かみゅキャン△ ── Camus Canp ──   作:Towelie

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過剰な好奇心は身を滅ぼす。

そんな言葉が似あうほどに理不尽と言うか不可思議な出来事だった。

線路の脇にあった転轍機(てんてつき)、ただそのレバーを軽い気持ちで引いただけなのに。

こんなことになるなんて誰が予測できるのだろうか……。



「根元からいっちゃってるね……」


「うん……大分古いものみたいだからね、中が腐ってたのかも」


蛍と燐は折れた標識の木の根元を見ながら倒れた原因を調べていた。
折れた断面は腐敗でボロボロになっており、いつ崩れてもおかしくない状態だったのかが確認できる。
こんな危うい標識の下で、つい先ほどまでみんなで会話していたのだから割とぞっとすることだった。
倒れた衝撃で白い木の破片がそこらじゅうに散乱して、事の重大さを思い知らされた。


辺りを探ってみたが転轍機とこの標識を結びつけるものはない。
連動させる仕掛け的なものなどどこにもなかったのだ。
そうすると倒れたのは偶然と言える、でも倒れた場所は偶然にしては出来過ぎていた。


標識が倒れた方の線路、すなわち右方向へは標識が障害物となって道を塞いでいる。
白い柱が壁のように横倒しとなっていた。
けれども完全な通行止めというわけでもなく、足をかけて登れば比較的簡単に越えることは出来そうである。


「う~ん、鉛筆立て占いだと、倒れた方向が正解なんだけど……むむぅ~」


唇に指をあてて、への字口に眉を寄せながら思案するなでしこ。
確かに鉛筆立てだと倒れたほうが正解なのだが、スケールが違い過ぎた。
衝撃もそのショックも鉛筆とは駆り知れないほど大きい為、比較対象には遠かった。


「でもこれ道を塞ぐように倒れてるんだよ。その場合左の道に進むのがいいんじゃないの?」


もしこの標識が倒れたことが意図的であったとしたら、リンの言う通り無事な道の方が正解の可能性もあった。


たんなる好奇心で作動させてしまった転轍機。
だが線路の分岐もちょうど左の線路へ進むように切り替わっていたので、万が一列車がきても大事故にはならなそうだった。

()()()()()()では右に行く方が列車に遭遇する事もなくこの先が安定しているのかもしれない。

結局、こういったハプニングがあっても進む先を決めあぐねている。
何をしても人は迷うということを意味しているのかもしれない。


「燐、危なくない?」


「うん。わりとしっかりしてるよ」

燐は倒れた標識に足を掛け、その上に立っていた。
上に乗ってみると、その太さは十分なもので人が立つだけの幅は保っていた。
折れたところは確かに脆かったが、倒れた部分はまだ丈夫で、足で強度を確かめるように踏みつけてみるがそう簡単に砕ける様子はなさそうだった。


「あ! 見晴らし良さそう~!」


燐が柱に登っているのを見て、なでしこが目を輝かせながらこちらへとやってくる。

燐となでしこ、二人登っても横倒しになった柱はびくともしない。
あの根元に近い部分だけが腐敗していたのかもしれない。


「やっほ──!」


対して高くない場所でなでしこが山の定番をする。
静まり返った緑のトンネル内でその声だけが、それこそ木霊の如く響きまわった。


(アイツ、富士山にでも登っているつもりか?)


リンはジトっとした呆れ顔でその無邪気な様子を見つめていた。

なでしこはすっかりこの空間を楽しんでいるように見える。
順応性の高さが彼女の持ち味だった。


燐はふと、倒れている白い柱を客観的に眺めてみる。
矢印の看板も取れて、原型も分からないほどバラバラになった木の柱、それはもはや標識でも看板でもなかった。
ただの白い柱とその瓦礫だけが残されている。


その無残な姿はサイズこそ違うけれどあの白い風車の姿と重なって見えた。
山の上にぽつんと立っていたあの白い風車、それが倒れているように見えて、燐はなんだか無性に悲しくなってしまった。

聡が好きだったものが否定されたみたいで……。


「燐ちゃん、だいじょうぶ?」


隣で山彦を出していたなでしこが、いつの間にか心配そうに燐の顔を覗き込んでいた。
自分のせいで嫌な気持ちにさせたのかもしれない、なでしこの顔がそう言っていた。


「えっと、大丈夫。ちょっとぼーっとしてただけだから」


「本当? なら良かったよぅ。でも、もしかして高所恐怖症だったりして~?」


「えっ、ちがうよ~」


誤魔化す様に笑う燐をからかうなでしこ。
二人は仲の良い友達のようにじゃれ合っていた。

(燐……)

そんな燐の様子を蛍は心配そうに見上げていた。
燐の辛さを分かっているだけに、はしゃぐ燐の姿を見るのは悲しかったから。


───
──




「それじゃ、みんないーい? いっせーのせ、で指差すんだよ~?」


(なんでなでしこが仕切ってるんだ……)


