別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
空中戦艦内のとある通路。そこをコソコソと移動する人影が3つ。
ノブナにカスミそしてヒロインXだ。
先の戦闘にてなんとか言いくるめに成功した後、ヒロインXより『行きたいところがある』との申し出があった。どうやら設定された二つ目のクエストが早速開始されるようだ。
二人は一先ず彼女の目的とやらに協力することにし、こうして戦艦の通路をひた走っているのだった。
「・・・オールクリア。行けます」
少し前を先行しながら曲がり角の先を除き、通路に敵がいないのを確認したヒロインXが後ろに続く二人に合図を出す。
カスミとノブナ(カスミに背負われ中)が足早についてくるのを確認したヒロインXは更に先に索敵しにいく。
そのテキパキとした動きにカスミは感心した風に呟く。
「フム、随分慣れた動きをするな彼女は」
「まぁ、元々
「・・・・アサシンとは?」
「セイバーを抹殺するって言ってるからって理由でアサシンやっとる奴が目の前におるんだから今更じゃろ」
「潜入任務中に私語とか死亡フラグですよ、お二人とも!」
前方を行くヒロインXから注意の声が飛ぶ。
セイバー関連が絡まなければ生真面目な委員長的な気質の持ち主らしい。少々猪突猛進すぎるきらいがあることに変わりはないのだがまぁ、今のところ問題もなく進めている。
しばらくそうしていくつかの通路を通り抜けていくことしばし
通路の先。ドンつまりにあるとある扉の前でヒロインXがピタリと足を止めた。
人差し指を口に当てながら手招きしている。
後続の二人は音を立てないようにしながら扉の前へと移動する。
そっと扉に手をかけ、中を覗き込めるくらいの隙間の分だけ開ける。
扉の先には広めの空間が広がっていた。
天井は見上げる程に高い。全体的に照明が絞られているらしく薄暗い。部屋自体の大きさだけで言えば小学校の体育館ほどはあるのではないだろうか。
そんな部屋の中を所せましとコードや配管が這いまわり、用途の分からない機械類やモニターへとつながっている。機械類特有の駆動音が部屋全体に反響しておりまるで巨大な生物の唸り声のようにすら聞こえてくる。
そんな部屋の中央。
一際巨大な機械が鎮座していた。
円筒形をしており、丸みを帯びたその表面は硬質な何かしらの金属で出来ている。
そこかしこからホースやコード、配管がつながっている。どうやら周囲の物品は逐一この機械を操作、或いは状態を観察するために必要なものであるらしい。
上部の方にはまるで一つ目のように光るライトのようなものがあり、赤い光を放ち周囲一帯を赤黒く染め上げている。
控えめに言っても異様な光景である。
見ているだけで妙な威圧感を感じ、己の内側から怖気が湧き上がる。
思わずブルリと小さく身体を震わすカスミ。
その横で背から降りたノブナが静かに呟く。
「あれが――――『聖杯』」
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『聖杯』
元々は神の血を受けた盃であり最高位の聖遺物を指す言葉であるのだが、ことFate世界においては別の意味を持つ。
曰く、『ありとあらゆる願いを叶える万能の願望機』
多くの作品にて登場し、血で血を洗う凄絶なる殺し合い『聖杯戦争』の元凶にして原因たる幻の逸品である。
それが今、自分たちの眼前にあるのだという・・・
「疑う訳じゃあないが・・・これが本当にそうなのか?どう見たってよくわからない機械だろう。『聖杯』、なんてファンタジックなものには到底見えないのだが」
カスミが確かな圧力を感じつつも疑問を口にする。
それに答えたのは忌々し気に機械を睨みつけているヒロインXだった。
「間違いありません。アレこそはアヴァロン星より大量に強奪された『アルトリウム』をあれやこれやして製造された聖杯です!」
「あ、『アルトリウム』・・・?」
「確かサーヴァントユニバースにあるとかいう超高密度の万能エネルギー粒子とかなんとか。因みに言っとくと『聖杯』と言いつつ形は作品によって千差万別じゃぞ。それっぽい杯の場合もあればこんな感じに機械みたいのもあるし、なんなら人でもいい」
