別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
ノブナが運営事務所でコッテリしぼられた日の翌日。
メイプルとノブナの二人は再び噴水広場に集合していた。
目的は昨日、時間が足りなくて(自業自得だが)出来なかったツアーを改めて行う為であった。
そうして性懲りもなくクソダサばすたぁTシャツ(2代目)を身につけ現れたノブナ。
の、だが・・・・
「・・・・なんか儂の知ってるメイプルと違う・・・」
「あ、あはは・・・」
昨日会った時は初々しい初期装備を身に付けていたメイプルがあら不思議。
一夜にして黒と赤を基調とした一目で特別仕様と分かる装備一式に新調されていたのだ。
実はメイプル、ノブナと別れた後1人でダンジョン攻略を成し遂げてしまっており、この装備はその報酬である『ユニークシリーズ』であった。
そんな話をメイプルから聞いたノブナは納得したように数度頷く。
「なるほどのぉ・・・儂が運営とぐだぐだしとる間にそんな事が・・・あれ?ダンジョン1人で攻略出来ちゃったんなら、儂イラナクね?もしかしなくてもリストラの危機じゃね?解説役を買って出といてこの始末、最早切腹も辞さぬほどの赤っ恥本能寺大炎上的な何かじゃね?」
「そ、そんなことないですよ。私も昨日ちょっぴり遊んだくらいで、まだこの装備の事とかよくわかってないし、できたら色々教えてくれると助かるんですけどぉ・・・」
予想外の事態に焦ったのか良くわからないことを捲し立てるノブナだったが、メイプルの何処か申し訳なさそうな、それでいて期待するような目でみられると気まずそうに押し黙る。
「ううむ・・・とは言うものの正直な話今のお主、儂より強いと思うぞ。詳細なステータス何ぞは分からんが、話を聞く限りまともにダメージ入れられる気がせぬし・・・そんなお主に教えてやれることなんて・・・」
言葉の途中で唐突に押し黙る。不思議そうに首を傾げるメイプルを尻目にしばらくの間何か考えるようにしたあと、口を開く。
「・・・フム。とりあえずフィールドにでも出ようかの。付いてこいメイプル」
「?・・・はい、わかりました」
ノブナはそう言うと唐突に移動を始める。
何事かと思いながらも、言われた通りに付いていく素直なメイプル。
広場を出て、フィールドを目指して歩き出す。
が、どうにも奇妙だ。
広場からフィールドに行くまでの道中は利便性も兼ねてか基本的には一本道である。
が、
「あれ?ノブナさん、フィールドはあっちですよ?」
「ああ、分かっておるよ。ただこっちの道に上手い屋台があってのぉ。そこに寄ってから行くことにしようと思っての」
「そうですか、わかりました」
このようにノブナが糸の切れた凧のようにアチラコチラに寄り道するので、かなりの遠回りをする事になったのだ。
メイプルも不思議に思いはしたものの、昨日のノブナの突拍子もない所業を思いだし、『良く分からないけどそういう人なんだろう』と思う事にしてとりあえず付いていくことにした。
しばらくそうして歩く二人。
すると、メイプルはあることに気が付いた。
他のプレイヤーと歩く場合、その【AGI】の低さから置いてけぼりをくらいそうになるのが常であるメイプルだが、ノブナにはそこまで苦労することなく付いて行くことができた。
その事について指摘すると、ノブナは何でもないように答える。
「ああ、そう言えば言ってなかったか。儂もステータス極振りじゃからの。お主と違い、防御力でなく器用度の方じゃが。だからまぁ、不思議でもなんでもないわ」
「えぇ!?そうなんですか!?わぁ、自分以外に極振りしたプレイヤーさん、初めて会いましたぁ」
「そらそうじゃろ。このゲーム極振りして得られるメリット殆どないからのぉ。例えやったとしても辛すぎてアカウント作り直しするのが普通じゃし」
「そうなんですか?でも、ノブナさんは続けてるじゃないですか」
「儂はキャラ再現をする上で必要に迫られてやっとるだけじゃからのう。特殊事例じゃから参考にはならんよ・・・・と、この辺りで良いか」
話し込んでいる内にいつの間にやらフィールドに移動していたようだ。
ノブナが立ち止まったのは北の森のフィールドの奥まった場所。
所謂狩場やダンジョンからは遠く、あまりプレイヤーの立ち寄りにくい場所である。
キョロキョロと周りを見回すメイプルに対し、一定の距離を置いて対面するノブナ。
「さて、フィールドに出たことじゃし、儂もお色直しといくかの」
そういうとウインドウを開いてアレコレと操作する。
