書いては消しの繰り返しで、このままだと永久に出せないなと悟ったので書き直さずにそのまま出すことにしました。
ヤンデレ要素はほぼというかゼロなのでもし期待してくださっている方がいたなら申し訳ないです。ごめんなさい。
それでも良ければ、読んでもらえると嬉しいです。
特に何の日でもなかった。
部活が休みだったから友達と帰ろうとして、教室に忘れ物をしたのに気づいた。
それで友達に先に帰っててって言って教室に戻った。
そして君と出会った。
変な話、同じクラスになって二か月経つのに。いつだってクラスの全員とすぐに仲良くなるのが私の取柄だったのに。
その時初めて君と出会った気がした。
私が君を認識していなかったんじゃなくて、君が私を認識しようとしていなかったんだろう。
事実私は名前を知っていたけど、知られてはいなかった。
今だってちゃんと認識されているかは少し怪しい。
だってそれからもう一か月以上経つけど、君に話しかけられたことはまだないから。
「ヒロって本当に毎日教室に残ってるんだね、飽きないの?」
部活終わりに教室に寄っていくと、案の定窓側後ろから二番目の席に座っている男子がいた。ノートに文字を書いていることまで予想通り。
学校が完全に閉まるのが二十時で、彼は毎日その時間まで教室にいる。
「そっちの方こそ飽きないもんだね」
こちらを見もせずに平坦な声で返事をしてくる。男子の中でも少し低めな声。ノートに綴る手は一切止めないままだ。
「まあ私はさっさと課題終わらせるチャンスだから、今日もよろしくね」
「課題って解ける解けないより自分で考えることが大事なんだと思うけど」
「でもほら、人に教えると力になるっていうじゃん、ね?」
「僕もまだ課題の途中なんだけど?」
「でもどうせそれ清書なんでしょ?」
彼は真面目というか変な人で、どんな課題も二回するという理解不能な習慣を持っている。
一回目は解答用のノートに、二回目は提出用のノートに。
あまりにも訳の分からない習慣だから勿論最初は理由を聞いた。
「暇つぶしみたいなもんだよ」って答えたっきり、それ以上は何も言わなかった。
もしそれが本当にそうなら、多分そうまでして学校で時間をつぶす理由があるんだと思う。
でもそれは聞かない。仲良くなるには、聞きすぎないっていうのも大事なことだから。
「まあいいけど、じゃあどの課題からするの」
そこでやっと彼は顔を上げてこっちを見てくれた。少し長い前髪ごしに目が合って、すぐに逸らされる。
「今日何の課題が出てたっけ?」
それを聞くなり彼は黙って清書に戻ろうとする。
「わ、嘘嘘、数学、数学から教えて!」
「数学からって、何個教わるつもりなんだか」
「もちろん全部に決まってるじゃん、じゃあまず一番からよろしく!」
彼はこれ見よがしにため息をついたけど、それでも一から十まで丁寧に教えてくれた。
相変わらず教えるのが上手で、無駄に量のある課題も下校時間になるころにはきっちり終わっていた。
「何とか終わったね、ありがとう、明日もよろしくね!」
「僕に聞いてない頃の課題はいったいどうしてたんだか、たまには自力でやりなよ」
「ヒロが教えるの上手だから仕方ないよ、それじゃあまた明日!」
「ん、バイバイ」
また明日って言うことは、些細なことだけど大事だと思う。人と繫がる最小単位の約束だから。
私は人と別れるときには大抵また明日って言うし、多分彼もそれを分かってる。毎回返事までにちょっと間が空くんだから。
空はすっかり暗くなっていて、自転車に乗って帰っていった彼はあっという間に見えなくなった。
「また明日ね」
なんとなく呟いてみて、それから私も家に向かって歩き出す。
明日もきっと彼に課題を教えてもらう。でも私自身なんで一か月もこうして彼に教えてもらっているのかはよくわからずにいる。
別に課題を教えてもらうだけなら他の人だって良い。友達だけはたくさんいるし、頼めば特段断られたりもしないだろう。
それでも私は彼に教えてもらう。分かりやすいから? 楽しいから?
