別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。   作:風邪引きピエロ

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遂にお気に入り登録が1000を超えました。誠にありがとうございます。
最近、仕事だったりオリュンポスだったりで更新が遅くなってしまってますが出来たら今後もよろしくお願いいたします。


器用度極振りと第二回イベント 8

「ムリムリムリムリ絶対無理!!」

 

 

 

 

クエスト名がウインドウで表示されたのを確認したフレデリカが頭をブンブンと横に振りながら断言する。

 

 

 

 

「つまりあの下の奴全部敵って事でしょ!?あんな数の雑魚敵に囲まれながらボス戦なんて勝てる訳ないじゃーん!!」

 

 

 

 

「ま、一理ある。その辺りどうなんだ?」

 

 

 

 

「あー、言葉が足りなかったな。厳密に言えばメイヴの奴を倒す必要はねぇよ。ただちょいと奪われた物を取り戻す手伝いをしてくれりゃあ良い」

 

 

 

 

言ってクーフーリンが杖でメイヴのいる方向を指し示す。

その先には1人佇むメイヴ──その横の地面に突き立っている一本の朱槍があった。

禍々しい赤黒いオーラを纏う明らかに普通ではない雰囲気を放っている。

 

吉法師ことノブナは一目で気づく。

アレはスカサハ戦で見た朱槍と同質の物だと─

 

 

───すなわち魔槍『ゲイ・ボルグ』

 

クーフーリンの代名詞であり、彼がスカサハから受け取った呪いの朱槍である。

 

 

 

 

 

「何としてもアレを取り戻さなきゃならんのだが・・・情けねぇ話だが、今の俺1人じゃアレを取り戻せない。悪いがちょいと手伝ってくれねぇか?無論、成功した暁にはそれなりの礼はするぜ」

 

 

 

 

「フム・・・」

 

 

 

 

「ちょっとまさかこのミッションやるつもり?」

 

 

 

 

「お前はやらないのか?」

 

 

 

 

「あったり前でしょー!こんなの逃げるが勝ちでしょ」

 

 

 

 

「逃げる、なぁ・・・この軍勢の真ん中から?行動不能な男三人を担いで?」

 

 

 

 

「うぐぐ・・・」

 

 

 

悔しげに唸るフレデリカ。

しばらくそうした後、諦めたように項垂れている。

 

 

 

 

「・・・わかった。手伝う、手伝えばいいんでしょー!」

 

 

 

 

「よっしゃ!ならまずは雑魚の数を減らすとしようか!」

 

 

 

クーフーリンが掲げた杖を振るうと足元が揺れ始める。

足場にしていた植物の枝葉で構成された巨人が動き始めたのだ。

突然の事にバランスを崩しかけたフレデリカを吉法師が後ろから支える。奇しくも抱き締められるような形になりフレデリカが顔を真っ赤にしたが吉法師は全く気にしていない。

 

 

 

巨人が一歩大地を踏み締める。

 

 

それだけで周囲にいた名も無き兵士達がダメージエフェクトと共に弾け飛ぶ。

 

象が蟻を踏み潰すかのような一方的な蹂躙劇だ。

 

巨人の肩の上でその様子を観戦していたフレデリカが感心したように呟く。

 

 

 

 

「ヤバ・・・これ、思ったより簡単に倒せちゃうかも?」

 

 

 

「───いや、そう甘くもなさそうだぞ?」

 

 

 

 

 

吉法師の視線の先──

 

 

 

 

 

「流石はアルスターの大英雄クーフーリン!魔術師になっても容赦ないのは変わらないのね!そういうところも好きよ?──だ・け・ど・・・そのまま暴れ続けるのはちょっといただけないかな」

 

 

 

 

 

部下が蹂躙されていくのを眺めながら尚も変わらず余裕の笑顔を浮かべ続けるメイヴがその右手を天に掲げる。

 

 

その右手に虹色の閃光が迸る。

やがて光が収束した時、その手には長大な両手剣が握られていた。

 

