かみゅキャン△ ── Camus Canp ──   作:Towelie

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──やはりこっちの道が間違っていたのだろうか。

森林鉄道の廃線跡、それはまだ出口は見えなかった。
どこまでも続いているような錯覚を覚えるほどに何も変わっていない、間違い探しでもしたいぐらいに変化に乏しい道だった。



四人の少女は手を振って二つの道へと別れた。
それが正しい方法なのかは分からないが、ここまで一緒に来たのに、二手に別れてしまったのだ。


学校指定の赤いジャージに身を包んだ二人の少女。
志摩リンと各務原なでしこは、重い荷物を背負いながら、廃線跡の古ぼけた線路を普段通りのスピードで歩いていた。

結局元の、山梨から来た二人の女子高生キャンパーに戻っていた。


「ねぇ、リンちゃん……」

もう何度目かのなでしこからのか細い問いかけ。

その先は言わなくても分かっていた、それは同じ質問だったから。
でも、それでもなでしこは言葉にしてしまう。

「やっぱり戻ろうよぉ……?」

その弱々しい言葉を聞くたびにリンはため息をついていた。
そしてあの別れたときを思い出す。



込谷燐(こみたにりん)三間坂蛍(みまさかほたる)
二人の少女の影が見えなくなるまで手を振り続けていた。


なでしこは目に一杯涙を溜めていたが、泣き出すことなかった。
ゾンビだらけの町で一時はどうなるかと思ったけど、二人と出会ったおかげでなでしこは立派に成長したんだ。
そう思っていたのだが──。


二人っきりになった途端、なでしこはずっと俯いたまま歩いていた。
時折思い出したように後ろを振り返るが、何もいないことを確認すると、落胆したような表情を見せて、また歩くの繰り返しをしていた。

そして、決まってリンに問いかけてくるのだ、”やっぱり戻ろう”と。


初めは慰めの言葉を懸命にかけていたのだが、あまりにもしつこく連呼するものだから、相手にするのを止めていた。

それでも無視するのはあまりにも可愛そうなので、手を繋いであげることにしたのだ。
あの仲の良い二人みたいにぎゅっと手を繋いで歩いていた。


(普段ならやらないけど……別にいいか)

なでしこの手は見た目よりも小さく、とてもか細かった。

心配でたまらないなでしこをよそにリンは黙々と歩いていた。

別に怒ったり呆れているわけではない、ある目的を専行して歩いていたのだ。


「……ん、ねぇ、リンちゃぁん……」


なでしこの声、涙声になっているのか鼻をぐすぐすと鳴らしていた。


分かってるよ、でも、もう少しだから。

少し焦ったのかリンは口に出して数を数えていた。

「898、899、900!」


数え終えると同時にリンはピタリと立ち止まった。
突然のことだったので、なでしこはリンにぶつかってしまった。


「ひゃうっ! ごめんリンちゃん」

「いや、大丈夫だよ。それよりこの辺りで1キロとちょっとってとこだね」


リンはその場の砂利を足でどけて、靴の底で線を引いた。
ここまで来た証をいちおう付けて置きたかったのだ。


「え、そうなんだ……もうそんなに歩いちゃったんだね」

「うん。だからさ……やっぱりこっちの道はハズレだよ。これだけ行っても何もないしさ」

リンの言葉が理解できなかったなでしこだが、その意味が分かると徐々に顔を綻ばせていく。

「じゃあ、じゃあ!」

「ああ!」

リンはなでしこの理解に深く頷いて返事をした。
リンだって気になってないわけがない、すぐにでも引き返してあげたかった。
でもある程度までは行かないとそれこそ意味がなかったから、心の中で数字を数えながらここまで我慢していたのだ。

「なでしこ、ここから走れるか?」

「もっちろんだよっ! 私、急に元気になっちゃった! リンちゃんは行ける?」

待ってましたとばかりでなでしこが踵を返した、それにリンも続く。

二人は来た道とは反対の方向へと体を向けていた。


「当然!」


なでしこもリンももう迷いの色はなかった。

二人は同時に駆け出していった。
ここまで進んだ距離を、時間を取り戻すために。


二人は懸命に走る、まだそんなに遠くまで行っていない、そう信じながら元来た道を走って行った。


もう距離を測る打ち合わせなどしていない、これはリンが独断でやったことだ。

だから一秒でも先に進んで追い付きたかった。


「リンちゃん、あれ!」


少し前を走るなでしこが息を弾ませながら指を差した。
その先にはあの分岐のあったちょっとした広間が見える。

二人は息つく間もなく、燐と蛍が進んでいった道へと折り返した。

あの二人は何かない限りは走ったりしない、そんな予感がしていた。
だから頑張ればすぐに追い付けるはず。


なでしこはそう願いながら必死に走る、リンもなでしこに負けないぐらい足を動かした。

二人は息を弾ませながら、線路の上を懸命に走る。

今になって重いキャンプ道具が煩わしくなってくる。
荷物が肩に食い込んで痛みを訴えてくるが、それでも足を止めなかった。

大事な本当に大事な友達に再び会うため。

それだけの為に。


(そういえばまた会う約束事を決めてたんだっけ……)


