別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
「現実での失敗一つもなし!・・・ということでーふっかーつ!!」
そう言いながら拠点の街に姿を現したメイプル。
実に3日ぶりのログインである。
第2イベントでゲーム内にて7日もの時間を過ごした結果として、NWO内での習慣が抜けきらず、現実世界で失敗・・・咄嗟にスキル名を叫んでしまうといったような事を繰り返してしまったのだった。
五感の全てをゲーム内にリンクさせるフルダイブ型のゲームならではのちょっとした後遺症のようなものだが、初日以外にはそのような失敗もなく、普通に日常生活を送れるようになった。
ので、本日めでたく復帰と相成った訳である。
たった3日だけだがゲームの情報を完全にシャットアウトしていたため、見慣れた拠点の街も何処か新鮮に見えるような気がする。
・・・・否、気がするだけではない。
前より明らかにプレイヤーの人数・・・・特に、パーティーを組んで行動しているのであろう者達が増えているのである。
「ん?なんか人が妙に固まってるような・・・」
「メイプル!ごめん待った?」
「あ、サリー!」
聞きなれた友人の声に振り向けば、少し慌てた様に走り寄って来るサリーの姿。
無事に合流を果たした二人。
早速サリーによってこの3日間に追加された新要素についての説明がなされた。
つまりは【ギルド】と【ギルドホーム】の実装である。
「ギルドホーム!スゴイ!それは絶対手に入れたいね――――あれでも私なんの準備も出来てないよ!?」
「大丈夫・・・実はメイプルが欲しがると思ってノブナさんと一緒に色々と準備してはいたんだ。で、その過程で色々と・・・・ホントイロイロトアッテ・・・」
「さ、サリー・・・どうしたの、若干目が死んでるけど?」
「ナンデモナイヨ・・・実はギルドホーム手に入れられたんだよね」
「おお!」
サリーの言葉にメイプルが感嘆の声を上げながら目をキラキラとさせる。
見てすぐわかる喜びと期待の表情。
予想通り過ぎる友人の反応に苦笑しながら言葉を続ける。
「で、一応メイプルにも見てもらって良さそうなら其処に決めちゃおうかなと思うんだけどそれでいいかな?」
「うん!」
「OK。じゃあ早速案内するよ」
微笑んでサリーは歩きはじめる。
その後ろに笑顔を浮かべながらついていくメイプル。
が、その笑顔は徐々に困惑のそれに変わっていくことになる。
サリーがどんどんと人通りの少ない裏通りへと向かって行ったからだ。
疑問には思いつつもとりあえずついていく。
やがて完全に人通りの無くなった辺りでサリーの足が止まった。
「うん、この辺りでいいかな」
「? ねぇサリー。私達【ギルドホーム】に向かうんだよね」
「そうだよ」
「ならなんでこんな行き止まりの道に来たの?それらしい扉みたいなのもないけど」
首を捻りながら周りを見回してみる。
今いるのは裏通りの一画。建物と建物の間にある道のどん詰まり。
店はおろかイベント用NPCすらも配置されていないデッドスペース・・・つまりは何もないただの行き止まりだ。あるのは四方を囲むただの白い壁だけ。
わざわざそんなところに足を運ぶ酔狂なプレイヤーもいないのでもちろん周りには二人しかいない。
しかし、サリーは気にした風もなく微笑む。
「別にここでなくてもいいんだけど、一応他のプレイヤーに見られないように用心しとこうかな、と」
言いながらインベントリからあるものを取り出した。
ガラスのように透き通った、キラキラと光る高級感漂う造形の鍵だ。
彼女は取り出したそれを扉の鍵穴に差し込む時にそうするように、目の前の白い壁にその先端を押し付ける。
無論、目の前にあるのは扉でなくただの壁である。
鍵など刺さろうはずもない。
―――――そのはずであった。
ずぶりと
まるで壁が瞬時に粘土に変化でもしたのかの如く、鍵の先端がなんの抵抗もなく埋まった。
メイプルの目が驚きで見開かれる。
ついで手首を捻ればなんの抵抗もなく、ガチャリと音をたてて回った。
途端鍵から猛烈な光があふれ出す。
メイプルが声を上げようとする間も無く、光は更にその強さを増していき、次の瞬間には二人の姿は路地裏からかき消えていた。
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僅かに感じる浮遊感。
それもすぐに消え去り、足の下にしっかりとした地面の感触を感じたメイプルは閉じていた目を開けた。
「――――わぁあ・・・!!」
思わず口から感嘆の声が漏れた。
つい今しがたまでいたはずの路地裏は既になく、眼前に現れたのは巨大な門。
巨人でも悠々入れるのではないのかと思うくらいに大きなそれはすべて氷で出来ているらしく、光を反射してキラキラと光っている。
・・・門だけではない。
