遊びもする。
喧嘩もする。
それでも最後には肩を並べて歩いていく
配点《友達》
@ @ @
「いいぞ貴様ら!もっと金を使え!」
シロジロはいつもの仏頂面とは打って変わって
「はーい! 契約成立、ありがとうございましたぁ!」
ハイディと隣で契約申請の鳥居画面を操作して会計を済ませていく。
「よぉし受け取れぇ……商品だぁ!!」
シロジロが鳥居画面を両手に収め揉み込み、空に投げるそれは注文した術式へと姿を変えた。
「商品ありがと~」
マルゴットとナルゼのコンビは自分達が乗る箒に術式を書き込み、それを発射台として、宙に浮かぶ投げられた術式に向かって射撃を開始。
発射された弾は術式の衝突すると十発ほどに分裂して、先頭を走るオリオトライを追尾するが、その程度で攻撃を当てられるほど簡単ではない。
多少スピードは落としたが一発も当たることなくオリオトライは弾の嵐を抜け、ケーブルを橋のように渡り武蔵を構成する一隻“多摩”にある商店の立ち並ぶ商店街へと突入した。
「最初は貴方だと思ってたわ!」
「Jud.! 自分、脚力自慢の従士ですんで!」
ぶかぶかの制服を着た眼鏡の少女“アデーレ・バルフェット”の手の中にはアデーレ自身の身の丈を超える青と白のツーカラーの槍を抱えて走る。
「従士、アデーレ・バルフェット!一番槍行きます!」
加速術式を発動、自慢の脚力と術式の二つから速度を増したまま、姿勢を低くして下から救い上げるように初撃を繰り出す。
突き出された槍をオリオトライは肩から外した長剣を抜くことなく鞘で槍を受け流す、だが、まだ攻撃は続いた。
受け流された槍から手を離し、自身の足を軸としてくるくると独楽のように回転しながら槍を掴み二撃、また回って三撃と攻撃を繰り返していく。
それも加速術式の効果切れと共に衰え、四撃目には完全に失速。隙あり槍を横から蹴り飛ばし、槍を握っていたアデーレはコントロールの利かなくなった槍に振り回され。
「あ~~~れ~~~!?」
アホっぽさ感じられる悲鳴を上げながら目を回すアデーレ。
目を回すアデーレの後ろから飛び出してきたのは、ターバンを頭に巻き頭の上に大皿一杯にご飯とルーが一緒に盛られたカレーライスを掲げる褐色の少年“ハッサン・フルブシ”。
「カレー!どうですカ!?」
と叫びながらカレーで攻撃をしようとする。
そもそも、食べ物で遊ぶな、カレーでどうやって攻撃?という疑問は持ったとしてもそれは口に出してはいけない。
「お昼に貰うわッ!」
そう答え、オリオトライは目の前でフラフラと目を回し足もおぼつか無いアデーレの襟首を掴み、力一杯振り回す。アデーレの持っていた槍はそのままハッサンの腹に見事に命中、自分は野球のボールのように吹っ飛ばされながらもカレーが盛られた皿は死守して吹っ飛んでいた。
続いて、長剣は野球のバッターのように構え、ふらふらしているアデーレに狙いを合わせ、フルスイング!