それとも、彼のことが。
ふと浮かんだ考えを首を振って否定する。何となく顔が熱くなるのは慣れないことを考えてるからだ。
大丈夫、大丈夫、多分そんなことない。誰に対して言い訳しているのか分からないけど、なんとなく否定したかった。
私は一か月やそこらでどうにかなっちゃうような簡単な女じゃない、はずだ。
じゃあそもそもなんで一か月も勉強を教えてもらい続けてるのか、その答えはすぐには見つからなくて。
たくさん考え事をするには家と学校が近すぎた。
最初の一回、一回だけ彼が家まで送ろうかって言ってくれたのを思い出す。近くだから大丈夫って断ったら、そっかって言って彼は一度も食い下がらずに帰っていった。
家が遠かったら違ったのかななんて思ってしまった自分に気が付いて、また妙な考えが浮かんでくる。
誤魔化すように玄関の扉を開けて、声を張って帰宅の挨拶をした。やった、今晩はカレーだ。
妹が私より一足先に夏休みに入って、ラジオ体操があるんだって早起きをするようになった。
それにつられて私も早起きしちゃって、朝の時間を持て余す。
どうせやることもないし良いかと早めに登校すると、学校はまるで放課後みたいだった。
どの教室にも人の気配はなくて、廊下には蝉の泣き声だけが響いている。
人といるのは好きだし友達は多い方だって自覚はあるけど、別に寂しがりなわけじゃない。一人でいるのも嫌いじゃなくて、なんなら好きな方だ。
そんな私にとって、こんな状況の校舎は妙に居心地がよかった。日はもう昇り始めているけど、今日はまだそんなにうだるほどの暑さじゃない。
上手い具合の角度でまだ日の差し込んでいない廊下は外よりも涼しさを感じられるくらいだった。
なんとなく深呼吸をしてみると気持ちがいい。人が少ないから、二酸化炭素濃度も低いのかも、なんてテキトーなことを考える。
一階から三階まで、廊下はずっと同じ雰囲気だった。
特に意味もないけど各階を端から端まで歩いて、両端の階段を交互に昇った。
教室の扉はどこも全開で、本当に人っ子一人いないことが見て分かった。
それで最後に辿り着いた三階の一番端が私の教室だった。
そこも他の教室と変わらず、外の音だけが響いて、廊下からは人の気配なんて感じられない。
でも彼は座っていた。
背筋はまっすぐで、手元に開いた教科書を見ている。
窓側後ろから二番目。いつ見てもそこにいる彼は、相変わらずそこにいた。
下校が遅いのはここ一か月で十分わかっていたけど、登校が早いのは今日初めて知った。
多分毎日そうなんだろう。早く来て遅く帰る。先生を除けば学校にいる時間が一番長いのは間違いなく彼だ。
一切触れたことはないけど、やっぱり何か事情があるんだろうか。学校にいる時間が長いというのはすなわち家にいる時間が短いということで。
単に学校が好きなのかもしれないけど、普段の彼を見るにそういう印象は見受けられない。勉強が好きなら家ですれば済む話だし。
気にしたところでどうせ私は聞くことも出来ないだろうし、考えるだけ無駄なんだけど。
それはいいとして、朝見る彼はやけに絵になる雰囲気だった。
別に見目が特段良いわけでも、スタイルが良いわけでもないけど。ただ姿勢よく座っている姿が、完成している一つのものとして映った。
夕暮れに見る彼と何か違って、ああ、そうだ背筋のキレがいい。
放課後の彼はもう少し背中が丸まっている。多分一日中同じ姿勢で疲れが出るんだろう。思い返せば本当に彼はずっと同じ姿勢でいてばかりだし。
そんなことを廊下に立って一人考える。
見慣れたのもあってか、どうにも彼は一人で教室にいるのが似合うように思えてしまう。
毎日放課後ためらいなく踏み入れてる空間なのに、時間を改めてみるとどうにも一歩踏み出しにくい。
ふと、我に返った。
私は何をしているんだ。教室の隅の彼を見てから急に足を止めて一人廊下で物思いにふける変人になってる。