走りながらリンは少し前のやりとりを思い出していた。
その為にわざわざ私は犬みくじを、なでしこはあの富士山を渡したんだっけ。


ワザとらしすぎて少し笑ってしまう。


でもあの二人も笑って許してくれるだろう、そんな陽だまりのような二人だった。

どんな面白い言い訳をしようかなんて今のうちに考えてみる……思わず口と眉が綻んでいた。


視線の一番奥、遠く霞んだ靄の先に何かが見えた気がした。


なでしこは堪らず、ああっ! と叫んで手を振っていた。

まだ多少距離があるが恐らく間違いない、二人の小さい背中が確かに見えたのだ。


なでしこもリンもラストスパートをかける、このままのペースだと二人の元に辿り着いてもへとへとになるのは必至だった。


それでも全力で駆けた、後のことなんて考えていない、ただ今すぐに会いたかった。


「おーい!!」

たまらずリンも声を掛けた。
もう十分声は届きそうな距離まで近づいている気がしていた。


「蛍ちゃーん! 燐ちゃーん!」


息も絶え絶えのハズなのに、なでしこは大声で呼びかけた。
その声は緑で出来たトンネルの中に反響して、何度も何度も響き渡る。


するとその小さい影は立ち止まったように見えた。
手を繋いだようにぴったりとくっ付いている二つの影。


──ふたり(蛍と燐)に違いなかった。


立ち止まる影に全力で駆け寄る、なでしことリン。


だが、その最中に奇妙なことが起きていた。
()()()()()ならよくあることだったがこの異常な世界になってからは、なぜか一度も感じたことはなかった普通の事。

それは普通の自然現象の一つ……風だった。


突然の爽やかな風がなでしことリンの髪をふわっと持ち上げる。
だが二人とも気にしなかった、今は大事な目的があったし、なにより風の存在など昔のことのように忘れていたのだ。


キャンプの時などは土地ごとの風の違いを楽しんだりしていたのだが。
それを楽しむ余裕はない。


そんな当たり前のような風が急ぐ二人の頬をやさしく撫でていた。


もう少し、後もう少しで二人の姿をはっきりと確認することが出来る。

そんな認識距離まで近づいたときにそれは起こった。



キラキラと光の粒が砂の様に巻き起こり、なでしことリンの体に纏わりついてくる。

それは次第に強くなっていって。


(なんだ? これ……)


そして視界が真っ白に包まれた。

上から布を被せたように、突然周りの景色が真っ白に染まっていく。

二人の影も緑のトンネルも白いヴェールの中に染まっていった。


「リンちゃん──!!!」


急に辺りが白くなったので、恐怖を感じてなでしこが抱きついてきた。
不安を打ち消すようにお互いの体をぎゅっと抱きしめる。

あまりの出来事に思考が追い付いてくれない。


次第になでしこの顔や自分の輪郭さえも認識できなくなっていく。

焦燥感に駆られてリンはがむしゃらに声を張り上げた……だがその声は白い闇に吸い込まれたかのように音を形成しなかった。


すべてが白い光の中に吸い込まれて……消えていく。

リンもなでしこも背負った荷物も。

一切の痕跡すら残さず、白い光と共に消えて行った……。




Maison porte bleue

ふと、蛍は足を止めた。

何かに呼ばれたような気がして、思わず後ろを振り向いてみる。

 

そこには先ほどまで歩いてきた廃線跡の線路があるだけで何の姿も見えなかった。

 

 

「ん? どうしたの、蛍ちゃん」

 

 

引いていた蛍の手が急に重くなったので、何事かと思い燐も立ち止まって振り返る。

 

 

「うん。何かの声が聞こえた気がしたんだけど……」

 

「声って、まさかアイツらじゃないよね?!」

 

 

燐は蛍の手をぎゅっと握ると、緊張した表情であたりを伺った。

 

だが、燐の耳には何も聞こえないし、あの独特な異臭もしなかった。

 

 

「ううん、そうじゃなくて、なんか名前を呼ばれた気がしたんだ。燐とわたし、二人の名前を」

 

「わたしたちの名前……」

 

 

今、この狂った世界で二人の名を呼べるものは特定出来ている。

 

だからその場で耳を澄ませて待つことにした。

 

 

 

……数分ほど待ったが何もこなかった。

 

 

遥か頭上の遠くから聞こえてくる、雨が葉や梢に当たる音だけが微かに耳に聞こえてくるだけだった。

 

 

「ごめんね、気のせいだったのかも」

 

 

少し困った顔をして蛍が謝る。

 

燐は首を横に振った。

 

「ううん、蛍ちゃんの言いたいこと、分かるよ。もしかしてって思ったんだよね」

 

「うん」

 

蛍と燐は並んで元来た道を見つめていた。

もうここからではあの別れた場所は確認できない。

 

 

そこまで急いでいたわけでもないのにそれっぽい場所はもう見当たらなかった。

 

いくら目を凝らしても分からず、それすらもなくなったかのように見える。

 

 

それでも待っておきたかった。

途中まで一緒に歩いていた二人(リンとなでしこ)のことはずっと気掛かりだったから。

 

だからもう少しここで待ち続けていたかった。

 

息を止めたように静かな林の中だったが、追いかけてくるような靴の音や、あの明るく元気な声が聞こえてくることはない。

 

 

今、線路の上に居るのは燐と蛍、ただ二人きりだった。

 

 

「燐。行こう、ここで立ち止まっても仕様がないし」

 

「……うん」

 

 

寂しそうな微笑みを二人は返す。

それでもまだ未練があったのだろう。

 

蛍は抱いている富士山のぬいぐるみをぽんぽんと軽く叩いた。

 

すこし怒った感じに見える富士山だが、その柔らかい音とのギャップがなんだか可笑しくなってしまい、二人は顔を見合わせて笑っていた。

 

 

悩んでたって仕方ない、なでしことリンならきっと大丈夫、そう信じるしかなかったから。

 

 

 

やがて二人は緑のトンネルの中をまたゆっくりと歩きだした。

 

 

