別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
ギルド【楓の木】が結成されて、最初の仕事は素材集めであった。
メンバーに生産職であるイズが加入したためだ。
彼女は武器、道具は勿論のことアクセサリーや家具に至るまで金と素材さえあればありとあらゆるものを作ってくれるまさしく生産のプロだ。
そんな彼女が十全な働きが出来るように素材と資金の収集に努める、それがメイプルたちが最初に掲げた方針であった。
その大方針の元、カナデとメイプルは山へ採掘に。
サリー、カスミ、クロムは森へモンスター狩りに。
イズ自身は工房にて先のワルキューレ戦において破壊された(した?)ノブナの防具一式を修理中、ワルキューレはその手伝い兼万一のための予備戦力・・・といった感じの配置である。
そしてノブナ自身はと言えば・・・
「ほうほうここに来るのも久方ぶりじゃのう」
場所は1層。深い深い森を抜けた先にある崖の下にあるとある場所。
ばすたぁTシャツ姿で腕を組みながら眼前に杭を開けている洞窟を見つめて不敵な笑みを浮かべる。
洞窟自体は自然の産物なのだが、その入り口を塞ぐようにして人工的な壁と門とが建てられていた。
とは言ってもその素材は金属やコンクリートではない。
ブロックを積み上げて遊ぶクラフトゲーム・・・あるいは子供が組み合わせて遊ぶ知育玩具を彷彿とさせる色とりどりなそれだ。質感も明らかにプラスチックのように見える。
明らかに自然物ではあり得ないそれをしかし、見慣れたもののようにノブナは近づき、門を数回ノックする。
するとゴゴゴと音を立てて門が左右に開かれる。
勝手知ったるとばかりに開け放たれたそこに侵入するノブナ。
洞窟の中も色とりどりなブロックが組み合わされて作られた通路が奥まで続いている。所々に設置されたランタン・・・これもまた小さなブロックで作られている・・・が光源となっており洞窟内とは思えぬほどに明るい。
そのままずんずんとしばらく進む。
と、洞窟の奥から何かがこちらへと走り寄ってくるのが見える。
三等身くらいのくるみ割り人形のような見た目をしているモンスター。
表示された名前は【トイ・ソルジャー】。
手に手に武器を持ち、短い足をバタつかせながら数体がノブナの方目掛けてやってくる。基本的には皆似たり寄ったりの背格好と顔だ。モチーフが人形なのだろうから当然なのだが。
が、身に着けている装備がそれぞれ違った。
あるものは18世紀くらいの西欧の兵隊の制服にマスケット銃を抱え、またあるものは迷彩柄の軍服で近代的な狙撃銃のスコープを覗きこみ、またあるものは猟師風の恰好で散弾銃に弾を込めている。
服装も国も年代もばらばら。唯一共通しているのは武器の種類が銃であることくらいだ。
「む・・・初回はハズレ、と」
独り言を呟き、インベントリから取り出した【タネガシマ】を構え、撃つ。
弾丸はスコープを覗きこんでいたおもちゃの兵隊の頭をスコープごと吹き飛ばした。
エフェクトと共に消滅した後、ドロップ品が出現した。
無造作にそれをインベントリに突っ込み、そのままノブナは得意の連続撃ちで次々と襲い来る兵隊たちをなぎ倒しながら洞窟の奥へと進んでいく。
やがて見えてきたのはこれまた玩具で出来た城だ。
その正門の門は閉じられ、門番代わりなのだろう【トイ・ソルジャー】よりも二回りは大きいサイズの兵士が二体、配置されていた。
表示される名前は【トイ・コマンダー】。【トイ・ソルジャー】を束ねる隊長という設定のモンスターだ。
実際、兵士よりもステータスは遥かに上に設定されている。
「ホレホレ踊れ踊れ」
ノブナにとってはさほど関係はないのだが。
【タネガシマ】から放たれる弾丸の雨に瞬く間にコマンダー達のHPが削り取られていき、間もなくガラスが砕けるような音と共にエフェクトを残して消滅した。
と、コマンダーが消滅した後の地面にノブナにとっては見慣れたドロップ品が現れた。
彼女の愛銃【タネガシマ】だ。
「おっと、一週目でドロップとは幸先が良いのう。メインの目的でないとはいえ重畳重畳」
ニヤリと笑い、新たな【タネガシマ】をインベントリに放り込む。
そして守るもののいなくなった門を無造作に蹴り開ける。
門の先は広間のような空間が広がっていた。
そしてその最奥は階段状になっており、その一番頂点にある玉座にモンスターが鎮座している。
例にもれず組み合わされたブロックで出来たその身体は【ソルジャー】【コマンダー】よりも更に巨大であり、その頭部には王冠が輝いている。
【トイ・キング】
このダンジョン最強のボスモンスターだ。
【トイ・キング】は椅子から立ち上がると手にした王笏を振り回す。
途端、周囲の空間が円形に歪み、青白い光を放ちながら大量の【トイ・ソルジャー】と【トイ・コマンダー】が現れた。
それを迎え撃つようにノブナも赤黒いオーラを放ちながら大量の【タネガシマ】を展開する。
