誰がいたってどうしようもねーよ」

 

 グレンは涙を零すシスティーナの頭に優しく手を乗せた。

 事実、こんな事態でグレンが教室内にいた所で生徒を巻き込まないで助けられたかといえば答えは否だ。全員を守るなどセリカにでも難しいだろう。

 

「寧ろ俺は殆どの奴が無事で安心した。ぶっちゃけ誰が死んでもおかしくない爆発なんだ、お前らは怪我しなかっただけ喜んでおけよ」

「でも……ルミアが……」

「ああ、ちゃんと助けに行ってやる。だから教えてくれ、ここで何があった」

 

 グレンに促されるままシスティーナは一連の出来事を説明した。学院の外で大きな爆発が起こったこと、教室内に行方不明だったヒューイが突然現れ見知らぬ金髪のチンピラのような男に殺されたかと思えばヒューイは偽者だったこと、いきなり戦闘を始めた二人が居なくなったかと思えばルミアがどこかへ連れ去られたこと。

 

「あと……チンピラの方はヒューイ先生を知っているようでした」

「マジか……行方不明になる前から何かを狙っていたって事か? なら何で子犬の方を……っうぉ!!」

「きゃあ!!」

 

 相手の目的が掴めないまま思考を巡らせるグレンの意識を途切れさせる複数の爆発音。その衝撃は先程までの比ではなく残された生徒からも悲鳴が上がる。

 

「クソッ!! 考える暇もないってか……こうなったらアイツ等の横から奇襲して騙し討ちで仕留めて居場所を聞いてやるか……お前ら絶対に教室から外に出るなよ! 出来るなら俺が解除したロックもかけ直しておけ!!」

 

 瞬間、グレンが外に向ける視線に背筋が凍るような恐怖に生徒達は襲われ何処かで誰かの小さな悲鳴が聞こえた。グレンはその声に気付かないフリをして生徒達に教室から外に出ないよう強く伝え、グレンは駆け出すとシスティーナの傍で拾ったモノを握り窓の外へと飛び降りる。

 

「先生……私も泣いている場合じゃない……ルミアを助けないと……」

 

 唯一正面からグレンと向き合っていたシスティーナは聞こえていた小さな悲鳴にグレンの表情が辛そうにしていた事を感じながら、自分に何ができるのか窓から飛び降りる背中を見つめながら考え続けた。

 

 ■

 

「誰だテメェ!! 俺の爆発をどうやって防ぎやがった!?」

 

 爆破を阻止されたクレイマンは怒声と共に自らの爆弾を投下。だが追尾する筈の鳥の造形はいつまでも形を変えずグレン達の前で力なく落下し、落ちた爆弾はどれだけ指令を飛ばそうと爆発する様子がない。

 完全な不発状態にクレイマンが距離を詰められずにいると爆撃の窮地を結果として救ったグレンの姿にジンは直ぐに何者か思い至ったらしい。

 

「えーっと……あ、グレン先生ってテメェか!? サンキュー、サンキュー! マジで助かったぜ!」

「うるせぇ! こんな場所でバカバカ撃ちやがって誰だお前!?」

「あ、俺!? 俺はヒューイの代わりに授業で使う素材の材料とか取りに行く業者のお兄サンです!!」

「何でそんな奴が学園に来てるんだよ!?」

「えーっと……の、納品? ヒューイの奴が連絡取れないから学校まで来たというか何というか……」

「嘘つくんじゃねーよチンピラー! お前もテロリストだろうがー!」

「嘘じゃねーか!!」

「納品しているのも嘘じゃねーよ!? 信じてグレン先生!!」

「うるせぇい! お前も敵じゃい!! 早く俺のテリトリーから出てけ!」

「なんだよイイじゃねーか俺も入れろよぉ!!」

 