メイプルの前で見る見る内に装備が別のものに変更されていく。
頭は変わらず、兜の前立てのような装飾を施された黒の軍帽。
胴体はそれまでのTシャツから、軍帽に合わせた黒い軍服風の衣装に変わり、鎖や家紋をあしらった飾り、飾り紐などの装飾がつけられていく。
足元は黄金色の具足が装備され、ガチャンと金属質な音を響かせる。
最後に足元まで届きそうな大きな赤いマントが現れ、バサリと風に靡いて音を立てた。
「フッフッフ・・・どうじゃ?これぞ我が渾身のコスプレ装備よ。見事な再現度であろう」
そう言ってどや顔を見せるノブナ。
見る人が見れば、思い切り吹き出すかそのあまりの再現度の高さに驚くかしただろうが、生憎とメイプルは元のキャラクターを知らなかった。
なので、素直に思ったことを口に出すことにした。
「格好良い!!それ、最高に格好良いですよノブナさん!!!」
「お、おぅ。そうか?そりゃどうも・・・」
思っていた反応と違い、素直に称賛されてちょっと恥ずかしくなってしまう。
少し赤くなった頬を誤魔化すようにノブナは一つ咳払いをすると、話し始める。
「さて、ここまでやって来たのは他でもない・・・実はこの辺りの森には特別なスキルが眠っておるという噂があってのう」
「特別なスキル、ですか?」
「うむ、なんでも手に入れれば他のプレイヤーとは一線を画す程の力を手にする事が出来ると言う」
「一線を画す力・・・・」
ノブナの言葉に徐々に前のめりになってゆくメイプル。本人なりに真剣な顔でお耳だんぼといった感じだ。
「まぁ、あくまでもネット上の噂じゃし、真偽の程は確かではないのじゃが・・・お主のように斬新な発想の持ち主ならば或いは・・・」
そこで勿体つけるように言葉を濁し、メイプルにチラリと視線を送る。
彼女が興味津々という風にキラキラとした期待の目で見てくるのを確認すると密かにニヤリと笑ったあと、微笑みながら手を広げる。
「メイプルよ・・・・・力が欲しいか?」
「はい!!私、もっともっと強くなりたいです!!」
「ならば行けぃ!!この森にて思い付く限りの事を試し力を得てくるが良い!!!」
「はい!いってきます!」
ノブナに向かって敬礼をすると、メイプルはやる気満々といった様子で一人森を進んでいく。
その後ろ姿が見えなくなるのを確認した後、ノブナは一つため息をついた。
「なんというか・・・素直過ぎるだろう。こんな口からでまかせを信じるなんて・・・まぁ、美徳ではあるけれども、ああまで無警戒過ぎるのも考えものよねぇ・・・っといかんいかん。思わず素が出てしまったわ」
そんな事を呟きながら、ゴソゴソとマントの中に手を伸ばし・・・
ガチャリと、
重々しい金属音を響かせながら取り出した武器を右手で構える。
取り出したのは銃。
長さは130センチ程。独自の装飾が施されているものの木製の持ち手と鉄製の銃身が特徴的な武器・・・俗に火縄銃と呼ばれるものに良く似たものだ。
鉄製の銃身を事も無げに片手で構えながら、銃口の先に目を凝らす。
見える範囲には木々と茂みくらいで人影はないが、一切油断せずいつでも撃てるように引き金にかける指先に力を込める。
「・・・街中からずっとつけてきていたのは知っておる。PK の類ならば悪いことは言わん。他を当たれ。そうでないならば、疾く顔を見せよ」
メイプルに対してのそれよりも数段低い、剣呑な声が響く。
赤い瞳が徐々に殺気を増していく。
それでも反応はない。
「顔を見せぬ、と・・・それならそれで良し。こちらもそれ相応の対応をさせてもらうまでよ」
そう言って引き金を引く・・・
「待った待った!!俺が悪かったから撃つな!」
直前、ガサガサと音を立てながら茂みから人影が現れた。ノブナの雰囲気から本気で撃たれると悟ったのか両手を上げて戦闘の意思は無いことをアピールしている。
人影は大柄の男性で、戦士風の装備に身を包み背にはメイプルと同じく大盾を背負っていた。
予想外に見知った顔の登場に面食らいつつ、銃口は下ろさず話しかける。
「なんじゃ誰かと思えば『クロム』ではないか。トッププレイヤーからPKに鞍替えか?」
「そんな訳あるか!?」
「ならば何故隠れて付いてくるような真似をした。街中でわざと遠回りをした時もずっと付け回すなぞ尋常ではない。納得のいく説明をしてもらおうか?」
「・・・・それは・・・・」
クロムは冷や汗を流しながら何か煩悶として、銃口とノブナの顔とを交互に見る事を繰り返す。
が、ノブナの赤い瞳がいよいよ殺気だって来たのを見てようやく観念したのか重い口を開いた。
「・・・・・・実は」