かみゅキャン△ ── Camus Canp ──   作:Towelie

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鉄の車体ががたがたと小刻みに震えあがり、雨が右に左と不規則になった。
雑木林が僅かにたわみ始め、木々が音を思い出したように騒めいていた。

針のように細々と降っていた雨が気づけば風に成すがままにされていた。
横を殴る様な雨が緑色の車体に反射して、ばちばちと小気味の良い金属音を何度も打ち鳴らす。

景色が白く霞むほどに雨脚は強くなってきているようだ。
白い闇がゆっくりと、ホームや線路を包み隠そうとしているようで。

空の区別すらつかないほどの黒い世界に同じような黒い雲がちぎれるように飛んでいくのか微かに分かる。
それでも月は陰ったままだった。

──ただの雨が風とともに変化しつつあった。

ジリリリリリ。

古めかしいベルの音が駅構内に響き渡る。

緑の列車は外観も装備も他社から譲渡された状態のまま使っている為、当時のままな装備となっていた。

別れの合図を示すベルが鳴るが急いで駆け込んでくるものなどもう居ない、それは既に乗っているのだから。

一つの折り合いをつけるように発車のベルは鳴り続ける、普通の運転手ならこんなに長く鳴らさない、その辺が素人たる所以でもあるし、気遣いでもあった。

ぴー、壊れたようなホイッスルの音色が寂しく響く。

明らかに吹きなれてない感じが人気のないプラットフォームにマッチしていた。
車掌が被る帽子を頭にちょこんと乗せて、各務原なでしこがどこか恥ずかしそうな顔を向けていた。

いかにも素人というか、チープさを誤魔化すようにワザとらしく電車の前後を見渡した。
訳の分からぬまま指差し確認もしていて道化の様相をみせていた。

キョロキョロとしていた視線がある一点に止まるとそちらに向かって大きく手を振った。
緩慢な動きでそれに小さく応える着物を着た少女、表情は良く見えないが微笑んでいるような素振りだった。

その仕草で乗りこむ意思がない事が分かり、落胆したように振っていた手を下ろしてしまった。
それだけで運転席にいるもう一人の少女はため息をつく。
何も語らずに側面に備えてあるスイッチを力を込めて入れた。

プシュー、と空気の抜けたような軽い音がする、バタンと電車の扉が閉まる。
これでホームと電車を繋ぐものはなくなり、独立した空間が出来ていた。

「よし、いくか……」

運転手(志摩リン)は自分に言い聞かせるように発車の言葉を告げると、マスターコントロールと呼ばれるアクセルのレバーを左手に握りしめた。

冷たい金属のレバーがやけに重く、責任の重さが手にのしかかってくるようで、これまでにない緊張で鼓動が早くなる。

もう片方の手をブレーキレバーに伸ばしてガッチリと握ってみる。

教わった通りのホームポジションを試しにやってみた。
ちょっとドヤってみたが誰もみてなくて恥ずかしいだけだった。

少し小柄なリンにはこの体勢は割ときつく感じる、座っている椅子の高さがあっていないのかもしれない。
スライド式の椅子だが特に調整とかしていなかったので座り心地が悪かった。

ペダルにはなんとか足は届く、でも肝心な視界が確保出来ていない。
単純に前が見えないのは致命的すぎて怖すぎる。

さらに運転席の狭い場所に二人も固まっているので窮屈だった。
椅子を倒してしまうと、それだけで人すら通れなくなる。

運転台の両側に扉があり、逆方向からも外を見ることも出来るのだが、ホームと反対方向なので外の様子を見るのはそこから降りるか、客車に回るかしかない。

つまりなでしこが邪魔なのだ。

当のなでしこは些か気にすることなく身を乗り出したまま、まだプラットフォームを見続けていた。

少女の小柄な姿は客室からの光に照らされて普段以上に幻想的に見せていた。

目に焼き付けるようにして客室の中の二人を見続けている、大きな瞳を真っ直ぐに向けて。

小さくため息を一つ付くと、元気な顔のままでなでしこは外に向かって大きな声を上げていた。

「さよーならー!!」

子供同士が夕方別れる際に掛けるような普通な挨拶。
また会うための挨拶なのかもう二度とない別れの挨拶なのか、そのどちらとも違う感じがした。

瞳は揺れ動いていたが涙はこぼさない。
少し前にいっぱい泣いてきたから、だからもう涙を作る栄養が足りてないだけ。
だから泣きたくても泣けないだけなんだ。


(ここでの事が終わっても現実は続いていくんだねぃ……)

ちょっとだけ勿体無い気持ちがあった、ゾンビに対する恐怖が今更になって薄らいできたばかりだったし。

きっとアレは怪物じゃない、病気になった人なんだ。
だからこそ町は閉じてしまったのだ、他所へ病気を持ち出さないように隔離して。

不条理の檻に閉じ込められただけの事なんだね。

「なでしこ」

外を見ながらぼーっとしているなでしこにリンはため息交じりに声を掛ける。

「そろそろ動かす(運転)から、ドア閉めて」

「あ、うん……」

どこか生返事のなでしこ、リンは少しだけ訝しんだ。
それでもそれ以上声をかけることはぜず、一度椅子を畳んでなでしこが通れる分だけのスペースを開けた。

狭い運転室は人一人やっと通るだけしか確保していない。
それなのに客室には十分すぎるスペースを確保している、それはひどく滑稽に思えた。

「そういえばさ、リンちゃん大丈夫?」

「うん? 大丈夫って、運転のことか? とりあえずやるしかないよ」

今更な事を聞かれてもこの程度のことしか答えようがない。

それに今、リンは椅子の高さを合わせるのに必死になっていた。
スライド式になっている分少し複雑になっていた、レバーを色々弄った挙句なんとかベストポジションを決めることが出来た……なんか変な姿勢になってるが大丈夫だろう。

試しに警笛のペダルを踏んでみる。

プォーーン! と一層高い音がして、リンもなでしこも痙攣したようにビクっとなった。
()()もさぞかしビックリしたことだろう、だが踏み心地は悪くないな。

「ふぉっ!! ビックリした……もう! リンちゃん減点!」

「な、なでしこだって、鳴らしてたじゃないかっ」

結局前方にいる二人が一番驚いていた。
それにしても減点ってゲームじゃないんだから……。

「やっぱりリンちゃん調子悪いんじゃない? 私が代わってあげようか?」

「大丈夫だよ、なでしこよりは上手くやれる自信あるから。でも、そんなに私の運転心配なの?」

妙に食い気味に聞いてくるなでしこにリンは少し違和感を感じてしまう。
そりゃあ、ずぶの素人だし不安になるのも分かるけど、面と向かって言われると正直ちょっと凹むなぁ……代われるものなら代わって欲しいのだけれど……相手がなでしこでは。

(そっちのほうがむしろ不安)

「違うよ、リンちゃんお腹大丈夫かなって思って……痛くない?」

なでしこは突然ジャージの中に手を入れてお腹を撫でましてくる。
あまりにも突然だったのでリンは運転台で叫んでいた。

「うおぉぉっ! な、何してるんだ!」

「だって、私が強く殴っちゃったからアザになってないかと思って……」

さらにジャージを捲ってお腹をまざまざと見つめてきた。
リンは慌ててジャージを元に戻す、二人に見られてたらどんな誤解を受けるんだろうか。

「本当、大丈夫だからっ!」

「ほんとうなの? 我慢してない?」

なでしこの純真な瞳にリンは人形のように何度もうなずいた。
こんなことを今更思うのもなんだけど、なでしこの行動は掴みづらい。

一見単純そうにみえるが、だがその突飛な行動力は半端ではなく、ちょっとしたことでも気になったらとことん追求する人並外れた好奇心を持っていたのだ。

富士山みるためだけに自転車で本栖湖に来るぐらいだし。
なでしこにとっては今が一番大事なんだろうな。

「ちゃんと赤ちゃん産めるかな……」

「ば、バカっ!! 変なこと言うなよっ!」

お腹を勝手に撫でたり触ったりしながらとんでもない事を言ってきてので、思わず声を荒げてしまった。
心配してくれてるのは良いのだが……。

「大丈夫だよリンちゃん! いざとなったら私が”せきにん”とるからねっ」

さらに変な事をさらっと言ってくる。
嫌な予感がするがとりあえず聞いてみた。

「責任ってなんのこと?」

「もちろん! 私がリンちゃんの事、貰ってあげるからねん!!」

なでしこがウィンクしながら謎のアピールをしてきた。
言うに事欠いてコイツは……なんだか頭痛がしてくる。

「私とリンちゃんはとても良いパートナーになれると思うんだよねん。私が食事の準備をして……リンちゃんが外に稼ぎにいく。そして帰ってきたら一緒に食べるの! 想像しただけですっごく美味しそうだよぉ!」

乙女の目で妄想に浸るなでしこ。
美味しそうと表現する辺り、まだまだお子様体質であった。

「食事って、なでしこが殆ど食べるんじゃないの?」

「えへへ、そうかも……」

(そこは否定しないのかよ)

妄想を語りながらもお腹をなでてくれるなでしこに不思議と嫌悪感が湧いてこない。
それどころか気持ちが落ち着いてくる。

燐ちゃんの言ってたことが少しだけ分かった気がした。

同性同士のスキンシップは信頼の証、何かでそんなことを言っていた気がする。
でも……自分で殴って置いてそれを慰めるなんて行為……。

(これってマッチポンプなんじゃないの?)