 構わず投擲される爆弾が二人の周辺で爆発を巻き起こし、周辺の景色を一変させる爆発の連鎖が爆風と衝撃でグレン達へ襲い掛かり、爆発の余波からグレンの傍で蹴り出されそうなジンが必死に傍に寄ろうと足掻き、その近くで彼らの周辺が爆発によって中庭の土が裏返るように土色に変わる。

 

「クッソ、あの野郎……《ズドン》ッ! ……あ?」

 

 爆発の中で土まみれになったジンが反撃にクレイマンへ構えて【ライトニング・ピアス】を撃とうとするも指先から雷光は発生しない。

 グレンが魔術の封じる何らかの手段を用いている事は状況から察していたが自分まで対象にされてしまえば空を飛ぶ相手には対抗も出来ないではないかとジンは苛立ち、攻撃と防御に分かれて役割を分担して欲しいと抗議した。

 

「《ズドン》ッ! 《ズドン》ッ! 《ズドン》ッ! ……だァッ!! グレン先生よぉ!! 幾ら信用できなくても状況読めよ!? 反撃できねーだろうが!!」

「しょーがねーだろうが!! 俺の固有魔術(オリジナル)で【愚者の世界】は俺中心に使えねーんだからお前も範囲に入ってんだよ!!」

 

 愚者の絵柄が描かれたアルカナ・タローのナンバー0、魔導器のカードを見せつけるようにグレンは説明すると【ライトニング・ピアス】の詠唱も止まったジンは目が点になり、爆発で舞い上がった土を頭から被った二人の間を不思議な沈黙が支配する。

 

「ハァ!? なんだその役に立たねぇ固有魔術(オリジナル)!? 魔術師が魔術使わねーでどうやって敵を殺せって!?」

「うるせー!! 俺にも考えはあるからとにかく落としてくださいお願いしますぅ!!」

「ハイハイハイハイ うけたまわりましたぁ!!」

 

 ヤケクソで範囲内から出てきたジンは続いて降り注ぐ爆弾へ向けて【ライトニング・ピアス】を乱射。大量に投下された爆撃にチマチマ狙いを合わせる必要もなく両手で【ライトニング・ピアス】を連射するだけで距離も関係なしに誘爆していく。

 

「《ズドドドドドドドドドドン》ッ!!!! 馬鹿の一つ覚えみたいに爆弾投げようが封殺されて近寄れねぇクソビビリの臆病者(チキン)だろうが!! 芸術(アート)が聞いて呆れんぞオラァッ!! 《ズドドドドドドドドドドン》ッ!!!!」

 

 乱射、乱射、乱射、自分の撃てる限界まで魔力を込めた超連射の【ライトニング・ピアス】は投擲される爆弾の発射速度と爆発の速度を越えて容赦なく貫き、迸る雷槍は爆弾を貫いて不発のまま落下させる。

 範囲外からの爆破攻撃によるクレイマンの優位性は崩れないがジンの連射速度はグレンですら驚愕し、貫かれた爆弾が再稼動しない事から一度破壊すれば操作は出来ないのだと確認させられる。

 

「(あれが壊れたのか俺には判断出来ないが、このまま連射してもジリ貧だしな……だが愚者の世界を起動している以上、俺にできることは待つだけだ……)」

 

 魔術の遠隔範囲封印などという使い手ならワンサイドゲームで圧倒できる魔術師かと思われがちだが自分も魔術を使えない以上、見ず知らずのチンピラに戦況を任せるしかできない。昔からこうして誰かと組んで戦闘をすると相方に余計な負担を背負わせる自分の不甲斐なさを歯噛みしながら、グレンは地雷の起爆を防いで戦況の変化を待ち続ける。

 

 膠着する戦況はクレイマンから動き出す。芸術家と自負する彼からすれば地雷の起爆を封じられ、投下した爆弾が数多く不発した状態で打ち捨てられるような扱いに作品をぞんざいに扱われたと感じて怒りは燃え盛るばかりだ。

 

「人の作品を未完のまま放置しやがって……俺の作品は爆発させてこそだってのに……」

 