「むぅ・・・なんとも複雑なのだな」
実感はわかないがそういうものなのだから仕方ないと言われれば納得するしかない。
カスミは諦観のため息を吐きながら、ヒロインXに視線を向ける。
「それで?君がこの場所を訪れたのはこの聖杯とやらを破壊する為だという話だが」
「ええ。奪われたアルトリウムの量から言ってもかなりのエネルギーを秘めているはず。そんなものを悪用されては大変なことになりますから」
頷き、使命感に燃えた瞳を向けてくる。
ヒロインを自称している辺りからもわかる通り正義感も人並み以上に強いらしい。
そこでノブナが会話に割り込んでくる。
「それはいいが具体的にはどうするつもりなんじゃ。まさか真正面から斬りつけるとか言わんよな?」
「勿論です」
「そうかならばどうやって」
「正々堂々背後から斬ります」
「いやそういうのいいから。先ほどから聞いとるとアレは結構なエネルギーを溜め込んどるのじゃろ?ここで破壊したとしてその後どうなる」
「余剰なエネルギーが制御できなくなって噴出、莫大なエネルギー波が発生しますね。より分かりやすく言えば大爆発します」
「しますじゃないんじゃが!?そんな物騒なもん何の対策もせずぶっ壊すそうとするとか正気か貴様!」
「ですが正義のヒロインの戦闘には爆発がつきものです。派手な見た目は視聴者も喜びますし」
「爆破オチとか今時流行らんぞ」
「サーヴァントユニバースでは常にトレンド上位ですが?」
「そこまで。話が脱線してるぞ」
ぐだぐだし始めた場の雰囲気をカスミが締める。
視線が自分へと集中した所で再び口を開く。
「つまりは脱出方法があれば良いわけだ。何か心当たりはないか?」
「私がここに来るとき乗ってきた宇宙船がありますね。ただ一人用なので3人乗るのは宇宙航空法的に引っかかる可能性が・・・」
「緊急の措置として今回は見逃して貰おう。さてノブナ。君の【タネガシマ】であれを破壊するのは可能か?」
「やってみんことには何とも言えんが・・・まぁ、イケるじゃろ」
「なら決まりだ。ヒロインX、君は脱出用の宇宙船の準備。ノブナは破壊を担当。私は破壊後にノブナを抱えて宇宙船まで走る・・・即興だが役割としてはこんな感じでどうだろうか?」
「良いんじゃないでしょうか。流石です。・・・・どうにもセイバーっぽいのが気に食わないですが(ボソッ)」
「まだ言っとんのかお前は・・・ま、儂としても異存はないな」
「よし。なら・・・」
同意を得たカスミが早速準備を始めようと口にしようとした瞬間
世界が揺れた
轟音と共に身体が上下に激しく揺さぶられる。バランスを崩し思わず膝をつく。とはいえ倒れこまなかっただけ上等だ。何が起こったのか周囲を確認するために周囲を見回してみる。が、通路には窓の類はなく外の様子はわからなかった。
そうしている間にも断続的に響く音。それと同時に船体が揺れ通路を照らす照明がチカチカと明滅する。
腹の底に響くような重低音からするに、おそらくどこかが爆発しているようである。それも何度も。
そう判断した後のカスミ達の行動は早かった。
「ノブナ!ヒロインX!」
「分かっとる!」
カスミの声に応えてノブナは扉を開け放ち即座に発砲。
弾丸の雨が機械やモニターを破壊し、配管を削り、コードを断ち切る。
警報音と共に中央の円筒形の機械のランプが赤く点灯し、そこかしこから蒸気が噴き出し、電流が迸る。
完全破壊とはいかないまでも少なくとも正常な動作が出来そうにもない。
それを確認したヒロインXが二人を先導する。
「あれだけやればとりあえずは大丈夫でしょう・・・こっちです!」
「分かった!掴まっていろよノブナ!」
「言われるまでもないわ」
背中にノブナが飛び乗ったのを確認し、カスミは走り出す。
警報音が鳴り響き、揺れる通路をひた走る。行きと違い隠密もへったくれもない強行軍のため途中何度も敵と遭遇するがヒロインXの剣とノブナの射撃により撃退されていった。
そうして走ること10分程。
辿り着いたのは広めの倉庫のような場所。外界からの搬入用のハッチがあり、運び込まれたままの物品が未だ梱包を外されずに並んでいる。