なんとなくモヤっとした感情がリンに湧きあがる。
でも二人は特に気にしていないようなので胸中に収めた。


「いっせーのっ!!!」


なでしこの掛け声に合わせて、少女達は自らが行きたい方向を指で差した。
自分達が進む道をあたかも照らし出すように。

それは偶然にも四人とも同じ方角を差していたのだ。





「おっとっとっと、っと」


「なでしこ、遊んでると落ちるぞ」


少女たちは白い標識が倒れた道に進むことに決めた。
白い障害物を乗り越えてその先へと進む。

ちょっとしたアドベンチャー気分になでしこのテンションは上がり調子だ。
リンは顔にこそ出さないがそんななでしこのおかげで少しは救われていた。

あれだけ怖がっていたのに今は嘘の様に明るいなでしこ、怖さよりも楽しむことを選んだその順応性の高さはリンも見習うべきところだった。



「蛍ちゃん、つかまって」

「うん」

先に柱に登っていた燐が蛍に手を差し伸べる。
転ばないようにしっかりと手を繋いだまま、ゆっくりと手を引いてあげた。

「んしょっと。それにしてもなんか悪い事しちゃったね」

「うん……」

折れて根本だけ残った標識を見ながら蛍はつぶやいた。
白く大きな標識は今は見る影もない。
余計な事しなければよかったと今更のように後悔しても時間は戻ってくれなかった。

「でも、誰も怪我がなくて良かったね」

燐の好きな透き通った蛍の笑顔、いつまでも眺めていたいほどにきらきらとして眩しい。
そのはずなのだが──。


(えっ?!)


一瞬、ほんの一瞬のことだった。
燐は大きく目を見開いて、何度も瞬きをする。


「燐、どうしたの?」

蛍は眉根を寄せて心配そうな顔を向けてきた。
燐の突然の態度に蛍は焦燥感を募らせてしまう。


「あ、えっとぉ……」

改めて蛍の顔を見た。
今度は大丈夫のようで一安心したように深いため息をついた。


「……なんかね、目にゴミが入っちゃったみたい。でも、瞬きしたら取れちゃったよ」


「なんだ、それなら良かった」

ほっ、と蛍は胸をなでおろす。
燐にもしものことがあったらと考えると気が気じゃなかったから。


「ごめんね、気を遣わせちゃって……」


「ううん、気にしてないよ」

燐が頭を下げると、蛍はふるふると軽く首をふった。
それに合わせて長い髪も舞うように揺れて、女の子らしい仕草を見せた。


「燐ちゃ~ん、蛍ちゃ~ん、先に行っちゃうよ~!」


少し先を行っていたリンとなでしこがこちらを心配するように呼んでいた。


「ごめん~、すぐ行くね~!」


少し焦ったように手を振り返す燐。
そして蛍の両手を取ってまっすぐに見つめ直す。


「行こうか蛍ちゃん」


「うん」


二人は確認し合う様にうなずいて、少し小走りに線路を駆けだしていった。
なでしことリンの姿を追いながら、燐はさっきの目の異常を思い返す。

(あの時……ほんの一瞬だけど蛍ちゃんの顔が見えなかった。まるでモザイクが掛かったかのように……何だったんだろうあれ……)


「……」

考え込む仕草をみせながら歩く燐の背中を、蛍は黙って見つめていた。

寂しさを瞳の奥に滲ませながら、それでも燐の後ろについて歩いていた。





Glitch

白い瓦礫の山を越えても、線路も緑のトンネルも途切れることはなかった。

 

同じところを延々と回り続けているように、緑が覆う不思議な景色は変わることを忘れたように続いている。

 

外に居ることを忘れてしまいそうなほど、現実から剥離された緑色の迷路の中。

終わりはあるのかそれとも……誰も答えを知らなかった。

 

知っているのは、あの青いドアの家にいる、あの人だけなのかもしれない。

 

 

──いや、あの人さえも分かっていないの事が起きているのかもしれない。

 

そんな予感めいたものがあった。

 

 

「なんか……周りの森林って変わってきてない?」

 

 

なんとなく辺りを伺いながら歩いていたリンが疑問の声をあげる。

 

なでしこは無造作に緑のトンネルを構成している葉に触れてみた。

 

色は相変わらずの青緑だが……葉っぱというか植物の種類が変わってる?

葉や木が突然別の植物に変わることは物理的にあり得ないが、何でもありのこの世界では無理なことはなさそうに思える。

 

試しに葉を指でなぞってみる、何となくだけどつるつる感がなくなって別の植物の葉になってる気もしないでもない。

そこまで注意深く観察していたわけでも無いので一概に違いは分からないけど。

 

 

燐と蛍もしゃがみ込んで砂利と枕木の間に生える下草を調べてみる。

別に代り映えないようにも見えるが、それを示す根拠もない。

 

ここにいる誰もが植物に関する知識を持っていなかった。

スマホが使えれば写真を撮るだけで調べるアプリもあるのだが、今はもう無理だった。

 

連絡も情報も暇つぶしさえもスマホ一つに頼り切りなことが改めて分かっただけで疑問の答えは見つからなかった。

 

 

「ごめん。やっぱり気のせいかも」

 

 

自分の発言一つでみんなが一生懸命調べてくれるのでリンはとても申し訳なくなった。

 

でもそれを非難するものは誰も居ない、それは僅かだけど同じ様に違和感を感じていたから。

何も変わっていないのに違和感だけは覚える、それは恐怖でしかない。

 

恐れを乗り越えるためには一つづつ潰していくしかないのだ。

 

周囲をさらに注意深く観察しながらも少女達は歩みを止めることはしなかった。

それでも焦ることはなく、むしろさっきよりもゆっくりと散漫な足取りで線路の上を渡って行った。

 

 

 

(あれ? なんか……)

 

 

