かみゅキャン△ ── Camus Canp ──   作:Towelie

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未だ闇夜が支配する世界、緑の木々の中にいた。
緑のトンネルはどこまでも続いていそうに見えてそれは天井にまで伸びている。
雨が落ちてこない代わりに、閉塞感を感じさせた。

そんな中、少女()()が憂慮の表情で立ち尽くしていた。

一人は長い髪を頭の上で団子状に纏めている、少し小柄な少女。
もう一人は同じく長い髪を二つに結わいて、祈るように胸に手をあてている少女。

どちらも艶やかな黒髪をしていて、それぞれが心配そうな目つきで遠くを見つめていた。

二方向に分かれている起点の場所で、少女達は待っていたのだ。
各々が大事にしているとても”綺麗なもの”が戻ってくると信じて。

遠くから足跡が迫ってくる。
規則的な足取りのその音は、少女特有の軽く、小気味いい音で構成されていた。

音は二つ、左右同時に鳴っていたので、緑のトンネルのなかで反響してサラウンドの様に耳の奥まで響いてくる。

同じ様に軽くリズミカルな呼吸音も響いていた。


「はっ、はっ、はっ、はっ」

「ふっ、ふっ、ふう、ふっ」

そして二つの人影が同時に転がり込んできた。

「ゴ────ル!!」

一人の少女が高らかに宣言した。
勝ちを確信したような雄たけびだった。

だが、判定はほぼ同時でどちらが先かは分かり辛いものであった。
だからってタイムを計っていたわけでもないのあるが……。

「勝ち、かち、これがカチカチ山の真相なのです!!」

長い髪を弾ませながら少女は謎な勝利宣言をする。
どこからカチカチ山の話が出てきたのかはまったくの不明であった。

「なでしこちゃん、足速いねー。ビックリしちゃったよ」

勝利宣言をする少女とは対照的に、健闘を称え合う、栗色のショートボブの少女。
いつの間に競争になっていたのか不明だが、その速さに舌を巻いていた。

二人共それほど息は上がってはおらず、まだ余裕はありそうだった。


「燐。なでしこちゃん。お疲れ様」

「燐ちゃんお疲れ様。どう? 何か変わったことあった?」

走ってきたばかりの二人を蛍が出迎える。
リンも燐だけに労いの言葉を掛けつつも早速、この道先の状況を聞いてきた。

それがもっとも知りたかったから当然だった、だが……。


「勝ち名乗りをあげたほうが勝ちなのですっ!」

そんな思いは露知らず、腰に手を立てたなでしこが胸を張って高らかにそう宣言した。


……が、この状況では誰も相手にはしてくれなかった。



「うーん、これといって変化なかったなぁ。何となく分かってたことだけど……」

燐はその場に座り込み、深くため息をついた。
体力にはまだ余裕はあるけれど、心が大分疲れてきていた。


予想だにしなかった分岐が突然現れたけど、その先は変わらずの廃線跡が続くだけだった。
これにはさすがに参ってしまった、もっとも更にその先まで行かないと何も分からないのかもしれないが。

「わ、わ、わ、私のほうも変化なかったよっ!! リンちゃん無視しないでよぉ~!」

縋る様な所謂()()()()でなでしこが足にしがみ付いてくる。
なんだかんだで、無視されるのがなでしこに一番堪えることだった。

「わかった、わかったから」


はあ……。
リンは呆れた表情で深い息を吐きだした。
何事にも楽天的ななでしこが少し羨ましかった。



燐となでしこの報告で、どちらの道にも廃線跡の線路がずっと続いており、緑のトンネルで覆われている点さえも同じなのが分かった。


要は二手に道が分かれても根本は何も変わってない、それが事実だった。




──突然の分岐点(ターニングポイント)


それは少女達の希望を惑わすように不意に視界の外側から現れたものだった。
そうとしか説明できないほどに唐突で前触れもなかったのだ。

風も無い為方角を知ることは出来ないが、Y字状に二股に分岐している。

廃線跡もそこで途切れてはおらず、両方向ともに緑のトンネルの先へと延びていた。

行先や距離を示すような標識等もなく、近くに転轍機(てんてつき)も見当たらない。
線路を切り替えるためには必要不可欠なハズなのに。

あまりに簡素なものなので、本来の鉄道の分岐とは違う目的がある気がしてならなかった。


海沿いの町までの一本道なのにどうしてあるのかは分からない。
上下線を切り替えるためと理由づけることもできるが、それにしては必要なものが圧倒的に足りてなかった。

そもそも一本道だと思っていたことが間違いなのかもしれない。
今、目の前で分かれている線路をみるとその方が自然な気もしてくる。
記憶違いなんてことは良くあることなのだから、人間の記憶とは曖昧なもの、そう言い聞かせることしか出来なかった。


左右に線路が分かれている以上、どちらかの道筋が県境への出口のはず。
そう考えた結果、体力に多少自信のあるなでしこと燐がそれぞれ下見することにしたのだ。

しかし、ただ闇雲に行っても戻って来れなくなる可能性もあるので、歩きながら300数えるところまで行って戻ってくることにしたのだ。

徒歩1分で平均80mは進むらしいので、ざっくり数えても大体400m付近までは行けるはず。

それを繰り返し行えばその内どちらの道に何らかの違いが出るはずであった。
でもそれは、なにぶん時間と体力のかかる地味な作業だった。

更にどちらの道もこれまでと同じ様に先は靄がかったようで見通せず、極めて視程(してい)が小さかった。



それ故に蛍も燐もこの分岐には何らかの意味があることが分かっていた。
きっとこれもオオモト様の言う不可思議な現象の一つなんだろう。

でも、この分岐にはある種の分かりやすい意図がある、そんな気がしてならない。



行先のない分岐点。

それは四人の少女という即席の集合体(アグリゲーション)の決別を意味していた。




Zombie life

一角に置かれた荷物に背を預けながらペットボトルの水を飲んだ。

常温で爽快感などはないが、それでも喉の渇きを潤すことができた。

 