 

 

 

 

──否

 

 

 

 

はたして「ソレ」を剣と呼んで良いのか。

 

 

 

 

本来刃が存在する部分には巨大な掘削用工具───有り体に言えば「ドリル」が付いていた。

 

メイヴがその柄を愛しそうに撫でると、ドリルが回転を始めた。

見る間に回転はその速さを増し、周囲の空気を巻き込みながら虹色の閃光を纏わせる。

 

 

 

 

 

「・・・やっべ。おい、アンタら死にたくなけりゃ今すぐ飛び降りな!」

 

 

 

 

「ナニアレナニアレナニアレー!?」

 

 

 

 

「わからん!・・・わからんがとりあえず、ロクなもんじゃなさそうだ!」

 

 

 

 

 

 

「【愛しき人の虹霓剣《フェルグス・マイ・ラブ》】───えいっ!」

 

 

 

 

 

 

可愛らしい掛け声と共に振り下ろされる剣(ドリル)。

 

刀身から放たれた虹色の剣光が戦場を鮮やかに照らし出す。

光の奔流が荒れ狂う竜巻の如く渦を巻きながら射線上に存在するモノ悉くを呑み込み、破砕しながら進撃する。

 

一行(フレデリカは吉法師に抱えられて、意識不明の男三人はクーフーリンが引きずっていった)が飛び降りた直後、巨人の肩から上が光に呑まれ消滅した。

 

 

 

消滅の危機を間一髪回避し、全員が無事地面に着地した。

が、その周りを何百何千という数の兵士達が取り囲んだ。

 

周囲から一斉に集まる視線。

殺意に溢れたソレが突き刺さる。

現実では勿論、ゲーム内でもそうはない経験に肌が粟立つ感覚がする。

 

 

 

 

「さて、どうするお二人さん?今の攻防でそれなりに数は減ったが時間が経てばすぐに補充されちまうだろうぜ」

 

 

 

 

「厄介極まりないな。だがまぁ、是非も無し!こうなればやり合いつつ、隙を見つけて槍を奪取するしかあるまい!俺は前衛で暴れるから後方支援は任せた!」

 

 

 

「わ、わかった!サポートは得意だよー!」

 

 

 

 

意識不明の男達を中心に、三人がそれぞれ武器を構えたのを合図に兵士達が一斉に襲いかかってきた。

 

 

無尽蔵の敵にたった三人で挑む闘いの戦端が今開かれた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「【多重炎弾】!」

 

 

 

フレデリカの周囲に発生した魔法陣から発射された多数の炎の弾丸が迫り来る敵を焼き滅ぼす。

自身のMP残量を気にしつつ、囲むようにせまって来ようとした敵陣から距離を取り再び魔法を放つ。

 

 

 

「【多重水弾】!」

 

 

 

今度は水の弾丸が放たれ、敵を弾き飛ばした。

敵陣に出来た穴を利用し、更に距離を取る。

 

 

多彩な魔法と優秀なMP回復能力、そして【多重詠唱】のスキルを駆使して攻防支援をこなす戦闘スタイルがフレデリカの持ち味だ。

突発的に巻き込まれた戦闘であるとはいえ、その技の冴えは衰えていない。

 

 

次々繰り出される多彩な魔法に攻めあぐねる兵士達。

其処に追い討ちをかけるように扇状に放たれた炎の弾幕が広範囲の兵士達を灰へと還す。

 

 

 

「我が師スカサハより学んだルーン魔術、その真髄って奴を・・・」

 

 

 

 

言いながらクーフーリンが指で空中に文字を描く。即座に効果を発揮したルーンが炎の柱となって敵陣を焼く。

 

 

 

 

「そこっ、【多重石弾】!」

 

 

 

 

敵陣にわずかに空いた穴にフレデリカが放った石の弾幕が突き刺さり、更にその穴を広げる。

 