線路に敷き詰められた砂利の量が減っていることに最初に気づいたのは蛍だった。

さっきから妙に歩きやすくなっていたので、ずっと足元を見ながら歩いていたのでそれに気づくことが出来た。

歩きはじめの頃と比べると明らかに減っている、でもそれは何を意味するかを判断まではできない。

 

それでも確実に量は減っていたので、蛍は燐に声を掛けようと唇を開く、その前に。

 

 

「あっ!」

 

 

蛍以外の誰かが小さく叫んだ。

 

その鋭い言葉に蛍の考えは霧散してしまい、声の方に意識を向けてしまった。

 

 

そこには何かが浮かび上っていた、白く雪のようなふわっとしたなにか。

 

突如湧きあがったもののに、彼女らは恐怖の叫びや慄いた態度をみせなかった。

ただ魅入られたように口をぽかんと開けて、その無邪気に浮かぶ白いものを見つめていた。

 

まるで当たり前のように浮かんでいるその白く丸いもの、タンポポの胞子しては大きすぎて、ピンポン玉よりは小さい丸い綿のような物体。

 

 

「ふおぉぉぉ! これクラムボンだよっ! 私、初めてみた~!」

 

 

突如、声をあげたなでしこが興奮したように小躍りしていた。

リンも伸びあがって、その丸い綿毛にある特有の視線を向けていた。

 

(ワンコの尻尾が浮いている……)

 

クラムボンかどうかは別として、緑に囲まれたトンネルで白い綿毛は一際目を引くものであった。

それは少女達の心を和ませるのには十分で、しばらく足を止めてそれを眺めていた。

すると足元から2つ、3つと数を増やして宙へと浮かびだしてくる。

 

なでしこはすかさずそれを捕まえて手の中に閉じ込めた。

少し手を開いて中をみると、薄く発光したような綿毛が掌でふわふわとしている。

本当のクラムボンのようでなでしこはとてもメルヘンな気分になっていた。

 

それはまるで上に向かって降る雹や雪の様で、徐々に景色を白く幻想的に染めていった。

 

 

発生源がなんなのか燐はやおらに足元を見ると、それまでなかったものが突然あった。

細長い葉と、茎、そして先端に白く綿のようなもの被っている多年草。

 

あの時の燐の記憶を揺り動かすもの。

それがいつの間にか線路の脇や、枕木、砂利の間から幾重にも伸びて広がっていた。

 

 

それまでの緑の景色とは一変して、四人は白い綿毛の海の中にいた。

 

 

「これって、綿菅(ワタスゲ)だ……」

 

 

燐は小さく呟いた。

その声はとても小さく、誰の耳にも届かないほどか細いものだった。

 

 

「わたすげ?」

 

蛍はその小さな声を丁寧に掬い上げるように問いかける。

 

 

「うん。確か高い山とか湿原にしか生えないはずなんだけど、どうして……?」

 

 

燐はあのときの幸せだった記憶を再び呼び起こす。

 

聡に背負られながら見たあの美しい風景。

それは燐だけでなく聡にとっても忘れられないほどに色濃く、完璧な瞬間だったはず。

 

好きな人と見たからこその美しさ、何事にも代えがたい時間が確かにあった。

 

 

そして今、オオモト様の言葉が不意によみがえった。

 

”過去の記憶の残像”……確かそんな事を言っていた気がする。

あれは自分とその根源(ルーツ)を知って欲しかった、ただそれだけの事だったんじゃないだろうか? 今ならそう思えてくる。

 

 

だから今ここで発生してるワタスゲの群生は……多分、わたしとお兄ちゃんの忘れることのない大切で大事な記憶。

 

だったら、わたしは……。

 

 

「──ねぇ、蛍ちゃん。わたしね、前にこれと同じ景色を見たことがあるんだ」

 

 

「え、そうなの? もしかして聡さんと?」

 

 

燐は問いかける蛍に背を向けたまま緑の天井に視線を向ける。

雨はまだしとしとと葉を打っていて、振り止んではいない。

その音すらかき消すように、ワタスゲはぽんぽんと音を立てる様に湧きあがっていく。

 

白く淡い風景は何を言っても許してくれそうで、燐は言葉を止めなかった。

 

 

「うん。そう、お兄ちゃんと一緒に……見たんだ。すごく綺麗だった。でもそのとき気づいたんだ」

 

「わたし、この人の事がすごく好きなんだって……ね」

 

 

宙を舞う綿毛の数は更に増えていた。

なでしこだけでなく、リンもその光景に心を奪われていた。

綺麗なものを大事にするように、息を止めてワタスゲの行方を見守っていた。

 

 

「でもね、それは勘違いだったんだ……わたしとお兄ちゃんは違うって今、やっと分かったの」

 

 

「あ、でも、そういうことじゃないからね。なんていうかその……」

 

 

「うん、分かってるよ。燐の言いたいこと」

 

燐は訂正するように手を振った。

でも蛍には燐の言わんとしていることは何となく分かっていた。

それは蛍も同じだったから、燐と同じ思いで今まで来たから分かっていた。

 

燐は一旦深呼吸する、ここからが一番言いたいことだったから。

 

 

「そっか、あのね。蛍ちゃんに聞いてもらいたかったんだ。大好きな親友に聞いて欲しかった、ただそれだけなんだ。ごめんね、もっと早く言うべきなのにね」

 

燐は背を向けているので表情は見えなかったが、涙ぐんだ声にも聞こえた。

だから蛍が返す言葉は決まっていた。

 

 