 不発のまま造形を残す不完全な状態など失敗するよりも遥かにタチが悪い。爆発させてこそ自分の作品には意味があると信じて疑わないクレイマンは竜を羽ばたかせて竜の巨大な体躯と共に降下を始める。

 

「焦らして待ちきれなくなったかぁ……いいぜ、来いよクソ野郎」

「バカ野郎!! あのサイズが俺の範囲より外で爆発したら誘爆でこの辺り全部巻き込むぞ!?」

「構わねぇよ、術者が死ねば起爆もクソもねェんだ。先にブッ殺してやらァ!」

 

 自分達よりも遥かに巨大な体躯で搭乗可能なサイズの竜には間違いなく爆発する材料が使われており、巨大な爆弾を投下されるのと変わらない。そうなれば転がっている残骸も地中に埋まった不発弾も巻き込んでしまいかねず学院にまで被害が及ぶ。

 

「とにかく誘爆するから却下だ!」

「メンドくせぇ!! じゃあグレン先生ちょっと行ってこい!!」

「だから俺じゃ届かねぇって……何で俺の胸ぐら掴んでるの?」

「ほら、早く固有魔術(オリジナル)解除しろよ」

「いやいやいや、何するか言えって業者さん!?」

「オラァ!! 行くぞォッ!! 《ブッ飛べ》ェ!!」

 

 言われるがまま愚者の世界を解除してしまったグレンの胸ぐらを掴んだジンは竜に向かって【ゲイル・ブロウ】でグレンを投げ飛ばす。

 瞬間的な強化で加速した風による勢いは投擲されたグレンを風圧で押し潰しかねない圧力を与え、投下していた爆弾が一瞬だがグレンを避けていく。受身を満足に取れないまま爆心地へと放り投げられたグレンを回避しようとクレイマンが軌道を変えようとするも重量のある竜は旋回が遅れてグレンは竜に体当たりし、余波で竜の背中を転がりながらフラフラの状態で立ち上がった。

 

「ゲホッ、グソ……アイツ……マジで無茶しやがる……」

「ハッ、同情してやるよセンセイ。ここで魔術を封殺しようが爆弾のストックは十分だぜ? ウン」

「構わねぇよ、お前の爆弾は造形、操作、起爆でそれぞれ起動の術式が異なる。しかも必ず造形からだ。詠唱無し作るのは驚いたが、爆発に使用する粘土はお前の奇妙な両手が食わないと術式が起動できないんだろ?」

 

 爆撃をジンに防がせながらグレンもただ見ていただけではない。詠唱も最小限に爆弾を生み続けるクレイマンの魔術をひたすら観察して情報を集め、不発の爆弾と起爆した爆弾の違いをグレンは頭の中でイメージして考察を繰り返した。

 その結果、最小限の詠唱と造形は一つの魔術に必要な手段と仮定し、精密操作可能な爆弾の作成は創作という一連の工程作業の全てが必要であると仮説を立てた。

 

「つまりこの範囲内ならお前が何を作ろうと俺の魔術で封殺できるし、今ある爆弾も起爆させるより俺のほうが速い」

「ハッ、爆発させる工程がただの魔術に遅れを取るモンかよ! お前が詠唱を終えるよりも早く爆発させて叩き落としてやるぜ!!」

 

 両手を構えて異形の口が小型の蜘蛛を吐き出し、グレンへと吐き出す為に身構える。既に準備は終えグレンの詠唱によって発動する魔術よりも速くに爆発させられると確信しているクレイマンだったが、グレンが構えたのは魔術の詠唱ではなく拳闘の構えだった。

 

「この距離で俺の魔術が使いもんになるかよ……(こっち)の方がはえーわ」

「魔術師の拳が何の役に……」

「役立つぜ、芸術家気取りのバカをぶん殴るのとかに」

 