もう振り返ることはなかった、その少し後ろに二人の仄かな残滓が残っていたことも知らなかったから。

 

 

ただ前へと進むだけだった。

 

………

 

……

 

 

 

 

 

うーん……。

 

今日、何曜だっけ? まだ起きる時間じゃない、はずだ……。

 

学校、は今日は休みだっけ? それともバイトの時間? それとも今日はキャンプの予定立ててたっけ? なんだかごっちゃになって良く分からないぞ。

 

 

とりあえず起きよう、眠いなら後でまた寝れるし。

 

じゃあ起きちゃうぞーー、起きるぞ……。

体に言うことを聞かせるように、覚醒させていく。

 

 

ゆっくりと重い瞼を開いてみる……なんだか白いな。

まるでコンクリートの上に寝てたみたい、体、固まったかも……。

 

今寝ている場所を寝ぼけ眼で触ってみる、つるつるとして堅そうだけど熱くも冷たくもない、やっぱりコンクリート? でもなんか違うな……気味悪い。

 

少し腕を回してうつ伏せの体勢になってみる……なんだこれ眩しい……。

まともに目を開けてられなくて反射的に手で遮った。

 

 

なんだ、ここ? 何がどーなったんだっけ?

 

手で光のようなものを遮りながら、しばらくぼーっとして目を慣らしていった……すると徐々に目の前の光景が分かるようになってくる。

 

 

 

これは……青い、空、なのか──?!

 

 

 

目の覚めるような青い空に、帯状の白い雲がゆっくりと流れていた。

 

この地に来てから一度も拝むことの出来なかった日常の風景がそこにあった。

 

 

「そっか、帰って、来れたんだ……!」

 

 

ぽつりと声に出して呟いた。

夢か現実かを頭で確かめるため、声に出して言いたかったんだ。

 

 

リンは両手をついてぐぐっと上半身を立ち上げてみる、なぜだか妙に身軽だった。

 

 

周りを見渡すと傍に赤いジャージが見えた、多分なでしこだろう。

傍まですり寄って小さい肩をゆすってみる。

 

 

すぅ、すぅ……。

 

 

小さく無邪気な寝息を立てていた。

どうやらちゃんと息があるみたいだ。

 

安堵のため息をついたリンは改めて周りを見渡してみる。

あの世界から一先ず脱出できたのはいいが、ここは一体何処なのだろう?

 

 

膝を立てて立ち上がってみる……ぱきぱきと膝が鳴って少し、いや大分恥ずかしかった。

少し背筋を伸ばして周りをぐるりと見渡してみる。

 

 

 

……その風景の在り様に驚愕した。

 

 

 

慌てたリンはなでしこに駆け寄り、早く起こそうと躍起になった。

 

 

「なでしこ、おい、起きろってば。なでしこ!」

 

 

肩をがくがくと揺すってみる。

これでも起きないようなら多少荒っぽい方法でも仕方ない、リンはそう決断したとき。

 

 

「んーー、リン……ちゃん?」

 

 

寝ぼけ眼のなでしこがあくびを噛みながら返事をした。

 

 

 

「ほら、見て、夜が明けたんだ。私たち、戻ってこれたんだよ!」

 

起き抜けのなでしこにリンは空を指差して叫んだ。

まだ寝ぼけたままのなでしこは言われたとおりに空を仰ぐ……。

 

 

「ひゃうぅぅ、眩しいよぉ!」

 

 

眩しさに目がくらみ、なでしこはカメの様に丸くなった。

 

 

「ほら、やっと帰ってこれたんだよ」

 

 

リンは興奮しているのか、(うずくま)るなでしこの頭を掴んで無理やり向けさせようとした。

それだけこの光景はリンの脳裏に現実のものとして理解出来なかったのだ。

だからなでしこに一刻も早く確認してもらいたかった、嘘のように綺麗な青空は現実なのか。

 

「リンちゃん怖いよう! 目が潰れちゃうよう!」

 

 

背中を丸めながらなでしこはそう拒絶する。

なでしこの悲痛な叫びにリンはやっと我に返った。

 

 

「あ、ご、ごめん。もう少し経てば慣れるから、それまで待ってる……ごめんなでしこ」

 

 

小さい子をあやす様に背中を擦ってなでしこの機嫌をとる。

自分だって慣れるのに時間が掛かったのに、いい加減なやつだ私……リンは胸中で反省した。

 

 

「ありがと、もう大丈夫だよっ……多分」

 

 

暫く傍にいると、目が慣れてきたのか、なでしこがようやくこちらを振り向いてくれた。

でもまだ完全には慣れないようで、何度も瞬きを繰り返すことで目を視界に馴染ませる。

 

 

そして目の前の光景を見た瞬間目を丸くしたと思うと、即、立ち上がって叫んでいた。

 

 

 

「富士山のように青い空、白い雲っ! やったぁ! やっと悪夢が終わったんだねぃ! リンちゃん良かったよぉ!! ……ってあれ? 何処なのここっ!?」

 

 

すっかり目が慣れたなでしこが歓喜したと思ったら即、驚愕の声を上げた。

忙しないやつとは思ったが、そのなでしこの混乱した様子でこれが現実であることをようやく受け止めることが出来た。

 

 

青い空の下にある駅のホーム、それが今、二人の立っている場所だった。

 

 

ホームにはちゃんと線路もあり、それはどこまでも続いている様に長く果ては見えない。

まるであの廃線跡のように見通しが利かなかった。

だが、あの錆て古ぼけた線路とは違い、一つの傷もない新品同様の線路だった。

 

 

