別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
ノブナが闇に呑まれたのとほぼ同時刻。
第2層の街には多くのプレイヤー達が集まっていた。
ある者はダンジョンに繰り出す前の下準備や仲間集めの為に。
ある者は街中の探索や情報収集の為に。
ある者はイベントに浮かれる街中の空気を楽しむ物見遊山の為に。
各々がそれぞれの目的の為に動き回っている。
そんな人ごみの中をイズとカナデの両名が一緒になって歩いていた。
「凄い人ね。はぐれないように気を付けましょう」
「そうだね」
カナデはそう言いながらも手元でパズルを解き続けている。その集中力は称賛ものだがこの人だかりの中でそんなことをしていれば早晩はぐれてしまうのは火を見るよりも明らかである。
「仕方ないわね。時間的にもちょうどいいしちょっと休憩にしましょうか」
言って近くにある店を適当に見繕い、その中で特に落ち着けそうなNPCが経営している喫茶店へと入店する。
店内は純喫茶といった風情であり、微かに聞こえてくるBGMに香ばしい珈琲の匂いが鼻腔をくすぐる。幾つかあるテーブル席とカウンター席とがあり自分達以外にはNPCの店長がカウンター内で豆をひきながら佇んでいるのみである。外の喧騒とは程遠い落ち着いた時間が流れている・・・そんな気すらしてくる落ち着いた雰囲気。
予想以上に良い店を選べたと心の内でガッツポーズをしながら空いているテーブル席の一隅にカナデと二人陣取る。
「はふぅ」
席についた瞬間思わず息つく。
どうやら自分で思っていた以上に疲労していたらしい。人混みの中歩きまわるのは予想外に体力を消耗するもののようだ。
或いは知らず知らずに自分も周りの熱気にあてられていたのかもしれない。
『いけないいけない・・・本番はこれからなんだから。雰囲気に流されないようにしないと』
「よし完成。じゃあ次」
密かに反省し気を取り直すイズ。
そんな彼女の前でカナデは解き終わったパズルを再び崩している所だった。
なんともマイペースである。が、周りに流されず自分のペースを保ち続けているその姿勢は素直に凄いと感じる。
『そういう所は見習わなくちゃね』
「いらっしゃいませ。ご注文をお伺い致します」
NPC店長が注文を聞きにやって来た。
手元のメニューをざっと流し見て決めていく。
「そうね・・・コーヒーと軽食で。ミルクと砂糖もお願いします」
「僕は・・・何か甘いもので」
「でしたら此方のチョコレートパフェ等はいかがでしょう」
「じゃあそれで・・・・あ、そうだ店長」
「はい、何で御座いましょう?」
注文を受け慇懃に一礼し去ろうとする店長をカナデが呼び止めた。
再び向き直る店長に向けて質問をぶつける。
「ちょっとお聞きしたいんですが、この辺で最近変わったこととか、ありませんでした?」
「変わったこと、で御座いますか?」
「うんそう。どんな小さなことでも良いんてすけど」
「そうですね・・・」
質問を受け店長は暫くの間難しい顔をして悩んでいる風であったがパッと表情を明るくすると口を開く。
「おお!そう言えばこの店の近くに図書館があるのですが、先日そこの本が幾つか行方不明になったのだとか・・・詳しくはわかりませんが」
「図書館・・・なるほど。ありがとうございます」
「いえいえ、この程度のことでお役にたてたならば嬉しい限りてございます」
そう言って店長は今度こそ二人に背を向けてカウンターの奥へと引っ込んでいった。
それを見送りながらイズが口を開く。
「・・・今のって」
「うん。直近で起こったことみたいだし今回のイベントに何かしら関係ある可能性は高い・・・と思う。確証はないけどね」
「いえ、きっとそうだと私も思うわ。あとで行ってみましょう・・・休憩が終わったら、ね?」
「フフ・・・そうだね。そうしよう」
そう答えてカナデとイズは小さく笑いあった。
其処へ注文したものが届き、二人はとりあえず料理に舌鼓を打つのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少し時間の後、二人の姿は件の図書館にあった。
天井に届かんばかりの巨大な本棚が立ち並び、司書らしきNPCがその間を動き回っている。こじんまりとした外観の図書館ではあったが中に入ってみればなかなかどうして結構な蔵書量であることが見てとれる。
そんな場所の一隅。
本を読むための場所なのだろう、十数人は楽に座れそうな大きさの長机にカナデとイズはいた。
「さて、司書さんを捕まえて聞き出した無くなった本のタイトルはええと」
「『グゥエストの冒険』『アダマイト加工法の歴史と変遷』『ミラル神話』の三つだね。娯楽小説に学術書あとは神話、かな?」
「ちょっと聞いただけなのに全部暗記してたの?凄いわね」
「そうでもないよ。だけどこの無くなった本の共通点は・・・わからないな。内容も本自体が無いから確認出来ないし」
顎に手をやり思考を巡らせるカナデ。
同じようにタイトルをメモした紙をためすがめつ眺めるイズ。
「・・・・・あら?これって・・・」
「ん?何か気付いたことある?」
「・・・正直あんまり自信はないのだけれど」
「それでもいいよ。聞かせて?」
カナデが先を促すとイズはメモしたタイトルを指差しながら話し出す。
「まずこの『グゥエストの冒険』。内容はわからないけどグゥエストって名前には聞き覚えがあるわ。武器の中に確か『グゥエストズブレード』って剣があったはず。ダンジョンではドロップしない生産限定のアイテムで結構高レアな素材を使わないと生産出来ない武器だから記憶に残ってる」
