惑星ミルディアン。
ここは時の惑星と呼ばれ、伝説の占い師が住まう星と呼ばれていた。
その占い師の実力は間違いなく、『未来・現在・過去』を全てを知っていると言われている。
占い師を便りに来る者は後を断たない。
人探し、己の将来、敵星の軍事基地の場所、想い人の考え、など千差万別。
有力なだけあり、野蛮な連中もやってくる。
「ここには伝説の占い師が居ると聞いたんだがなぁ! まさかこんな小さい星に居やがるとは」
「
黒服に身を包んだ連中が、懐に銃を潜ませてやってくる。
ここミルディアンは視界から見て、球体の星の上に居ることを認識させるくらいの丸みがかっていた。
「
「一軒しかねぇだろうがボケ! そこしかねぇんだよ!」
怒鳴り付けながら、部下を殴るマフィアのボスは、その扉の前まで来る。
「あ~なになに? 『この先は素足でお進みください』だぁ!? ふざけてんな」
マフィアのボスはそれを無視して、堂々と正面の大扉を開けようとすると、ピタリとも動かない。
「なんじゃこの扉は! 全然開かんじゃい!」
高血圧気味に叫ぶマフィアのボスは何度も大扉を叩くも何も反応が無い。
ボスは尚も止まらない苛立ちに怒鳴り声が響くも無反応。
「
「この儂がこんな田舎の星まで来たというのに、このぉぉ~!!」
今度はとうとう銃を取り出したボスに、部下たちは焦る。
今まさに引き金を引こうとした瞬間。
「騒がしくするなよ。そこは俺の
そう言いながら背後に立っていた一人の青年が居た。
黒の衣装を纏った黒髪の青年。
その青年の言葉にボスはやっときた反応に、怒鳴り声で反応する。
「なら中にいる奴を出せ!! 早く憎きライバルマフィアの弱点の情報を買いにきたんだからな!! いつまでもこの儂を待たせるとどうなるか! 知りたいか!」
一気にマフィアの手下たちは、その青年を囲み、銃を取り出して脅す。
青年は騒ぐこともなく、両手を上げて、ボスに言う。
「待ってくれよ。穏便に話し合いで決めよう。というかお茶しないか? 話すのが好きなんだ。あんたの好物はなんだ? 好きな乗り物はなんだ? なんだったら好きな人の恋愛相談なんか受けるぞ」
「クックック……ビビって頭の沸いたこと聞いてくるな。そんなのするかボケがぁ! さっさと殺せ! 俺は占い師に用があるんじゃ!!」
ボケの掛け声と共に、引き金を引かれた音が、その場に響いた。
見るも無惨な死体が転がるかと思いきや、青年は無傷のままだった。
マフィアのボスは吸っていた葉巻をその場に落ちる。
「な、なんじゃあお前は……」
青年に向けて撃ったであろう銃弾は、青年が両手を上げていた、その掌にへと収束して、固まったままそれを握った。
「弾が曲がった!?」
「弾速も極端に落ちたぞ!?」
「なんで両手に!?」
手下たちは一気に狼狽える。
「珍しい……エーテルを使った弾じゃないのか。実弾を使って脅すなんて、中々渋いじゃねぇか」
この宇宙で、実弾を使ったものはマイナー扱いされるが、変わりにエーテル弾を前提にしたシールドなどを無効化して相手に致命的な攻撃を与えることに、一部には未だ使われていたりしている。
「お前……
《エーテルギア》
体内のエーテルの流れを機械のように組み替えて力にする暗黒時代の力。それを扱える者は少ない。
「ここの
ズンッッッ!!! と青年がそれだけをただ呟いただけだというのに、圧倒的な圧力が体を軋ませ、まるで
この目前に立つ青年が、どれだけの力を持っているのか、肌で感じたのだ。
だが、
「ガキがぁ!! 邪魔するんじゃねぇえええ!!」
だが、撃たれることは無かった。
「ぷぎゅるぅ!!??」
マフィアのボスは、地面にめり込んでいた。
そのボスの周辺だけを綺麗に
「あんたの《宇宙》は随分小ぃせぇな」