周りは白い砂の様な大地と池のような水たまりがホームを囲むように無数に広がっており、遠くには地平線も浮かんでいる。

あまりにも広大すぎて身震いした。

 

終わらない夜の小平口と対極をなす、白い砂漠のオアシスみたいな光景であった。

 

日は差しているが熱さは感じない、それに太陽が見当たらなかった。

 

 

「ふおおぉぉぉ! ここアレだよっ! ほらっ、OPでバルバトスが倒れていたとこっ! なんだっけリンちゃん、ほら、あそこっ! 私、今アニメと同じ世界にいるんだっ!」

 

肝心の名前が出てこないのか、なでしこがバタバタと手を振り回しながらリンに尋ねてくる。

 

 

「バルバ……?」

 

 

なでしこが何を言いたいのかリンには全く理解出来なかったのでとりあえずスルーした、どうせアニメか何かの例えだろうし。

 

 

(って、なでしこのやつアニメと現実をごっちゃにしてるぞ……)

 

 

でも、それほど間違っていないのかもしれない。

先ほどまで居たはずの小平口町でのことも夢の中かと思うほどに現実感がなかったわけだし。

 

ここでの光景もそう、どこか地に足が付かない感覚があった。

 

夢の中の夢……とか意味が分からなすぎるが。

 

 

「なでしこ」

 

「うん? どったのリンちゃん」

 

ちょっと慣れてきたのか、物珍しそうにあたりをキョロキョロとしているなでしこ。

それは熱に絆されたように夢見心地の顔であった。

 

 

その様子からリンはちょっと確かめてみたくなった。

 

 

「ちょっとさ、腹パンしてもいいか?」

 

リンは無表情のまま拳をぐっと握り、なでしこのお腹に狙いを定める。

 

突然物騒なことを言われたのでなでしこは飛び上がるほどビックリして意識を現実へと戻した。

 

 

「い、嫌だよっ! そんなことされたら私泣いちゃうよっ! どうしてそんなことしようとするのっ!?」

 

 

思わず手でお腹をかばってしまう、それぐらいリンは本気の目に見えたから。

 

 

「いや、夢かどうか分かるかと思って……」

 

「他の方法で確かめてよぉ……」

 

脱力した様にその場に膝をつくなでしこ。

 

妙案かと思ったんだが……まあ夢にしてはリアルすぎるけどさ。

 

 

折角だから自分の横っ腹をぽこんと殴ってみた……普通に痛いぞ……。

 

 

……やっぱり現実か……確かめるべきもないことだけど。

 

 

 

少し涙目になったリンは恥ずかしさを隠すように再び頭上を見上げてみる。

 

ホーム上部にはちゃんと屋根が設けており、乗客が待つためのベンチも備えてあった。

ホームに面している線路は一本だけで、行先を示す表札も時計すらもない、あまりに簡素な作りをしていた。

 

どこまでも続くような線路、その上には架線も引いており、ちゃんと電車が走れる構造になっていた。

 

誰が利用するかは分からないが、まるで砂漠の上の秘境駅だった。

 

 

「ここ……何駅なんだろうね?」

 

少し落ち着いた口調でなでしこが尋ねてくる。

なでしこもこれが現実であることに理解したのだろう。

 

 

「あの廃線跡じゃないみたいだし、前になでしこが乗った大井川鐡道とも違うみたいだね」

 

 

リンは春頃三人で井川方面にキャンプに来たことを思い出した。

あの時なでしこだけは電車を使っていたのだが、ネットで調べたときもこんな駅は無かった気がする。

 

何より駅名を記すものがないのでどの県の何という路線なのか特定出来ない。

ただ意味の分からないプラットフォームがある、そういう場所だった。

 

 

さらに。

 

ホームの傍に寄り添うように一軒の家が建っていた。

 

 

「リンちゃん、リンちゃん、あれってもしかして二人が言ってた”あの家”なんじゃないかなっ」

 

「あ、そういえば確かにそれっぽい」

 

なでしことリンはひそひそと小声で話し合った。

今更こんなことをしても無意味かもしれないが、住宅を前にして誰がいるともしれないので気を遣っておいた。

 

燐と蛍から聞かされていた不思議な世界にある不思議な家の事……作り話とはちょっと違うと思っていたけど、実際にみると良く分かる。

 

確かに不思議な光景だった。

 

 

そして多分これが……。

 

 

「二人の言っていた”青いドアの家”なのか……」

 

「きっとそうだよっ。玄関青くて綺麗だしっ」

 

 

この家のことは話に聞いていたが、実際見るのは初めてだった。

 

表札のないその家はその名の通り、鮮やかな青の玄関扉を確かにつけていた。

外観はよくある分譲住宅のような作りになっており、ドアと屋根が青く塗られている以外にはこれといって特徴はない。

ただ、青と白のコンストラクトがこの世界とマッチしてそれほど違和感を感じなかった。

 

 

どこな厳かで静謐な空間に駅のホームと普通の家が建っている、不思議以外の表現がない。

 

それにどうやらこの家に電力が供給されているようで、二階からケーブルで繋がっているようだ。

そのことから誰かが住んでいることが伺えた。

 

 

 

「だーれーか、いーまーすかー?」

 

跳ねるように近づいたなでしこが、ひょこっとと窓の外から中を覗いていた。

リビングの中の家具が見えるが、誰の姿もない。

 

 

「誰もいないっぽいねぇー」

 

 

傍からみると通報もの行為をしてるなでしこ。

 

あえてスルーしたリンは青い玄関扉の脇に立ち、少し躊躇した後、思い切ってチャイムを鳴らしてみる。

 

 

 

ピンポーン、ピンポーン。

 

