境界線上の神殺し   作:ノムリ

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三年梅組

 どれだけ願っても

 

 どれだけ祈っても

 

 返っては来ないもの

 

 配点《命》

 

 

@ @ @

 

 

 空を泳ぐように飛行するのは準バハムート級航空移動都市艦・ 武蔵。その中に建てられた学院武蔵アリアダスト教導院前の橋にある複数の人影があった。

 先頭に立つのは、長剣を背負いジャージ姿の教員オリオトライ・真喜子。その前に並ぶのは勿論、オリオトライが教師として世話をする学生三年梅組の生徒たちである。

 

「三年梅組、注目ッ!」

 その号令に反応してお喋りをしていた生徒たちはすぐに前を向き、口を閉じる。

 よしよし、と頷きオリオトライも続けて話し始めた。

「んじゃ、これから体育の授業を始めるわよ。先生はこれから品川にあるヤクザの事務所まで、ちょっと全力で殴り込みに行くから全員ついて来るように。そっから先は実技ね。───わかったら返事!」

 

「「「Judgement!」」」

 

 返事は?と聞かれ反射的に返事を返すが、その後はて?これは体育なのか?と頭に疑問符を浮かべるがそれは長年の付き合いからそういうものだと自己解決を脳内で行う。

 

「教師オリオトライ。体育と品川にいるヤクザにどのような関係が?もしや金ですか?」

 金髪長身のむすっとした顔つきの“会計 シロジロ・ベルトーニ”が教師に親指と人差し指を繋げて輪っかを作り、お金のマークを指で作り質問する。

 

 そんなシロジロの隣で裾をちょいちょい、と引っ張り“会計補佐 ハイディ・オーゲザヴァラー”と記された腕章をつけた女生徒が、周囲に聞こえる小さな声で情報をもたらす。

「ほらシロ君。先生、地上げにあって最下層行きになって、暴れて壁壊して、教員課にマジ叱られたから」

「中盤以降は全部自分のせいのようにしか思えませんが…報復ですか?」

 誰から問う。

「報復じゃないわよ。単に腹が立ったんで仕返すだけだから」

 

「「「それを報復って言うんだよ!!」」」

 

 生徒たちの声が重なる。

 オリオトライはそれを聞き流し、刀を脇に挟んで投影した出席簿を開く。

「んで、休んでるの誰かいる? ミリアムはいつもどおりの自宅学習だからしょうがないとして、東は今日のお昼ごろにようやく戻ってくるって話だけど、ほかは――」

「ナイちゃんが見る限り、ソーチョーとセージュンがいないかな」

「正純は小等部の講師のバイト。それから午後から酒井学長を送りに行くらしいから、今日は自由出席のはず」

 黒い三角帽子をかぶる金髪少女が“第三特務 マルゴット・ナイト”背中にある金の六枚の翼を揺らし、マルゴットの腕の抱き着く黒髪の黒翼の少女 “第四特務 マルガ・ナルゼ”が首を傾げながら情報を追加する。

 そう、と二人の情報に頷き、出席簿を操作していくオリオトライ。

「じゃあ、トーリについて誰か知ってる人いない?」

 その質問に答える人物はいない。

 代わりに、クラスと教師含めてがトーリという人物の実姉の“葵・喜美”を見つめる。

 

「うふふ……みんな、愚弟のこと知りたいの? 知りたいわよね? だって武蔵の総長兼生徒会会長の動向だものねぇ?───でも教えないわッ!」

 

「「「教えないのかよ!?」」」

 溜めに、溜め込んだ末に教えないという返答。

「だってこのヴェルフローレ・葵が朝八時に起きたときにはもういなかったんだもの!その代わりに早朝のランニングしていた朱唯(しゅい)を母さんが捕まえて、私を起こしてくれて助かったし、ついでに朝ごはんとして持っていたおにぎりを一つ奪いとってやったわ!」

「だから、しゅーちゃん今朝口に非常食のカロリースティック咥えてたのか。というか、喜美ちゃん、また芸名変えたの?」

「ええ、そうよ、マルゴット。私のことはヴェルフローレ・葵って呼ぶのよ? いいッ!?」

 マルゴットの肩を掴み、前後を振る喜美。

「こ、この前はジョセフィーヌじゃ無かったかな?」

「あれは三軒隣の中村さんが飼い犬に付けたから無しよッ!」

 

「んじゃあ、まあ、連絡なしの無断欠席はトーリだけでいいかしらね。それと朱唯、アンタはいつまでエナジースティックを齧ってるつもり?」

「しかたないだろ、ランニング後に食べる用の朝ごはんを喜美に食べられたからな。これやるって言ったら要らないからおにぎり寄こせって奪われた」

 戦闘時に非常食の食事として配布される人気最下位の味度外視の高カロリー&高タンパクのカロリースティック(プレーン味)をガリガリと齧る少し茶色く日が当たるとワインレッド色にも光る綺麗な髪の神無月朱唯。

「朱唯くん、流石にそれは皆食べたくないと思いますよ。それ、不人気すぎて在庫処分という名目で貴方が一人食べているだけじゃないですか」

「でも、美味しいよ。携帯食とおつまみは絶品が多い。酒井学長にもおつまみの餞別は好評だし」

 エナジースティックを食べ終え、持ってきていた水分で喉を潤し口の中の物を胃に流し込む。

 

「……さて、それじゃあ今からルールを説明するわよ。先生が事務所に向かっている間、先生に攻撃を当てることが出来たら出席点を五点プラス。意味わかる?五回サボれるのよ」

 生徒たちに堂々と「サボれる」と言うオリオトライの言葉に各々反応する。

「先生! 攻撃を「通す」ではなく、「当てる」でいいので御座るな?」

「戦闘系は細かいわね。いいわよ、それで。手段も問わないわ」

「では先生のパーツでぇ、何処か触れたり揉んだりしたらぁ、減点されるとこありますか?」

「または逆にボーナス点ポイント出るような所は?」

 手を挙げてオリオトライに質問をしたのは帽子を目深にかぶった忍者“第一特務 点蔵・クロスユナイト”が隣にいる航空系半竜の“第二特務 キヨナリ・ウルキアガ”と共に質問した。

「授業、始まる前に死にたい?」

 点蔵とウルキアガは悲鳴を上げ、他の面々は言わなきゃいいのに、と呆れた目で二人を見る。

 

「それじゃ……」

 その一言と共にオリオトライは階段から跳んだ。

 その行動に全員がついて行くことが出来ず、遅れを取った。

「───授業開始よッ!」

 

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