「ううん……話してくれてありがとう。すごく嬉しいな」

 

 

蛍が言ったのは感謝の言葉。

悲しみを隠すことなく話してくれた親友への感謝の気持ちを伝えたかった。

二人は寄り添う様に立って風に揺られた綿毛の群れを遠くにみる。

 

ワタスゲの種子はなお一層咲きほこって、周囲に種をまき散らすように飛び回っていた。

それが上空にふわふわとあがっていく様子を四人は目で追い続ける。

 

緑の天井に当たると思われたそれは、寸前で消えていた。

雪が解けるようにすうっと空気に吸い込まれるように消えてゆく。

 

 

「あっ……クラムボン消えちゃった……」

 

「ホントだ……」

 

なでしことリンは残念そうに呟いた。

 

その声を合図にしたようにつぎつぎとあがっては消えて行くワタスゲ。

 

あれだけあった綿毛の花もその長い茎さえも何もかもがなくなっていた。

なでしこが手の中に捕まえて置いたワタスゲも跡形もなく消え失せてしまった。

 

全てが雪のように解けて消えた。

何もかもが曖昧なこの世界で、少女たちは夢うつつのように立ち尽くしていた。

 

 

すべて元通りの線路に戻っていた。

トンネルも下草も何もかもが元のまま、違っていたのはほんの僅かな事。

 

 

それは燐と蛍だけが知っている事だった。

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

「なんかさ、どこかと似てるんだよね。気のせいかな」

 

先頭を歩く燐が首を傾げる。

相変わらずの緑のトンネルだが、不思議な違和感はより強くなっていた。

 

 

「うん、わたしも……さっきからそんな気がしてるの」

 

 

蛍の違和感は燐よりも強いもので、歩く感じがどうにも既視感を感じて仕方ない。

近所の小道を歩いているような違和感のない歩きやすさがあった。

 

 

「そういえば、線路なくなってない?」

 

 

リンが足元を指差すと、下の道には線路どころか枕木も砂利もなくなっていた。

いつからなくなっていたのかは定かではないが、ともかくこれが歩きやすさの正体だった。

 

 

「あっ! ほんとだっ! 線路の上を歩くのも楽しいけど、やっぱり普通の道の方があるきやすいねぇ」

 

なでしこは軽くステップを踏んで、踏み心地を確かめるように跳ねていた。

 

道は次第に緩やかなカーブを描くように曲がっていく、それは何かに沿う様に湾曲しているようで、蛍の違和感が確信に変わろうとしている証拠でもあった。

 

 

「あれれっ? トンネルがあるよ……?」

 

 

緑のトンネルの中にもう一つ、一般的によく見かけるトンネルが見えていた。

煉瓦造りの古いトンネルの様で、ところどころ赤錆や苔が蒸していて蔦も垂れているが、その歴史を感じさせる作りが緑のトンネルと妙にマッチしている。

 

線路は途切れてしまったが、恐らく列車が通過していたトンネルなのだろう。

緑のトンネルの先はこのトンネルで蓋をしているように見えて、長い道の終わりが見えた気がしていた。

 

 

「トンネルの中のトンネルって変だよね」

 

 

「そーだよねー」

 

リンの問いに燐は楽しそうに相づちを返す。

二人は妙に興奮していた、ここが勝手に出口だと思っていたから安心したのかも。

 

 

「お化けが出るトンネルだったりして……」

 

 

「ひぐっ! あのトンネル(ミステリートンネル) を思い出すから止めてよ~」

 

 

なでしこは前にこの近辺でキャンプをしたときに通ったお化けトンネルの事を思い出し、身を震わせた。

そのトンネルも鉄道の廃線跡を利用したレトロなものであり、今や観光名所の一つとなっている。

 

「うちの県って心霊スポットとかそういうの結構多いんだよねぇ。そういえばこの前もさ……」

 

 

「う~、燐ちゃんまで怖がらせようとしてるっ!! 蛍ちゃ~ん、りんちゃん達が苛めるよぉ!」

 

 

トンネル一つで異様な盛り上がりをみせる三人に対し、蛍は一人、唇を戦慄かせて立ち竦んでいた。

 

このトンネルに蛍は見覚えがあった。

それは子供のころからあったものだから見間違えようはずもない。

 

廃線跡を利用した観光用の散歩道、それにこのトンネルはあったものだ。

 

 

──だとしたら……!

 

 

喋り続けている三人をすり抜ける様に蛍は一人トンネル内へと駆け出していった。

 

 

(隣県に行かないと行けないないのにどうしてこんなところに出るの?)

 

 

信じがたい事実が膨らみ続けて、パンクしそうだった。

 

 

あまりに急なことだったので誰も蛍の行動に反応することが出来なかった。

 

 

「蛍ちゃん、どうしたのっ!?」

 

 

その長い髪の後姿に慌てて声を掛けるが、蛍は振り返ることすらせずに単身トンネルの中に躊躇なく入っていってしまった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ~」

 

 

慌ててその後を追いかける、燐はそれほど危機感を持っていなかった。

蛍の表情が分からなかったので、たんに出口に行きたかっただけだと思っていたのだ。

 

 

「リンちゃん、私たちも行こうよ!」

 

「うん」

 

なでしことリンも頷き合って後を追った。

 

四人はレンガ造りのトンネルの中に入り込んだ、当然のように照明はついていない。

誰も明かりになるものをこの時は持っていなかったので中も夜のように薄暗く、寒気を感じるほどに冷えていた。

 

