別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。   作:風邪引きピエロ

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出来たらよろしくお願いします。


器用度極振りのその前に

都内某所に立つアパート・・・その一室。

 

厚手のカーテンが閉められ、照明の類も一切つけられていない薄暗い部屋の中、唯一の光源たるテレビの光が薄ぼんやりと周囲を照らし出している。

 

そんなテレビの前には大きめの座椅子に座り、画面を凝視しながら一心不乱に手元のコントローラーを操作する一人の女性がいた。

 

 

柏崎飛鳥(かしわざき あすか)

 

 

この部屋の主の女性である。

 

部屋着である赤いジャージに身を包み、長く伸びた黒髪を使い古したゴムで無造作に1つにまとめ、度の強そうな縁黒の眼鏡のレンズの奥に寝不足と疲労とストレスによって最早何人か殺った後の殺人鬼みたいな眼光を爛々と光らせたりしているが、あくまでも女性である。

 

 

最近ボタン周りがユルユルになってきたコントローラーがガチャガチャと悲鳴にも似た音をたてる度に画面の中のキャラクターが敵モンスターを切り刻んでいく。

画面上にある敵の体力を示すHP バーが見る間に削られていき、消滅する。

 

テレビがクエストクリア時のファンファーレを響かせると同時に、傍らに置いておいた携帯からアニソンが流れ始めた。

 

どうやら着信らしく、ぼんやりと光る画面文字が『白峯 理沙』と表示されている。

 

 

飛鳥は寝不足でぼんやりする頭を傾げなから携帯に手を伸ばし、通話に出る。

 

 

 

「・・・・・・・・なに?」

 

 

 

『うわ、すっごい声・・・この前やったゲームのデーモンの呻き声みたい』

 

 

 

即座に通話をぶっち切った飛鳥は携帯を元の場所に放り出すと再びコントローラーを手に取った。

が、またも流れ出したアニソンに思い切りしかめっ面をしながら渋々通話ボタンを押す。

 

 

 

「・・・喧嘩売るために電話してきたんなら高値で買ってやるから近所のゲーセンに来いや・・・」

 

 

『それはそれで魅力的ですけども、今日の所は御遠慮させて頂きます』

 

 

 

電話の向こうからは、デーモン飛鳥とは対照的な元気のよい溌剌とした声が聞こえてくる。

 

通話の相手は『白峰理沙』。

 

数年前、とあるゲームを通じて出会って以来リアルでも親しくなった年下の少女だ。

 

 

 

『飛鳥さん、また徹夜でゲームしてたでしょ。廃人プレイもいい加減にしないとホントに電脳世界の住人になっちゃいますよ』

 

 

 

「ぬかせ。その廃人に普通に勝ち越しやがる変態プレイヤーに言われたかないわ」

 

 

 

言い返しながら、ニヤリと口の端がつり上がる。知り合ってからこっち数多の戦場(ゲーム)でやり合ってきた記憶が甦り、徹夜も相まってなにやらテンションが上がってきた。

 

いっそ本当にゲーセン・・・は無理でも、オンライン対戦でもおっ始めようかと思い始めた時、理沙が本題に移った。

 

 

 

『ところで飛鳥さんってやってますよね。『New  world online 』』

 

 

 

「当然のように断言してくるねぇ、お前さんは・・・まぁ、やってるんだが」

 

 

 

『やっぱり』

 

 

 

電話ごしの理沙が我が意を得たりといったような声を出した。

 

 

 

 

『New  world online 』

 

 

 

 

仮想現実の世界に入り込んで遊べるというVRMMO。

その中でも昨今飛ぶ鳥を落とす勢いで売り上げを伸ばしているゲームだ。

 

人気の秘訣はその自由度の高さにある。

スキルや武器は多種多様な中から選べ、プレイヤー自身の行動によっても変化するため千差万別のビルドが可能である。

 

発売前から注目を集めていたゲームでもあり、自称ゲーマーたる飛鳥自身も既にアカウントを作成し、プレイしている。

 

そんなゲームについて、飛鳥に勝るとも劣らずのゲーム好きの理沙がわざわざ話題にしてきたということは、だ。

 

 

 

「・・・・私に誰かのサポートでもさせようってか?それも、おそらくあんまりこの手のゲームをやったことのない初心者の」

 

 

 

『さっすが飛鳥さん!話が早い!』

 

 

 

「わからいでか」

 

 

 

そういって飛鳥はつまらなさそうに鼻を鳴らす。

 

普通に考えるならば、新しく始める理沙自身のサポートを、先に始めている自分に頼みたいと考えるところだ。

 

が、理沙はどっちかというと自分自身の手で道を切り開いていきたいと考えるタイプだと飛鳥は思っている。

ならば、理沙以外の人間・・・それもわざわざサポートをつけなければ不安と考える程にはゲーム慣れしていない者のことを頼みに来たんだと考えるほうが妥当だ。

 

 

 

『それで、どうでしょうか飛鳥さん。お願いできます?』

 

 

 

「ンー・・・・」

 

 

 

理沙の言葉を聞きながら、そろそろ本格的に限界が近くなってきて動きの悪い頭を働かせること数秒。

 

 

 

「まぁ、いいよ。それじゃあ明日の夜にでもゲーム内で落ち合いますか」

 

 

 

『ありがとうございます!それじゃあ明日また連絡しますから。おやすみなさ~い!』

 

 

 

「ほいほ~いっと・・・」

 

 

 

通話の終了ボタンを押したと同時に、視界がボヤけてきた。

どうやら本当に限界が来たようだ。

最早動くのもかったるいので、そのまま座椅子の背もたれに体重を預けて深く息をすう。

 

 

 

『『New  world online 』で初心者のサポートねぇ・・・・』

 

 

 

薄れゆく意識の中、先程までの話題を脳内で反芻する。

 

 

 

 

『あれ・・・でも、私の作ったアカウントって確か・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『別ゲーの推しキャラを再現しようとして、【DEX 】極振りの超キワモノキャラにしたような気がする・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで考えた所で飛鳥の意識はぷっつりと途絶えたのであった。

 

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