流れゆく世界で、愛を謳う獣   作:鴉の子

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むかし、むかしのおはなし

 

 なに? 眠れない? だいぶ疲れたはずなのに大変そうだねぇ。

 

 じゃあ、響ちゃん。私が子守唄でも歌ってあげようか? 

 

 なんだ、断られちゃった。

 

 ふむ、じゃあ眠くなるようにお話でもしてあげよう。

 

 

 ──例題だ。

 

 いや、ただのおとぎ話かな? 

 

 昔、昔のこと。

 

 まだ人が、かみさまと一緒だった頃。

 

 そう、あるところに……ひとりの女の子がいました。

 

 言葉も、愛も、何も知らない可哀想な娘がいました。

 

 娘はいつも蹲っていました、言葉を知らなかったからです。

 

 娘はいつもいじめられていました、誰とも分かり合えなかったからです。

 

 たった一人の(■■■)とも彼女は喧嘩ばかりしていました。

 

 娘の母(かみさま)は言いました。

 

『お前らしく生きなさい』

 

 娘は言いました。

 

『お母様、それでは壊すことしかできません』

 

 母は言いました。

 

『お前はそのために生まれたのよ』

 

 娘はひどく哀しみました。

 

 彼女は三日三晩泣きました。

 

 涙は海となり、泣き声は嵐となりました。

 

 海から鯨が生まれて、

 

 雨粒から獣が産まれて、

 

 吹く風から、鳥が生まれました。

 

 泣いて、

 

 泣いて、

 

 涙が枯れた頃。

 

 かみさまは、いなくなっていました。

 

 娘は、ほんとうに、ひとりになりました。

 

 泣き疲れた娘は、もう哀しくありませんでした。

 

 それから、娘は、ただひとりだけで世界を知って。

 

 ただひとりだけで世界を生きて。

 

 そうしているうちに、娘には二人のともだちができました。

 

 ひとりは、彼女に言葉を与えました。

 

 ひとりは、彼女に愛を与えました。

 

 そうして、娘は寂しく無くなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんとうに──────? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言葉を知っても、愛を知っても。

 

 娘は世界でたったひとりです。

 

 それでも、もう彼女は泣きません。

 

 彼女はもう、泣き方がわかりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ずっと後、娘のともだちが、(かみさま)に殺されました。

 

 それでも、彼女はもう泣きません。

 

 でも、哀しくて、哀しくて、娘はともだちを食べてしまいました。

 

 すると、彼女はかみさまと同じ姿になっていました。

 

 そうして(かみさま)に言いました。

 

 あなたを殺すと。

 

 世界にあまねく、尊いものを守るため。

 

 彼女は、かみさまを殺しました。

 

 でも、問題が一つ。

 

 すなわち……。

 

 ────世界とは? 

 

 彼女は答えました。

 

「この手の届かないもの、全て」

 

 そう言って──

 

 彼女は、初めて、生きることができました。

 

 それが、今からずっとずっとむかしのことです。

 

 

 

 ────なんのお話かって? 

 

 …………旧い、旧いお話だって言ったろう? 

 

 かみさまと、友だちになれた時代の話さ。

 

 




何処かで見たことあるような事があったら多分それです。
ガクトゥーンは面白いです。

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