この手のものが大の苦手ななでしこは慌てて立ち止まったが、一人取り残されても余計に怖いので無謀とは思ったが目をつぶって走ることにした。

 

 

「待ってよ蛍ちゃん!」

 

燐の声がトンネル内に響きまわって何度も反響する。

それでも蛍は立ち止まらなった。

 

 

かんかんかんかん。

 

四人の靴音が警報機の様にトンネル内で鳴り響いた。

燐はなぜか蛍に追い付けなかった。

暗いトンネルの中で遠近感が掴めないせいなのかは分からない。

業を煮やした燐は本気で走ろうと体に力を入れたその時。

 

 

ぐらりと視界が歪んだ。

 

 

だがトンネルの景色が歪んだわけではない、蛍の後姿だけが灰色に歪んでいた。

燐は走りながら何度も目を擦るが、ノイズの様なものがちりちりと蛍の姿を歪ませている。

 

先ほどと同じ現象が燐の身に起きていた。

 

(ぐっ!)

 

燐は奥歯を噛んでその異常を拒否する。

今は蛍に会うことが先決なんだ、そうすれば治るはず、そう信じて懸命に足を動かした。

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

後ろから何かの声が聞こえてきたので、燐は反射的に身をかわしていた。

 

暗闇の中振り返ると、なでしこが手を振り回しながら猛スピードで追いかけてきていた。

 

あまりの事に呆気にとられた燐は立ち止まり、なでしこの後姿を見送っていた。

そのことで目が覚めたのか、蛍の後ろ姿を見ても、あの奇妙なノイズは嘘のように消えていた……。

 

 

 

……深い青の光が暗いトンネルの奥に見える。

 

すべてから逃げ出す様にその奥の光に身を躍らせた。

 

 

トンネルから出ることが出来た。

が、日が昇っているわけでも白い雲が浮かんでいることもなく、漆黒の闇に包まれた()()()()見慣れた景色があるだけだった。

 

出口付近には蛍が息を切らしたようにぐったりと座り込んでいる。

燐はつっと駆け寄って声を掛けた。

 

 

「大丈夫、蛍ちゃん」

 

 

燐も息を整えながら蛍の肩に優しく手をおいた。

蛍は呼吸を荒くしながらも顔をこちらに向けたまま口を開く。

先ほどのことを思い出して燐は少し警戒したが、その顔は燐の知っている蛍のままだった。

 

……呼吸を整えるために口をぱくぱくと開け閉めしているところ以外は。

 

 

「はあっ、はあっ、り、燐……あ、あれ」

 

まだ息が整わない蛍だったが、それよりも伝えたいことがあるのか、ある方角に指を差す。

蛍の震える指が指し示すものそれは……。

 

蛍だけでなく、燐も良く知っている建造物が暗闇の中で佇んでいた。

 

 

「小平口……駅だよね!?」

 

 

燐と蛍、二人の悪夢の始まりとなった小平口駅。

小さなロータリーを挟んで向かい側の道にそれはあった。

 

一見すると夜の駅舎の風景に見えるが、周りを取り巻く空気が圧倒的に違う。

生命の気配が喪失したように閑散としていた。

 

 

(あれっ? どうして??)

 

 

燐は頭のなかで近辺の地図を描き出す。

 

風車から山の奥に入って、森林鉄道の廃線跡を辿っていったのまでは把握しているが、その先の線路は入り組んでいて方角までは分かっていない。

しかも一本道だと思われた線路は2度も分岐があり、予想以上に複雑化していて、もはやどこに向かっているのさえも分かっていなかったのだから。

 

 

とにかく今はあの小平口駅が目の前にある。

認めなくないが、辿り着いたのはここだったのだ。

 

(そっか、だから蛍ちゃんは焦っちゃったんだ。良く知ってる場所にきちゃったから……)

 

 

燐は蛍の突然の行動を理解した。

 

 

「……燐ちゃん、ここにいると雨に濡れちゃうよ」

 

リンに優しく声を掛けられて、燐ははっと意識を戻した。

引かれるままにレンガ造りのトンネルの中に身を隠す。

もう緑のトンネルは終わっていたので、燐はさっきから雨に晒されていたのだ。

 

暗いトンネルの中で少女たちは身を寄せ合った。

なでしことリンはバッグから急いでランタンを取り出す。

燐もそれを見て、慌ててペンライトの明かりをつけた。

 

ぱっとトンネル内に小さい明かりが灯った。

すっかり忘れていた人工的に無機質な明かり、それが今、みんなの不安気な顔を無造作に照らしていた。

 

今まで忘れていたことだけど、緑のトンネルの中は森全体がうっすらと発光しており、別段明かりがなくとも支障はなかったのだ。

 

それに先の道をランタンなどの明かりで照らしても白い靄の様なものが光を吸収してしまって意味を為さなかったので、バッグに仕舞っておいたのだ。

 

 

 

「これからどうしようか……」

 

 

息が落ち着いた蛍はため息交じりの口を開く。

ここまで長く歩いてきて、結局元の小平口駅では途方に暮れるのも仕方なかった。

 

オオモト様の言う通り、町は完全に閉じてしまったかもしれない。

 

 

「小平口駅って今どうなってるの?」

 

 

少し声を潜めながらなでしこが尋ねてくる。

小平口町にキャンプに来た時は車で送ってもらったし駅の前は通らなかったので、なでしことリンは小平口駅を見るのが初めてだった。

 