「あいたー!」
オリオトライの膂力を持ってしてお尻をフルスイングされたアデーレは、ハッサンとは違い一段と高く吹っ飛んでいった。
「アデーレとハッサンがリタイアしたわよ!」
オリオトライが問題でも出すように言ったその言葉に反応して、梅組の作戦参謀“トゥーサン・ネシンバラ”が非戦闘系の生徒に指示を飛ばす。
「くっ。イトケン君!ネンジ君とでハッサン君を救護して!誰かバルフェット君を救護出来る人
!」
『あ~、こちら朱唯。空からアデーレが降ってきたんだけど?』
「ナイスだよ、神無月君!」
@ @ @
非戦闘系の生徒の集団から飛び出したのは頭に筋肉逞しい全裸に蝙蝠に類似した羽を持つ男、いやインキュバスと言うのが正確だろう。
「おはようございます!怪しいものではありません。淫靡な精霊インキュバスの“伊藤・
そしてもう一人、いやそもそも人の形をしていないがもう一人。
HP3くらいしか無さそうなスライムの“ネンジ”が地面を跳ねながら屋根を移動していると、グシャリと潰れる音がした。
「あら、御免ね、ネンジ!悪いとは思ってるわ、ええ、本当よ!」
その犯人である喜美は、ネンジを踏みつけたまま前を走っていく。
梅組が屋根を走る中で、一人だけ通りを走る縦ロールのボリュームある銀髪の少女“第五特務ネイト・ミトツダイラ”は喜美に向かって叫ばずにはいられなかった。
「喜美、貴女、人に謝るときは誠意を見せなさいッ!淑女たるもの!」
「妖怪説教女め、それよりもミトツダイラ、アンタ何地べたなんて走ってるの?いつも見たいに鎖でドカンやればいいじゃない」
「この周辺はワタクシの領地ですのよ!?それなのに貴方達は!」
「あんまりミトツダイラを煽るなよ、喜美」
喜美がからかい、ミトツダイラが怒る。初等部の頃からのやり取りは高等部になったいまでも変わらず行われている。
「あまり、ミトツダイラをからかってやるなよ、喜美」
「あら、朱唯じゃない。アデーレはどうしたのよ?」
「途中で目を覚ましたから自分で走るってさ、俺も五点欲しいから少し前に行こうかと。というわけお先」
術式を使用せず、先頭に追いつくべく走る速度を速めて喜美の隣を抜け、前へと進んでいく朱唯。
@ @ @
先頭でオリオトライに攻撃を仕掛けたのは、近接系攻撃系団の点蔵やウルキアガたち。
居住区画を抜けて企業区画に入る。
此処を抜けた先にあるのは、貨物区。文字通り運搬している荷物が置かれているだけの場所だ。そこに入ってしまえばオリオトライに当てるのはより難しくなり、近接攻撃系にとっては最初で最後の見せ場がこの企業区画なのだ。
民家と違い、建物の屋根には建造物や煙突がある。悪路を走破する訓練を受けていない者にとってはどれだけ足が速くとも速度を落とさなければならず。梅組に置いて道の障害を受け付けないのは当初、射撃を行っていたマルゴットとナルゼのコンビのみ。
故に、点蔵たちは理解している。この場所が自分たちがオリオトライに攻撃を当てられるチャンスがある唯一の場面であると。
「
可能な限り低い姿勢で術式を使わず身体能力のみで走る。
剣の利点は多い、使いやすい、持ち運び、利便性、とあるが、どんな武器にも欠点もある。その一つが低い位置への攻撃。
剣は円軌道をつまり振って攻撃か、突いて攻撃かの二種が基本。
屋根の上で低い姿勢の相手に攻撃を当てようと振り下ろす攻撃をすれば、長剣は屋根を突き破り、突きをしても同じ結果になる。
点蔵が低い姿勢を取ったのは空気抵抗を減らし速度を上げるだけではなく、攻撃をされるリスクを減らすことにも繋がっていた。
そんな思惑を無視するように、オリオトライは長剣を鞘ごと振り下ろす。
「行くで御座るよウッキー殿!」
「応!」
上空から影が舞い降りる。
半竜のウルキアガが、背翼を使った短時間の加速と飛翔を駆使。オリオトライへパワーダイブを決行していた。
半竜の体は鱗と外殻に覆われ、それだけで打撃武器となる。そこにダイブという重力加算と速度が足されれば強力な攻撃となり、オリオトライと言えど無事では済まない。
時間差を利用した攻撃。
点蔵を無力化する為に振り下ろされた長剣はすでに止められない。振り下ろしきれば上空からのウルキアガが防げず、仮に振り下ろすのを止め、ウルキアガが無力化すれば点蔵が残ってしまう。