まだ早い時間で誰にも見られないから問題はないけど。
やれ彼の姿勢一つを取って放課後との違いを考察していたのが妙に気恥しい。どれだけ彼のことを普段観察していたのかに気付かされてしまう。
「おはようヒロ、早いんだね」
彼は私の第一声の一音目に反応してぴくっと一瞬だけ体を揺らした。
「おはよう島田さん」
顔をこちらに向けて一言だけそう言うと、また手元に目線を戻す。
こちらを見もしない放課後よりは若干優しい対応に見えるけど、彼は割と律儀なのでそもそも一日の最初の挨拶はきちんとしてくれるのだ。
「流石に七時に学校に来てる人はいないと思ってたからびっくりだよ、調子に乗って歌ったりしなくてよかったよかった」
「別に、歌ってたって誰かに言いふらしたりするつもりもないけどね」
実際そうなんだろうな。つもりもないというか相手がいないというか。彼が私以外の人と話してるところなんてほとんど見たことがない。
「そ、なら歌えばよかったかな、にしてもヒロは何時から来てるの?」
「さあ、時計確認してないから、校舎を開けてる先生に聞いて」
つまりそれって校舎が開くときにはもう着いてるってことか。いくらなんでも早すぎる。もしかしたら先生を入れても学校に一番長くいるのは彼なのかも。
私が驚いているのをよそに彼は淡々と手元に視線を走らせては教科書のページをめくっていく。
私も自分の席、教室の真ん中の列の一番後ろに座ったはいいけど、特にすることが無い。別に読書の趣味もないし、彼に倣って教科書を黙読する気にもなれない。となると滅茶苦茶手持無沙汰だ、徒然なるままにってやつだ、こないだ彼に教えてもらったばかり。
やたらと早く来た弊害が出てる。彼と二人きりだ、いや別にそれ自体は悪くないけど気まずい。一人なら平気だけど二人以上いる中での静寂は息苦しい。
というかもし彼がこうやって毎朝教科書を読んで、放課後もあんなに課題をやってるんだとしたら、教科書くらいとっくに読破してるんじゃないだろうか。彼も特にやることないけど気まずいから教科書を読み続けてたりするのかもしれない。私が彼の一人の静寂を邪魔していたら、もし邪魔してるなら何か話題くらい提供するべきかな。
気まずさのあまりやたらと色々なことを考えてしまう。放課後は課題を教えてもらってるからこんなに気まずい静寂もないし、教えてもらうことで既に会話が出来てるから軽口をたたいたりすることも出来る。
だからすっかり彼とは気軽に話せる関係だと思い込んでいたけど、どうやら違ったらしい。課題のワンクッションを挟まないとこんなにも話せないものだったのか。
「あ、そういえばヒロは百花祭どうするの?」
とっさに思い付いた話題と言えば、二か月後の学校祭のことくらいだった。私の高校では毎年九月の最初の方に行われる学校祭。四日に分けて行われて、最初の三日が文化の部、最終日が体育の部だ。高校の売りになるくらいには力が入ったお祭りで、七月の最終週から準備期間になる。九月の頭の一週間も準備期間で計二週間、実際には八月いっぱいの夏休みがあるから準備にかける時間はもっと長い。さらに準備期間より前から文化の部の出し物や体育の部の出場競技を決め始めるのだ。
だから二か月後の祭りの話をすることだって別に不自然なことじゃない、多分。でも彼は少しの間黙ったままだった。
「どうするって、何が」
返ってきたのは若干の困惑を含んだ声音だった。それもそうだ、いくら何でも質問が曖昧過ぎた。別に曖昧で会話のためだけの会話なんて普段のことだけど、彼に限ってはそうもいかない。普段しているのは明確な答えのある課題の話ばかりだから。
「ほら、出し物とか競技とかさ、何か考えてる?」
言いながら大差ないなって思った。結局曖昧な質問のままだ。
「特に、どうせ僕が考えても意味ないだろうから」