 

玄関越しに呼び出しの音が聞こえるが人が出てくるような感じはしない。

 

もう一度試してみるかと思ったら、いつの間にか傍に来ていたなでしこが面白がって呼び鈴を連打した。

 

 

ピンポーン、ピンポーン。

ピンポーン、ピンポーン。

 

 

「ピンポーン、ピンポーン! 各務原です!」

 

 

(……小学生みたいな真似するなよ、恥ずかしい……)

 

 

…………

 

……

 

 

……何度鳴らしても、声を掛けても誰も出てはくれなかった。

 

不思議そうに首を傾げたなでしこは、さも当然のように玄関のドアに手を掛けた。

がちゃりと音がしてドアが開く、カギは掛かっていなかった。

 

自分達以外誰も居ないのだから鍵など無用なのかもしれない。

 

 

なでしこはそのまま玄関ドアをすべて開けるつもりのようだ。

 

 

音もせず青いドアは開かれていく、その中は……。

 

 

……なんてことはない、中の玄関先も至って普通だった。

 

 

靴が一足もないのでモデルハウスかと思えるほどに小奇麗だった。

さすがにスリッパまでは置いていなかったが。

 

 

「おっ、じゃまします~!!」

 

 

誰も出てこないのを言いことに、なでしこはそれこそモデルルームの見学者のように靴を脱ぎ、躊躇うなく家の中へと入っていった。

 

 

「……お邪魔します」

 

 

なでしこの厚顔無恥な振る舞いにリンはため息をつきながら、同じように靴を脱いで中へと入った。

 

 

……さすがに気になったので自分の靴と脱ぎ散らかしたなでしこの靴を揃えて置いた。

 

こんなことをしても不法侵入には変わりないのだが。

 

 

 

 

 

──本当にモデルハウスなんじゃないか?

 

 

そう思えるほどに家具は綺麗できっちりと配置してあった。

 

 

ソファーやテーブル、テレビもあり、ごく普通の家具しかない。

強いて違いを言うなら液晶テレビが壁に掛けてあるぐらいであとは何処にでもあるものばかりだった。

 

 

「ふおぉぉー、ふかふかだぁ~!」

 

 

勝手に人の家に上がり込んでいるだけでも相当な行為なのに、そのソファーで勝手に寝ころんでいた。

 

 

「なんの番組かな? 同じような映像に見えるけどねぃ」

 

 

更に寝ころんだままリモコンを手に取り、テレビの電源まで入れていた。

すっかりくつろぎモードのなでしこ、親戚の家か何かと勘違いしてるんじゃなかろうか。

 

 

かるい頭痛を感じながら、リンは立ったままテレビモニタの映像を眺める。

 

白い地面の線路を電車が走っているような映像、カーブもなく直線ばかりなので同じような映像に見える。

 

あまりに代わり映えしない映像というのはさすがに退屈を覚えるものだ。

しかも音声も無いものだから尚の事詰まらない。

 

それに線路の上を走るだけの映像……既視感が無いわけでもない。

 

 

「……こういうの動画サイトで見たことあるよ。電車の運転席のライブ映像。最近は海外からのが多いみたい」

 

「じゃあこれは外国の線路からのライブ中継かなぁ?」

 

「どうなんだろ……」

 

そのまま二人は映像を眺めて続ける。

 

しばらく見続けるが、これといった建造物等が映らないので何も分からない。

海外というよりも異世界の映像にも見える程に殺風景すぎた。

 

 

「ねぇ、リンちゃん。この映像ってここの世界でのライブ中継かも。だってほら外と同じような景色だよこれっ!」

 

映像をじっと見ながら、なでしこは液晶テレビに指を差した。

なでしこにしては鋭い考察だったが、それなら別の疑問が浮上する。

 

「そう、かもね。だったらどこ向けの映像を配信してるんだろう」

 

 

仮にここ電車のライブ映像だとしても何の意味があるのだろう、まさか私たち向け? だとすればこのライブ中継が電車がホームに来る目安にでもなるのだろうか。

 

リンは窓の外の景色をぼんやりと眺めてみる。

改札口もない無人のホームに目を向けてみても、到着のアナウンスも電光掲示板も何もない。

 

つまり、ただ無意味なプラットフォームだった。

 

 

ゆったりと雲は動き、穏やかな時間が外と内に流れていた。

いつ来るか分からない電車を待つのにも飽きたので、リンはなんとなく家の中を再度見渡してみる。

 

当たり前のようにキッチンもあった。

よくある普通のアイランドキッチンで、食器等は置いてあるが使われてないかのように綺麗で整然と並べられていた。

 

 

(やっぱりモデルハウスか? でもここに建ってても宣伝にもならないだろうに)

 

 

リンの視線がすでにテレビではなくキッチンに向けられていることに気づいたなでしこは、同じようにテレビから興味をキッチンへと移して、跳ねるようにキッチンに近づいてきた。

 

料理を作るのが得意だったのでやっぱりキッチン関係の道具が気になるかと思ったのだが、まず最初になでしこが目を付けたのは案の定、冷蔵庫だった。

 

 

「何か食べ物あるかな~?」

 

 

欲望を隠そうともせず、歌う様に冷蔵庫の扉をあげるなでしこ。

やはり居心地が良いのか、もはや自宅の冷蔵庫感覚だった。

 

「あっ!」

 

中を見て驚いた声をあげる、冷蔵庫の中は……予想と違っていたのか空っぽだった。

 

あううぅぅ、落胆した声をあげるなでしこ、仮に中に何か入っていたら食べるつもりだったのだろうか? 