「はい、なでしこちゃん」

 

飲み口を丁寧にハンカチで拭いた後、隣で座るなでしこにペットボトルを手渡した。

 

「ありがとう燐ちゃん! いただきます~」

 

なでしこは嬉しそうに両手で持ちそのまま一気に口の中へとペットボトルを運ぼうとする……が。

 

「全部飲むなよー」

 

なでしこが口を付ける前に、リンがしれっと忠告をした。

こう釘を刺しておかないとすべて飲み干す可能性が十分あるほどに遠慮をしらないヤツだったから。

 

「んもう、分かってるってばぁ~。私だってもう子供じゃないんだよっ」

 

照れた表情を見せるなでしこ、そのあどけない顔は年下の少女にしか見えなかった。

 

(全然子供じゃないか……)

 

 

 

燐が蛍の家から失敬してきた食料は、今やこのペットボトルの水一本だけであった。

 

おかげでバックパックは軽くなったが、これ以上この世界に留まることはより困難となったことが浮き彫りとなった。

 

残りの水はペットボトル半分程。

四人の少女の活動時間は若さを考慮しても1時間も持てばいい方だった。

 

今にして思うと、あの唯一動いていた自販機の商品をお金が続く限り買っておいても良かったのだが、そこへ戻ることも出来ない。

 

二人だけとしてはちょっと多めの食料を確保していたのだが、四人だと単純に足りなかった。

 

 

「どうしようか……」

 

誰に尋ねるわけでもなく、何気なく蛍は呟いた。

先ほどの様に、少し行っては戻るを繰り返せば、安定して索敵は出来るけどかなりの時間を要する。

 

そんなことを続けていればあの白い影に遭遇する確率も高くなるし、その内体力が消耗して喉の渇きや空腹も早まってしまうだろう。

 

 

決断しなければならない。

そうするしかなかった。

 

 

 

 

「……なんかこういうのって映画で見たことない? 前に観たホラー映画で同じ状況だった気がするんだよねぇ……」

 

燐は唐突に以前見たことのあるホラー映画の話をしてきた。

あまりに突飛の話だったので他の三人は何事かと目を丸くしてしまう。

 

「あ! あれじゃない、”ゾンビぐらし”!! 私、夢でも出てきたんだよっ!」

 

ホラー映画で連想したなでしこが大きな声をあげた。

テントに一人取り残されているとき、夢の中であの怪物に襲われていた。

何かの状況に似てると思ったけど、あの伊豆のキャンプで恐々見た”ゾンビぐらし”、そのままだったんだ。

 

「そうそう、ゾンビぐらし! あれってカメラ一台で撮影してる低予算映画なんだけど、なんか大ヒットしたんだよね。でもあれってあんまり怖くなかったよねぇ?」

 

「え゛っ! そ、そうかなぁ? すごく怖かった気がするよぉ……」

 

伊豆キャンプでの初日、犬山あおいの妹、あかりについ見栄を張ってみんなでこの映画をタブレット端末で見たことを思い出した。

 

あの時は、なでしこたった一人が阿鼻叫喚の嵐だったので、なでしこの一人百鬼夜行として野クルの壁に拡大した写真と共に刻まれていた。

 

「あの時私は寝ていたけど、その後であかりちゃんから何度も聞かされたんだよね。なでしこの慌てっぷり……」

 

ホラー映画には年不相応の冷めた目で見ていた犬山あかりだったが、なでしこの異常な慌てっぷりには腹を抱えて笑い転げていた。

 

そしてその様子を何も知らないリンに雄弁に語るものだから、伊豆キャンの間、なでしこはあかりに頭が上がらなかった。

年下の子に笑いものにされるという屈辱は普段天真爛漫で通っているなでしこの胸にぐさりと突き刺さるほどのショックを与えていたのだ。

 

 

 

「前にこの映画、映画館で見てたはずなんだけど……あれってホラーだった?」

 

志摩リンは昨年の夏休み、斎藤恵那とともに当時の話題作としてわざわざ劇場に足を運んでいた。

所詮、長い休みの暇つぶし程度の事だった。

 

リンも恵那もお目当ては劇中に出てくる犬で、その犬が劇中で無事がどうかが気掛かりなぐらいで、後はそれほど関心はなかったのだ。

 

 

「わたしは見たことないけど、その映画って最後どうなるの?」

 

一人だけ見たことのない蛍が燐に尋ねる。

結末を知ってしまうのはちょっともったいない気がしたけど、今の状況と似ているなら聞いてみたかった。

 

「うん、クライマックスシーンでね。主人公の女の子四人が沢山のゾンビに追われるの。逃げてる途中で分かれ道があって、さあどうする? って展開になるんだけど……」

 

「そ、それから、ど、ど、どうなるんだったっけ?!」

 

見た筈のなでしこが身を乗り出して聞いてくる。

パニックになったみたいなので記憶から消しているかもしれないのだが。

 

「迷った挙句、二手に分かれて逃げるんだよね。そこからが無駄に凄いよね」

 

リンが含みを持たせた言い方をするので、なでしこは身を震わせる。

最悪の展開になったのかもしれない……ホラー特有の凄惨なシーンが頭に浮かんで、顔を青ざめていた。

 

「……うん。ここまでは確かに良いんだけど、この映画ここからがねぇ……」

 

燐も同じ様に含みを持たせるので、なでしこの緊張感がどんどん高鳴っていく。

あの時の同じような感情がだんだんと昂ってきて、思わず耳を塞いだ。

 

(やっぱりこの映画って怖いんだ。とても酷い結末なんだ……私たちも同じような目に合っちゃうんだっ!?)