人1人が入り込める隙間が開かれたそこに、人影が入り込む。

 

 

 

 

 

「──【食いちぎり】」

 

 

 

 

人影──吉法師が敵陣の真ん中で縦横無尽に刀を振るう。

兵士の頭が、腕が、胴体が、巨大な獣の顎にやられたかのように千切られる。

仲間の死に怯まず襲い掛かってくる兵士の頭を突然現れた火縄銃が撃ち抜く。

兵士の頭が爆散し、その中身を周囲に撒き散らす。

 

 

 

 

「ふぅむ・・・身長差やらリーチやら、やはりまだ馴れんの・・・も少し動いとればどうにかなるか?」

 

 

 

 

ボソリと呟いた吉法師に向けて更に押し寄せてくる敵。即座に空中に出現させた火縄銃で敵を撃ち抜きつつ、近づいてきたものには刀による一撃で削り殺す。

 

 

変化してから初めての本格的な戦闘に、自身の立ち回りをチェックしながら槍に向けての進撃ルートを開拓していく。

 

 

 

 

「──なにあれおかしい」

 

 

 

 

「ハッ!なかなかやるじゃねぇか!」

 

 

 

 

吉法師の戦闘を見ながら、ドン引きするフレデリカと面白いものを見たと笑うクーフーリン。

 

敵陣の只中を意識不明の三人を引きずりながら、ゆっくりとだが、着実に突き進んでいく一行の元にギャリギャリと地面を削る騒音が聞こえてきた。

騒音の方に視線を向ければ、無数の雑魚の中を行く土煙が見えた。

 

 

 

 

 

「ボスの攻撃来たよー!1時の方向!」

 

 

 

 

「兄ちゃん!アンタは奴のスキルと戦車での攻撃には絶対当たるなよ!あの三人組の二の舞になんぞ!」

 

 

 

 

「そいつはゾッとしないな」

 

 

 

 

 

 

軽口を叩きつつそれぞれ油断なく身構える。

グラグラと地面が揺れ、土煙が目の前にまで迫ってきた。

やがて、名も無き兵士達の陣形を弾き飛ばしながら屈強な牛の牽く二頭立ての戦車が吶喊してきた。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、大人しく私にひれ伏しなさい!!──【愛しき私の鉄戦車《チャリオット・マイ・ラブ》】!」

 

 

 

 

 

 

「俺狙いか──ふっ!!」

 

 

 

 

 

横っ跳びに回避し戦車の突進を回避する。

回避直後に刀による攻撃を加えようとするも戦車はあっという間に横を通過していく。火縄銃による射撃も凄まじいスピードで移動し続ける戦車にはなかなか命中しない。

 

 

 

 

 

「──チッ!あれだけ動き回られたら当たらんぞ」

 

 

 

 

「大回りしてる!また突っ込んでくるよー!」

 

 

 

 

ギャリギャリと地面を削る音が一旦遠ざかり、近づいてくる。

再び突進してきた戦車を避ける。

しかし、戦車はまたもや突進の軌道を描いて走っている。

いずれまた突っ込んでくるつもりなのだろう。

 

 

 

 

「まだ来るのー!?もう、いつまで続くのこの攻撃!」

 

 

 

 

「あー・・・こりゃあれだな。ダメージ与えるまで走り続けるみたいなヤツ」

 

 

 

 

「時々あるボス戦用ステージギミックみたいなアレ?めんどくさいなーもう!」

 

 

 

 

「ともあれお前とクーフーリンの魔法なら当たりそうだな、範囲広いし。幸い俺を狙って攻撃を繰り返してくるから近づいてきた時を狙って撃ち込んでくれ!」

 

 

 

「了解ー!」

 

 

 

「任せな!」

 

 

 

話している間に三度近づいてきた戦車。

狙いはやはり吉法師だ。

土煙を上げて突っ込んでくる戦車をギリギリまで引き付け、衝突寸前で横っ跳びに避ける。

 