いや食べるだろう、コイツはそういうやつだ、リンは経験則からそう確信できた。

 

 

諦めきれないなでしこは野菜室や冷凍室まで片っ端から開けてみるが結局何一つ入っていなかった、氷の一欠けらさえも残ってはいない。

 

なでしこは脱力したようにぐだっとソファーに寄りかかった。

 

 

「アイスぐらいあると思ったのにぃ……」

 

「バナーナでも良いのになぁ……バナーナ……」

 

 

なでしこの食い意地に呆れたリンだったが、そんなことよりも先ほどから妙に落ち着かなかった、何かの疑問がずっと取れず違和感を感じていた。

 

 

そんな折、ソファーでぐだぐだするなでしこの背中を見てようやくあることを思い出した。

 

 

「私たちの荷物どうしたっけ?」

 

 

やけに身軽だったのでついつい忘れていたが、リンもなでしこも上下のジャージ以外身に着けていない、肝心のキャンプ道具一式を持っていなかった。

 

 

「あれ? そういえばそうだねぇ。どこかに忘れてきちゃったかな?」

 

 

言われて他人事のように背中を確認するなでしこ、ずっと使いこんできたリュックさえも背負っていなかった。

 

 

「ホームに置いてきちゃったか?」

 

「戻って取りに行こうよ!」

 

 

考えられるところだとそこなのだが、荷物を下ろした覚えはない。

それでも確かめに行くしかなかった。

 

 

それにここに居たって特に変化はなさそうだし。

 

 

ソファーから跳ね起きたなでしこと共に家の玄関に向かおうとしたその時。

 

 

「あなたたちの荷物はそこにあるわよ」

 

 

二人の背後から柔和な声が響いてきた。

 

 

「うひゃぁぁ!!」

 

「うわっ!!」

 

突然の事だったので大声を上げてのけぞってしまった。

 

恐る恐る振り返るとそこには綺麗な黒髪の女性が一人立っていた。

手には不思議な模様の鞠を大事そうに抱えて。

 

燐や蛍のような同年代の少女とは違う、大人の女性。

 

 

「あら、ごめんなさい。()()()()驚いてしまうようね」

 

 

女性は頬に手を当てて、少し小首を傾げた。

やっぱりという事は前にもこういうことがあったのか。

 

未だに驚いて声も出ない二人に女性は言葉を続けた。

 

 

「それでこれはあなたたちの荷物で間違いないのかしら」

 

 

 

女性がすっと指を差す、その方向に目だけ向けると確かに私たちのキャンプ道具が積まれていた。

さっきまでそこには何も置いてなかったはずなのにどうなってるの?

 

困惑の視線で女性を見ると、その女性は薄く微笑むだけだった。

 

 

「えっと、あの……」

 

リンは何かを問いかけようとしたが、その前に。

 

「立ち話もなんだし、そこへお掛けなさい。長旅で疲れてるんでしょ?」

 

 

「あ。はい!」

 

すっかり緊張しているなでしこが裏返った声で返事をする。

リンは頷くだけに留めた。

 

 

なでしことリンは長めのソファーに並んで座った。

女性は傍らの小さめの椅子に腰を掛ける。

 

 

沈黙した空気の中で先ほどまでのテレビの映像だけが悠然と流れていた。

しかし音は流れていないので緊張感を緩和するには至らない。

 

 

女性の前でかちかちに固まる二人。

何か話さないと喉が枯れそうになるが、何から話していいか分からなかった。

 

 

リンは思わず横目でなでしこに合図を送るが、ぷるぷると首を振って拒否されてしまう。

 

 

(多分この人だよね……でも何て言って切り出そうか?)

 

 

こんなとき物怖じせずにがんがん行くはずのなでしこが、今は借りてきた猫の様に萎縮している。

この人の醸し出すオーラにやられたのか? 確かに只者ではない感じはするけど。

 

リンは俯いたまま、横目でちらりと女性の顔を見る。

目をまともに合わせられないぐらいに綺麗な人だ、そういう意味ではなでしこのお姉さんに似ているのかもしれない。

少し古風な感じが顧問の鳥羽先生にも少し似てる……かな? 雰囲気はまったくの別人だけど。

 

それにしても。

 

 

(変わった着物着てるよね。着付け大変そう……肩こらないのかな)

 

その容姿と服装から、この女性はお伽噺からそのまま出てきたような感じがあった。

 

 

思考が絡まっているのか、どうでも良い事ばかりが頭に浮かぶ。

隣に座るなでしこも珍しく口を引き結んで黙り込んでいた。

 

 

そんな様子を見かねてなのかは分からないが、女性はため息交じりに声を掛けてきた。

 

 

()()()()()から色々聞いてるんでしょ? この世界のこと、そしてわたしの事も……」

 

あの子たち、とは蛍と燐の事だろう、なでしこもリンもそう理解した。

そしてこの人が二人の言ってた()()()なんだ、きっと。

 

 

「あの、えっと、あなたがその、”オオモト様”……なんですか?」

 

 

かなり不躾な質問になってしまったが、とりあえず聞いておかねばならない事をリンは尋ねた。

 

「ええ、そうね」

 

 

黒髪の女性──オオモト様は短く答えた。

 

 

それで納得した。

燐と蛍の言う”安全な場所”というのはここに違いない。

 

 

”青いドアの家”とそこに住む”オオモト様”、そうそう来れない場所とは言っていたけど、じゃあ、なんで”私たちは”ここに来れたんだろう。

 

 

いちおう周りを見てみるが、燐も蛍も今ここにいる感じはない。

 

 

「今、ここに居るのはあなたたちだけよ」

 