視線を周りに向ければ映画にでも出てきそうな巨大な城が建っていた。
サイズ感を除けば西洋の城をイメージしたときに想像するようなステレオタイプな外観。随所に細やかな装飾が施されており、豪華ではあれど下品には見えないような絶妙なバランス。その全てが門と同じく氷で出来ている。
「どう、中々すごいでしょ。気に入った?」
したり顔でいうサリーに言葉もなく、さりとて言葉以上に雄弁なキラキラとした瞳で、ぶんぶんと頷く。
そんなメイプルの様子に満足げな笑みを浮かべ、サリーが城を指さす。
「じゃ、さっそく中に入ろっか」
「うん!・・・あれ、でもどうやって入るの?あんなおっきな門開けられないよね」
「大丈夫。そろそろ・・・あ、来た来た」
サリーの指さす先、城の上方から何かがこちらに迫ってきた。
最初小さな点にしか見えなかったが、徐々にそれが大きくなっていくにつれそれが人の形をしているのがわかった。
すわ投身自殺かとぎょっとしたが、その背中に光り輝く羽があることを見て考えを改める。
猛スピードで迫ってきたそれは地面の直前で減速、次いで器用に回転。ふわりと音もなく地に降り立った。
「お帰りなさいませサリー様。こちらの方がメイプル様でしょうか」
「わぁ、ホントに可愛い女の子だ。聞いてた通りだね」
降り立ったのは二人―――否さ2騎。
1騎は黒髪でフードを被った真面目でどこかおとなしそうな口調。
もう1騎は桃色の髪で元気で陽気そうな口調で手を振っている。
ワルキューレ・・・『オルトリンデ』と『ヒルド』が現れた。
『そだよ~』とにこやかに2騎に返すサリーの横で固まるメイプル。
錆びついて動きの悪くなったロボットのような動きで横にいるサリーを見る。
「な、な、な」
「・・・わかるよ、気持ちは。詳細はあとで詳しく話すからとりあえず行こ」
「失礼します」
「わわ!?」
いつの間にやら背後に回っていたオルトリンデに抱えられる。
所謂お姫様抱っこのような体勢だ。
鎧などを身に着けたままのメイプルを持ち上げるその顔は涼しげだ。
見ればサリーの方もヒルドに同じように抱えられている。
「ではご案内します。しっかりと掴まっていてください」
「おおお!?」
オルトリンデの背中の羽が輝き、来た時と同じくふわりと音もなく空中に舞い上がった。
メイプルがしっかりと掴まっていることを確認すると、オルトリンデはスピードを上げた。
ぐんぐんと遠ざかる地面。
後ろに流れていく背景。
風を切る音が耳を叩く。
さながらちょっとスピードの緩いジェットコースターだ。
「スピードは緩めていますが怖いようでしたら目を閉じていただければ。さほど時間はかかりませんから」
「大丈夫、です」
「敬語でなくて結構です。私は貴女方の【サーヴァント】ですので」
表情を変えずそういったオルトリンデは城の開いた窓から中に侵入。
中も外観と同じく豪奢で上品な景観、それでいて置かれた絵や調度品に至るまでその全てが氷で出来ている神秘的なものだ。
そのまま飛ぶことしばらく、
やってきたのは広い空間。
数百人は余裕で入りそうな縦長の空間。カーペットなどの調度品が随所に並べられている。
その短い辺、部屋の奥は少し高くなっており如何にも王様の座りそうな豪華な椅子がデンと置かれている。
・・・・いや、『ような』ではなく実際そうなのだろう。
ここはそう、所謂『謁見の間』というヤツなのだろうと、メイプルは思った。
と、その一角。
見上げるほどに高い天井を支える太い柱を背にして胡坐をかいている赤T姿のノブナとその隣で衛兵が如く直立している金髪の戦乙女がいた。
荘厳な見た目のこの部屋に置いてはラフに過ぎるその恰好はシュールでしかない。
その目の前にスタリと降り立つ。
お礼を言いながら降ろしてもらったメイプルに立ち上がったノブナが言う。
「お、ようやく来たか。というかわざわざ門前から来たんか。設定した場所で鍵を使えば一瞬でこの部屋まで来れたじゃろうに」
「メイプルを驚かせたくて遠回りしちゃいました。ま、そのおかげでゲーム内とは言え空を飛び回るなんていい体験出来ました」
少し遅れて飛んできたサリーが言う。
サリーを下ろし、礼の言葉に微笑みを返したヒルドはオルトリンデと一緒にスルーズの隣に移動、そのまま並び立った。
それを横目にメイプルがノブナに話しかける。
「えっと・・・これは一体どういう・・・」
「フム。そうじゃなとりあえず現状の説明といこうか」
サリーとメイプルが座るのを見つつノブナが語り始める。
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「―――と、そのような激闘を経た訳じゃが、それが特殊イベントだったらしくての。クリア報酬としてこの城・・・【ギルドホーム】とワルキューレ達・・・【サーヴァント】を手に入れた」
「ハイ、先生質問です!」
「うむ。なんじゃねメイプル君」