そう思うとなんだかひどく呆れた物になってしまうが、この際、目を瞑っておくことにした。

心配してくれる人が居るそれだけで頑張れるんだ。
単純な理由だけど今はそれが一番の原動力だった。

一つ気持ちを切り替えてハンドルに両手をキチンと添える。
左がアクセル、右がブレーキ、こう考えるとごく単純なものなのだが、唯一経験のある二輪とは決定的に違うものがある。
それは圧倒的な重量感、車両の重さもそうだが馬力も何もかも違い過ぎる。

だからと言って今更尻込みも出来ない、もし自分の両手にみんなの運命が掛かっているとしたら、負けていられない。

()()()姿()()()()()()()に教わったただ一つの動作(プロセス)をやることにする。

こういうのは勢いが大事なんだと、ちょっとでもタイミングを逃せばもう動かすのが怖くなると。
それはこういう機械でも何でも変わらない事だと静かな口調で言ったんだ。

だからちょっと恥ずかしいけど声を張り上げてやる。
私はこの町(小平口町)から出るんだ、みんなで一緒に。
この際だから言ってやる。

リンは人差し指を前方に真っ直ぐ差してこう宣言した。

「出発進行ぉ──!!」

リンが言おうとした掛け声(セリフ)、それをなでしこがことのほか元気よく叫んでいた。
毒気を抜かれたように呆然と振り返るリン、ジトっとした目つきで微笑むと。

「了解だ」

ブレーキを全て開放してロックを外す、マスコンを一段階入れてノッチを上げた。

一瞬動かなかったので、一気に最大までノッチを上げてしまおうか少し迷ったが、ゆっくりと子ヤギのように揺れ動く感覚と、レールの上を少しずつ滑る音に安堵のため息をもらした。

「これでやっと帰れるよね! リンちゃん!」

感極まったのかなでしこが突然抱きついてきた、ここまで過剰なスキンシップは珍しい。
運転室がぐらぐらと揺れて船上に居るような感じを受ける、それは大変危なかっしいこと。
それでもリンはとくにとがめなかった。

その気持ちはリンも同じだったから。
何も言わない代わりにもう一度警笛ペダルを踏んでみた。

プワーン。

それはとてつもない歓喜を示すように町全体まで広がる確かな音色だった。




Carry On Wayward Son

雨を気にすることもなく小さなプラットフォームでこちらを見つめている一人の少女。

その姿を切ない眼差しで見つめ返す車内にいる二人の少女。

 

両者の間には窓すらなくそれは開け放たれていた、ただ金属の車体が間にあるだけ。

手を伸ばせば触れられる距離なのに、互いにそうしようとは思わなかった。

 

手を振り合う事すらせずに見つめ合うだけ、言葉すら出さない。

それは会者定離を認めてしまうことになりそうだから。

だから何も言わず微笑むだけに留めた、誰に言われるまでもなく極めて自然に。

 

発車を促すベルが鳴る。

それでも声を掛け合わなかった。

 

扉が閉まり、笛がなっても身じろぎもせず。

 

そのまますべてを受け入れるようにお互いを見つめづけるのみ。

最後になって幾ばくかの言葉を綴った、時に衝撃的な事を耳にしたがそれでも微笑んだままで。

 

場違いの様にやたらと元気な声が静かな駅舎に客室にと響き伝わる。

出発の合図(サイン)、これはマイク越しに言う言葉ではないのにスピーカーから届けられてきた。

 

その直後、がくんと車内が大きく揺れたと思うと、本当にゆっくりとフィルムの様に景色が流れていく。

こちらを見つめる少女の顔それが徐々に離れていく。

 

燐は思わず窓から顔を出して少女を伺った。

我慢できず小さく手を振ってしまう。それを見た蛍も同じ様に身を乗り出して手を振り出した。

少女はそれに少し驚くと、優しい笑みで小さく手を振り返した。

 

燐は少し視線を横に向けてホームに備えつけてあったベンチを確認する。

そこには皆の忘れて物が置いてあった。

 

二体の白い犬の置物、一対の金盞花の髪飾り、そして燐が身に着けていたお守りが置いてあった。

 

さらにその横にはあの手毬も置いてあった、あの黒い瞳の少女の手にはもう何も持ってはいなかった。

 

何かに共感したのかは分からない、でもそれはあたかも最初からそうであったかのようにショーウインドーの玩具の様にきっちりと整列していた。

 

少女たちはそれぞれ色んな想いを抱えながらも確かにこの地に居たのだ、それを証明するための遺失物がここにあった。

 

それぞれ思い思いのものを置いていった、中には形にならないものを置いていくものもいた。

それはどんな形でも良かった、ただここで()()()過ごしたことに何かの証を置いておきたかっただけ。

 

雨を削り取るように電車は加速をつける、まだ十分追い付けるほどのスピード。

けれども誰も、少女も追いかけてはこなかった。

 

あどけない少女のまま、見送ってくれる不思議な人だった。

未来なんて、その先の事なんて誰にだって分からない、あの人の言葉でそれが良く分かった。

 

あの人はオオモト様は最後にこう言ってくれた。

 

 

「”いってらっしゃい”」

 

そういって笑顔で送り出してくれる。

その顔はあたかも大人の女性になっていた、あの青いドアの家の人のように清楚で綺麗だった。

 

だから二人も言葉を交わす。

 

 

「”いってきます”」

 

それだけが言いたかった。

 

 

がたん、ごとん。

 

電車は加速度を付けて進みだしている。

 

なぜだかとても寂しくなった、それは心残りがあるからだとさも当然の様に思う事が出来る。

きっとそれだけではない、実のところ四人共この環境を楽しんるような感じもあった。

 

偶然出会った四人の高校生。

キャンプして笑ったり泣いたりして、時には喧嘩になりそうなこともあったっけ。

それでもみんな自由に楽しんでいたなあー。

 

それは少女達だけではない、顔のないあいつ等も犬も猿も、みんな自由にふるまっていた。

羞恥心とか倫理観とかはどこかに欠如したようにそれこそ野生動物のように各々が好き勝手なことをしていたのだ。

 

それはアトラクションの的なものでもあり、何かの実験を受けているような理不尽さを味わう事もあった。

 

でも苦しいことばかりでもなかった、ちゃんと楽しいと思えるような記憶もしっかりと刻み込まれていた。

 

それはもしかすると完璧な世界だったのかもしれない。

 

夢の様な時間が終わる。

燃えるような瞬間の高鳴りがあったはずなのに、終わるときは呆気ない、それこそ花火の様に僅かな余韻を残すだけ。

 

時間も記憶も流れるスピードでの中で急速に過ぎ去っていく。

 

「あ……」

 

小さな姿のオオモト様がこちらを向いて祈るように手を胸元で握り合わせていた。

その何ともない動作に何故か胸が苦しくなって、蛍は燐の手を強く握っていた。

 

さらにスピードが上がる、もうベンチもオオモト様の姿も小さくなって表情すら分からない。

 

何もかもが過ぎ去ってゆく。

あちらが夢でこっちが現実なんて意味がないぐらいに早いスピードで離れて行く。

黒い墨に塗りつぶされるように白いホームが雨の中に掻き消えていった。

 

──逃げたんだ。

 

その想いが燐の中に概念となって覆いかぶさっていく。

何もできず何も分からずただ逃げただけ、残ったのはその事実だけだった。

 

 

「おぉおおおおおああああ!!!」

 

 

遠くの方から夜風とともに獣ような咆哮が突如として湧きあがった。

奇怪で地鳴りのようなうねりは前に防災サイレンと共に聞いたあの奇怪な声と酷似していた。

 

「うぅぅぅうぅううう……!」

 

町全体が悲嘆のような真っ黒な声で包まれていた、泣き声をあげながら駄々をこねる幼子の様に。

 

それは彼らの最後の声だろう。

恨みのこもったような縋りつくような声が幾重にも広がり、怨嗟の音叉が共振する様は町だけでなく山の裾野にまで広がって、ここまで届いていた。

 

蛍は嘆息する。

彼らは救済を、心からの許しを欲していたんだと。

だからわたしたちを欲しがっていたんだ、女からの慰めと承認が欲しかったんだ。

 

共鳴したように悲しさが包んでいく、失って無くしてから気づいてももう戻ることは出来ない。

それが分かっているからこそ余計に悲しかった。

 

その声に重なりあうように犬の遠吠えが小高い山の中腹まで響き渡っていた。

たった一匹の哀しい遠吠え。

それは燐がとてもよく知っている犬の鳴き声だった。

 

燐は無意識に目を瞑っていた、そして出来ることなら耳も塞ぎたかった。

代わりという訳でも無いが蛍の手をぎゅっと掴む、蛍も同じような強さで握ってくれた。

 

聞きたいけど今はもう聞きたくない声、追いすがるような鳴き声はアイツらと同じで悲嘆に満ちている。

それは個別的なものだった、燐だけに聞こえるように燐だけに訴えかけるように声が枯れてでも鳴き続けるつもりだった。

 

「燐!」

 

手を握ってくれていた蛍が一層強く抱きついていた。

暖かい蛍の体に燐はとても安心する。

分かってくれることが嬉しかった。

 

「ありがとう……蛍ちゃん」

 

燐も蛍をぎゅっと抱きしめる大事な何かを守るように腕を伸ばして。

蛍も同じ様に抱きしめていた、壊れやすい大切なものに傷がつかないように。

 

二人はお互いを抱きしめながら静かに泣いていた。

後悔も謝罪もすべて内に秘めたままで。

 

奇妙な音に反応して、なでしこが二人の居る客室まで来ていた。

窓を閉めた方がいいと声をかけようとするがその声と手を引っ込めた。

 

互いを抱き合いながら座る二人の姿がとても美しかったから。

少女たちの嗚咽はなでしこに一時の同情を誘う、思わず一緒になって抱きついてあげたくなったけど、そこはぐっと堪えることにした。

 