 

考えを見透かしたようにオオモト様が口を開く。

リンはバツが悪そうに愛想笑いを返すだけだった。

 

「じゃあ蛍ちゃんや燐ちゃんは後から来るんですか?」

 

それまで黙っていたなでしこが顔を上げてオオモト様に尋ねた。

 

 

「それは、分からないわ。ここは世界の狭間にあるの。あちらの世界とこちらが重なり合うとき、その僅かな時間だけ来ることができるのよ。もっとも誰でも来れるわけではないけれど」

 

 

母親が子にお伽噺を聞かせるように、柔らかい声色でオオモト様が説明してくれた。

 

……話の半分も理解出来なかったけど……。

 

 

「えっと……に、日本語でお願いしますっ!」

 

混乱したなでしこが降参したようにペコリと頭を下げた。

 

 

(最初っから日本語だろ……でも私も理解できない……。あの二人は何か分かってたんだろうか?)

 

リンの脳裏に燐と蛍の顔が浮かぶ。

どこか透明感のある二人だったけど、同時に憂いも帯びていた。

 

今思うと二人の雰囲気はこの青と白で構成された世界とよく似ていた。

 

純真さの青と潔癖の白。

燐と蛍はこの二色で出来ていると言っても良いぐらいに透き通っていた。

 

 

 

「あの子達は自分の進むべきところに向かっているわ。そしてそれはもうすぐ終わりを迎えるはず」

 

”終わり”その言葉のニュアンスにとても嫌な感じがしていた。

悪気のある言い方ではないが、不安な感じをより大きくさせた。

 

 

「私たちもそこに行きたいです。どうしたらいいんですか?」

 

 

リンはオオモト様の顔を見て問いただす。

まともに顔も見れなかった人なのに、今はちゃんと目を見て話すことが出来た。

 

この人ならなんでも知ってそうだし、何より私たちの助けになってくれそうだったから。

 

 

「あなたたちは……」

 

なでしこがごくっと唾を呑み込んだ。

リンも固唾を飲んでオオモト様の言葉を待つ。

 

「あなたたちは、とても幸運なのよ」

 

 

「私たちが……幸運、なんですか?」

 

オオモト様の言葉をなでしこが復唱する。

それは意味が分からないことを公言しているようで、疑問の色が見えていた。

 

 

「この町に来て、様々な不可思議な出来事に襲われたと思うわ。でも、あなたたち二人は今、無事でいる。それは幸運の働きがあったからよ」

 

オオモト様は淡々とした口調でそう続けた。

 

言われてみると確かに幸運なのだろう。

でもそれは絶望の中の希望というか、地獄に仏といった感じの九死に一生を得ただけのことで、幸運を既知として感じたことなどなかった。

 

燐と蛍と出会ったことはまぎれもなく幸運だったけれど。

それですべてを帳消しには出来ないほどに絶望を味わったのだから。

 

 

「だからあなたたち二人にはそのままの道を行って欲しかった。そうすれば元の世界に帰ることが出来たのよ」

 

オオモト様の言葉にリンとなでしこは顔を見合わせた。

だがそれは後悔の顔ではなく、むしろ……。

 

「実は……なんとなくそんな気はしてたんだよねぃ」

 

「……うん」

 

普段とは違うどこか諦めた感じの口調でなでしこが呟く。

その顔を見たリンもため息交じりに頷いた。

 

 

「そう、それならあの道に戻ったほうがいいわ。今ならまだ間に合うはずよ。すべてが消えてしまう前に」

 

「でもそれじゃあ、燐ちゃんと蛍ちゃんはどうなるんですか?!」

 

普段、寡黙なリンが珍しく声を張り上げた。

博愛主義というわけではないけれど、それでも自分達だけ戻るなんて出来なかった。

 

 

「私たちだけじゃなくて、燐ちゃん、蛍ちゃんも助けてあげてくださいっ! そのためなら私たちなんでもします! ねっ、リンちゃん!」

 

縋る様な瞳でなでしこが訴え掛ける。

 

「うん。二人には色々助けられたんだ、だから今度は私たちが助けなきゃね」

 

 

リンはなでしこの訴えに深く頷いて答えた。

燐と蛍がいたからここまでこれたんだ、だから今度はその想いを返してあげるんだ。

 

二人にどんな辛いことがあるのかは分からない、それでもこのまま黙って帰るほど私もなでしこもそれほど薄情じゃないんだ、むしろお節介かもしれない。

 

帰る家は違っても、私たちはここから誰も欠けることなく()()()()に出る、そう決めたんだ。

 

 

「あなたたち、燐と蛍のことは好きかしら?」

 

 

オオモト様はにこやかに微笑む。

その急な質問に、二人ともどきりとした。

 

「うん。燐ちゃんも蛍ちゃんも、大好き! 二人は一緒にキャンプしてくれた大切な友達なんだ!」

 

「私も燐ちゃん、蛍ちゃんは好き、だよ。でも、だからこそ助けになってあげたい……」

 

大っぴらに好きを宣言するなでしこと、恥ずかしいのかたどたどしく言うリン。

 

二人の価値観の違いが垣間見えるようだった。

 

 

「リンちゃんってば照れてる~」

 

「う、いいじゃないか……恥ずかしいこというなよ」

 

なでしこが軽く肘でつついてくる。

それに照れ隠しをするように少し語気を強くしてしまうリン、やっぱりこういうのって口に出すのは恥ずかしい、ホントに。

 

 

「そう……」

 

 

二人の告白を受けて、オオモト様は眉根を下げて瞼を閉じた。

それは哀しさを表しているように見えて、少し空気が重くなった。

 