その中にシートを被せられたひと際大きなものが鎮座していた。
駆け寄ったヒロインXの手によりシートが取り払われ、鋼鉄色の肌をした船が露になる。
大きさで言えば戦闘機くらいだろうか、前方にはコックピットらしきものが見える。
ガチャガチャと何やら操作をすればそれを覆っていた風防部分が取り払われ中に入れるようになった。
すかさず飛び乗るカスミとノブナ。それを確認した後ヒロインXも「とう!」という声と共にコックピットに飛び乗った。
コックピット内は操作する為であろう種々様々な機械やメーターが設置されており、ヒロインXが慣れた風に操作すれば軽い排気音と共に風貌が閉じ、エンジンらしき駆動音が空気を振るわせた。
とりあえずは飛び立てそうではある。が、問題が一つ。
「・・・・いくら何でも狭すぎんか?」
「仕方ないじゃないですか。元々この『ドゥスタリオンⅡ』は一人用なんですから」
「それにしたってこれは・・・おい!?どこ触ってるんだノブナ!」
「うっさいわ!そっちこそもそっと詰められんのか!」
「もう!あんまり暴れないでください手元が狂います!」
操縦席に座ったヒロインXは多少はマシだがカスミとノブナはほぼほぼ密着状態である。
ソーシャルディスタンスもへったくれもない状態のまま駆動音が限界まで高まる。
ふわりと身体が浮く感覚。どうやら機体が床から離れて浮遊し始めたらしい。
と、そこでノブナが気づく。
「・・・なんか周りのもの全体的に傾いてない?」
言われてみれば全体的に徐々に世界が傾き始めている。周囲に置かれた雑多な品々がズズズと動き、棚などが倒れ始めた。
明らかに空中戦艦全体が傾き始めている。それが示す結果は一つ。
墜落だ。
「脱出します!『バンノウレンズ』スイッチON!」
ヒロインXが何かのスイッチをポチっと押す。すると画面上に複雑な数式めいた文字が無数に流れては消えていく。それが数秒続いたところで景色が光に包まれ、猛烈な浮遊感がノブナ達を襲った。
内臓を持ち上げられたような感覚がいきなり来て、次の瞬間唐突に終わる。
「・・・ふぅ。とりあえず脱出成功ですね」
一仕事終えたように額の汗を拭うヒロインXが言う。
その言葉にカスミが風防から外を見やれば広がる青空と眼下には緑の草原が広がっているのが見えた。
視線を上げれば雲の間から自分達がいた戦艦が所々から煙や炎を巻き上げながら今まさに高度を下げていくところであった。
墜落は時間の問題であろう。
「とりあえず離れた方が良くないか。ここにいて巻き込まれても面白くないじゃろ」
「それもそうですね。では・・・ム!?」
突然コックピット中に響き渡るアラーム。計器が全て狂ったように荒れ狂い、エンジンが狂ったような音を立てる。
素人でも分かる尋常ならざる事態だ。
「何事だ!?」
「この反応・・・聖杯?・・・いえ、ですがこれは・・・」
カスミの悲鳴に近い叫びに手元の計器を睨み付け、焦りと困惑に顔を歪めたヒロインXがぶつぶつと呟く。
と、外の景色を観察していたノブナが声を上げる。
「あそこじゃ!落ちていってる戦艦の真ん中あたり!」
示した先。
空中戦艦の丁度真ん中あたりに赤黒い光がポツンと灯っている。
やがてその光を中心として空間が歪んでいき、収束していく。
まるでブラックホールのように渦を巻き、光を、雲を、空中戦艦の巨大な艦体を、その全てを呑み込んでいく。
最後に残ったのは黒い球体上の闇。
まるで空中に穴が開いたかのような奇妙な光景に思わず視線が集中する。
『――――タクナ』
「む?なんぞ言ったか?」
「いや、私は何も」
「私も別に」
空耳かと首を捻るノブナ。
しかし、再び奇妙な音が聞こえてくる。
視線がコックピットの景気へと移る。ザーザーとザッピングの時のような音に交じって何か音が聞こえてくる。
『――――シ タク ナイ』
否、音ではない。
――――声だ。
『シニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイ』
『イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ』
『イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ』
『タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ』
何人もの人間の声が混じり合い壊れたカセットテープのように同じ文言を繰り返し続けている。
聞いているだけで怖気の走るような不気味な音声。
悲鳴や絶叫のようなそんな音声はやがて怨嗟交じりの攻撃的なものへと変化していく。
「暴走した聖杯が死に際の人々の願いに呼応している・・・?もー!これだから中途半端な知識しかない連中が作る粗悪品は嫌なんです!大抵ろくでもないことにしかならない!」
「それは・・・かなりマズそうじゃのう」
「マズそう・・・ではなくマズいです。それもかなり・・・」
ヒロインXが言いながら握っていた操縦桿から手を離す。
途端、グイっと操縦桿が傾き、機体全体の方向が変わる・・・・空中に出来た闇・・・中心へと。
「私たちの船、あそこに引き寄せられてます。制御もワープも出来ません」
彼女の言葉の意味を理解するよりも早く、機体全体がグングンとスピード上げて進みだす。
進行方向には件の漆黒の闇が口を開けている。このままでは程なくあそこに突っ込む羽目になるのは明白だ。
アレに吸い込まれたらどうなるかは分からない。
しかし少なくとも愉快なことにはならないだろうことは確実である。
「クソ・・・どうにもならないのか!?」
「・・・・一つだけ・・・」
そう言ってヒロインXが操縦席の脇から何かを取り出す。
まるで弁当箱のような平たい四角形の箱状の何かしらの機械であるようだ。
「これは?」
「スペースエスケープユニットです。ユニバース的な力で身体を一時粒子化、別の場所にワープさせた後になんやかんやで復活させるという宇宙航空法でも一機に一つは常備するように定められている緊急脱出装置です」
「法律で決まっているにしては随分と詳細が曖昧じゃないか!?」
「大丈夫です。ここ数百年で事故の報告は一度もありませんので・・・報告は(ボソッ)」
「おい今不穏なことが聞こえたぞ!?それ事故にあった奴が全員いなくなってるから報告がないとかいうオチじゃあ・・・」
「ですが問題があります。これは一人用です・・・二人はここに残らざるを得ません」
「な!?」
ヒロインXの言葉に絶句するカスミ。つまりこの中から誰か二人を犠牲にしなくてはならないということだ。
押し黙り頭を悩ませる。しかし、悠長に考え込でいる時間は残されてはいない。
すると静かに聞いていたノブナが口を開く。
「おい。聖杯の反応はあの闇の中から出ているという事で良いのか?」
「そうですね。恐らくあの中に聖杯があるものとみて間違いはないかと」
「フム・・・ならば決まりじゃの」
ノブナは手を伸ばしてヒロインXから機械を受け取り、そのままカスミへと手渡す。
「お主が逃げろ。儂とこやつで突入して始末をつけてくる」
「何!?しかし・・・」
「仕方ないじゃろ。お主、Fate関連の知識とか薄いと言っておったじゃろうが。聖杯がらみの案件とか知識のない者がいった所で碌な事にならんし」
「私も異存はありません。元々アレを始末するのは私の使命ですから」
「う・・・だが・・・しかし・・・」
それでも納得しかねるという様に迷うカスミ。一人だけ死地から逃げ出すようで気が引けるのだろう。
しかし、最早迷っているだけの時間は残されてはいない。
「ええい!ウジウジしとらんで早よせんか!ホレホレホレ!」
「ちょ、まておい!?」
ぐいぐいとカスミに装置を押し付けると機械の表面にあったスイッチらしきものを勢いよく押し込んだ。
カスミの身体全体が緑色の閃光に包まれ、次の瞬間にはその姿がかき消えた。
「ふぅ・・・ようやく行きよったか。まったく面倒な」
「・・・本当に良かったのですか?ここから先は本当に命の保証はありませんが」
「・・・ま、どうにかなるじゃろ。一応保険もかけといたしの」
「保険・・・ですか?」
「ああ―――」
ノブナの言葉の続きが聞こえるよりも早く、世界の色が漆黒に染まった・・・