 空中でバランスを取るのも困難な歪な背中の上にも関わらずグレンはクレイマンとの距離を一足で詰め、その右腕が最小限の動きで鋭くクレイマンの頬を捉える。コンパクトに振り抜いた拳がクレイマンの顔面を横に振り、バランスを崩した術者の胸ぐらを右腕が掴むと左腕がショートフックの連打で顔面を的確に打ち抜き、後退も回避も許さず至近距離でクレイマンの顔面は殴打を繰り返される。

 

「ブッ、野郎ッ!!」

 

 両腕を構えた掌から爆弾が吐き出されるよりも速くグレンの拳はクレイマンの顎を捉え、歯と歯の噛み合せのずれるような乾いた音がクレイマンの口内で響く。口の中で何処かを切った鉄臭い味を味わいながら、グレンはゼロ距離で容赦なく喉輪を掌底で打ち抜き、クレイマンの首が真後ろに跳ねた。

 崩れた姿勢を引き寄せて半身に乗せて背負うように竜の背中に放り投げ、倒れたクレイマンと百八十度回転して向き合うようにグレンはクレイマンを見下ろし、血まみれの顔面を構わず鼻先を狙って真っ直ぐに拳を打ち抜いた。

 重く、深い拳の打撃に操作していた意識は一瞬途切れ起爆までに必要な工程がその瞬間に途切れるとクレイマンとグレンは竜と共に地上に落下。

 地面に落下した竜は術者が意識を途切れさせた為に形を崩して泥のように溶け出し、グレンはもう一度起き上がらせるとクレイマンの腹部に鋭い膝蹴りを入れて木の幹へと叩きつけた。

 

「ガハッ……!!」

「ほらな、魔術より(こっち)の方が早いだろ?」

「いや顔面滅多打ちで喋れねーじゃん」

 

 木の幹に背を打ち付けて悶えたクレイマンの顔面を靴の裏で強く踏みつけたジンがケラケラと笑い、グレンは久しぶりの格闘術でキツくなった首元を緩めて誤魔化すようにジンから眼を逸らした。

 

 ■

 

「悪くねぇ外観だ……転移魔術の道具なんぞに貶められて建築家はさぞかし無念だろうよ……そうは思わねぇか《竜帝》……いや、レイク=フォーエンハイム」

 

 学院の転移塔に続く並木道を物見遊山でもするかのように闊歩する傀儡師(ドールメイカー)はそびえ立つ白亜の塔を見上げると過去の建築家に対して同じ造る者として素直に敬意を抱く。

 傀儡師と同じく並木道には後ろからもう一人、ダークコートを着たレイクと呼ばれた男が畏敬の念を抱いて塔を見上げる傀儡師を鋭く見据えていた。

 その足元には四肢を砕かれ仕込み武器すら散らす人形の残骸。まだ稼働していた人形が男に武器を飛ばすもレイクは見向きもせずに浮遊している五本の剣の一本が弾き、残りの内の二本が人形を貫いて完全に停止させた。

 

「素晴らしき造形というものは永遠に形を残してこそだ。それを魔術なんぞの為に探求者気取りの害悪が土足で踏み荒らして塔そのものには一切の敬意を払おうとしない……これは造り上げる者全てへの冒涜だ……そう思わねぇか?」

「そう思うのならば貴様はまず連れをどうにかするべきだな。歴史のある学院の校舎や施設が短慮な爆弾魔のせいで破壊されている。あれこそ先人への冒涜だろう」

「アイツは壊してこそ意味があると思うからな……こればっかりは主義主張の違いだ」

 

 建築への敬愛など無縁のレイクの言葉に傀儡師は諦めたように肩を落とした。

 

「お前らが早々に死ねばあのバカの被害も少なくて済むんだが……お前こそ至る所でボーン・ゴーレムなんぞと交戦させやがって……素材だけは一級品だが無駄の無さ過ぎるゴーレムのセンスは機能美以外の華がない……作品として主張するならもう少し造り手としてのメッセージ性というものを訴えて欲しいもんだ……」