 

パニック寸前で顔色の悪いなでしこを見ていると、蛍も感化されて心配になってしまう。

 

 

 

「そーだよね。私、劇場で吹き出しそうになったよ」

 

「あ。わたしなんか大笑いして、一緒に見てたお兄ちゃんに怒られちゃったよぅ……」

 

リンと燐は初めてそのクライマックスシーンを見た時のことを思い出して笑い合っていた。

 

その和やかな様子に呆気にとられる、蛍と……耳を塞いだままのなでしこ。

ホラー映画なのに一体どうして? 笑っちゃうほど怖いの?

 

「それは仕方ないよ。まさかゾンビが二手に分かれたぐらいでその場で話し合うとは思わないしね、ゾンビなのに。それにその後がもっと酷くてね」

 

「そうそう、追うのをあきらめたゾンビ達が何をするかと思ったら、その場で一斉に踊りだすんだよね! 何を考えたらあんな映画ができるんだろう」

 

「しかも監督兼カメラマンも一緒に踊り出してめちゃくちゃになっちゃうしね。なんであれが大ヒットしたのか未だに分からないよ」

 

 

「本当だよね。ホラー映画じゃなくてコメディ映画だよね、絶対」

 

燐とリン、意外なところの共通点があったので、思いのほか話に花が咲いた。

話に入って行けない蛍となでしこは口をぽかんと開けているだけだった。

 

 

 

 

──ゾンビぐらし。

監督は40台にして新人監督の”青鬼山間一郎”。

一郎は演劇の経験を生かした2段構えのモキュメンタリーホラー映画、ゾンビぐらしを制作した。あまりにも予算が足りなかったので、役者を一切使わず、アルバイトや制作スタッフだけでキャスティングした異例の態勢だった。だがそのせいかあまりにも場当たり的なスケジュールだったのと、主役四人を現役女子高生に拘った為に意見が合わず結局全員に逃げられてしまった。そこで急きょ主役の女子高生四人をアニメ合成にし、専門学校に通う声優の卵に声を当てさせることにしたのだ。

しかしそれだけでは飽き足らず、インド映画からの着想を得て、モキュモントミュージカルホラーとして世に送り出したのだった。

ラストシーンでの108匹のゾンビが一斉に踊り出すシーンは一見の価値あり! と論評されていた。

当初はミニシアター系で配給されていたのだが、口コミで徐々に人気が出てきて大手配給会社と契約すると一躍、この夏の話題作となり、各映画賞を総なめにした。

当時のキャッチコピーは”怖かったら踊れ! 命を尽きるまで。”だった──。

 

 

 

 

 

「えっと、だからさ……」

 

燐は話の勢いのままにある言葉を告げようとするが……唇を震わせるだけで、その先に続く言葉が出なかった。

 

もう肚は決まっているはずなのに言葉にするのはとても苦しい。

 

ただそれを言えばいいだけなのになんでこんなに難しいものなんだろう。

 

和やかな雰囲気のまま、さりげなく提案するだけだったのに、タイミングを失ってしまった。

ここからどうやって話を続ければいいんだろう。

 

燐は言葉を失ったまま立ち尽くす。

それと同時にあの時の言葉が頭の中で響いていた、山小屋での聡の言葉。

 

”簡単なことのハズなのに成し遂げるのは難しい”……あの時何を思って言ったのかは未だに良く分かってはいない。

 

だが、今なら少しだけ分かるような気がする。

 

あの時の聡も今の燐と同じように焦っていたのかもしれない。

 

 

その緊迫した様子に蛍も声を掛けようとするが、口を開くだけでなんの言葉も出てはこなかった。

 

それは燐が何を言おうとしているかが分かるから。

だから何も言えなかった。

 

自分が代わりに言うことも出来た筈なのに、やはり言えない。

恐らく燐もそうなのだろう、この四人の関係(パーティー)が壊れるのを恐れたんだと思う。

 

偶然出来た仲間を、友達を失う事、それは吊り橋効果の類かもしれないが、それでも掛け替えのないものだった。

 

立ち尽くす二人を見て、なでしこは困惑してしまう。

先ほどまでと打って変わって空気が重くなったからだ。

 

リンは不意に両手を上にあげて、ぐっと体を伸ばす。

その場で軽くストレッチをしながら、なでしこに問いかけた。

 

「なでしこ。自分の荷物は全部持てるよね」

 

「あ、う、うん。大丈夫っ!」

 

声のトーンが真剣だったので、突然問いかけられたなでしこは慌てて返事をした。

リンと二人で逃げているときも荷物は持ったままだったので、今更何てことはないのだが。

 

「そっか。じゃあ、準備しよう」

 

枕木の上に下ろしていた荷物を手に取るリン。

だが、言葉とは違い緩慢な動きで荷物を担いでいく。

 

それは何かを惜しむような挙動だった。

 

「あ、あのっ! リンちゃ……」

 

燐が何かを問いかける前に、リンが口を開く。

 

「燐ちゃん、蛍ちゃん、ありがとう。ここまでくればもう大丈夫だよ」

 

「リンちゃん……」

 

「ここまで来れば後は、私たちだけで帰れるから」

 

「…………」

 

燐も蛍も何も言えなかった。

一番辛いことを言わせてしまったのだから、何も言う資格はなかった。

 