(これで、良かったんだね、きっと)

 

なでしこは心中でそう結論付けた。

わたし達が、燐ちゃんと蛍ちゃんが背負うにはあまりにも重すぎたんだと思う。

人一人背負うのだってかなり重いのにあれだけの人は到底無理な事なんだよ。

 

せっかく電車があるんだからみんなを乗せてあげようなんてほんの少しだけ考えたこともあったけれど、やっぱりそれは違うね。

 

今、電車に乗っているのは私たちだけ、それはちゃんと自分達で選んだこと。

だからこれが正解なんだよね。

 

 

二人から目を離して窓の外に意識を向ける。

黒い空に冷たい雨、まだ悪夢の終わりはやってこないようだ。

 

少し深めに帽子を被り直してリンの待つ運転席へと戻っていく。

残る心配事はもうこれだけだ、なでしこはそう信じて去って行った。

 

 

雨とともに入ってくる地響きのようなうねり声は次第に聞こえなくなった。

遠吠えも微かなものになっていく、距離と速度が過去を振り切るように進んでいたから。

 

後に残るのは静寂だけ、ぽつぽつと振りつける雨と黒一色の闇夜だけだった。

 

「……窓、閉めたほうがいいね」

 

「うん」

 

小さく首を振った燐が、微かに震える声でそう言った。

その声で蛍はゆっくりと手を離すと、端を持って窓を閉めた。

 

外気が入ってこなくなったせいか車内のエアコンに寒気を感じてしまう。

窓を開けたままだったので髪も服も濡れていた、そのせいだろうと思う。

 

でも雨のおかげで最後まで聞くことが出来た、そうでないと体が火照ってどうにかなりそうだった。

 

「ねぇ、燐。()()()()()の言っていたこと、どう思う?」

 

気持ちが大分落ち着いてきたのか蛍が唐突に話しかけてくる。

あの窓からの声のことは一切尋ねずにホームでの事に時間を戻した。

 

「うん……なんとも言えないけどさ」

 

そう前置きして燐は言葉を続ける。

あえて聞いてこない蛍に同調して燐も同じ話題に乗った。

もう議論を交わす段階は終わったんだろう、そう思う事にした。

 

「オオモト様も色々考えてたんだなあって。誰にも相談できず一人で悩んでたんだって思うと……ね」

 

少し困った顔で微笑む燐。

オオモト様は誰にも相談できないからこそ独自であらゆる場面を想定して仮説を立てていたことを知った。

正直全ての事が当たっているかどうかの検証は出来そうにないが。

 

 

炭酸飲料の入ったペットボトルを開けたら突然噴き出してきた、なんて分かりやすいものならまだ良かった。

前例がないことに前例を作るなんて出来るはずもないのだ。

結局は何かを試してみてそれが前例となるはずである、それが失敗か成功かは関係なしに。

 

 

オオモト様は複数いるわけではなかった。

ずっと一人きりの存在、だからこそ誰にも打ち上げられずに悩んでいたのだと思う。

 

自分が本当にどういう存在か分からずに勝手に名前を付けられていたのだから。

同じ血が入った子が生まれても結局は不完全な状態だった。

それでもこの町のものはその行為を止めようとはしなかった。

 

そのせいで消えてしまった子はそれこそ”神隠し”の説明で誤魔化され続けてきた、何年も何年も終わることなく。

 

妖怪も伝承も全ては人の手で生み出された、ただの言い訳にすぎない。

誰でも良かったということと同じで意味もまっとうな理由さえも存在していなかった。

 

「わたし達だってそうだよね。一人で悩んでたってそんなにいい考えが浮かぶことはないし。誰かがいることで仮説も前提も意味のあるものになるはずだし」

 

「そうだね。でも仕方ないんじゃないかな。だってオオモト様を認識できる人って多分……」

 

燐はそこまで言って口をつぐむ。

オオモト様が認知出来るのは燐や聡、なでしこ達のような外部から来た人間か、あるいはその血を受け継いだもの、蛍ぐらいなのだろう。

 

それに今それを言ったところでどうしようもなかった。

わたしたちは町を人を見捨ててしまったのだから。

 

 

「そういえば、ちゃんと電車動いてよかったよね」

 

重くなった空気を払う様に蛍が少し明るい調子で話してくる。

 

「うん。わたし達は普通に乗ってるけどリンちゃん達は大変だったと思うよ。二人には感謝しなくっちゃね」

 

蛍と燐は運転席の入り口に目を向けた。

ちょうどなでしこもこちらに気づいたらしく、にこにこしながら大きく手で合図する。

それでもリンの運転が気になるのかすぐに顔を引っ込めてしまった。

 

「二人は良いコンビだよね」

 

「うんうん」

 

顔を見合わせて笑っていると不意にスピーカーから声がしてきた。

 

『……えー、ご乗車ありがとうございますっ! こちらは特別急行ゆるキャ……じゃなかった、リンちゃん2号です! 次の停車駅は……リンちゃん、次の駅ってなに? えっ! 分からないの? えっと、次の停車駅は身延駅です……お土産には是非、銘菓身延まんじゅうをお買い求めくださいっ! どう? 燐ちゃん、蛍ちゃん、私結構上手でしょっ!』

 

突然の車内アナウンスにビックリしたが、なでしこらしい可愛いアナウンスに燐も蛍もくすくすと笑いだしていた。

貸し切り状態の電車ではこういう事も出来るのかと蛍は変なところで感心していた。

 

「なんか慣れてる感じがするね」

 

「あはは、前にバイトか何かでやったことがあるらしいよ。結構評判良かったんだって」

 

「へぇ、なでしこちゃんも見かけによらないね」

 

二人の言葉を受けて調子を良くしたなでしこが更にアナウンスを続ける。

自分の家族の事や野クルでの活動内容、山梨の観光案内など、あらゆることをマイク越しに話し続ける。

 

なでしこは妙に張り切っていた、自分の声で二人をそして一人運転しているリンが元気づけられるならと捲し立てるように喋り続けたのだ。

 

それは浸透するように燐と蛍にもわずかばかりの笑顔をもたらした。

微々たるものかもしれないが、それでも悲しみとは違う素敵なものが二人の顔に出てきていた。

 

そしてアナウンスしたなでしこもマイクを持ったまま笑う。

 

寂しさを感じていた車内に一時の笑いの花が咲いていた。

無機質な昼白色の明かりおとぎ話のような照明にみえてくるほどに美しい空間になっていた。

 

 

(調子にのってるなアイツ……でも何かなでしこらしいな)

 

そのせいで緊張が抜けたのか、リンの運転は安定してきていた。

今はクルーズコントロール状態いわゆる惰性で走らせている、鉄道はこれが基本らしい。

 

それでも視界は変わらず悪い、夜の雨という最悪のコンディションは月灯りさえ見せてはくれなかった。

 

闇の中を独りぼっちでひたすらに走っている型落ちの電車。

方向感覚が狂いそうなほどに真っ暗な中をレールを引かれるまま走っている。

 

”暗中模索”

夜の海の上を線路一本で進んでいるようなそんなあやふやな感じが気持ち悪かった。

 

ぶっちゃけ怖くて怖くてたまらないがここまで来ると逃げ出すことさえも出来ない。

早くこの狂った世界が終わるところまで行くだけ、それまで逃げ続けるしかないのだ。

 

隣の町? いや隣の県まで行かないとこれは終わらないのかも。

焦りからかスピードを上げてみたくなるが、それは早計である、オオモト様はそう言っていた。

 

線路の上をちゃんと走っている分には安定するけどそれがひとたび崩れると大変なことになってしまうだろう。

 

例えば脱線──。

 

それだけはなんとしても避けねばならない、その為には速度を維持しなくては。

次の駅に着くまでにこのテンションがどこまで続くかが問題であった。

もっともその駅があってくれればの話なんだけど。

 

そんな不安の渦中、突然すっぽりと何かの中に入った感じがあった。

暗い世界からより暗い世界へと……多分トンネルに入ったんだろう。

 

耳の奥からごうごうと風のうねりが聞こえてきた。

 

「私、トンネルってやっぱり苦手だなあ……リンちゃんは大丈夫?」

 

いつの間にか戻ってきたなでしこが震えながら呟いていた。

 

常闇の世界も真っ暗なトンネルもさほど変わりはない、どっちも灯りが乏しいだけ。

 

それでもこの圧迫感は何だろう。

乗客であったときには気にも留めなかったのに運転する側になると妙に息苦しく思える。

 

ちょうど電車一台分のスペースしかない剥き出しの岩肌はどんな怪物(クリーチャー)よりも恐怖を植え付けるものであった。

 

「……ぐぬぬ」

 

リンはつい口からうめき声をもらしてしまう。

 

「……うううっ!」

 

真似するようになでしこも呻いていた。

 

つい少し前まで緑のトンネルの中を歩いていたのに、またトンネルとは。

でも緑のトンネルは広くて美しくそして歩きやすかった。

葉っぱや木で出来ていたせいかもしれないが、リンはその素朴さを気に入っていた。

 

この鉄道用のトンネルはそれとは真逆で、ただ電車を通すことしか考えられてない簡素で質素なものだった。

本来のトンネルとはそういうものなのかもしれないけど、あまりにぎりぎりの幅しか確保されていないのはちょっと惨く感じてしまう。

 

ちょっとでも車体が揺れれば擦れてしまいそうで戦々恐々としてしまう。

 

このまま永遠に続くかと思われたトンネルだが思いの外、あっさりと抜けることが出来た。

それでも空は真っ暗なまま、入る前と少しも変わっていない。

 