「だったら、尚のこと元の世界へ帰ることね。だってあの二人はそれを望んでいるのだから」

 

 

「でも、それじゃあ──」

 

すかさずなでしこが声を上げる。

でもその先の言葉が続かなかった。

 

 

「あなたたちは何を願い、何を望むのかしらね。すべてはあなたたち自身の中にあるわ。転がった石をまた戻そうとしても何も変わらないのよ」

 

 

静かな声でオオモト様はそう忠告した。

謎かけのような言葉になでしこもリンも考え込むように黙り込んでしまった。

 

 

私たちの中にあるということは、本心を知るということなのか。

互いの心の内を探るようになでしことリン、お互いは自然に視線を合わせた。

 

 

──なでしこは。

 

──リンちゃんは。

 

 

何を本心から望んでいるのだろう……。

瞳を閉じて考えても心の内までは見えてこない。

 

 

それに転がった石とは、それは何の比喩なんだろう?

オオモト様の言葉は分からないことだらけだった。

 

 

 

「それって、どういう意味なんです…………か?」

 

妙な胸騒ぎを感じたリンがオオモト様にその真意を問いかけようとしたのたが……。

 

 

 

「私、富士山大好きなんですよぉ~。ほらこのシャツ、可愛いでしょ?」

 

 

「あら、本当に可愛いわね。あなたの富士山への愛を感じるわ」

 

 

緊張感のあった空気は何処へやら、いつの間にかなでしこがジャージの前を開けてオオモト様に”富士山スキー。”Tシャツを見せびらかしていた。

 

それに呆れることなく素直に受け止めるオオモト様、その微笑みは幼い少女の面影を宿しているように見えた。

 

 

意味深な言葉を言ったばかりなのに切り替えが早すぎるというか何というか。

 

 

……この人は本当に何なんだろう……?

 

 

和やかな雰囲気で話す二人とは対照的に、リンは一人深いため息をついていた。

 

 

────

 

──

 

 

 






うむー、なんかまた風邪ぶり返しちゃったかも……。
だってうちのマンションのエレベーター、いつの間にかエアコンつけてるんだもーん。
そりゃあ換気が重要なのは分かるけど突然ついてるとビックリするよー、中狭いから寒いんだよーーー!!

そんなわけでまだ体調は微妙なカンジです……。

仕方ないのでなるべくエレベーターは使わずに、用事の時は階段を利用しています。
でも、これはこれでしんどいです。最近急に暑くなってきましたし……まあ、運動不足解消には良いかもしれないですけどー。そこまで高層階じゃないのがせめてもの救いですね……。



☆アニメ版、ゆるキャン△ &へやキャン△

寝込んでたときに一気見しましたよーーー。
思ってたよりも悪くなかったなぁー。っていうか食わず嫌いでした。

ぶっちゃけ良かったです! 正直期待以上の出来でした。これなら2期にもかなり期待できます、っていうか見ます!

なでしこが主役なのは、うーん……今後の展開を見通したのかもしれないですね。なでしこは出番多いし、今回の私の話にも出してみましたが、とにかく使いやすいというか話を組み立てやすいんですよねー、主役なのも致し方ないかな? と改めて思いましたねー。

アニメに関連して4月29日にへやキャン△ 映像特典のスペシャルエピソードが一日限定で公開されましたねー。10分程度の映像ですが大変良かったです。元の話が好きだったのでより良かったなあ。やっぱりリンのソロキャンエピソード好きだなあ……。

ついでに特典の映像3つも見ちゃいましたし、COMICファズをDLして単行本化されてないところも見ちゃったり、アンソロジーも見たりと、図らずもゆるキャン△ 尽くしでしたーー!!

でもCOMICファズ……ちょっと使いづらいです……。
他のコミック系アプリもこんなもんなんですかねぇ? まあ無料で見れるコンテンツが多いから仕方ないのかもしれないですけど。

原作マンガ→ドラマ版→アニメ版とかなり変則的に見てきましたが、今更ながらゆるキャン△ 熱が再熱しまくりですよー。
興味なかったアニメ版2期も今から待ち遠しいです。梨っこ号にもちょっと乗ってみたかったかも……。

それにしてもゆるキャン△ 関連グッズ多いなあ……なでしこのリュックやリンちゃんの鉈まで商品化しているとは……。

青い空のカミュも便乗して、燐ちゃんの鉄パイプ(実物大)とか、蛍ちゃんの消火器(検定済み)とか出してもいいかもですね!
青い空のカミュの”刻印”を入れておけば、全国800万人の青カミュファン(過大申告)が買いますよ、多分。
私だって出たらきっと買います! いや、多分……気が向いたら……お値打ち価格だったら……いずれは……。

そういえば青い空のカミュ、GWセールでまたまた半額セールしてますねー。
なんかもう半額期間の方が長いのではといった感じになってますね。
いちおう5月11日までの期間限定なので、未プレイの方はチェック……って毎回同じようなこと言っててあれですね……。

KAIの広報じゃないはずなんですけどねーー。でも良いゲームなのでこの休日の時に色々な人に知ってもらいたいです。

──ステイホームのお供に青い空のカミュ。
なんだか切ない黄金週間になりそうですが、それが良いんですよー。

私も一年前、切ない気持ちのままのGWだったなーとか思い出します。


いつの間にやらもう5月ですかーー早いですねー。
今年のGWはウィルスで静かな感じになりそうですね。しかも私は小説に追われながら休日を過ごすことになりそうです。


結局4月に終わらなかった……。
でも5月には終わらせられるはず──。



それではではー。



 
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