「これは独り言なんだけど、ずっとさ、なんで小平口町なんかに来ちゃったんだろうって思ってた」

 

リンは上を向いたまま話し続ける。

緑のトンネルで塞がれた空は、微かに雨の当たる音がしていた。

 

仮に緑のトンネルが途切れても、星空は見えやしない。

せっかく星が綺麗にみえるとの触れ込みを信じてここに来たのに、結局一度としてみることは出来なかった。

 

「キャンプなんてどこでも出来るのに、なんでわざわざ小平口町に来て、こんな目に合うんだろうって、恨み言のように思ってたんだ」

 

「夢なら覚めて欲しいって、ずっと思ってるのになかなか覚めなくてさ……ホント最悪だった」

 

「リン……ちゃん」

 

なでしこは今初めてリンの秘めたる胸中を知った。

一緒に逃げてるときは的確な指示を出してくれたり、甲斐甲斐しく自分に世話をしてくれていたリン。

 

そんなリンだって自分と同じで恐怖や葛藤があることを今初めて分かった。

 

「でも……今はちっとも後悔なんてしていない。多分こんなことが無いと出会わなかったんだと思うんだ。蛍ちゃん、燐ちゃんと。だから」

 

リンは大きく息を吸い込んでみる。

露の湿った臭いと木々の蒼い臭いが混じり、鼻孔から肺に爽やかな空気が満たされる。

 

「だから、後は自分の帰る方向に歩くよ。もういっぱい元気もらったから」

 

リンの告白に迷いや悲壮感はなかった。

諦観したような口ぶり。

 

だからよけいに悲しく聞こえてくる。

 

 

 

「燐ちゃん。これ」

 

リンはポケットから小さい犬のマスコットを二つ取り出して掌にのせた。

 

「これ、は……?」

 

涙声になっているのが恥ずかしかったので、燐は擦れた声を出すのが精一杯だった。

 

「これはね、”犬みくじ”。こっちが長野の光前寺で買った早太郎の犬みくじ。こっちのが静岡の見付天神で買った、悉平太郎の犬みくじ。よく見ると微妙に顔が違うんだよ」

 

手のひらサイズの二匹の白い犬。

そういえば似たようなものを何処かで見た覚えがあった。

 

「それでさ、こっちの眉毛が凛々しい悉平太郎の犬みくじを燐ちゃんに貰って欲しいんだ」

 

「でも……大切なものなんでしょ? さすがに悪いよ……」

 

手で摘まんで渡そうとしてくるリン。

いまいち意図が掴めなかったので、戸惑ってしまう。

 

「そうだね、でも今の燐ちゃん達には必要な気がするんだ。何かあったらきっとこの悉平太郎が……」

 

そこまで言ったリンだったが、突然口をつぐんで考え出す。

トラブルがあった訳ではなさそうだが。

 

「ど、どうしたの?」

 

リンが突然黙りこくったので気遣う様に声を掛けた。

 

「あっ! ご、ごめん。やっぱりこっちの……早太郎の犬みくじを貰って欲しい」

 

リンは思いついたように手を叩くと、燐の手に強引に早太郎の犬みくじを握らせた。

手のひらサイズの白い犬は薄い陶器で出来ているようだった。

 

貰ったのにこんなことを思うのもなんだが、()()()()()()()、磐田の悉平太郎の犬みくじだと燐はてっきり思っていたのだが……。

 

「えっとさ、悉平太郎はどうも磐田──見付で力尽きて祀られたみたいなんだって。でも長野の光前寺の言い伝えだと早太郎はちゃんと自分の故郷──駒ヶ根に戻ったみたいなんだよね」

 

照れたように笑ってリンは話を続ける。

 

「燐ちゃんと蛍ちゃんにはちゃんと自分の家に帰って欲しいんだ。こんな夜の明けない世界じゃなくて、普通のいつもの私たちの世界の家に。大丈夫、早太郎がきっと二人を導いてくれるよ」

 

「リン、ちゃん……」

 

手の中の白い犬をぎゅっと握りしめる。

小さいながらも固い陶器の感触がリンの気持ちを強さを具現化したようで、切なくなってくる。

 

「あ、でも良かったら、後で返して欲しい……後でって言ってもこの世界から出た後の事ね。その、やっぱり必ず返しにきて欲しいんだ。私もなでしこもずっと待ってるから。ずっと」

 

一つ一つ噛みしめるようにリンは言葉を紡いでいく。

なにかの呪文のように、ハッキリとした強い口調で。

 

 

燐は腕で顔をごしごしと擦ると、リンの目を正面からハッキリと見つめた。

穢れのない澄んだ瞳。

なでしこの様にきらきらとダイヤの様な輝きとは違う、もっと深く優しい紅玉のような瞳。

それが志摩リンの瞳だった。

 

「分かった。必ず返しにいくよ」

 

嘆息に近いため息交じりの微笑みを燐は返した。

まだ迷いはある。

でも出会って間もないのにこんなに想ってもらえることは普通に嬉しかった。

 

 

なでしこと蛍は何も言わず二人を見守っていた。

 

 

少しの間、沈黙が続いていた。

 

 

…………

 

……

 

 

 

「あっ、そういえば、私もっ!」

 

それまで一緒に黙っていたなでしこが急に何かを思いついたように荷物をごそこそと漁り出した。

 

「こ、これっ!」

 

なでしこが慌てて取り出してきたのは、あの富士山マスコットだった。

いろいろ振り回されたせいか所々汚れてはいたが、まだちゃんと富士山の形を保っていた。

 

「これってあの富士山のぬいぐるみだよね?」

 

蛍は確認するようになでしこに聞き返す。

あのとき、線路で寝てるなでしこの横にそっと置いたのも蛍だった。

 