なでしこもリンも思わずため息をついた。

 

夜も雨も続いていた、そのせいかループしてる錯覚を起こしてしまう。

 

この現象は小平口町だけでなくここら一体全域に広がっているのではないか、へたすると県外にまでも……余計な考えにハンドルを握る手に力が入ってしまう。

 

それでも線路は平坦に続いていて、人の想いとは無関係にゆるやかなカーブを描いて進んで行った。

 

周りが暗すぎてよく分からないが、多分音からして橋脚に入ったんだろう、そう推測した。

 

 

ごとん、ごとん、と少し重い音が電車内を震わせる。

 

ただでさえ暗い夜道を走行しているのに橋の上だと思うとよけいに怖い。

想定外の恐怖にハンドルを握る手が震えてしまい、減速をしたほうが良いか迷ってしまう。

 

結局その判断はつかないままで、現状を維持したまま橋脚を逃げるように走っていく。

本当は減速するのが良いのだがその判断を下すものがいない、オオモト様も……何も言ってくれなかった気がする。

 

川の流れるせせらぎが癒しと共にどうしようもない現実感も与えてくる。

 

無事に渡り切れるかどうか、運転台の二人は祈る様な気持ちで前だけを見つめていた。

 

 

 

……もう小平口町を遠く離れていた。

トンネルを抜けただけなのに遥か遠くまでに来た気がしてしまって、蛍は見知らぬ土地にいる感じがしていた。

 

電車が弧を描くようにカーブを進むと、黒い山の上にポツンと浮かび上がる白い風車が視界に映った。

風車と知らなければ分からないほどの大きさだが、燐と蛍にはそれが何なのか十分に分かっていた。

 

燐は風車を遠くに眇めながら、ぽつぽつと話し始める。

これまで言わなかったことを少しづつかみ砕くようにして。

 

それは蛍だけでなく自分自身にも語り掛けるように丁寧に紡いだ。

 

「やっぱりさ、勘違いしてたんだと思う。優しくしてくれるから好きなんだってわたし、思い込んでたんだ」

 

「燐……」

 

「でもさ、恋愛って違うよね。そういうものじゃないはずだよ。わたしまともに恋すら知らなかったんだなって思うと、すごく恥ずかしいな」

 

黒いガラス中でなお一層伸びている白い風車。

人工物なはずなのに最初からそこにあったような錯覚を引き起こす。

白い十字架は誰の墓標なのだろう。

 

「わたしだって良く分からないよ。今まで恋なんてしたことないし。あ。でも、燐は好きだよ……こういうのは違うのかな?」

 

困った顔で蛍が微笑む。

透明で無垢な笑顔に燐は胸が高鳴って少し戸惑う。

この想いは恋とは違うはずだけど、何だか嬉しかった。

 

そういうのじゃなくて……燐は気持ちを誤魔化すように微笑み返すと、ちょっと顔を赤くしながら話し続けた。

 

「わたしさ、ただ寂しいだけなのかな。この寂しさを埋めて欲しい、誰か構って欲しいって、それだけだったのかもね。相手の気持ちとか全然考えてなかったかも」

 

「じゃあ、誰でも良かったって事?」

 

素直な疑問に少し考え込んでしまう。

 

「あ。う~ん、なんかそれだと節操がないっていうかぁ。寂しいとき傍に居てくれる人ってなんか惹かれない? あ、それだと軽い感じがするね……」

 

「う~ん、わたしはそんなでもないかな……あっ、でも燐と一緒にいると寂しくても耐えられたよ、どんなに怖い目にあっても大丈夫だった。これって、わたしも恋してるっていうのかな?」

 

普段以上に饒舌な蛍に燐は目を丸くしてしまう。

 

「もう、蛍ちゃん。だからそういうことじゃないんだってば~! さっきから恥ずかしいことばっかり言わないでよ~!」

 

照れ隠しをするように燐は抗議する。

蛍の気持ちは嬉しいけど面と向かって言われるとやっぱり恥ずかしい。

 

それに好きだった人を放っておいて自分だけが幸せになったみたいで、少し後ろめたくもあった。

 

「ごめんごめん、真面目な話だったよね」

 

蛍は両手を合わせて謝罪をする。

でもとても楽しそうにしていた。

 

「そう、真面目なお話し。真面目にさ、お兄ちゃん、とか町の人達ってどうなっちゃうんだろうね……ずっとこのままなのかな。オオモト様は特別なことじゃないって言ってたけど」

 

「うん、このまま圧縮していくって言ってたしね。この後どうなるかなんて想像もつかないよね」

 

「そう、だよね……」

 

もう一本の線にしか見えない風車、それは一度も動くことはなかった。

もし動いていればすべてが元に戻るのだろうか?

口に出すことを憚られるほどに淡い期待、心に留めておくことすらしなかった。

 

 

「ねえ、燐」

 

蛍は投げ出された燐の手をそっと握る。

冷たくなっていた手に暖かい温もりがとても心地よかった。

 

「後で戻ってみない?」

 

「戻るって?」

 

「あ、もちろん今すぐじゃなくて、ちゃんと出られて一週間か二週間ほど経った後の話」

 

蛍は微笑みながら訂正した。

仮に今すぐと言ったら燐はどうするのだろうか。

 

もしそうなっても蛍の気持ちは変わらない、それだけは確かなものだった。

 

「うん。それぐらいは分かってるよ」

 

燐は軽く笑う。

蛍の気遣った冗談がとても嬉しかったから。

 

「大事な事って一度離れたほうが良く見えるんだよ。近すぎるから見えない事って割とあると思うんだ」

 

燐の心を解きほぐすように冷たい手を包み込んだ。

蛍の手は驚くほど暖かかった、気持ちがそのまま手に宿ったようにあったかい。

暖かい微笑みのまま蛍は話す。

 

「それにね……どっちみちわたしは戻らないといけないと思う。何だかんだ言ってもわたしの生まれたのはあの場所、小平口なんだから」

 

「蛍ちゃん……」

 

手を繋いだまま蛍と燐は稜線に消える黒い山をぼんやりと見送った。

 

そこには感情はなく、ただ事実があるだけ。

そう、わたし達は逃げ出しちゃったけどきっとまたここに帰ってくるよ。

 

隣に寄り添ってくれる人がいる、この優しい人がいるならまだ何とかなりそう。

優しい瞳を向けて、勿体無いぐらいに透き通ってる人が傍にいてくれてる。

わたしきっと今一番幸せなんだね。

 

だからそれまで暫くの間お別れだねお兄ちゃん。

ごめんね、また会いにいくから。

燐は心の中でそっと別れを告げた、好きだった人に届くように。

 

電車はいつの間にか橋を抜けて夜の茶畑の中を走っていた。

長い雨が家も畑も水の中に溶かし込むように振り続いていた。

 

がたん、ごとん。

 

規則正しい音が安心感を与えてくれて、少し眠たくなってきた。

蛍は普段の通学のように燐に体を預けて、眠る体勢をとっていた。

燐は微かに微笑むと同じ様に肩を触れ合いながら目を瞑った。

 

二人の穏やかな寝息、それは線路の音と混ざり合って、闇の中に溶け込んでいく……。

 

 

…………

………

……

 

 

ごうごう、と風の跳ね返る音が黒いドーム内で逃げ場を失ったように騒いでいた。

それが緑の列車と内と外を震わせて、大きな音を作り出す。

 

電車は再びトンネルの中に入っていた。

視界が悪いのはどのみち変わらないが息の詰まる感じはなかなか慣れてこない。

漆黒の闇でも外のほうがいくらかマシだった。

 

リンは変わらず緊張の渦中にあったが、すこし慣れも出てきていた。

もともと一人で黙々と作業するのは嫌いではなかったので、一人での運転にも慣れるのには早かった。

 

一人原付で色々行った経験がここにきて生きてきたのだ。

それを見込んでの起用なら、あの人は大したものだと思う。

 

もっとも青いドアの家で初めてあったときから、全てを見透かされているような気にはなっていたけどさ……。

 

あの人は見た目以上に()()な人だった。

もう一度会ってもっと話をしたい、リンはもう叶わぬ夢に想いを馳せていた。

 

「なでしこ、燐ちゃん達の様子を見てきてくれないか? 多分寝てるとは思うんだけど……」

 

横目でなでしこを確認すると椅子にもたれながら、首を上下に揺らしていた。

明らかに眠っていたようなのでワザとらしく声をかけた。

 

多分、二人も同じ様に寝ているに違いないだろうけど。

 

燐ちゃんと蛍ちゃんが寝ている分には気にならないが、なでしこが寝ているのはなんかちょっとモヤっとする、気持ちの問題なのかもしれないけど。

 

自分だって結構疲れている、万一に備えてなでしこだけは寝させないようにしないとダメな気がした。

 

「うん……私、寝てたかな? だいじょうぶだよねぃ? とりあえず、切符きってきま~ふぅ……」

 

何事か良く分かってないまま、ふらふらと運転室を出て行くなでしこ、そんな調子だと大体お約束の事が起きる。

 

そしてそれを裏切らないのがなでしこの面白いところだ。

 

「あうっ!!」

 

期待に応えたように頭を扉に思いっきりぶつけていた。

その場でぐだぐだと不格好なダンスを踊っている。

 

「リンちゃんもうだめずら~。目の中で星が瞬いてるずら~」

 

「いいから、さっさと行ってきて」

 

リンはなでしこの相手をすることなく、用件だけを言った。

 

慣れてきたといってもよそ見をしてるだけの余裕はまだない。

レールの上では何かあったら避けることは出来ない、ブレーキだけが頼りだったから。

 

「もぉ、リンちゃん冷たいな~。私、怪我人なのにぃな~」

 