「甘いッ!」
ニヤリ、と歯を見せて笑うオリオトライにしまった、と思うのは同時だった。
普通の刀剣類なら柄を握り、鞘から本体を抜くことで抜刀となる。
オリオトライの長剣は柄の引き金を引っ張るだけで鞘から本体が抜刀される仕組み。振り下ろしている最中に、それを行えば遠心力によって鞘か刀身の延長軌道に沿って剣が伸びるかのように鞘がスライドする。
スライドした鞘は停止不可能のウルキアガの頭部を直撃。
オリオトライは鞘に着けたベルトを噛み、首の捻りだけで鞘を引き戻し、そのまま点蔵に打ち付けた。
愛用の忍者刀で振り下ろされた長剣を受け止め、そして衝撃を緩和。弾き返されるはずだった長剣は弾き返されず、振り下ろされままである。
そして、点蔵は本命の名を叫ぶ。
「ノリ殿!」
点蔵の後ろから制服をラフに着こんだ少年“ノリキ”の名をオリオトライは叫んだ。
「本命は、ノリキね」
「解っているなら言わなくていい」
既にノリキの右手には愛用の術式が発動済み。あとは拳を当てれば術式が発動、そして体育授業である一発当てるもクリアとなる。
一人、二人、三人のチームワークと作戦の成果がいま出る―――はずだった。
オリオトライが取った策は長剣を手放すだ。
手前に傾けるように手放して長剣は向かってくるノリキの顎を狙い、標的より先に現れて障害物を無力化する為に準備していた右の拳を使ってしまった。
威力は十分、長剣は弧を描き宙を舞う。オリオトライも武器という重しが無くなった分身軽になり、体を沈め後ろに跳躍しようとして瞬間、オリオトライ、点蔵、ウルキアガ、ノリキの予想しない攻撃が入った。
小柄な身長を活かし、点蔵と同様に体に低い姿勢を保ち、気配を消し。オリオトライから見て、ノリキに重なる位置取りを心掛けて三人の後をついてきていた人物が一人―――朱唯である。
小等部の頃から使い続けた愛用の小刀を前を走るノリキの左手と左脇腹の隙間から投擲。
三人と打ち合わせをせず、完全に漁夫の利を得る為の攻撃。
「相変わらず、いやらしい攻撃ね」
「正面から勝てないなら絡め手が良いって、酒井学長も言ってたんで」
残念ながら朱唯の近接戦闘系の中での強さは中の下だ。
小柄故に力は弱く、手足も短く、歩幅も狭い。それは近接戦闘で大きなハンデとなる。
それを埋める為に朱唯は多くの技術を会得し、その一つが投擲だ。石、木片、角材、短剣、投げられるものなら何でも投げる。
相手の注意を削ぎ、集中を乱し、邪魔をする。短時間戦闘なら良くて中距離攻撃や軽い損傷を与える程度でも、長時間の戦闘となれば投擲の攻撃が地味にストレスが溜まる。
そして、今回は意識外からの一手。
警戒されたとしても、より警戒すべき存在の影に潜ませ攻撃を当てる。
狙うは太もも。
すでに体は沈み、あとは後方に跳ぶだけ。
防ぐにした行動をすべく準備に入った体で、急に別の行動をしようとするのは難しい。今回は前方にではなく後方に跳ぶ為、僅かに体重を後ろにかける。それを加味すれば十分チャンスのある攻撃。
「よっ!」
「…あ」
少しバランスが可笑しくなりながらもオリオトライは短刀が太ももに当たる前に、後方へと跳躍していった。
それこそ朱唯を嘲笑うかのように、高く跳んでだ。
オリオトライがやってのは至極単純。狙われた左足のみ力を僅かに抜き、後方へ跳躍する為に掛ける力のバランスを変えただけだ。
両足で跳ぼうしていた中、左足の力を少し抜き、代わりに右足に力を掛けた。そうすれば力を抜けた分だけ左足の方が先に動き、迫る短刀を回避できるというわけだ。
勿論、やろうと思って出来るような芸当ではないが、残念な事にリアルアマゾネスはやってのけた。
「マジかよ」
「朱唯殿でも足りぬで御座るか。後はお任せするでござるよ――浅間殿!!」
点蔵が後方組に声かけをおこなった
「惜しかったで御座るな、朱唯殿」
「いけると思ったんだけどな~」
どこぞの建物の屋根に刺さっていた短刀を抜き、鞘にしまい走るのを再開する。
「浅間が狙うか、その間にもう一回前に出られるか」
「朱唯殿、リベンジで御座るか?」
「チャンスがあったらね、五点は美味しいから。それじゃお先」
すでに役目を終えた点蔵たちと別れ、梅組の巫女が弓でオリオトライの速度を落としている間に、前線へと駆け上がる朱唯。
@ @ @