「私もこれ蛍ちゃんに貰って……じゃなくてぇ! 預かってて欲しいんだよっ!」

 

「え? でも、これすごく大切なものじゃなかった?」

 

(確か、レアものって言ってたしね)

 

蛍は改めて富士山のぬいぐるみをきゅっと触ってみる。

指が沈むほどに柔らかいそれは、スクイーズのようで癖になる感触だった。

 

「結構荷物たくさんある、持ってて欲しいんだよねぃ……あ、でも後で返してねっ! そ、その郵送とかじゃなくて、ちゃんと蛍ちゃんの手で返してほしいんだ……えへへ」

 

リンと同じような約束事を蛍にも取り決める。

こんなことに意味がないかもしれない、でも、それでもやっておきたかったんだ。

また会う口実には最適だしね。

 

なでしこは発案者のリンにウィンクした。

 

「……分かった、でも結構汚れちゃってるから、ちゃんと洗って返すね」

 

なでしこの代わりにぬいぐるみを胸元でギュッと抱きしめた。

なでしこの無邪気な温かさが伝わってくるようで、切なく甘い想いに包まれる。

 

そして顔を見合わすと互いににっこりと笑い合った。

 

 

 

なでしこは蛍に実姉の面影を映していた。

普段はぶっきら棒にみえる姉──桜と、どこか控えめの蛍では全然ちがう印象ではあったけど、それでも慈しむような優しい眼差しは同じに見えたのだ。

あの見守る様な優しい瞳、なでしこにしか分からない姉と同じ香りがしていたのだ。

 

 

蛍は一人っ子だが、妹がいたらこんな感じだろうとは思っていた。

同い年のようなのに何故か年下のように見えるなでしこに、母性がくすぐられていたのかもしれない。

そんな妹の様な少女と分かれるのは本当の姉妹の様で辛かった。

本当の妹を持ったことがないので詳しくは分からないが、それでも寂しさを感じていた。

 

四人の少女は何も言わず向かい合っていた。

 

風も吹かず、鳥や虫さえもいない。

 

居るのはただ四人だけ、それだけだったのに、それももう終わろうとしていた。

 

 

 

 

 

「ん、ねぇ、みんなで踊ってみない? 映画も最後は踊ってるんでしょ」

 

「まあ、そうだけど……」

 

なでしこが特に意図を見せずに元気よく提案してきた。

確かにあの映画も最後は踊るのだが、だからって……。

 

しかしリンは踊る行為よりも、”最後”という言葉に引っかかっていた。

 

(やっぱりここで別れるしかないんだ……)

 

また会う約束をしたけれど、それでも辛い。

でもそれは一人の感情じゃなく、みんな同じだった。

 

 

「いいね! 踊ろうか蛍ちゃん」

 

「うん! 燐、踊ろう!」

 

燐と蛍はその提案に快く了解した。

その即決ぶりにリンは口をぽかんと開けてしまう。

 

「ほらリンちゃん。私たちも負けてられないよっ。ダンス勝負に逃げはないからねっ!」

 

「いや、勝負とかそういうのは……」

 

「ほらほら~」

 

「ちょ、なでしこ手を引っ張るんじゃ……」

 

リンはなでしこに手を引かれるままに踊り出す。

こういう経験はあまりなかったので、なんかギクシャクした踊りになってしまった。

 

そんな様子を蛍と燐がくすくすと笑うので尚のこと恥ずかしかった。

 

でも不思議と高揚感もあったのだ。

 

音楽や楽器さえもない線路の上で、導かれたように踊り出す少女達。

だから無性に楽しかった。

 

無駄にスタミナを消費するとかそんなことも考えずに踊っていた。

焚き火を囲んだときでさえ踊らなかったのに、今はみんな笑いながら踊っている。

 

 

みんな悲しい別れはしたくなかったんだ、きっと。

 

だから全てを忘れて踊っている今が、一番最高の時間だったんだ。

 

 

 

────

 

───

 

──

 

わたしたちはお互いに手を振り合った。

 

仲の良いクラスメートが下校するときの様なごく自然な感じで。

あのときみたいに自然な別れ方、嫌なこと思い出しちゃったけど、()()そうするしかなかった。

 

実感がないのかもしれない、まだどこかで余裕があったのか、それともただの冗談だと思ったのかは分からない。

それでもそれぞれ別の道を選んだのだ、比喩ではなく、物理的に別の道を。

このほうが効率がいい、そんなことを自分から言った気がしたが、それはただの言い訳だった。

 

やっぱり止めようなんて誰も言ってくれなかった、もちろん自分だって。

 

物は試し! いつも元気なあの子(なでしこ)が軽く言った気がするけど、そんなことで決めちゃっていいの?

 

別れる理由も、別れないほうがいい理由ももっといっぱいあったはずなのに。

議論すら惜しむほどにみんな心に余裕なかったのかな……。

 

ちゃんとした別れの挨拶すらなかった、もっと伝えなきゃならないことがあったはずなのに、それなのに。

 

 

「蛍ちゃーん! 燐ちゃーーん!!」

 

 

なでしこちゃんが大きく手を振りながら、わたしたちに声を掛けてくれる。

 

常に元気で明るい子だったな、一緒にいて楽しい子だった。

こんな子とキャンプに行けば誰だって笑顔になる、そう思えるほどの眩しい少女だった。

 

横で小さく手を振ってくれる、わたしと同じ名前の少し小柄な少女。

見た目以上にしっかりしてるから大丈夫だと思う、リンちゃんがいるからこそ別れることが出来たんだ、きっと。

それに一人の楽しさも知っている思慮深く優しい子だった。

 