数秒の間の後、
【トイ・キング】が王笏を振り下ろすのと、ノブナが叫ぶのは同時だった。
「
銃撃と破壊音が洞窟内に木霊した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ひーふーみー・・・ふむ一回目にしては中々な戦果。今日は運が良いの」
インベントリ内のドロップ品を数えながら満足げなノブナ。
周囲に既にモンスターの姿は一体もなく、玉座へと続く階段の前の床に出現した魔法陣が輝くのみである。
収穫を確認し終えたノブナはすかさず、魔法陣へと足を踏み入れる。
一瞬の浮遊感の後、目を開けばダンジョンの入り口であるおもちゃの門の前であった。
ダンジョンの最奥であるボス部屋から入り口への直通の出口だ。
「一回目は終了、と。リアルの時間は・・・フム、午後6時。途中で銃の調整やらの時間を置くとして明日の朝までに5~60くらい周れるか?」
大体のスケジュールを頭の中に思い描きながら、ノブナは再びダンジョンへと侵入していく。
ここは【おもちゃの王国】と呼ばれるダンジョン。
知る人ぞ知るマイナーなダンジョンであり、ノブナ御用達の稼ぎポイントである。
各所に現れるおもちゃの兵士達はパーツや整備アイテム、或いはまれにではあるが【銃】本体など『銃』関連のドロップ品ばかりを落とす。
本来は決められた場所でしかドロップしない【銃】もあるのだが、このダンジョンでは何故か完全なランダムかつ極々稀な確率ではあるものの全ての【銃】がドロップする可能性があるという、【銃】使いにとっては夢のようなダンジョンでもあった。
【銃】は高レアに分類されるものが多いためNPCの店にでも売ればそれなりの金になる。それに加え、最奥にいる【トイ・キング】を倒せばクエストの達成報酬として結構な額のゴールドをドロップするのだ。
ドロップ運に左右されそこまでの安定性があるわけではないが自前の【銃】の整備や消費アイテムなどにかかる分を除いても、時間はかかるが稼げるダンジョンなのである。
しかしそんな稼げるスポットがなぜ知る人ぞ知るマイナーな場所になっているのか。
理由は単純。このダンジョン、仕様がクソなのだ。
前提としてこのダンジョンにいるモンスターには『【銃】を用いた以外の攻撃のダメージを80%カットする』という謎な仕様が設定されている。
この時点で大半のプレイヤーが振り落とされるのだが、ならば【銃】使いならば良いのかというとそうもいかない。
【銃】は使用上一発撃つごとに
が、このダンジョンはほぼほぼ一本道で隠れる場所に乏しく、しかも結構な数の敵が配置されているので一度に複数の敵と交戦する羽目になる。
並みの【銃】使いでは一体倒したとて、武器のリロード中に別の敵に近づかれて袋叩きにされる憂き目にあうのだ。
ついでに敵の配置もその都度替わる。完全なランダムではなくいくつかの候補の内からランダムに生成されるのだが、それのせいで待ち伏せして一気に殲滅ということもできないという悪意しか感じられない仕様もある。
そもそも、【銃】使いは通常パーティーを組んで行動するのが普通なので、【銃】使いくらいにしか旨味がない上に資金集めならばもっと効率の良い場所があるので、このようなダンジョンは他のメンバーから敬遠される。そのため行くこと自体を諦めてしまうケースも多いのだ。
のでこの【おもちゃの国】はほとんどプレイヤーに知られることもなく、知っているプレイヤーからは『運営の悪ふざけ』『悪意の実験場』『スタッフのストレスの捌け口』などと呼ばれ蛇蝎の如く嫌われている。
おかげでノブナ自身、自分以外にここに通うプレイヤーをここを発見してからこっち見たことがない。
「ま、そのおかげで人目を気にすることもなく気楽に周回出来てかつ報酬は総どりと便利極まるのじゃが・・・自分の装備修理代+装備壊したから不機嫌なイズのご機嫌取りに出来るだけ稼いどかんとイカン身としてはありがたい限りじゃて」
そんな独り言をつぶやきながら突然物陰から奇襲を仕掛けてくる【トイ・ソルジャー】を薙ぎ倒しながら突き進む。
敵の出現するポイントはすべて頭に入っている。後はそのあたりを重点的に警戒するだけだ。
無表情に、なんの感慨もなくモンスターを倒し、出てきたドロップ品を回収、ボスを倒して入り口からもう一周。
ゲームというより作業という方がいいかもしれない無限周回だが、ノブナにとっては慣れたものである。
その後ほぼほぼ完徹しながら周回し続けたノブナは結構な数のドロップアイテムと資金をイズに献上出来、なんとか機嫌を直せたのだった。
別名【タネガシマ】生産工場
只でさえレアドロップなのに数十種ある【銃】の中から完全ランダムでドロップするので確率めちゃくちゃ低い。ピックアップ?天井?ねぇよそんなもん。星5鯖引くよりきついんじゃあなかろうか。
狙った銃を多数集めようとするのは苦行を超えてもはや拷問。なのでノブナは率直に言って狂人。