 

「うん……わたしたちが到着したときは普通の駅だったんだけど、そのあとあの白いあの人影がいっぱい現れてさ、なんか良く分からない内に地震があって、電車もホームも壊れちゃって……」

 

 

「地震……?」

 

 

リンは腕を組んで考えこんでいた。

なでしことキャンプしてるときも地震のようなものは感じなったし、逃げてるときもそんなことには合わなかった。

 

二人が嘘を言っているわけはないし……うーん、局地的な地盤沈下がおきたとか? 流石にそれはないか……。

 

リンのもやもやは収まらなかった。

 

 

「それであの……白いゾンビってどうなったのかな?」

 

 

「分からない。電車と一緒に殆ど落ちちゃったけど、今は駅がどうなってるかは知らないの」

 

恐々とその時の状況を聞いてくるなでしこに蛍は困った顔で答える。

蛍と燐は駅から裏の林道を使って逃げたので、その後の駅のことまでは分からなかった。

 

 

「じゃあまだゾンビがいるかもしれないってこと……か」

 

 

リンは緊張感を表すように唇を少し舐めた。

今にして思うと緑のトンネルの中は安全だったのだ。

 

 

ようやく出口に辿り着いたけど結局それは振り出しと変わらない。

雨が降りしきる夜の世界は変わっておらず、未だに月明かりも出なければ電気も付いていない。

 

あの時から結構な時間が経っても何も変わっていない小平口駅周辺の景色。

そう思うと急にあの白い影の存在が恐ろしく感じてきて、嫌な現実感がよみがえってきた。

 

 

「とりあえず駅まで行ってみない? あれからどうなったのかはいちおう気になるし」

 

燐は勇気を振り絞って提案する。

ここから蛍の家に戻っても、図書室のある中学校に行ったとしても何も変化はないだろう。

 

だとすると鍵は、最初の異変が起きたあの小平口駅に違いない、燐はそう睨んでいた。

 

それしか行くところがなかったとも言えるが。

 

 

「……うん、わたしは燐の提案に賛成するよ」

 

 

蛍は少し考えた後、燐の提案に乗ることにした。

蛍の中には別の考えもあったのだが、ここはあえて燐のプランを優先することに決めた。

 

 

 

……四人は廃線跡の小道から、ぱっと姿を闇夜の中に晒した。

周囲に目を配りつつも、足早に小平口駅を目指す。

 

 

人数分の合羽はなかったので、みんなそのままの格好で外へ出ていた。

すっかり乾いたはずの頭や服に容赦なく雨が降り注いで瞬く間にびしょ濡れとなっていた。

 

その冷たい雨から逃れる様に、少女たちは一心不乱に足を動かしていた。

 

 

周囲の売店は相変わらず閉まっていて、当然明かりもない。

小さなロータリーを渡って、階段を飛び越える。

短い道のりだが、なんとか無事に駅の扉の前までくることが出来た。

 

大方の予想に反して、小平口駅の扉はなぜか閉まってはおらず、拍子抜けするように駅の中へと入って行った。

 

 

そこはLEDの明かりさえ付いていない、暗く鬱蒼とした待合室が四人を出迎えた。

 

静まり返った駅舎は夏だというのに妙な寒気を感じさせる。

それでも中にあの白い化け物が居ないだけでもマシなのだが。

 

なでしことリンは、小平口駅に入ったことが無かったので、戦々恐々としながらも周りを物珍しそうに眺めていた。

 

待合室の中は休憩するためのベンチやちょっとした売店、待ち時間の為の時間つぶしとして小さな文庫スペースも備えてあった。

 

改札は自動化しておらず、切符切りが硬券を切る、昔ながらのレトロな感じを売りにしていた。

乗降客の大半は観光客を占めるが、それでも通勤や通学にこの路線を使うものも確かにいたのだ。

 

蛍もその稀な乗客の一人だった。

 

 

燐もペンライトの明かりを壁や窓口に向けてみる、少し違和感があったが、何か分からない。

無人の改札にも光をあてる……改札の向こうは雑木林のはずなのに何かがそこで光を遮っていた。

 

光を当てながら少しづつ前に進む、緊張のあまり手が震えてきて、光も同様に震えていた。

それを落ち着かせるために両手でペンライトを握る、少し上に向けると光がこちらに反射してきて、燐は思わずひるんでしまった。

 

(なに? 何かが光に反射して、これって窓?)

 

燐は改札にかぶりつくように接近して、その先の周囲に光を当てる。

窓の様なものが付いた細長いものがホームに停まっていた。

 

「ごめん、ちょっとランタン貸して」

 

言うが早いが、燐はリンからランタンを奪う様に借りて、改札の上に置く。

ランタンのぼんやりした灯りと、ペンライトを組み合わせてそれを照らした。

それでも光量が足りず全体を照らすまでは至らないが、闇夜の中、その一部がぼやっと浮かび上がった。

 

 

「やっぱり……電車、来てる……!?」

 

 

燐は驚愕して唇を震わせた。

 

漆黒の夜のプラットフォームに普通に電車が停まっていた。

構内の電気は全て消えている為、色や形はまだ特定できないが、蛍と燐がいつも通学に使っている電車とよく似た車両にも見える。

 

電車の中も何の明かりが付いていないのでまだ不安はあった。

モーターの駆動音もしていないので電源も入っていないようである。

 