 

 

「【多重炎弾】!」

 

 

 

「アンサズ!」

 

 

 

直後二人の放った魔法による範囲攻撃が戦車の横腹を直撃する。

戦車を牽引する二頭の牛が悲鳴を上げて怯み、動きを止めた。

戦車の赤いカーテンが開かれ、中から不満そうな表情を浮かべたメイヴが姿を現す。

 

 

 

 

「動きが止まれば此方のものよ!」

 

 

 

 

メイヴに向けて刀を振りかざし斬りかかる。

 

 

 

「駄目だ!近付くな!」

 

 

 

クーフーリンの鋭い声が響く。

其方に反応する間も無くメイヴが妖艶な微笑みを浮かべた。それこそがスキル発動の合図。

 

 

 

 

 

「──【愛しき私の蜂蜜酒《マイ・レッド・ミード》】」

 

 

 

 

 

瞬間、むせかえる程に甘ったるい匂いが漏れだす。メイヴが何処からか取り出した杯に黄金色の液体が注がれる。

満たされた杯をメイヴが微笑みながら差し出す。

 

 

 

 

「さぁ、どうぞ」

 

 

 

 

差し出された杯に満たされたのは黄金色の蜂蜜酒。アルスター伝説にて数々の勇士を魅了したという伝説を有する神話時代の代物だ。

 

 

 

 

 

【愛しき私の蜂蜜酒《マイ・レッド・ミード》】

 

・自身から半径1m以内に存在する対象を選択して発動する。

・このスキルの対象になった者が男性であった場合、【VIT】値の半分での判定を行いその数値が一定値以下であれば【魅了】状態を付与する。

・一定時間、対象の【VIT】の値を20%低下させる。

 

 

 

【魅了】

 

・状態異常

・効果時間30秒。

・一定時間行動不能となる。

 

 

 

 

男であるならば一度食らえば抜け出せぬ、強力なスキルである。

 

 

 

 

 

 

───「男」であるならば、だが。

 

 

 

 

 

 

 

「───ふっ!」

 

 

 

 

 

「キャアっ!?」

 

 

 

 

 

吉法師の刀がメイヴの杯を切り裂く。

斜めの切り落とされた杯から蜂蜜酒が溢れ落ち、消滅していった。

 

更に一歩踏込み帰す刀で下から上へと袈裟斬りに斬りかかったが、途中で取り出された鞭で受け止められた。

 

ギリギリと至近距離でにらみ合う。

 

 

 

 

「貴方──なんで私のスキルが効かないのよ!?」

 

 

 

「教えると思うか?」

 

 

 

「──っ!!」

 

 

 

 

メイヴの表情が不快げに歪められる。

鞭で刀を振り払うと、見た目とは裏腹に鋭い回し蹴りを放つ。

吉法師は落ち着いて後ろに跳躍することで距離を取り、放たれた回し蹴りを避ける。

 

 

 

 

「おっと!──ずいぶんと足癖が悪い女王様だな」

 

 

 

 

「───面白い・・・貴方、面白いわ」

 

 

 

 

戦車上で鞭をギリギリと音が出るまで折り曲げながらメイヴの顔に暗い笑顔が浮かぶ。

 

己の中の嗜虐心を隠しもせず表した攻撃的な、獲物を前にした肉食獣の如き笑顔だ。

 

振るった鞭が牛を打ち、再び戦車が疾走を始める。

 

 

 

「私に落ちない男なんて久しぶり!いいわ、そういうのも好きよ!そういう男を征服し屈服させ組敷くのは至上の悦び!」

 

 

 

 

搭乗者の意思をくんだように戦車のスピードが更に上がる。

前に立ち塞がるモノ全てを蹂躙しながら突き進む。

 

 

 

 

「さぁ、存分にいたぶりなぶり支配してあげる!──【愛しき私の鉄戦車《チャリオット・マイ・ラブ》】!!」

 

 

 

 


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