青年は、手に持っていた鉛の弾丸を
「さっさと帰れ」
マフィアの歩かたちは『ひぃ~!』と泣き叫びそうながら、ボスを引き抜いて、そそくさして帰っていった。
そんな奴らを眺めながら、その黒髪の青年は、再び自分の座る定位置にへと戻る。
するとそこには、《時の宮殿》の主である《時詠み》のシャオメイが座っていた。
黒く美しい髪を靡かせて、
「御苦労様です、用心棒様」
「恩人の頼みだ」
シャオメイは用意していたお茶とお菓子をパクつきながら話しかける。
「あの方たちが乱暴者とはいえ、私の仕事が減るのは困ります」
「こうなることを読んでいたろ」
「時詠みゆえ」
微笑んで、綺麗な形をした菓子をパクつく。
「暇なんだろ」
「時詠みは時を詠むのですよ。これからどうなっていくのかなんて分かりきったことをただ待っているだけです。そしてはそれはある意味つまらない」
「俺の恩人様は暇と」
黒髪の青年もお茶が入った湯飲みを掴んで、ゆったりとした面持ちでそれを飲む。
「あなたの名前は《キセツ》と名乗るのですよ」
シャオメイはお茶を啜りながら、そんなことを言ってきた。
未来が見える分、説明を省く傾向がある女主人に、青年は困り顔である。しかし、このやり取りは慣れているのか、信用しているからか、特に説明を求めることもなく『分かった』と呟く。
シャオメイはその答えに満足そうにして笑う。
「分かってたんだろうがよ」
「素直なあなたが大好きなんですよ」
「俺も大好きだ」
それだけをお互い言い合って、微笑み合いながらお茶を飲む。
熟年夫婦のような、少ないやり取りの中にある親愛と信頼が感じ取れる一幕だった。
※
そして、時が少しだけ進むと、シャオメイの元にまた新たな客人がやって来た。
「誰かいるわね」
「つーか、小さい星だなここ! すげぇ!」
「建物ってここしかないんだね」
やって来た客人に興味があったシャオメイは、用心棒の青年を下がらせ、ある依頼を出してきた。
『コロシアムで勝ち進んできた者たちと共に旅に出ること』
コロシアムとは、過去・現在・未来が見えるシャオメイが退屈でたまらないので、『戦いの勝敗』だけが分からない制限をかけた闘技大会のようなもの。
本人曰く『ぶつかり合う肉体の肉体!! 飛び散る血と汗!!! どっちが勝つか
戦いの結果だけがシャオメイは、その分からないことを生かした闘技大会を開催するのが好きなのだ。
見る専門のバトルマニアである。
そして、そのシャオメイの餌食となる客人たちが、ここの用心棒をしていた青年の《目的》だったもの。
(そうか、俺は今日でここを出るのか)
長かった歳月も、己の技を鍛えると共に、それを眺め支えてきてくれた女主人に感慨深く思いを馳せながら、旅の準備をする。
シャオメイにより、命名された名《キセツ》を名乗るのはともかく、どこまで話して良いものか。
(俺の正体も含めてな……)
そんなことを考えていれば、あっという間にその時間となる。
(……俺の時間は、今から動き出す)
※
シャオメイにより、手に入れたかった情報を持ち帰ろうとしていた客人に、《キセツ》を名乗る黒髪の青年は客人たちの前に立つ。
帰ろうとしていた客人たちは、《時の宮殿》の外に立っている男を見て、唖然としている。
「君たちの旅に俺も加えてもらいたいんだ。是非お願いしたい」
客人たちは面白い衣装に身を包んでいたが、先頭の少年は、その黒髪にツンツン頭を揺らして聞く。
「……?……お前誰だ?」
それは、キセツと顔がどこかにている少年、シキとの出会い。
「お前の
「「「「えええっっーー!!」」」」
旅は始まったばかり。
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