「【サーヴァント】って何ですか?・・・・いや、私もFGOはやってるので元々の意味は知ってるんですけどそうじゃなくて」
「なんじゃ運営からの発表見とらんのか?」
「メイプルこの3日間このゲームの情報一切合切を遮断してたらしくて」
「さよか。ならばそちらも説明しとこう」
言ってノブナが画面を出す。
映し出されたのは運営からの最新情報が載っているページだ。
其処の一番上。
最新の情報を示す『New』の文字がついたタブをタップするとデカデカと書かれた文字が画面に浮かぶ。
「この度、この『NWO』と『FGO』との正式コラボイベントが発表された」
「ええええええええええええええっ!?」
「わかるわかる。儂も昨日突然発表された時はバイト先でひっくり返って皿割った」
「イベントの詳細はまだまだ未定なんだけどね。ただ一部公開された情報でFGOのキャラクターを【共闘モンスター】・・・シロップや朧と同じように仲間にできる【サーヴァント】システムの実装っていうのがあったんだよ。多分、この【ギルドホーム】イベントもそれに関係したものだったんだと思う。それらしげなこと運営発表にも書いてあったしね」
「なるほどなるほど【サーヴァント】を仲間に・・・・・えええええええええええええええええええええええええっ!!??」
「わかるわかる。儂も発表読んだ時はバイト先で客に運んでた紅茶をぶちまけた」
「・・・いい加減にしとかないとクビになりますよ?」
「昨日は店長が実家の旅館の手伝いに行くとかでいなかったから何とかなった。代わりにヘルプで来てた白髪色黒の凄腕シェフとオカン気質の美人のねーちゃんにしばかれたが」
「白髪・・オカン・・・?・・・いつも思いますけどノブナさんのバイト先って変わった人多いですよね」
「あ、私この前行った時は獣耳と尻尾つけたメイドさんもいたよ。言ってることはよくわかんなかったけど作ってもらったオムライスとっても美味しかったんだよね~卵もフワトロで」
「・・・・なんの話してたんじゃっけか儂ら?」
などと所々でぐだつきながらもメイプルへの説明が終わった。
一通りの話が終わったところで「さて」と言ってノブナが立ち上がる。
「少々予想外のおまけがついてはきたが・・・こうして無事【ギルドホーム】も手に入れたことじゃし知り合い集めて【ギルド】結成といくか。儂とサリーは決定として・・・メイプル、他に声かけたい知り合いとかおるか?」
「私が決めちゃっていいんです?」
「そらそうじゃろお主が【ギルドマスター】になるんじゃし」
「え、わ、私が?」
「正式決定は仲間が集まってからじゃろうがま、ほぼほぼ決定じゃろ。儂の予想通りの面子なら文句もでんじゃろうし」
「私もメイプルなら異議なし」
「わ、わかりました・・・じゃあ・・・そうですね。始めたての頃からお世話になってるイズさんにクロムさん。あとは第2イベントで仲良くなったカスミとカナデ・・・ですかね」
「うんうん、大体は予想通りだね」
「・・・イズかぁ・・・正直今はあんまし会いたくないんじゃよなぁ・・・装備全壊してめっさ追っかけ回されたばっかじゃし・・・というか一人知らん名前がおるが」
「カナデって子で頭いいんですよ~第2イベント中に知り合ったんですけど。私、オセロで一回も勝てなくって」
「なぁサリー。なんでイベント中にオセロやってんのこの娘?」
「メイプルですから」
「・・・それもそうじゃったな。なら、とりあえずそこらに声かけとくと良い。さっさとせんと他ギルドに取られるかもしれんしの」
「わかりました!」
元気に返したメイプルが画面を開いてメールを送る。
数分後、全員からメールの返事が返ってきたようで緊張の面持ちでメール画面をしばらく見つめていた。
と、その表情が花が開いたような喜々としたものに変わった。
「皆入ってくれるって!やったー!」
「・・・わっ!?」
「アハハ!よくわからないけどオメデトーマスター」
「おめでとうございます・・・それはそうとこの回転にはなんの意味があるのでしょうか?」
「・・・なんか知らんが和むのう」
「・・・ですね~。なんというか子犬同士のじゃれ合いを見てる感じで」
たまたま近くにいた戦乙女3騎も巻き込んでくるくると回って全身で喜びを表現するメイプルと三者三様のリアクションでそれに応えるワルキューレ達というなんとも和やかな雰囲気がしばらくの間その場に流れたのだった。
その後、三々五々ギルドメンバー達が集まり(途中クロム、カスミなどが目を白黒させたりとすったもんだはありつつも)顔合わせなどを済ませ、案の定ギルドマスターになったメイプルによってギルド名が決められた。
『楓の木』
後に『人外魔境』、『魔界』、『
Q ギルド名が【楓の木】なのに木要素が皆無なんですがそれは?
A ホームの見た目を『空想樹』にする案もあったがあまりにも禍々しくなりすぎる気がして止めた。