何者かが動かして放置したものかそれは分からない。

だが、希望の列車というものでは無さそうだった。

 

 

「確かめに行ってみない?」

 

 

リンは素朴な提案をする。

 

電車が来てる以上、乗っていきたいのはやまやまだった。

なでしこは恐怖で目を泳がせていたが、リンの言葉に首を大きく頷かせる。

燐もそれに頷き、改札を抜けようとする。

 

 

「む、無断で入ってもいいのかなぁ? 無賃乗車にならない?」

 

怯えた感じのなでしこの声が足を遮った。

 

 

「非常事態だから行っちゃお」

 

「そうそう」

 

リンと燐は同じ意見のようだ。

今更この世界で倫理観を出しても無意味であることはよく分かっていたから。

 

 

「でも切符が……」

 

 

なでしこは倫理観よりも、単にこの先に行くことを怖がっているようにみえる。

 

 

「切符なら問題ないよ。二人ともオオモト様に言われたんでしょ?」

 

 

それまで黙っていた蛍が冷静な口調でそう言った。

少し威圧感があるような、どこかで聞いたような口調で蛍は喋る。

 

 

「あ、うん。でも……何も持ってないんだよね」

 

 

なんとなくバツの悪そうな仕草をするリン。

あれからポケットやカバンをひっくり返してもそれらしきものは出てくることは無かったのだから。

 

 

「大丈夫、リンちゃんもなでしこちゃんも電車に乗れるよ。わたしが保証する」

 

 

蛍は落ち着いた口調でそう言い切った。

根拠と言うものは微塵も感じなかったが、二人はなぜか納得したように頷き返す。

 

 

「蛍……ちゃん?」

 

蛍の仕草に違和感を覚えた燐は、確かめるように聞いてみる。

 

 

「燐だって切符、持ってるよね?」

 

 

「え、えーっと、どう、だったかなぁ? 忘れちゃったよ~」

 

 

燐はワザとらしく惚けてみせる。

ここでうん、などとは絶対に言うわけなかったから。

 

 

「わたし、ちゃんと覚えてるよ、燐が切符を持ってるってこと」

 

 

「蛍ちゃん。だってそれは……!」

 

 

思わず声を荒げそうになった燐の口を塞ぐように蛍は殊更やさしく手を取った。

蛍の健気さが手を通して伝わってくるようで、燐は胸が苦しくなる。

 

 

「燐。わたしは大丈夫だから、先に行ってて」

 

 

やさしく握る蛍の手、でも小刻みに震えていることは直ぐさに分かった。

だから燐は必死に頭を巡らせた……その結果。

 

 

「ごめん、わたし蛍ちゃんとトイレにいってくるから先に行っててもらっていいかな?」

 

 

燐は申し訳なさそうな声を二人(リンとなでしこ)に上げた。

 

二人は呆気に取られたように顔を見合わせると一瞬、間をおいて理解したように頷き合う。

 

 

「うん。じゃあ私たち先に行ってるねっ! あっ、その前に……」

 

 

なでしこは自身の置いていた鞄をごそごそと漁る。

中から丸みを帯びたガス缶とカバーに入ったガラスの瓶ようなものを取り出した。

 

 

「これ可愛いでしょっ? 初めてのバイトで買ったガスランプなんだよっ。テント内だと危ないし中々使う機会なかったけど、ここなら大丈夫だと思うんだよねん」

 

 

ガスランプを木のベンチの上で組み立てて設置する。

安定したのを確認すると、アウトドア用のライターを点火させ、スリットの中に火を入れた。

それと同時にガスのバルブを手で回す。

 

 

ぼっ!

 

 

軽い音とともに、細長いガラスの中に小さな焚き火の炎がたった。

暗く冷え切っていた駅構内がほのかな暖かさに照らされて、薄暗い影法師を作り出した。

 

 

「これ見てると癒されるんだよねぇ……」

 

 

「ほんと、すごく綺麗であったかい……」

 

 

なでしこと蛍は、悪夢のような現実を忘れて、その陽炎の様な赤い炎に並んで見入っていた。

ガラスの中の小さな炎はここにあるもの全てを癒すかのように小さく揺れていた。

 

 

「なでしこ。先、行くよ」

 

 

落ち着いたリンの声になでしこは慌てて意識を現実に返した。

 

 

「あっ! 待ってよリンちゃん~。私も一緒に行くよぅ~!」

 

 

ばたばたと忙しなく準備するなでしこ。

少し前まで暗闇に怯えていたはずなのにもう元気だった。

ガスランプの明かりがなでしこに勇気をくれた……かどうかは定かではない。

 

なでしこはリンとともに無人の改札を出ていこうとするが、直前でこちらに振り返った。

 

 

「ランプ、そこに置いておくから、少しの間見張ってて欲しいな。すぐに戻ってくるから~!」

 

「うん。ちょっとだけ偵察に行ってくるよ」

 

 

二人はこちらに手を振って、誰も居ないステンレスの改札からホームに入っていった。

中は駅舎よりなお暗く、ほのかなランタンの明かりすら吸いこまれてしまいそうで。

 

 

「あっ! そうだ」

 

燐は思い出したように、二人の背中に声を掛けた。

 

 

「駅のホーム。地震で崩れてたみたいだから足元に気を付けてね~!」

 

 

「了解しました隊長! 各務原隊員とリンちゃん隊員は必ず駅の謎を解き明かしてみせますっ!!」

 

