別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
イベント6日目 夕暮れ時・・・
フレデリカ一行と別れた後、一人と一匹は所々で休憩を挟みつつエリアを移動し続けていた。
目的であるメダルも先の戦闘で既に規定数所持している為、がっつく必要もないので合体を解除してスキルも使わずのゆったりとした珍道中である。
とは言え、敵NPCは勿論コインを狙っての他プレイヤーからの襲撃をその都度叩き潰しながらの移動だったので完全に平和な道のりという訳ではなかったのだが。
「結構な数相手しとったと思ったがコインは落ちず、か。ま、儂らのレベルアップに貢献してくれたのだと思っとくかの」
「ノブノブ」
「ぬ?おお、そういえばさっき新たなスキルを覚えたとか表示出とったな。後で確認するか」
頭の上に誇らしそうに胸を張るちびノブを乗せつつ歩くノブナ。
そんな緊張感もへったくれもない一人と一匹が不意に足を止める。
目の前にまるで侵入者を拒むかのように鬱蒼とした葉を茂らせた木々が立ち並ぶ森林地帯が広がっていたからだ。
どうやら新たなエリアへと到着したらしい。
そんな目の前の光景に目をやりながらノブナは腕を組み、唸る。
「ふーむ、森かぁ。こういうところは隠れ潜むには良いかもしれんが同時に突然の襲撃に備えんといかんのよな・・・もうそろそろ日も暮れるし休むならも少し開けた場所の方がいいかもしれん」
「ノノノ!」
「なんじゃそうペシペシ叩かんでも伝わるわ」
「ノッブ!」
「ん?・・・・あれは山か?」
ちびノブが示す先に目を向ければ森林地帯の向こうに高くそびえる山岳地帯が見える。
確かにあそこならばここよりは視界が開けているし、なんなら洞窟など見つければ休憩できるかもしれない。とはいえ、である。
「ああいう目立つ場所はプレイヤーが集まりやすいんじゃよなぁ。無論出会ったからとて負けるつもりは毛頭ないが、さりとてむやみやたらと突っ込んでいって追いかけっこというのも面倒じゃし・・・いっそのことあのあたりにいるプレイヤーが根こそぎ逃げ出せるような何事かでもあればよいんじゃがのう。まぁ、そんな都合のいいこと早々起こらんだろうが・・・」
そう言いながら所持スキルを眺めることしばし・・・
はたと、画面をスクロールをする手が止まった。
マジマジと画面を注視したノブナは一転、己が頭上で疑問符を浮かべているちびノブを見上げてニヤリと嗤った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ほぼ同時刻・・・・森林地帯の一画にて・・・
メイプルを山の中腹にある洞窟へと残し、一人森林地帯までメダル狩りへと赴いていたサリーは首尾よく目的を果たして―――具体的には100人以上ものプレイヤーをしばき倒して――――帰還の途中であった。
油断なく周囲の気配や音に注意を払いながら、メイプルの待つ洞窟へと走る。
と、突然
ズガンっ!!!
という轟音とともに地面が激しく振動した。
「っ!?」
まるで近くに雷でも落ちたのかというような音と衝撃に体勢を崩しそうになるのをなんとかこらえ、二振りの短刀へと手を伸ばす。
『----ここに来て何かしらのイベントフラグでも踏んじゃった?それかパーティー同士のぶつかり合い?どっちにしろ今は遠慮したいなぁ・・・』
突発的な事態にも動じず冷静に思考し、注意深く周囲を観察する。
しかし見えるのは鬱蒼と茂る植物と立ち並び視界を遮る木々のみ・・・・・否・・・
木々の枝葉の向こうに巨大な『ナニカ』が今まさに立ち上がろうとしているのがわずかに見えた。
しかし結構な距離がある上に茂った枝葉が邪魔でよく見えない。
「だったら・・・ッふ!!」
一息の気合の声とともに跳躍。
木の幹を蹴って更に高く飛び、枝葉を突っ切って上へ。
やがて木の最上へとたどり着き体重を支えられそうな太めの枝へとジャンプ。
見事枝の上へと飛び乗った。回避盾を標榜し鍛えたステータスとサリー自身のPSがなせる業であった。
「っと、ここなら周りも良く見え、る・・・・・・・・・・・」
サリーの言葉が知りつぼみとなり、やがて消えた。
その顔に浮かぶのは驚愕、忘我、困惑、混乱・・・
そこは確かに周りの木々よりも頭一つ大きな木であったらしく登った枝からは森林地帯の全景がよくよく見て取れた。
・・・・見えてしまった
サリーのいる場所から300mは離れた森林地帯と別のエリアとの区切り辺りに『ソレ』はいた。
―――兜の前立てのような装飾を施された黒の軍帽。
―――黒い軍服風の衣装に鎖や家紋をあしらった飾り、飾り紐などの装飾。
―――足元には黄金色の具足。
―――トレードマークの赤いマント。
―――見ているだけで気の抜けそうなぐだっとしたディフォルメ顔。