寂しい自虐的な答えのようで、多分事実を述べただけなんだと思う。実際彼がクラスで発言することはほとんどないから、いくら考えてもそれが形になることはない。
勉強してばっかりだから堅物なんじゃないかって思える彼でも、本当は面白おかしく軽口に返答できるユーモアはある。最近のトレンドとかが分かるかはともかく、勉強ばっかりってわけでは無いと思う。普段の軽口からところどころそう感じられる。あと皮肉るのもお上手。
多分文化の部の出し物とかも彼なら何か面白いことが出来そうな気はしてる。体育の部は、まあ、わからないけど。
でも彼はそれを人に知ってもらおうだなんて思っていないんだろうな。知識や発想をひけらかすわけでもなく、ただ黙って座っている。謙虚なのかもしれないけど、多分他人に興味が無いんだと思う。
だから彼のそういうところを知っているのは私だけ。
友達にはそのまた友達がいる。いたって普通の話だし、特にそれに関して思うところなんてない。だけど彼の友達は私だけなのかもしれないと思うと、何だか感じるものがある。彼が私を友達と呼んでくれるのかは分からないけど。
そんな風に関係性に思いをはせている場合じゃなかった。今大事なのは会話がまた止まってしまったことで。
それから何回か簡単な質問を繰り返してみたものの、全く話が広がらなかった。彼があまりにも端的にこたえるものだから広げようがない。
何回目かの短い沈黙に頭を悩ませていると、彼が突然振り返ってこう言った。
「無理しなくて良いよ」
思わず少し身構えた。条件反射みたいなもので。
時々言われる言葉だった。いつのまにかいろんな人とたくさん話すようになって、そしたらわざと明るく振舞ってないかとか、自分の前では素でも大丈夫だからとか言われるようになった。あんまり好きな言葉じゃない。私は今の私に満足していて、無駄に色々考えてしまっていることまでわざわざ人に知ってほしいとは思わない。私が振舞う私を見ていてくれればいいのに。
だから思わず身構えてしまった。彼もそういうことを言うのだろうか。彼だってそれとなく距離をとる素振りをしてくるのに。それなりに慣れてきたら、やっぱり踏み込みたくなるんだろうか。
「あれ、違った?」
「違った、って?」
彼は私が少し顔をこわばらせたのを見てそう言った。
少しとぼけたような表情といいその発言の内容といい、私の想定から外れすぎていてついオウム返ししてしまった。違ったって何の話だ。踏み込んだ一言でも来るのかと思ったら全然そうじゃなかった。
「僕と会話するのは大変みたいで、とりあえずそう言っておけば皆安心した表情になるから」
こんどは逆方向からショックがやってきた。
私に踏み込むとか踏み込まないとか全然そんな話じゃない。それの何歩手前だろう。
彼の言っていることは分かる。多分人への興味が薄いから誰と話してもそんなに話を広げたりしないんだろう。だから彼と会話してみようとする人たちは皆気まずくなる。まさに今の私。
ただ彼もそれには気付いているらしく、彼なりの対策をしているってことだろう。問題はそれが何の対策にもなっていないところで。
「それに、僕は別に気まずかったりしないからさ」
そこが問題だ。実際彼は気まずくないんだろう。だから無理して話さなくてもいいっていうのは彼としては気まずさへの対策になっている。
ただ普通は二人で黙っていたら気まずいものだ。相手からしてみれば根本的な解決にはなっていない。ただ単に無理して話を広げる必要が無くなって一息つくだけだ。
ただ私が受けたショックは発言そのものとは関係なくて。
問題が解決していないとかそんなことはどうでもいい。彼が私にその発言をしたことが確実に何かを抉っていった。
おかしな話。踏み込まれるのは嫌だって思うのに、皆と同じ対応をされることに傷ついてる。
傷ついてる?