何事かボヤキながらも二人の元へ向かうなでしこ。

ふらふらと揺れているところを見ると、頭をぶつけてもまだ眠気は取れていないようだ。

 

四角い黒色の窓の外にはごつごつとした石壁が見えるのみ。

普段なら震えあがるところだが、今のなでしこは怖さより眠気のほうが勝っていたのが幸いだった。

 

二人の居る車両までうつらうつらとしながら移動する。

 

そこでは蛍と燐が抱き合う様に眠りについていた。

 

しっかりと手を繋いだまま、安心しきったように小さな呼吸音を出している。

あまりに気持ちよさそうなので、なでしこもつられて一緒に横になろうかなと欠伸をしたちょうどその時。

 

『お前まで寝たらだめだぞ』

 

スピーカーから突然低い声がしてなでしこは飛び上がりそうになった。

ちらっと運転席の方に目をやるが誰もいない。

リンの位置からはこちらが見えないはずなのに……なでしこのルーティーンは察知されていたようだ。

 

「ふぁ~い……」

 

気の抜けた返事をスピーカーに返す。

その声は聞こえていないのか何も返事は返ってこなかった。

 

寝ぼけ眼のまま運転室に戻るなでしこ、途中で自分の荷物が目に入って何事かを思いついた。

ごそごそと荷物を漁り、そこから大きめの布を持ち出して二人の元へ戻ってくる。

 

そしてそれを寝ている二人にそっとかけてあげた。

青を基調にしたネイティブ柄の夏用のブランケット、薄手だがちょうど二人分の大きさがあった。

 

「そのままだと風邪引いちゃうからねぃ。秘密結社ブランケット(夏)こっそり入隊させちゃうよん」

 

すっかり目が覚めたのか、なでしこは満足そうに頷くと、今度こそ運転室へと戻って行った。

 

お互いの手を重ねあわせながら穏やかに眠る蛍と燐、幸せとはこういうことなのだろう。

なでしこの胸もほんのり暖かくなった。

 

「どう? やっぱり寝てた?」

 

「うん、二人ともよっぽど疲れてたんだね。ぐっすりだったよん」

 

「そっか……」

 

リンは安堵したようにそれだけを言うとまた暗闇の先と計器だけをみる動作に戻った。

レールの上を走るだけ、ただそれだけなのにずっと緊張しっぱなしだ、さっきから喉が渇いて仕方がない。

唾をいくら飲んでもこの渇きは癒えそうになかった。

 

 

二人はしばらく無言のまま地獄の入り口のような暗いトンネルを見つめていた。

今度のトンネルはやけに長く感じられる。

それこそ地底の奥深くに向かっているのではないかと錯覚を覚えるほどに暗かったから。

 

低い風の音と空調の静かな音が微妙なハーモニーを醸し出し、リンの疲弊した体に眠気を誘ってくる。

 

「なあ、もしこのまま出られなかったらどうする?」

 

リンは前を向きながら口を開いた。

 

このまま黙っていると睡魔に襲われてしまいかねない。

話し相手がいれば少しは気が紛れるだろう、その相手が眠らなければの話だが。

 

「お、お化けトンネルパート2ってこと……?」

 

なでしこは薄めを開けながら恐々として答える。

どうやらまた睡魔に負けそうになってるようだ。

 

「お化けって……もうそういうの平気だよね?」

 

「いやいや、お化けは別腹ですよ、リンちゃん……お化けは皆の心の中にいるんだよぉ~」

 

再び眠ろうとしているのか言ってることが支離滅裂としている。

 

リンは呆れて肩をすくめた。

 

「お化けは卒業できただろ」

 

「いや~、やっぱり見えない物って怖いんだよねぃ。テントの外の物音だけでも怖いからねん~。リンちゃん一緒に寝よ~」

 

なでしこはふらふらと揺れながら悪魔の囁きをしてきた。

さっきから寝ぼけているのか、会話がかみ合っていない。

 

でも……。

 

(見えないもの、か……)

 

結局小平口町での事は最後まで何も見えないままだった。

 

終わらない夜、異形の人影、そしてオオモト様と青いドアの家、真実の欠片さえ知ることが出来なった。

逃げ出さなければ分かることだったかもしれない、だが真実を知ったところでどうなるのだろう。

今となってはすべて暗い箱の中、この暗く長いトンネルはその比喩だろうか、それとも逃がさないためのトラップなのか。

 

そんな猜疑心に飲まれそうなリンの手に小さな手が乗せられた。

それはなでしこの手、気持ちを落ち着かせるようにそっと乗せていた。

 

「リンちゃんて凄いよね、なんでも一人で出来るしさ。私なんてあのゾンビから逃げてばかりだったしねぃ……。やっぱり怖いんだもんっ」

 

ひきつった笑いを浮かべながらなでしこは真っ直ぐに見つめてくる。

 

「だからね、私はリンちゃんを信じるよっ! たとえこの先の出口がなくなってもリンちゃんが運転すれば何とかなるよきっと! 蛍ちゃんも燐ちゃんもリンちゃんの運転を信じてくれたからこそ乗ってくれたんだからっ!」

 

重ねた手に力が入る、こんな私でも信頼してくれる物好きがいるんだな。

だったら信じるしかないか……最後まで全力で。

 

「信じれは道は開く、あの人もそう言ってたな、確か……」

 

「そうだよ! ワンフォーオール、オールインワンだよっ!」

 

「またそれか、でも……そんなに嫌いじゃないなその言葉」

 

信じることは無意味ではない、柔和なあの人の言葉を胸のなかで反芻する。

不思議とずっと気になっていたことを急に思い出した

 

なんでソロでキャンプ始めたんだろうって今更な事、そのきっかけをくれたのはお爺ちゃんだけどきっとそれだけじゃなかったはずだ。

 

多分あの頃の私は何も信じることが出来なかったんだろう。

だから誰もいない冬のキャンプを始めたんだ、たった一人で誰にも教わることなく。

 

それでもやることと言ったら読書と簡単な食事をとって後は寝るだけ。

家でやることとそんなに変わらない、むしろただ不便なだけだった。

 

それでもなんで毎年続けていたんだろうか。 

 

暗いトンネルの中でぼんやりと考え込む、傍らには暖かい手、それだけで何かの答えが出た気がした。

 

シンプルな答え、ちょっと癪だがそれは多分……この為、この純粋な奴に会うためなのかもしれない。

 

決して言葉にはしないであろう答えになんだか恥ずかしくなって、咳ばらいをしてみる。

 

クエスチョンマークを浮かべるなでしこ、その横で何が小さいものが光った気がした

 

狭く黒い道の先に小さい光が蛍のように浮かんでいる。

それは先に進むたびに少しづつ大きくなっていって、光が楕円に形を作っていった。

 

興奮したようになでしこが指を差して騒ぎ立てるがそれが耳に入ってこない。

それぐらいリンも興奮していた。

 

そのままの速度で光の中に入る、白いドームを突き抜ける。

 

 

トンネルを抜けた先は。

 

 

 

なんてことない普通の景色。

 

どこまでも青い空、雲はいくらでも形を変えそうに悠然と流れている。

 

ごく普通の夏の景色。

 

青い空が普通に広がっているだけ、この時期ならではの眩しい景色がどこまでも広がっていた。

 

───

──

 

 

なでしことリンは何の言葉も出すことなく目の前に広がる景色をただ見ていた。

 

目の前の景色をにわかには信じられなったから。

 

がたん、ごとん。

 

そんな万感の思いを気にすることもなく電車はただレールに沿って進んで行く、そのままの速度で。

リンは思い出したように2本のレバーを握り直した。

 

「リンちゃん……空だよ。青い、青い空だね……」

 

「……そうだな」

 

二人は何故か騒ぎ立てることなく呟くのみ。

言葉にしてしまえば消えてなくなりそうなほど青く澄み切っていたから。

 

だから、そっと呟くだけにした。

 

「二人にも知らせてあげなくっちゃっ!」

 

さっきまでの情感はどこへやらなでしこが叫び出した。

運転席の戸を開けて、さっそく二人の元へと走り出そうとする。

 

「まって」

 

「およよ?」

 

すんでのところでリンは呼び止める。

なでしこは扉にしがみついて振り返った。

 

「まだ、寝かせてあげようよ。知らせるのは電車がちゃんと停車してからでいいんじゃないかな」

 

自分だって疲れているはずだが二人を寝かせておいてあげたかった。

この空の景色はもっとも見たかったはずだから落ち着いてから一緒に見たかったのだ。

 

「うん。そのほうが良いね! って、リンちゃんあれっ!?」

 

なでしこが変な声をあげたので、何事かと思い指を差す方を見た。

小さな白い屋根と、小さい踏切、その二つが示すものは……。

 

──駅!?