サリーの良く知る友人に似た、巨大なナマモノがそこに立っていた。
帽子の前立ての高さを含めれば高さ10mに迫るほどだろうか。
夕日を遮り森林地帯に影を落とす様は怪獣映画の様で・・・しかし、その間抜けな風貌の為にどうしても漂うシュールさがいっそのこと不気味にすら思える。
「・・・・・・・・・ワタシハナニモミテイナイホント二アンナナマモノシラナイ」
予算の足りないB級パニック映画を無理やり見せられているかのような光景にサリーは思わず頭を抱えたくなった。
一瞬何も見なかったことにしてしれっと帰ろうかと真剣に悩みすらしたものの、シュールな巨人が動き出す方が早かった。
身体を屈め、短い両手を地面につき、片足の膝を立てる。
俗にいうクラウチングスタートに似た体勢を取り、ひと時の間の後、
轟音とともに地形が抉り取られた。
「っ!?」
木にしがみついて何とか吹き飛ばされるのを防ぐサリー。
その眼前でシュールな巨人が森林地帯を蹂躙しながら疾駆する。
一歩目で完全にスピードに乗り、巨体が進むごとに地面がえぐられ空気がかき回され木々が吹き飛ぶ。
ダイナミックに過ぎる環境破壊を繰り広げながら巨人が向かうのは・・・・
「・・・・・アレ、メイプルのいる山に向かってる?」
サリーの視線の先、巨人は明確に山へと進行している。
一瞬、メイプルの身を案じるも件の巨人の見た目がどう見ても知り合いなのを見て考えを改める。
「・・・・とりあえず、アレの上でふんぞり返ってるだろう元凶を捕まえて詳しく事情を聞き出すかぁ・・・」
深い深いため息を一つ吐き、サリーの体が枝の上からかき消えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方その頃
件の巨人の頭の上でふんぞり返って高笑い上げる人影が一つ・・・無論ノブナである。
「フハハハハハハ!良いぞちび・・・いやさでかノブ!これならばすぐにでも山まで辿り着けるであろうさ!レベルアップで覚えたお主の新スキル、【巨大化】と【ギガンティックモード】様様じゃのう!」
【巨大化】
・自身を巨大化させる。
・HPを2倍にする。
【ギガンティックモード】
・【巨大化】の力を限界を超えて使用するための力。
・【巨大化】中のみ使用可能。
・更に自身を巨大化させる。
・【HP】【STR】【VIT】【AGI】の数値をを2倍にする。
・このスキルを発動させている間、発動者は継続ダメージを受ける。
「イベント終盤で疲弊しきったこのタイミングでこんな明らかに規格外のモンスター・・・しかもご丁寧に明らかに儂の姿を模しているときた!この姿を見れば儂関係のナニモノかだと容易に予想もつくじゃろ!ただでさえ厄介そうなモンスターに前イベント上位勢足るこの儂が一挙に敵にまわるような事態を前にして、真正面からやり合おうとする愚か者が何人残るか見モノじゃのう!」
その言葉通りでかノブの進行方向から数多の悲鳴が聞こえ、哀れなプレイヤー達がわらわらと逃げ惑っている光景が見て取れる。
中には運悪く逃げ遅れた者、或いは極々限られてはいたがヤケクソ気味に吶喊しようと立ちふさがる者もいた。
そういった者達はすべからく圧倒的なまでの質量という名の暴力によって潰され或いは何mもの上空へと弾き飛ばされて鮮血のような赤い光の粒子となって爆散していった。
その凄惨な光景が更にパニックを引き起こし、地上はさながら阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈し始めた。
「フハハハハっ人がゴミの様とはまさにこの事じゃな!!・・・・・・・・・てかあれ思ったよりも・・・ちょ、速い、速過ぎぃ!?儂もポロリと落ちそうなんじゃがぁ!?も少し主に配慮とか遠慮とか出来んのか具体的にはちょっとスピード緩めるとかぁ!?」
『ノ~~~~~~~~ブ~~~~~~~~~~~?(風の音で聞こえてない)』
「声うるさ!?てかあれ?むしろスピード上がってない?なんで?儂減速って言ったよね!?謀反!?もしかして今、謀反されてる儂!?」
何ともぐだぐだとしたやり取りを繰り広げながらも巨人の進撃は止まらない。
――――後に偶然その場に居合わせたプレイヤー達が口々に語ることになる惨劇・・・その一端。
一つは青い人型モンスター(一説にはプレイヤーとする話もある)による100を超えるプレイヤーの大量虐殺事件・・・・
曰く、【幻のように消える】、【剣が避けていく】、【まさに幻影】。
そしてもう一つは件の虐殺から何とか生き残ったプレイヤー達を襲った巨人の進撃・・・
曰く、【移動する災害】、【10m級奇行種】、【ダイナミック環境破壊】。
【6日目の悪夢】と呼ばれプレイヤー達の間で長く語り継がれることとなる伝説の惨劇はそうして引き起こされたのだった・・・・