黒髪長身、左目にエメラルド色の義眼を入れた少女“浅間・智”は折り畳み式の弓を準備する。
弓は狙撃銃などと同様に精密射撃武器。
走りながら撃つなど不可能。なにより進んでいる場所は悪路だ。ならば、どうするか。
「ペルソナ君、足場を!」
浅間の掛け声に反応して、後方から速度を上げてきた大男。上半身裸、頭部を隠すのはバケツと変わらない見た目の西洋ヘルムメット。既に片方の肩に目の見えない黒髪ポニーテールの少女“向井鈴”を乗せていた。
ペルソナ君が浅間に追いつき、言葉を交わさず頷くだけで行動する。右手を弓を構える浅間に伸ばす。
同じくして差し出された右手に飛び乗り、弓を構える。
「地脈接続!」
声を共に義眼からは鳥居画面の照準術が表示される。
「行きます。神社経由で神奏術の術式を使用します!」
そして浅間の声と共に、襟元、軽装甲の右部分が開き、そこから巫女の姿をした二頭身の
「浅間の神音狩りを代演奉納で用います!射撃物の停滞と外逸と障害の三種祓い、あと照準添付の合計四術式を通神祈願で」
『ん 神音術式四つだから 代演四つ、いける?』
「代演として、昼食と夕食に五穀を奉納、そのあと二時間の神楽舞、ハナミとお散歩+お話、これで合計四代演!OKでたら加護頂戴」
『許可、でたよ。拍手!』
パン、とハナミが両手を打ち鳴らし拍手をすると、浅間の矢に光が宿る。
「義眼・木葉、―――会いました!行って!」
光を帯びた矢が放たれた。
それに対して、オリオトライは背負った長剣を僅かに抜き、すぐに戻して鞘に納め。素早く長剣を鞘ごと抜き、振り下ろす。
「無駄です、回り込みます!」
振り下ろされた長剣を矢が自動で軌道を変えて避け、横からオリオトライに向かう。
音が響き、光が爆ぜた、それを見て一同、当たった!という確信と共に唯一浅間のみが自分で射った矢が標的のオリオトライを捉えていないことを理解した。
「そんな…!?食後のアイスが……何で……」
浅間の疑問に答えたのは鳥居越しにオリオトライの行動を注意深く観察したいたネシンバラだ。
『髪だ! あのとき刀を一瞬抜いたのは自分の髪を切って、空中にばら蒔くためだったんだッ! それがチャフとなって、先生に当たったと判断されたんだ!』
「そんな~」
渾身の矢は予想だにしない方法で落とされ、流石にショックを受けている浅間を、反対の肩に乗る鈴がだい、じょうぶ?と慰める妙な光景が出来上がっていた。
@ @ @
多摩と品川を繋ぐバイタルケーブルを超え、ついに足を踏み入れたオリオトライ。
このままでは一分もしないうちに品川に入る、つまり目的ののヤクザの元に到着してしまう。
「行くわよ!マルゴット!」
「はいはいガっちゃん!急ぐと危ないよ!」
マルゴットとナルゼは上空で乗っていた箒から下り、重力に従って降下する。
「
落下しながらハイタッチを決め。翼を広げて空気を溜め、集まった空気を爆発させて推進力を得て加速する。
「あ!しゅーちゃんがまた走ってる」
「朱唯の奴、また仕掛けるみたいね。相変わらず女の子みたいな顔ね、背も低いし同人誌のネタになって大助かりだわ」
「あんまりそういう事していると嫌われるよ?」
「う゛ぅ、それは…避けたいわね」
苦い顔をしながら少し力が抜けるナルゼとアハハ、と苦笑いするマルゴット。
何せ色んな種族がいる武蔵で魔女も多く無い。
学校というコミュニティーに入ればそれは一層際立つ。梅組として学校生活を共にする中で種族だの、性別だのを気にせずに最初に声を掛けてきたのが朱唯だ。たった一言「綺麗な翼だね!」と今に思えば簡単な女だ、と言いたくもなるが甘酸っぱい思い出なのに変わりはない。
「術式主体の二人が追い付いたわけ?それでみんなの術式展開の時間稼ぎに、わざわざ出てきたわけだ!」
「そう言うこと!授業だから
マルゴットが箒の穂先をオリオトライに向け、穂先にナルゼが術式に書き込んだ弾を装填。
「行くよガっちゃん!
マルゴットの掛け声と共に穂先が膨らみ、輝く弾丸が砲撃の如く発射された。
オリオトライは自分に向かってくる砲撃を長剣で狙い、少し前にアデーレのお尻をフルスイングした時と同じように、砲撃をフルスイング。狙いは自分の進んできた道を走ってきている梅組一同。
何かに衝突して砲撃が爆散、辺り一面を煙が覆い隠した。