「次に『アダマイト加工法の歴史と変遷』。これは良く知ってる。主に特定の消費アイテムや装飾品の生産方法に関する知識が纏められてる本ね。生産職入門用の教科書みたいなものかしら」
「最後に『ミラル神話』。これはそのままね。ミラル神ていうのはこの世界で鍛冶を司る神様って設定。『ミラル神の御手』って鎧の説明に書いてある神話なんだけど何でも勇気ある戦士の前に現れて武具を与える神様なんだとか」
「・・・つまりはこの本は全部」
「そ。『鍛冶』とか『生産』に関連するものばかりってこと」
イズが同意するように頷き、続ける。
「これだけ明確に共通点のある作品ばかりを消してる以上、これが次の目的地を示すヒントであるのは十中八九間違いないでしょうね。そしてそれが示す目的地はさっきの例を考えるにここの図書館の近くにある鍛冶屋・・・それもプレイヤーが開いてるものじゃなくNPCが経営してるところだと思うわ」
「なるほど確かに。流石だね、助かったよ」
「それほどでもないわ。じゃ、行きましょうか」
イタズラぽく微笑みイズが立ち上がり、カナデもそれに続く。
再び其処らを歩く司書を捕まえて条件に該当する鍛冶屋がないか聞かせて貰うためだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
首尾良く情報を聞き出した二人は街を歩き目的地へと向かう。
そうしてたどり着いた先には確かに一つの建物があった。
「・・・本当にここで合ってるのよね?」
「うん。聞いてた場所はここで間違いないよ」
一応書き留めていたメモを見返しながらカナデが肯定する。
それを受け、イズは目の前の建物を訝しげに見上げる。
そこは建物言うよりは掘っ建て小屋と言った方が良いかめしれない、ボロボロになった小さな廃屋であった。
入り口の辺りにかけられた崩れかけた看板からするに元は確かに鍛冶屋ではあったらしい。しかし、今や槌を振るう音も豪快な職人達の笑い声もなく、煤けて埃を被った炉には火は無く只白い灰が残るのみである。
「うーん・・・おかしいわね。条件に合う鍛冶屋はここだけだから間違いないはずなんたけど」
「とりあえず入ってみようよ。何かヒントが残ってるかもしれない」
「・・・それもそうね」
カナデの提案に頷きイズは入り口から中に入る。
外観通り、中も荒れ果てており床は一歩踏み出す度にギシギシと頼りなく軋み、残された僅かな家具や調度品も朽ち果て、埃を被っているものばかりだった。
無論、人の気配など欠片もない。
やはりヒントの解釈に間違いがあったのだろうか?
或いはそもそも情報に齟齬があったのか?
次々に沸き上がる疑問を頭を降って振り払い、とりあえず図書館に戻ってもう一度検証してみよう、そう提案しようとした所でカナデが部屋の一角を指差しながら声を上げた。
「イズ、あれ」
指の示す先へ視線を向ければそこには木製の机があり、その上には何かが乗っていた。
近づいて見てみれば70×100センチほどの大きさの長方形の額縁のようなもの。
その周りには机全体に雑にばら蒔いたように散乱した様々な形をした数々のピース。
「ジグソーパズル?」
「みたいだね。大きさからして・・・ざっと2000ピースってところかな」
イズの隣に立ち、同じく机の上を覗きこんだカナデ。口調こそいつも通りだが、声の調子はいつもより若干楽しげだ。更にその目はどこかキラキラと光っているようにも感じる。
まるでお預けをくらっている小型犬のようだ。ピコピコ動く犬耳と尻尾が幻視出来そうにすら思える程に分かりやすい。
苦笑したイズは周りを見回し、埃をあまり被っていない椅子に腰をおろす。
「どうぞお好きなように。私はその間休ませて貰うから」
「大丈夫。そんなに待たせないと思う」
良い笑顔で笑いパズルに嬉々として向き合い始めたカナデの背中を静かに見守るイズ。
そうすることしばらく。
カナデが「出来たー」とのびをしながら言うのを聞き及びイズはどれどれと椅子から立ち上がると机の上を覗く。
あれだけバラバラであったピースは全て収まる所に収まっており一つの絵が完成していた。
どうやら何処かの部屋を描いたものらしい。
中央には木製の机と椅子。その上に置かれたランプ。
並ぶ本棚に設計図が張られたボード。
他何かの機械のようなもの。
並べられた試験管やフラスコ。
書きかけの絵画。
どれもこれも見覚えがあるものばかり。
それも極々最近に、だ。
「これって・・・」
イズが呟こうとした時、その視界がグニャリと歪む。
咄嗟に近くにいたカナデの腕を掴むことに成功できたのは行幸だった。
次の瞬間には独特の浮遊感が二人の身体を襲う。
まるで映画のシーンが次々に切り替わるように、視界に移る景色が巡っていく。
やがて辿り着いたのは先程パズルに描かれていたものとうり二つの部屋。
イズとカナデは手をつないだ状態で部屋の片隅へと転送されていた。
呆けた様にキョロキョロと周りを見回している二人。
「やぁやぁようこそ我が工房へ」
そんな二人に声が掛けられる。
そちらへと導かれるように視線を向ける。
部屋の中央、木製の机に置いたティーカップを手に取り優雅に紅茶を飲む有名絵画によく似た容姿を持つ美人。
万能の天才―――『レオナルドダヴィンチ』が其処にいた。
「歓迎するよマスター候補くん達・・・とりあえず、そうだな・・・紅茶はお好きかな?」
穏やかに微笑みながらダヴィンチちゃんは二人に陶器製のティーカップを掲げて見せるのだった。