「用途が終われば役目を終える程度の使い魔だ。芸術家気取りの貴様らがどう思おうと興味はない」

 

 自らの魔術への評価に何の感慨もないレイクは淡々と答え、傀儡師は落胆したような溜息を吐きながら振り返る。人形を破壊された怒りよりも男が自ら血が持つ価値をその程度で終わらせている事への失望。

 かつて古き竜の血を血筋へと入れ竜に至ろうとした結果、逃れえぬ古き竜の呪いを背負った愚かな狂気の一族。

 その狂気を破壊と暴虐の限りを尽くして命を燃やし尽くして死に絶えるというのならば作品としての価値もあるのだろうが、あの一族は自ら手にした力に封印を選ぶような本当に愚かな連中だったと嗤う。

 

「人を捨ててまで手にした禁忌を振るわずに封印して塞ぎ込む引き篭りの落伍者の末裔には創作の表現が難しいか? それなら俺はお前を責めやしない、殺してお前を作品として遺してやるよ」

 

 低い傀儡の背丈を更に低く構えた傀儡師の連結刃がレイクへと振るい、回避しようとしたレイクは下肢を壊れた筈の人形が掴まれた。破壊されて解かれた傀儡の糸は既に傀儡師によって紡ぎ直されておりその場から動く事を許さない。

 レイクは連結刃へと右手を振るい二本の剣が敵の刃を剣の腹で受け止め、残りの一本がまだ動く部品の腕を砕く。

 

「《炎獅子よ》」

 

 左手でレイクが唱えた黒魔【ブレイズ・バースト】が傀儡師の胴体に着弾。収束した熱エネルギーの球体が爆発を起こして爆炎により、両者の間が爆炎の炎に包まれレイク剣が傀儡師へ向かい飛来する軌道を覆い隠す。

 

「(手動は二本、残りの三本は自動操縦……防御に手動を使い尽くしたなら残り二本はどこから来る……!?)」

 

 傀儡師の身体を覆うローブは爆炎と爆圧に燃え尽きるも中の本人に爆発の熱は届かず、傀儡師は爆炎の中で操縦席を覆う背面装甲を狙って飛来した刀剣を多関節による副碗が掴む。

 

「……あん?」

 

 掴んだ長剣はレイクのものとはまた別、知らぬ刀剣に持ち手を疑い僅かに動きを止めた傀儡師の隙に連結刃を繋いでいる接合部をレイクの剣が刺し貫いた。

 

「「《雷槍よ》」」

 

 潜んでいたのは校舎で傀儡師とレイクの使い魔をまとめて破壊した少年。傀儡師が驚くもナルの放つ魔術は長剣を掴んだ副碗をすり抜けるように一条の雷光が疾走し直線に貫くはずの電撃が鞭のようにうねるとレイクの剣を捉え、直撃と同時に傀儡師の装甲を無視して【ライトニング・ピアス】と同等の電撃がレイクの剣を伝導体にして傀儡を内部から焼き焦がす。

 電撃の奔流が焼かれた傀儡が内部から煙を吐いて全身を震わせ排気口から白煙をあげて崩れ落ちる。

 

「「《雷槍よ》」」

 

 崩れた傀儡師の残骸を挟んで相対した魔術師は互いに【ライトニング・ピアス】を撃ち合い互いの魔術が着弾。ぶつかり合う紫電が二人の周囲を照らす中で浮遊する剣を打ち払ったナルは長剣を振るいレイクと鍔迫り合う。

 

「学生風情が軍用攻性魔術(アサルト・スペル)の一節詠唱とは驚かされる。傀儡師の前に俺達の協力者を捕らえたのも貴様だな?」

「濡れ鼠の兄さん獄中で始末したのはお前らだよな……一応聞くけど投降の意思は?」

「答える必要があるか?」

「いや、いらない」

 

 互いに話すことは終えたと剣を振るい、もう一つの戦闘が始まった。

 

 

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