 

「──マジか!?」

 

リンも思わず変な声を出してしまった。

停車したいと思っていたけど本当に駅があるなんて、しかもこんなに早く。

 

「リンちゃん、ど、ど、どう? 停まれそう?」

 

「間に、合う……かも」

 

考えるより早くレバーを動かした。

アクセルレバーを全て切って、その後ブレーキレバーを少しづつ下げて減速する。

 

目前の景色に目を奪われていたので完全に出遅れてしまったが、やれるだけの事をやるつもりだ。

 

カンカンカンカン。

 

遮断機のない踏切の音が焦燥感に拍車をかける。

記憶を頼りに段階を決めながら徐々に減速していった。

 

その度にかちっ、かちっ、と小気味いい音がして少しづつ速度が落ちていくのを感覚で分かるようになってきた。

 

停止する目印のようなものは見当たらない、目視だけを頼りに減速から停車までもっていくしかない。

 

やけに短いホームに電車が滑るように入った。

ブレーキが早すぎたのかかなりの微速で、それでもまだ完全には止めなかった。

 

ちょうど電車の前方が待合室のようなものに差し掛かったころにブレーキを全部入れた。

今のところプラットフォームに人影はない。

利用しているか定かではないぐらいに静まり返ってきた。

 

ごとん、ごとん……。

 

力を失ったように静かな音が一際静かなホームに響く……。

 

 

そして電車はホームぎりぎりでまで進むと、ネジが切れたように停車した。

 

 

「はぁーっ……」

 

少女たちは殆ど同時に長いため息をついた。

心からの安堵、何もかもが一発勝負だったので奇跡としか言いようのない運転であった。

 

「ちゃんと、停まってるよね! すごいよ、リンちゃん!」

 

「上手くいった……みたいだな」

 

二人は喜びを分かち合うように元気よくハイタッチを交わした。

 

……なでしこは手加減という言葉を覚えた方がいい、痛む手を擦りながらリンはひしひしと感じていた。

 

「じゃあ、今度こそ二人を呼んで来るよ……あっ、そうだっ!」

 

マイクを手に取るなでしこ、それだけでやることは一つだけだった。

 

『え~、コホン。ご乗車ありがとうございます。終点、って言うかここで途中下車したいと思います。お忘れ物等無いように速やかに下車してくださいっ。アナウンスはみんなのアイドル各務原なでしこがお送りしたしましたっ!』

 

「アイドルって柄じゃないよな」

 

呆れ顔のままでぼそっと呟いた。

大きく欠伸をして椅子に腰かけたままぐっと体を伸ばす、ずっと同じ姿勢でいたせいか体が固まった感じがする。

 

何となくぼーっとしてしまう、今頃になって疲れが出てきたのかもしれない、リンは大きな欠伸を噛み殺した。

 

「リンちゃん大丈夫? でも、早く出る準備したほうが良くない?」

 

顔を覗き込んでなでしこが心配そうに声をかけてくる。

安心したせいか急に眠気が襲ってきて、なでしこの言っていることがイマイチ理解出来ない。

 

「こんなところ誰かに見られたら私達って犯罪者になっちゃわない?」

 

とても怖い事を言ってくる、だがそのおかげで覚醒することが出来た。

いつまでもこんなところにいる暇なんてなかったのだ。

 

「なでしこ! 二人を起こしてきてくれ、すぐここから出よう!」

 

「う、うんっ!」

 

リンは客室の扉を開けると、可能な限りのスイッチを切っておいた。

ついでに指紋を残さぬように運転台を周りをミニタオルで拭いておくことにした。

 

こういう時だけ余計な知恵が回るのは何なんだろうか。

でもこのことは後で色々詮索されるだろう、場合によっては全国ニュースになるかもしれない……とたんに寒気がしてきた。

 

(本当に誰もいないよね。通報とか勘弁して……)

 

運転席の扉から顔だけ出して、身を屈めながら辺りを伺ってみる、今のところ人っ子一人いないみたいだ。

駅として機能しているのか疑わしいほどに閑散としていた、恐らく無人駅なのは疑いようもないだろう。

 

多分、運が良かったんだ。

これがもし普通に駅員の居る大きな駅だったらと思うと、想像しただけでも震えあがりそうになる。

 

言葉の通じないゾンビ相手だと逃げるだけで良かったのに、言葉が通じる人間相手の方が色々と説明しなくてはならないので面倒くさい、とても奇妙な感覚だった。

 

みんなが出たら客室のドアを閉めて運転室から脱出しよう。

鍵は……抜いてその辺に置いておくしかないな、その方がまだ自然に見えるだろうし。

 

やってることが犯罪者心理で憂鬱になる。

今更だがこの現代はいちいち許可を取ることが多すぎる気がした。

 

キャンプだってその辺で適当にやることさえ出来ないんだから。

 

それにしても……なでしこのやつ遅すぎる、()()()何を手間取っているんだろう?

 

「おーい、準備出来たー? そろそろ出るよ~」

 

それなりの声量で客室に声を掛けてみた。

さすがにマイクを使うのは恥ずかしいし誰かを呼びかねない。

 

……今更かもしれないことだけれども。

 

 

……誰の返事も返ってこなかった。

流石に不審に思い、リンはみんなが集まっているだろう二両目の客室まで行ってみることにした。

 

「どうしたんだ、なでしこ~。燐ちゃん、蛍ちゃん~」

 

暢気に声を掛けながら静かな客室をゆっくりと歩く、なんかやけに静かさがやけに耳に痛い。

二両目の客室に入る、まだクーラーの余韻が残っていて少し涼しい。

二人の姿は見当たらない、そこにいたのは床に座り込むなでしこただ一人きりだった。

 

「どうしたんだ、こんなところで座り込んじゃって。燐ちゃんと、蛍ちゃんは?」

 

リンはちょっと呆れた口調で見下ろした。

急げと言っていたのはなでしこの方なのになんで荷物さえ持っていないのか。

 

それにしても、辺りを見渡しても二人の姿は見当たらない、もう外に出て行ったのだろうか?

 

「ほら、もたもたしてるから置いてかれちゃったじゃないか。私達も行こうよ」

 

未だに座り込んでいるなでしこの手を取った、やけに冷たくて少し驚いてしまう。

なんで、と思ったが顔を見て分かった、なでしこの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていたから。

 

「いないの……」

 

「居ないって何が?」

 

「蛍ちゃんも、燐ちゃんも居なくなっちゃってるのっ!!!」

 

急に大声を上げたので少し狼狽えてしまう。

落ち着かせるように優しい口調で話した。

 

「だから、それは先に行ったって……」

 

「そうじゃなくて、ドア開ける前から居なくなってたんだよっ!!」

 

泣き叫ぶなでしこの声、何を言っているか理解出来なかった。

居なくなるってそんな事……ここ以外何処にも降りる場所なんてなかったのに。

 

「うぇーん! どうしようリンちゃーん!」

 

座ったまましがみ付いてくる、涙が頬を伝って幾重にも零れ落ちていた。

 

「お、落ち着け、な。先に降りただけだって、駅舎で二人共待ってるから、だからもう泣くなって」

 

頭をかき抱きながらとにかく落ち着かせようとする。

走行中に扉を開けた覚えはないし、それが妥当な理由のはずだ。

 

「で、でもこれ……」

 

なでしこが震える手で差し出してくる布、それに見覚えがあった。

夏用のブランケット、なでしこが持ってきたものだった。

 

「二人が寝てるところに掛けてあげたの……そしたら、その場所に綺麗に畳んで置いてあったの。だからもう……二人はっ」

 

泣きじゃくるなでしこ、言いたいことがやっと分かった。

だからって理解できるはずはない、それはなでしこだって同じことなんだ、だから。

 

「もう泣くなって頼むから……そんなに悲しむと私だって……」

 

目の奥から何かが込み上げてくる、ずっと忘れていたもの。

心の奥の大事なものが今瞳から零れ落ちようとしていた、それが止まらない。

 

「ごめんね、ごめんね、私が、私がもっとちゃんと見てれば……!」

 

なでしこは何に対して謝っているのか分からない。

それでもごめん、ごめんと泣き続けるなでしこを抱きしめてやることしか出来なかった。

 

ここまで来たのに、何でどうして、無意味な疑問ばかりが浮かんでくる。

 

ただどこまでも不条理に。

まるで最初から他に誰もいなかったかのように二人だけが客室に取り残されていた。

 

………

 

……

 

 

「探しに行こう」

 

「でも……」

 

「そう遠くまでは行ってないよ。すぐ追い付ける」

 

「うん……そうかもね」

 

もう無理なことかもしれないけど自分を思って言ってくれる気持ちが少し嬉しい。

それが良く分かったから涙を拭いながら頷いた。

 

「二人揃っていなくなるなんてことあり得ないよ。だからすぐ近くにいるよ絶対」

 

自身の心中に刻み込むようにリンは語気を強くした。

 

空調を止めたせいか、じりっとした暑さを感じる、噴き出した汗がこぼれおちた。

 

今が夏であったことに気づいた。

 

「早く行こう」

 

なでしこの返事を待たずリンは荷物を手に取る、少し遅れてなでしこも準備に取り掛かった。

大した時間電車に乗っていないはずなのに、とても長い時間をここで過ごした気がした。

 

一緒にいる時間の長さが友情の証だというのに、なぜ二人はここにいないのか。

暗い考えを振り払う様になでしこがプラットフォームに飛び出す。

それを見てリンはドアを閉めると自身は運転席のドアからホームに飛び降りた。

 

バス停のような待合室と今にも崩れそうなほどに古い駅舎、それが三日間求めづづけた終着駅。

擦れた文字で駅名は記してあったが、今はそれを読む意味がない。

両手に荷物を抱えてホームから逃げるように出て行く二人の少女。

 

付近には遮断機のないよく言えばスマートな踏切と……整備したばかり思われる車道が伸びていた。

 

それ以外は一面の水、もしくは水溜まりが白い大地に点在していた。

 

あの青いドアの家の再現(デジャヴ)のように。

 

二人はその景色に見とれることなく、二人はどっちに行ったのか思案した。

小平口町の方へ戻る可能性は薄いと思ったので逆の方向へと向かう事にする。

電車と同じ方向だけど、それだと見落とす可能性もあるし何よりもう運転はしたくない。

 

もう電車は必要なかった。

 

遠くには吊り橋のようなものも見える。

でもそちらへ行ったとは考えにくい、吊り橋までの道は巨大な水溜まりで塞がれていたから。

 