「またこの小芝居……」

 

手を振ってそれに元気よく答えるなでしこと、心底呆れ顔のリン。

対照的な二人の反応に、燐も蛍も小さく笑っていた。

 

 

二名の女子隊員はプラットフォームに甲高い足音を残して去っていった。

 

 

その場に残された蛍と燐はなんともなしに無人のベンチに腰掛けた。

二人の間には淡い光を放つガスランプが細く揺れていて、柔らかな情景を作り出している。

 

 

「……ねぇ、燐。トイレは大丈夫なの?」

 

 

「あっ、えっと、大丈夫……になったみたい。出そうで出ない事って結構なくない?」

 

蛍の問いに燐は思わず愛想笑いを浮かべて誤魔化した。

そんな燐の態度に蛍はくすくすと笑う。

 

 

「ふふっ、燐はやっぱり優しいね。わたしに気を遣ってくれたんだよね」

 

 

「あ、えっと……ただ蛍ちゃんと一緒にいたかっただけだよ」

 

 

「そう……それなら嬉しいな……わたしも燐と離れるのやっぱり寂しい」

 

 

燐と蛍はそれきり黙ってしまった。

ランプ越しに二人の目が合うが、薄く笑みを浮かべるだけで何も言葉を出さなかった。

 

お互いの瞳の奥に橙の細い炎が映り込む。

 

それぞれの寂しさを火の温もりが垣間見せているように儚げに揺れていた……。

 

 

 

…………

 

………

 

……

 

 






コロナ()

先日ラジオから”ころなか”という単語が流れて来て”コロナ化”の事かなとか思ってたんですが、冒頭のものが正解みたいですね。
緊急事態宣言が解除されるかというときに分かってしまうとは、でも割と最近の言葉ですよねー。それとラジオだと伝わりにくい単語かもです。
(わざわい)”は”災い(わざわい)”と違って人為的ものが強い事柄だということでこの名になったようです?  どなたが名付け親なのかは存じませんが。

まさか流行語とかの関係でこの名が出来たとかはないですよねー流石に。
でも今年の流行語に選ばれそうな気はする……それをする余裕が世間にあればですけど。

そういえばゆるキャン△ のリアルイベントも延期になったみたいですね。11月下旬だから大丈夫かなとか思ったんですが、今後の事を考慮した上の苦渋の決断だったんでしょう。
へやキャン△ のアニメをみて思ったのですが、自販機のイベントもコロナ禍がなければ今年もやるつもりだったのかなーアニメにもわざわざ自販機の話をやってますし。
第1弾のころ、たまたま山梨に行ったんですよーー。その時知っていれば……まあ景品こそなくなってそうですが、イベント自販機をみることが出来たのに……勿体無いことしたよー。

今後第2弾はありそうですが、それは何時の頃になるのでしょうか? まあこの分だとアニメ2期に合わせて来年かなーーむしろ来年のアニメは間に合うんでしょうか? しかも劇場版も控えてますし……新型コロナ関連が収束してもまだまだ余波は大きそうです。

こんな状況でも企画は出せると思うのですが、それを実行に移すのには時間とお金と人員がいるわけで、諸々を考えると経済を含め正常化するのは来年以降でしょう。

そんなときに放送されるゆるキャン△ 2期。今後のアニメ業界の試金石となるのでしょうか。
色々と期待半分不安半分ですねー。

そういえばへやキャン△ のアニメでカチカチ山の回だけがずっと気になっていたのです。あれってなんでウサギがタヌキの背負った柴(小枝)に火をつけないんだろうと、火打石をカチカチ鳴らしてはいるのですが、次のカットだともう火どころか煙さえも上がっておらず、背中に絆創膏が張ってあるだけでした。あまりにも不自然な描写でうーんってなりましたね。その後のぬるぬるした動きは良かったですけど。

やっぱり放火っぽくみえるのが不味いんでしょうかねぇ? 昔話を元にしてるんだから良さそうなんですけどねぇ……一応動物キャラのやってることだし……未成年ではない、はず。
それとも今アニメだと、放火っぽい描写はNGなんでしょうか? ドラマとかでもダメの可能性もあるのかな? 良く分からないですが。

今、こんな事言うのは公式でイラストが公開されたんですよー。で、その中の一つにこのカチカチ山モチーフの野クルの三人の絵があるのですが、千明っぽいタヌキの背中がちゃんと? 燃えているじゃないですかっ! 
アニメスタッフにも思うところがあったのかは分かりませんが、ソフト化の時には燃えているのかもしれないですね。もしTV放映版のままだったらやっぱりNG案件みたいです。
でも、あの回、他にも不思議なカットがありまして、ゲストの中学生二人組がしゃがみ込んで写真を撮っているのですが、何をしているのかが私には分かりませんでした。
いや、スマホで写真を撮っているのは分かるんですが、なぜあの体勢で撮るのか、そしてどんな絵面が撮れたのかが何度見直しても分からないのです。
現地(富士山パノラマロープウェイ)に実際に行かないと分からないのかもしれませんが、ぐぎぎ。
行ってみたい場所がまた増えてしまったですよ。

あ、最近なんか背中が痛くって湿布を張ったりして対処してたのですが、それでも痛かったので試しにストレッチはじめてみましたよー。
……どうも運動不足からくる筋肉の痛みだったっぽいです。
思った以上に背中って動いてないんだなーと。割と意識して動かさないと効果無さそうですねー。

それではではーー。

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