そんな二人にわたしたちは手を振り返すことしかしなかった。

声、いや音を出すことすら怖がっていたのだ。

だってきっと泣いてるから、顔には出なくても泣いてるんだ多分。

 

隣の蛍ちゃんの顔すら見えない、見るのが怖かった。

 

これ以上二人の姿を見るのがつらかったので、踵を返す。

 

結局残ったのは泣き虫で凹みがちなわたしと、いつも一緒にいてくれる大好きな親友だけ。

 

 

そう。

 

また二人きりに戻っただけだった。

 

 

 

 

 

どっちの道が正解かは分からない、そう決めつけていた。

でも恐らく、こっちの道が正解なのだろう。

 

四人でいる限りは出口どころか何も起きないだろう、だからこその分岐と推測していた。

 

そして四人は二人になった。

蛍ちゃんとわたし、二人だけの道に……だからきっと何かある、それが真理だった。

 

 

 

 

 

「……燐。それ気に入ったの?」

 

あれから二人は一言も話さずに歩いていたのだが、妙な胸騒ぎを覚えて蛍が声を掛けていた。

 

「……うん」

 

燐の手は蛍と固く繋がれたままだったが、空いた手には白い犬の置物をちょこんと乗せたまま器用に歩いていた。

 

「早太郎……やっぱりサトくんに少し似てるね」

 

友人に託された大事な白い犬のおみくじ、物言わぬそれは確かにサトくんに似ているかもしれない。

 

ただサトくんと違いしっかりと両目を開いている。

そしてそれはあのヒヒとも違う事を示していた。

 

「やっぱり、戻ろっか?」

 

切なそうな表情の燐を見ていると胸が締め付けられそうになる。

だから蛍はそう提案をしたのだ、今更かと思われてもそれでも言いたかった。

 

燐は軽く首を振ってそれを拒否した。

 

「戻っても何も変わらないよ、きっと」

 

視線は掌の白い犬に注がれたまま、ポツリと呟いた。

諦めを含ませた声色だったので、蛍は居ても立っても居られなくなった。

 

 

「燐!!」

 

不意に繋がれた手が離れたと思ったら、蛍が首に手を回して抱きついてくる。

そのはずみで、富士山のマスコットが宙を舞っていた。

 

燐は宙を舞うそれを目で追って、なんとか片手でキャッチした。

手の中のもちもちとしたぬいぐるみの感触に思わずホッとした。

 

「もう蛍ちゃん。いきなりだとビックリしちゃうし、それに折角貰ったものを投げちゃだめだよ」

 

はい、と蛍の目の前に差し出すが抱きついたままの蛍は受け取ってくれようとしない。

蛍の目線はまっすぐ燐の瞳しか見えていなかったのだ。

 

「ねえ、燐。キスしてあげようか?」

 

熱っぽい声で蛍が囁いてくる。

密着することで甘いバニラのオーデコロンと混ざり合って、甘い世界を作りだす。

 

蛍の好きなバニラの香りは燐に対する無垢な気持ちの象徴に見えた。

 

「蛍ちゃん。さっきからそればっかりだよ」

 

少し呆れた表情で蛍の瞳を見つめる。

綺麗で一つの染みのない、まるで蛍のこころを映し出したようで綺麗だった。

傷つくことも穢れることもそして、自分の運命さえも呪っていない純粋な瞳。

三間坂蛍は可憐な少女だった。

 

「だって……燐、元気ないから。キスしたら元気出てくれるかと思って」

 

澱みない微笑みを向けながら蛍はそう言った、告白に近い文言だったので燐はさっと顔を赤くしてしまう。

 

「ん……元気になるのはわたしじゃなくて蛍ちゃんじゃない?」

 

「そうかもね」

 

線路の上で抱き合いながら立ち尽くす二人の少女。

それは緑の中の幻想的な風景と相まって、ことさら美しいものに見せていた。

 

 

「ね、蛍ちゃん」

 

「うん?」

 

「前にも言ったけどわたし蛍ちゃんと一緒にいるだけで幸せなんだ。特別なことなんてしてもらわなくてもいいよ。今こうしてもらってるだけですごく幸せ……。幸せのミルフィーユ状態だよ」

 

瞼を閉じて燐は幸せをかみしめるように、耳を鼻を澄ませた。

こうして瞳を閉じていると蛍の体温や鼓動を直に感じられて、心が安らかになっていくのが分かる。

 

「わたしだってそうだよ。燐といると幸せ。でもこの想いはわたし一人だけのもの。だから想いは共有(リンク)できてもそれぞれは違う方向で良いんだよ」

 

蛍も瞳を閉じる。

手に少し力を入れれば、もしくはちょっとだけ体を寄せれば想いは成就出来そうなのに、それをしようとはしなかった。

お互いの吐息が交わるほどに近くても、それ以上は何もしようとしなかった。

 

困惑されたり、拒絶されるのが怖い、でも一番怖いのは、そんなことを考えてしまう自分の心の在り様だった。

 

でも燐の憂いの表情をみていると心がざわついてしまう。

それがただの勘違いならいいのだが、でも不安は膨らむばかりだった。

 

「蛍ちゃんってさ」

 

首に回した手を優しく解かれる、あの時と同じように簡単に。

それでも燐の意思は変わらないとでも言いたいようにあっさりと。

 

「やっぱりすごく可愛いよね。こんな可愛い蛍ちゃんをわたしが独り占めするなんて、ズルいと思うんだ。だから蛍ちゃんの本当の幸せって教えて欲しい。わたし全力で応援するからっ」

 

澄み切った空のように淡い微笑み。

燐の言葉はまるで最後の願いのように聞こえたので。

 