開通して間もないであろう車道を無言で走り続けた。

荷物が肩に食い込み、リンは投げ出したい気持ちになった。

 

息がどんどん荒くなる、照り付ける日差しが汗と共に気持ちまで流れ落ちて行った。

しかしどういうわけか車が一台も通り掛かることはなかった、もちろん人なんていやしない。

時折囀る様な鳥の声とセミの鳴き声が響いてくるだけ、陸の孤島の様に人の営みの音など何処かへ消えてしまったようだ。

 

勘だけを頼りに走っていくと、橋が目の前に見えるようになる、二人は無言のまま懸命にそこまでは走った。

橋のたもとまで辿り着くとリンもなでしこも喘いだままでそこへ腰を下ろした。

頭上から降り注ぐ暑熱と纏わりつく熱風で目まいがしてくる。

 

ごぅごぅ、と唸る音が涼風を運んでくる、爽快さが体を包んでくれて、疲れた気持ちを癒してくれる。

でも普段の川の感じとは違う気がする。

音が風が水しぶきが激しすぎた。

 

何事か気になって、荷物を投げ出したままで橋の中ほどまでまた走った。

橋の欄干にかぶりつくと二人して吸い寄せられるように俯瞰する。

 

それで全てが分かった。

あの町が──小平口町がどうなったのかを。

 

 

圧縮と言うのは町の機能が失われていくこと、このうねる様な濁流がそれを如実に表していた。

上流から流れてきたと思われる木やごみ、家屋の一部など、ありとあらゆるものが渦を巻いて流れていった。

 

台風、いや水害とも言える圧倒的な力の渦が幾重にも折り重なるようにして全てを押し流していた。

 

壮大とも言える川の様相にどうしようもない無力感が込み上げてくる。

 

二人もこのような大きな流れの中に飲まれたのか、ちっぽけな私達じゃどうしようもない災禍の中に。

 

「きっと、ひとりじゃ可哀想だから、一緒にいったんだね」

 

橋の下を眺めながらぼそっと呟いた言葉、リンは俄かに鳥肌がたった。

純真ななでしこがおおよそ言う言葉ではなかったから。

 

疲れた目をしていた。

それは多分私も同じだろう。

 

ただ力なく橋の下から茶色く濁った川を見つめることだけしか出来なかった。

 

泣きたいのに涙が出てこない、汗と共に枯れ果てたようだ。

それでも二人だからまだ良かったんだ、なでしこが居てくれたからまだマシだった。

 

周りを見ると同じ様に橋から下を眺めたり、スマホで写真を撮ったりしている人達もいた。

ダムとか、決壊とかどうでもいい事のように笑いながら話していた。

彼らにとっては単なるイベントなのだろう。

 

話しかけようとは思わない、純粋な気持ちが穢れそうだったから。

 

二人とは違う人間しかここにはいなかった、否、人ですらないのかもしれない。

 

 

太陽がずっと眩しい。

ずっと待ちわびていた本物の日差しなのに、今は無駄に眩しく暑苦しかった。

 

皆に、家族に会いたい。

急にその感情が湧きだしてきて、胸が詰まった。

 

 

……お母さん、今日ね、友達が居なくなったんだ。

いくら探しても見つからないんだ、だからね、どうしたらいいと思う?

誰か教えて欲しい、二人の行く先……二人の幸せを……。

 

 

…………

………

……

 

 

 

……袂の先にあった店に二人の事を尋ねたがこちらには来ていなかった。

 

もはや方々を探すだけの足が動かない、何より心がもう持たなかった。

 

止む無く電話を借りることにした。

 

まず捜索願いを出そうとしたが、止めた。

まだ心の奥で引っかかるものがあったし、二人の信頼を裏切る行為に思えたから。

それになにより、二人の事をそこまで知ってはいなかった。

 

そして私たちの事も特に連絡はしなかった、親や友達は多分心配してるだろうけれど。

 

でも、電車の事だけは匿名で通報しておいた。

恐らく疑われられているだろう、けれどそれは仕方がないことだった。

 

それでも言っておかないと大事故につながるかもしれない。

この世で一番大事なのは事実を知らせることだったから。

 

 

そこからの事は殆ど覚えていない。

 

後で話を聞いたら、二人ともその場で電池が切れたように眠ってしまっていたらしくて、慌てて救急車を呼んでくれたみたいだった。

 

家出したように見えたらしい。

でも、それほど間違っていないかも。

 

とにかくこれで終わったんだ。

私たち()()()長い三日間は夕暮れと共に終わりを告げた。

 

 

────

 

───

 

──

 

 






★教えて青カミュQ&A~☆彡 part2.

前回はプールまでだったのでそれ以降~。と前回抜けてた分の補完から。

Q:燐の履いているスニーカーは?
A:コロン〇アのマドルカピーク〇ウドドライレディースのピンクが元の様です。

Q:なんで浜松(松浜?)で燐はトレッキングシューズを探していたの? 可愛いのを持っているのに。
A:従兄とあることが発端で疎遠になってしまったので仲直りのきっかけになると思い探し回っていました。燐はお兄ちゃん(聡)にかなり依存しているようです。無理もありませんが。

Q:あの”なにか”はどうして異臭がするの?
A:皮が剥がれて肉がむき出しになっているためと思います。内臓の臭いと言ってもいいかもしれません。ですが痛覚はあったりなかったりしています。

Q:ヒヒって何なの? あのノコギリは何処から持ってきたの?
A:青カミュでのヒヒは妖怪の狒々(ヒヒ)から来てるではと思ってます。

Q:バックパックとポシェットを部屋に置いてきてるはずなのにプラットフォームのCGだと装備してるよっ!
A:アレはバッグの怨念がたまたま映っとるだけやで~。あんな、昔この駅で人身事故があってな。そん時……って何処行ったんなでしこちゃん? こっからがええ所やのに。

Q:燐の家族は?
A:父、母、子一人の普通の一般家庭だったようです。今は喧嘩別れの末、離婚調停をしているようです、近々離婚は成立するでしょう。

Q:有名ななんとか効果。
A:”失われた時を求めて”という小説が元となった心理現象の一つで、そのまんまマドレーヌ効果とか作者の名をとってプルースト効果などと呼ばれているようです。

Q:蛍と燐はどんなルートを考えていたの?
A:個人的な候補は二つあります。一つは国道を使って他県というより同県の他の町に抜けるルート。もう一つは酷道を越えて山伏峠から山梨県に出るルート。どちらもゆるキャン△ で紹介されてました。私は割と現実的な国道ルートのことを差していたのではないかと”今は”思っています。トンネルもありますしね。

Q:桃は美味しくなかった?
A:やっぱり笛吹の桃が一番だなー。甘くってジューシーだし。何ゆうとんの? 甘い言うたら勝沼の葡萄や! あ、どっちも美味しいよ……なんか前にもやった気がするよ……これ。


Q:バス停ですね。
A:バス停はバスを待つところです。

Q:ワタスゲってなに?
A:綿管、白い穂は綿毛みたいです。主に湿原や高い山で見られ、群生することが多いようです。花言葉は揺らぐ思い、努力する、です。

Q:”ゴドーを待ちながら”。
A:しー、アカンでなでしこちゃん。あまり軽々しくその名を言うたらアカン。前にこれのパロディを許可なくやったら権利元に訴えられた事例が多々があるんよ。触らぬ神に祟りなしとはこのことやね。

Q:でも結末が知りたいかな……。
A:主役の二人、ウラジミールとエストラゴンが最後に自殺未遂を侵すとかそんなん書いたらアカンよ? 鳴沢氷穴に閉じ込められてまうで。

Q:お茶の名産地と言う事は。
A:舞台は一応静岡県です。

Q:あの軽自動車は……。
A:アルトラ〇ンで間違いないでしょう。ちなみに2トーンルーフは2グレード(X,S)だけです。ちなみに2トーン仕様にするだけで44000円別途に掛かるんやで~。って、あき(千明)! 鼻血出とる!!

Q:ミントブルーなのかミントグリーンなのか。
A:光の加減と雨の降り加減で光沢に変化が起こりました。(適当)

Q:警官の何かが引きずっているのは?
A:よく見ると同じ”なにか”です。後に出てくる作業着姿の何かでも分かるのですが、同じように変化しても仲間意識はそこまでないようです。

Q:シフトレバーをP(パーキング)からD(ドライブ)に入れる際ブレーキ踏みながらじゃないと動かないのでは?
A:細かいこと気にしたら……コホン、燐は聡の運転を見よう見まねでやっているわけで、即ち聡は普段から左足ブレーキをしている仮説が成り立ちます。

Q:車のシーンでユーロビートをかけるのは。
A:全然ありです。頭〇字D気分でドリドリに浸りましょう!

Q:空の色が変わったような気が?
A:昼と夜の境界線とも取れますし、歪みのフェーズが進んだともとれますね。個人的には燐の心境の変化(テンション?)と関係してるかなと思ってます。

Q:ヘッドライトが消えてる!?
A:ブラインドアタックか……!