私、なんだか変だ。彼が私をそこら辺の人と同じように扱ってきたことに傷ついてる。
たった一か月やそこら課題を教えてもらっただけ。他の友達と話す回数は減ってないし、彼とだけたくさん話したわけじゃない。
だから私が何か彼に特別な思いを抱くことなんてない、ないはず。
でも彼は全然人と話さないし、私とだけ特別多く話してる。だから何か私に思うことがあったっておかしくないし、少なくとも多少は慣れてくれてると思ってた。
いや、いや、やっぱりおかしい。こんなこと、こんな、傲慢だ。
私、こんなこと考えたことなかったのに。皆とうまく付き合って、皆と友達で。誰も傷つけないように、私も傷つかないように。
こんな風に、誰かの特別じゃないことで傷つくなんて。誰かの特別を求めるなんて。浅ましい、傲慢な考えだ。
「あれ、島田さん、どうかした?」
何も言わない私に違和感を覚えたのか、彼が呼びかけてくる。画一的な名字にさん付けが駄目押しみたいで。
「ううん、何でもないよ」
名前を呼び返すのはなんだか悔しくて、張り付け慣れた笑顔で返事をしたけど、ちゃんと笑顔が出来てるかちょっと不安になる。
ならいいけどって、彼は少し安心したような表情とともに自分の机に向かいなおった。
そういえば、彼から話しかけてきたのは初めてだったかもしれない。内容はさておいて。
何か少しだけ違和感がある。彼、私の名字だってほとんど呼ばないのに。島田さんって呼んでくれるのも挨拶の時くらいだし。
とぼけた表情だってちっとも見たことない。もしかしたらさっきのが初めてかも。
考えすぎだ。
「無理しなくて良い」っていうのはあなたなりの距離の取り方で、私が踏み込まれたくないみたいに彼も今私から距離を置こうとしただなんて。
でも、私たち似た者同士だったりするかもしれない。だからこんなに気になって、だからこんなに余計なことを考えちゃったりして。
人といることを考えすぎちゃうから、人との距離を定めて、誰に対しても同じ対応を心がけて。
次から次に考えが溢れて止まらない。
多分防衛本能みたいなもので、ダメージを和らげようとしてるからだ。そうだ、そう思いたい。
そもそも彼は人とほとんど話してないんだから実は誰にも「無理しなくても良い」なんて言ったことが無いんじゃないかとか。私が初めて彼に近づいたからわざとらしく誰にでも言ってそうな言葉をチョイスしたんじゃないかとか。距離を取られたってことは逆に言えば近づいた証拠じゃないかとか。
やっぱり考えすぎだ。人と話すときはつい考えすぎることが多いけど、群を抜いた深読み。
良い方向に良い方向に考えを持っていきたくなる。
でも実際彼は結構思慮深いタイプだし。初めの方の私なりのいつもの距離の詰め方とかは大抵わざとらしくスルーされてたし。人に興味がないんじゃなくて、人との間に保とうとしてる距離が遠いだけなら。一定距離を保とうとするとする私と同じような人間なら。だったら彼だって深読みするタイプかもしれないし。
それならやっぱりさっきの発言はわざとで。ってことは私との距離が近づいてきてる証拠で。
目指したい方向が決まってるせいでどう考えても同じところに着地してしまう。同じ考えをぐるぐる回る。
静かに教科書を読む彼の背中を見て、つい声をかけたくなる。振り向かせたくなる。
もし私たちが同じような人間なら、もっと仲良くなって良い。もっと赤裸々に話したって良い。
近づきすぎないようにしてる距離だって、あなたとなら気にしなくたっていい。
傷ついた時に思い出した。
怒涛の勢いで都合よく進んでいく考えに、薄々気付きだした。
なんでこの一か月、放課後彼といたのか。きっと自分に似たものを感じていたから。
だから興味が湧いて、だから近づきたくて、だから今背中に声をかけたくて。
それがなんという感情なのか、ほとんど自覚しかけていた。顔が熱くなるのだって勘違いじゃなかった。
「ヒロ、」
「おはよ紘、今日も負けかぁ」
「おはよう、朱理、ついに二着も転落だよ」
「わ、ホントだ! 七海さんじゃん、おはよう!」
「朱理ちゃん、おはよう」
無自覚に出てしまった声は、元気のいい挨拶にかき消された。
熱が出そうなくらい回転してた頭が冷水をぶちまけられたみたいに一瞬で冷えていく。
隣のクラスの女の子だ、何回か話したことがある。天真爛漫って感じの笑顔に張り付けた笑顔で返事をする。
ああ、やっぱり、やっぱりそうだ。今、はっきり自覚できる。
ここまで来るのになんだかんだ説明を付けてみたけど、そんなのいらなかった。初恋に理由なんて。
そうだ、きっとこれが恋って言うんだ。じゃなかったら、そうじゃなかったらこんなにイライラしてこないだろうから。
読んでいただきありがとうございます。
勢いに任せて書きなぐった結果当初思いついたのとは全く違う方向にいったので続きがどうなるのかいまいちわかりません。でも出来る限り早く書こうかと、本当に。いや本当に。
ヤンデレは最後に何とか風味だけでもつかないかと思ったんですが、やっぱり難しいです。この先で何とかなるように頑張ります。
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