蛍は一瞬驚いたあと、燐から顔をぷいっと背けて一言だけ呟いた。

 

 

「……しらない」

 

 

蛍の意外な言葉に燐は目を丸くして固まっていた。

 

だが理由が分かると、燐はあまりにも可笑しくなって、ついつい噴き出してしまった。

 

「蛍ちゃん怒っちゃったの? 可愛すぎだよ、もう!」

 

いつまでも笑い続ける燐。

目の前で笑われるのがすごく恥ずかしくなって、蛍は耳まで真っ赤にして俯いていた。

 

「あっ! ごめんごめん。蛍ちゃんすごく可愛かったからついね。大好きだから許して~!」

 

今度は燐が蛍にギュッと抱きつく。

あの富士山のマスコットは頭の上に器用に乗せたままで。

 

「ほんとに」

 

それまで黙って俯いていた蛍がぼそっと呟く。

 

「ええっ!?」

 

「本当にわたしのこと好き?」

 

恋人に尋ねるような甘い口調で蛍がひそひそと訊ねてくる。

 

「も、もちろん! 蛍ちゃんのこと好きだよ。友達としてじゃなく、蛍ちゃんとして好き!」

 

燐は少し動揺しつつも、ハッキリと蛍の頭の上でそう告白した。

少し恥ずかしかったけど、偽りの気持ちではなかった。

 

「じゃあ……キスしてくれる?」

 

「蛍ちゃんごめん、やっぱりそれは無理」

 

燐はきっぱりと言い放った。

拒絶という訳ではないけれど、今はそんな気持ちになれなかったから。

 

(だって、誰も見てなくてもすごく恥ずかしいし、それに……そんなことしたらわたし蛍ちゃんに溺れちゃうよ絶対……絶対のぜったい!)

 

「え~」

 

口を尖らせてまたも蛍が拗ねる。

そんな膨れた様子もとても可愛らしく、燐は抱きしめる手をより強くした。

 

「え~、じゃないでしょ。蛍ちゃんいつからそんなにキス魔になったの」

 

「燐と出会ったときから」

 

「そんなすぐばれるような嘘つくー。もう、どれだけ一緒だと思ってるの?」

 

そんなことを言う蛍がたまらなく愛おしかった。

蛍には自分がいるから大丈夫と何度も言われてきたが、結局自分が蛍の想いに救われているだけだった。

 

蛍がいなければ、この緑のトンネルすら歩くことはなかった。

きっとあの風車の下にずっと居ただろう、もう考えたくもなかったから。

 

でも蛍が手を取ってくれた。

自分だって苦しいのに、それでもわたしのことを気遣ってくれる優しい蛍ちゃん。

 

だから、今はまだこのままでいたい。

両想いの淡い気持ちままで……。

 

「ありがとう蛍ちゃん。やっぱり蛍ちゃんと一緒で良かった」

 

「わたしは、ただ燐と一緒にいたいだけ。それだけだよ」

 

正面から向き合う燐と蛍。

不安も迷いも消えてないけど諦めもなかった。

 

 

「はい、これ」

 

頭に乗せていた富士山のマスコットを手に取り、再び蛍の目の前に差し出した。

ぬいぐるみである為、表情に変化はあるはずないのだが、ぞんざいな扱いを受け続けたせいか、少し怒っているようにも見えた。

 

『ほたるちゃん。ぼくのこともっとだいじにしておくれよぉ~』

 

ぬいぐるみを左右に振りながら、燐が後ろで妙なアテレコをしていた。

その微笑ましさに蛍はにこにこと笑みをこぼす。

 

「ごめんね。キミのこともう()()()()()()しないから。ずっと一緒だよ」

 

差し出されたぬいぐるみを手に取って、胸元でぎゅっと慈しむように抱きしめる。

その言葉は誰に向けてのものなのか、蛍はその真意を語ろうとはしなかった。

 

 

 

 

二人は手を取って代り映えのない廃線跡をまた歩き出した。

どんな結果が待っていようと先に進むほかない、仮に戻ってもそれは同じだったから。

 

 

「ねぇ、燐。もし、もしもちゃんとこの世界から出れたら……」

 

「出れたら?」

 

「わたしの家に一緒に住まない? 使ってない部屋ならいっぱいあるし、友達同士なら問題ないと思うんだ」

 

蛍は特に気負いもせずにそう言ってきた。

あまりに突飛な提案だったので、燐は面食らってしまう。

 

「蛍ちゃん。話が飛躍しすぎだよ~」

 

「そうかな? 良い案だと思ったんだけど」

 

蛍は小首を傾げた。

 

「どーせーしてるとかみんなに疑われちゃうんじゃない?」

 

顔を赤らめながら、燐がからかうように言ってくる。

突飛な考えになっているのは燐も同様だった。

 

「わたしはそれでも問題ないよ」

 

蛍はきっぱりと言い切った。

何か策があるというわけではない、本心からの言葉だった。

 

「わたしは問題だよ~」

 

燐は更に顔を赤くする。

蛍とそういう関係になることにそれほど抵抗はないが、それでも恥ずかしかった。

 

 

「えー」

 

「ほら。また、えーって言った。もう蛍ちゃんってばホントに……」

 

「だって燐が……」

 

 

 

他愛のない。本当に他愛のない会話を続けながらわたしたちは先に進む。

 

県境、もしくは隣の町まで逃げれるかと思ったけれど、その可能性は限りなく薄かった。

でもそれはある意味分かっていたことでもある。

 

ただ二人で会話をずっと楽しみたかっただけなのかもしれない。

結局それが一番したかった事だった。

 

 

振り返ってみるとこの三日間、ただ這いずり回っていただけ、ただそれだけ。

時にゆっくり歩いて、時には全力で走って、車を使ったことさえもあった。

でもこれといって解決はしなかった。

あの二人と出会っても何も変わりはしない、()()()()この先へ行くしかないのだ。

 

それならせめて()()二人だけはここから出て欲しい。

それがわたしたちの最後の望みだった。

 

 

 

だから、こっちの道を選んだ。

わたしたちは多分、ずっと前から”白羽の矢”が胸に刺さったままだったから。

 

だから、仕方なかったんだ……。

 

 

────

 

───

 

──

 







最近、舌磨きを朝晩のルーティーンに加えてみたのですが……むぅ、なんか便秘気味になった気がするですよ……因果関係は分からないけどその内慣れていくのかなー??