Q:巨人の足!?
A:白い人影が100体重なると稀に出来るようです。(てきとう)霧に包まれたスーパーマーケットが舞台の映画で似たようなものを見た記憶が……。

Q:蛍ちゃん、トンネル抜けたら後は真っ直ぐって言ってなかったっけ?
A:ごめん、記憶違いだったよ……。

Q:DJゴドーってなに?
A:自称DJです。私の超個人的な仮説では蛍の父親ではないかと思っています。ただ実存する人なのかどうかすら定かではないみたいです。

Q:蛍の幼い頃の姿って。
A:服装とプロポーション以外はあまり変わっていないので、見た目通りの童顔ということになります。

Q:優香ちゃんって?
A:二人の共通のクラスメイトのようです。燐と文化祭で漫才をしたこと以外の情報がないので何とも言えないのですが、個人的にはポニーテールでお調子者のイメージがあります。

Q:”例えば月の階段で”
A:二人のその後の運命及び別れを示唆した歌詞になっています。それぞれが歌詞を読み上げるシーンでもお互いの事を言っているようなプロットになってしますね。

Q:ラ〇ン 2019年製は2(セカンド)が無いみたいですよ!?
A:細かいこと……ホンマや! 何でなんやろ? どうやらATの技術が進化してセカンドが要らなくなったらしいです。でもこの車はラ〇ンじゃなくてWANKOやからね~。

Q:測量の仕事は通常2~5人って書いてあるけど?
A:聡の勤めている会社は人手不足というよりも違法労働? やっぱりブラック企業なのかな?

Q:ハイビームにするのにウィンカーは関係ない気がする。
A:燐はパニックになっていたので色々弄りたおしてしまったのです。。

Q:壁……!
A:みたいに見えるよね……。

Q:”青いドアの家へ!”
A:鳥肌もののシンクロシーンです。

Q:なんで空中から?
A:親方! 空から女の子が二人も!

Q:燐しか見えなかった風車。
A:燐は地平線の彼方に複数の風車が見えたようです。オオモト様の話では未来の出来事ではないとの事ですが、結局はここに行くことになります。ある種の不条理なのかもしれないです。

Q:黄桃(おうとう)のケーキ。
A:甘党の蛍ですがホイップクリームが苦手と言う意外な弱点? が分かります。ですがこれにより、燐の為に用意してあることが分かります。

Q:つまりどういうことだってばよ。
A:マヨヒガ──迷い家では何か一つ持って行っていいという謎ルールがあるようです。燐は青いドアの家に行くたびに何かを貰って(飲食)してきました。水、桃、ケーキと。お茶はオオモト様が入れてくれたのでノーカンかと思います。初めは味がしなかったのに次第に慣れていったのかケーキを食べた際には美味しいとの感想を述べるほどになりました。
つまり、この青いドアの家は訪れる度に燐の好みにアップデートされているのでは思います。

Q:蛍ちゃんが座敷童だなんて……。
A:キャラ紹介にも大きく記述がしてあります。つまりはネタバレではないようです。

Q:座敷童を孕ませたってことはオオモト様は年端も行かぬ頃に妊……。
A:それ以上は禁足事項です。

Q:初潮を迎えると幸運を呼ぶ力が弱くなっていくってどこで分かるの?
A:オオモト様の話によるものなのでなんとも言えません。もしかしたらオオモト様はそういうのを可視化、オーラ的なものが見えるのかもしれないですね。

Q:オーラはオカルトなのでは?
A:じゃあ波動関数でお願いします。

Q:オオモト様が淹れてくれたお茶、燐は美味しそうに飲んでいたけど、蛍は?
A:その後の会話から紐解くと、味も素っ気も恐らく匂いもなかったようです。

Q:なんでオオモト様は山小屋の事を知っていたの?
A:聡が話すことなく知っていたことが手淫の会話から分かります。つまり強い思いを可視化できる、即ちオーラが見えるはず……です。

Q:なんで青いドアの家に二人は留まることが出来ないの?
A:恐らく肉体が精神を呼んでいる為と思っています。つまり青いドアの家の世界にいる二人は仮死状態になっているのからこれるのだと。要するにスピリチュアル的なやつです。

Q:今、何問目?
A:あっ! テレフォンでお願いしますっ! あ、恵那ちゃん? うん……そうなんだけど。今、何問目かってことだけど恵那ちゃん分かる? え? ちくわが2回鳴いたから11問目? え~、違うんじゃないかなぁ?

Q:緑の壁って結局諦めちゃうの?
A:木や葉で出来てると言っても車で突っ込むのはかなりの勇気が要りますし、突っ込んだ先が崖だったりしたらもう……無難な方を選択したと思ってください。

Q:ラ〇ンだとガソリン残量が減ってきたら音声で知らせてくれるっぽい?
A:劇中の車は正確にはWANKOなのでその機能はないっぽい。

Q:DJゴドーは都合よすぎない?
A:燐と蛍だけだと気を遣い過ぎるのでちょうどいい塩梅かもです。

Q:青い空のカミュ……。
A:エンディングまで我慢してください。

Q:蛍ちゃんは大胆?
A:燐と一緒だと思ってたよりも大胆になるようです。

Q:ねんがんの鉄パイプを入手したぞ!
A:な、何をするの、蛍ちゃ~ん! 元ネタと違って微笑ましいやり取りがあったりとか。

Q:燐はエース候補ということは。
A:少なくとも三年生ではないことが分かります。

Q:PEQUODS COFFEE ?
A:スターバックスのパロディ……ではなく、PEQUODS PIZZAと言うピザ屋がシカゴにあるようです。そこから来てるのかなと。

Q:蛍はどのぐらい待っていたの?
A:予想では4時間程度ここで小説を読んでいたのでは思ってます。

Q:キンセンカの髪飾り。
A:蛍のキンセンカの髪飾りは恐らく別れのメタファーです。理由はその悲しい花言葉にあります。ただ幼い頃から()()身に着けていたので、両親の事を示唆している可能性もあります。

Q:作業着姿の何か。
A:日ごろから仕事のストレスがかなり溜まっていたようです。膝に鉄パイプを受けてしまって悶絶してますが。

Q:車で引いて鉄パイプで殴りつける。
A:GTA(グランドセフトオート)です。個人的にGTA SA(サンアンドレアス)が好きです。

Q:保養所?
A:年々、数が減っているようです。一般でも泊まれるところもあるようです。

Q:燐はどうして自分から迫ってしまったのか?
A:離婚、及び直前の状態までいくとその子供は精神的に辛く不安定になるようです。さらに母親が元父親の悪口を言ってくるのは相当堪えるようです。そんな中自分の好きな人と二人っきり、寂しさでつい身を任せてしまうのも仕方ないかと思います。
つまり寂しいとウサギだって……えっ? これってドラマの影響なの? やっぱりホラなんだ~!

Q:蛍の家は菓子パンがいっぱいあるの?
A:蛍の好みから甘い菓子パンが多いのではと予想できます。

Q:燐が食べているのは?
A:カロリーメ〇ト的なものでしょう。

Q:美味しくないのはチーズ味だから?
A:ウチはチーズ味好きやで~。もとい! 多分()()()の味覚というか青いドアの家に慣れてしまった為かと思います。まあこういうのは美味しくて食べるものでもないですけどね。

Q:一瞬だけ見えた青い空は。
A:初めて青いドアの世界に来た時と同じ現象だったと思います。ただこの時はどちらとも行くつもりがなかった、から? とか。

Q:ヒヒの……。
A:ヒヒのボイスをオンにしておくと、あるワードにノイズが入ります。憂慮すべきところだと思ったのかもしれないです。かなり凄惨なシーンですから。

Q:燐の鉄パイプさばきが上手すぎる。
A:レギュラー候補だからこれぐらい出来て当然と本人は思っています。

Q:ヒヒは何故追って来れるのか。
A:鼻が利くからだと思います。

Q:ちょうどいいタイミングでサトくんが来てくれたね。
A:ちょうどいいタイミングを見計らっています、多分。

Q:何故コンパスを落したまま去っていったのか。
A:燐に自分であることを知ってもらいかっただけだと思います。

Q:そもそもあの白い風車は何なのか?
A:恐らくお墓のメタファーです。白い十字架と言う事で。

Q:オオモト様がいる場所は。
A:後に燐と蛍も来る場所の下の部分かと思われます。

Q:幽霊みたいなものとは? 風車は前からあった?
A:あの異形の姿になった時点でもう人には戻れないということでしょう。生前の姿を知っていてももう意味はないと言いたいのだと思います。白い風車がお墓のメタファーならば前からあってもおかしくないはずです。そういえば小平口町の墓地は紹介されてませんね。

Q:ことこと?
A:大人のことこと様です。

Q:なんでサトくんは風車に行くことを拒んでいるの?
A:サトくんには使命感とプライドを持っているようです。ただし嘘はつけないようです。

Q:ノートは。
A:彼の残滓ではないでしょうか。

Q:ここじゃない世界とは。
A:白い風車が並ぶ場所。銀河鉄道の夜に出てくるサザンクロスではないかと思います。

Q:何故聡が選ばれたのか?
A:偶然だったと語っていますがちゃんと身元調査をしたうえで確保したのだと思います。

Q:無理やりそんなことしても嫌がられるだけなんじゃないの。
A:薬やお香の類を使ってでも達成させるようです。

Q:何故オオモト様までいるの。
A:望むならどこへでも行けるというのはオオモト様の事も差しているのかもしれないです。

Q:よだかの星。
A:青空文庫で……切ないというかたらい回しにされる夜鷹の不条理を描いています。

Q:事象の地平線とは。
A:ブラックホールでググってみたり、ビッグバンでググると何かが分かるかもしれないし、分からないかもしれない……つまり、誰にだって分からないことはあるんや!

Q:あの紙飛行機は?
A:三人の想いが入っている紙飛行機、最後になぜあそこまで飛んで行ったのか。それは、まあ次の話で……。

Q:今回はここまで?
A:せやなー、こっから先はネタバレの嵐になるから未定やねー。


そんなわけで、もう7月になってしまいました。

7月6日からゆるキャン△ 東京MXで再放送されますね~。2期の情報も出るみたいだから結構楽しみかもー。
この蒸し暑い中でみる冬のキャンプ……侘び寂びですね。



それではではー。


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