さて、今回犬みくじを出してみたのですが、ゆるキャン△ の知識だけじゃ足りない感じがしたので、画像検索してみたわけです……光前寺の犬みくじ、可愛ええですね……でも、2011年バージョンは何か違う、白くもないし、明らかに犬種が違う気がする、でもカワエエなあ……。

ドラマ版に出てたのが現在の光前寺の犬みくじだと思うのですが、公式HPではなぜか紹介されてないので今でも売っているのかは不明ですね。
ゆるキャン△ 人気で売り切れているのかもしれないですが。

逆に見付天神の犬みくじは連絡をすれば郵送してくれるみたいですね。
色違いで二種類あるみたいですが……うん。何故かゆるキャン△ と違っていて素朴な感じが見て取れますが、これはこれでかわええかも。

個人的には鷽鳥(うそどり)の置物と同おみくじが気になりますねー。
私自身、以前文鳥を飼っていた縁もあってか鳥モノには結構目を惹かれてしまうのです。
しかし肝心の鷽鳥のデザインが……可愛いというよりも個性的というかエキセントリックというか可愛いとはちょっとベクトルが違う気がしますね。



”428 ~閉鎖された渋谷で~”

先週に掛けて体調不良のこともあり、小説書くのを放っておいて今更プレイしてしまいましたよー。
事前情報等なしで16時間でノーマルクリアしました。その後攻略サイトみて真のエンディングで終わらせましたねー。
ノーマルエンドの時点で白い栞ゲットなので結構行き詰まりながらのプレイでした。
ボリュームがかなりあって結構楽しめましたねー。続きが気になっちゃってガシガシとやりまくりましたよー! 隠し要素も豊富にあってすべての要素を出すまでやると、かなりの時間が掛かるかと思います。
でも、それだけ長く楽しめることが出来るということですね。

内容は刑事ドラマ風な感じで、ビジュアルはほぼ実写なのですが、演出とか結構頑張ってて、渋谷でロケと考えるとゲームとは思えないほどに作り込まれています。

ボリュームがあるということは選択肢が多いと言うことで、後半になるとかなり複雑化してきて何度もバッドエンドを迎えてしまいました……。

シナリオは……前半から中盤は先が読めずにひたすら楽しめると思います。
中盤の後半ぐらいから出てくるあるキャラがちょっと世界観的にあれ? っていうか、なんか違う気がするっていうかねえ……。
黒幕の正体を知った時は……なんかこう……上手く言えないんですけどやっぱりアレ? って感じになりましたね。
まあこの作品、スピンオフアニメみたいなのもありますしそうゆうことなんでしょう。

個人的に気になったのはこの作品、”双子”と”記憶喪失”というサスペンス物では、あまりやってはいけない設定を入れてるんですよね。

まあ今回の自分の作品でも安易にやっちゃいけない”夢オチ”を入れちゃってますけど……。

どうも上記の3つの設定は所謂”逃げ”みたいになってしまうようでして、”双子”はトリックとしてあまりにも安直に見えるみたいですし、”記憶喪失”と”夢オチ”に至ってはもう古典的の極みと言われるぐらいのものみたいですしね。

でもそれを加味しても最後まで楽しめました。後半はヒントが出ないせいか死にまくりでしたけど。

結構色んな媒体で発売されていてスマホ版もありますが、どうも古いOSじゃないと動かないみたいで、今ならPS4かPC版が良いかと思われます。

2008年の作品ですがそこまで古臭い感じもなく、今でも十分楽しめると思います。ただ出てくる携帯がガラケーなのと、かなり長いシナリオになるので、私は2度目のプレイははないですね……多分。

今は新型コロナウィルスの影響で実はかなりのタイムリーゲーになってます。
ちょっとしたネタバレになってしまいますが、ウィルスやらパンデミックやらの単語が出てくるので、今となっては割とシャレになってない展開のような気がします……偶然だと思いますが。
ただ、所詮フィクションなのでこのゲームのシナリオをあまり鵜呑みにすると陰謀論とかソッチ系になってしまいますけど。

それにしても今、現実の渋谷のほうがゲーム内よりももっと深刻な状況ともみれますね……。
現実は小説よりも奇なりというか、ゲームよりも残酷なりと言ったところでしょうか。

でも大分ハマってしまったので次作はこれと青い空のカミュのクロスオーバーも結構良いかもしれないですね。

──題して、”628 ~閉鎖された小平口で~”

……圧倒的に登場人物が足りないですね。それに青い空のカミュ自体がこんな感じの話だったような気がする……小平口町は閉鎖されてますしね……。
でも、ちょっと面白そうかもしれない。もう一つ別の作品を持って来れば登場人物の問題は解決するけど……特に良いのがないなあ……。またゆるキャン△ ってわけにもいかないしねぇ。

さてさて、そろそろ話の終わりが見えてきたけど予定通りいくかなー?
いくといいなあーー。


ではではー。


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