別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。   作:風邪引きピエロ

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器用度極振りと第三回イベント 8

 

つんつん・・・

 

 

 

「ぬ・・・?」

 

 

 

頬に感じる硬い感触にノブナは訝しげに瞼を開く。

 

 

 

「知らない天井」

 

 

 

「何を言ってるんですか。ここには天井なんてありませんよ」

 

 

 

「んなこと見ればわかるわ。知らない所で目覚めたならばこのセリフと決まっとる。様式美というヤツじゃ」

 

 

 

「何ですかソレは」

 

 

 

呆れたような声に視線を横に向ければ、しゃがみ込み剣の柄の先でノブナの頬を突っついているヒロインXの姿。

グニグニと無遠慮につついてくるそれを手であしらいながら上半身を起こし、周りを見る。

 

ヒロインXの言葉通り、天井などありはしなかった。というかそもそも壁も床もない。右も左も上も下も、視界にはただただどこまでも続く漆黒の闇が広がるばかり。

 

視界だけではない。

 

仰向けで寝転んでいる状態にも関わらず、背中には一切床や地面といった感触がまるでない。まるで宙に浮いたような奇妙な感覚だ。

試しに立ち上がってみる。―――普段通り問題なく立ち上がれる。が、あるべき足裏に感じる地面の感覚はない。

二度三度とその場で足踏みをしてみる。やはりというか足の裏には何も感じはしない。

 

周囲には光源の一つもないが傍らのヒロインXの姿は何故かその輪郭までもしっかりと視認出来る。先ほどまでのやり取りを見るに向こうからもノブナの姿は認識できているようだ。

 

まるで自分たち以外の全てを黒のベタで塗りつぶしたかのような世界。

 

周囲の状況を一通り見回し終えたノブナはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

 

 

「なんじゃ随分と殺風景な場所に飛ばされたのう。人を呼び込むならも少し楽しませようという気概くらい見せても良かろうに・・・ま、よいわ。とっとと用事を済ませて帰るとしよう」

 

 

 

そう言ってからはたと動きを止める。

右を見て、左を見てから目の前でキョトンとした顔で立っているヒロインXを見る。

 

 

 

「・・・・・で。儂らはどこに行ったら件の聖杯の所に行けるんじゃ?」

 

 

 

「え、知りませんよそんなの。私もこんなところ初めてですし。レーダーとかもありませんし」

 

 

 

事も無げに宣うヒロインX。固まるノブナ。

 

数秒後、怒声が暗闇の世界に響き渡った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

一方その頃・・・

 

 

 

「う・・・ここは・・・」

 

 

 

カスミは下草の柔らかい感触の中で目を覚ました。

しばしそのままぼうっとしていたが、すぐに目を見開くと急いで上半身を起こす。

周りに広がるのは見覚えのある緑の草原地帯。幸いというべきかモンスターもプレイヤーの姿も近くには見当たらない。

 

 

 

「・・・ノブナもヒロインXもいない・・・な」

 

 

 

2人の姿がないことを今一度確認し、唇をかむ。

 

何もできず仲間を犠牲に逃げ出すしかなかった。その事実が不甲斐なさ、情けなさとして自身を苛む。

 

さりとていつまでも悔しがってばかりではいられない。二人の救出の為になにかしら行動を起こさなくてはならない。

更に言えばここはあくまでも敵対モンスターの湧くフィールドの一つである。レベルは低いとはいえモンスターからの不意の襲撃がないとも限らない。そう考え油断なく刀に手をやり、ゆっくりと立ち上がる。

 

必然視点が高くなり、丘の影で見えなかった場所が見通せるようになり、そこでようやく気付く。

 

見覚えのある景色の中に生じた違和感に。

 

 

 

どこまでも広がる緑色の絨毯。その一点に聳え立つ巨大な金属塊。

それが自分たちが今の今まで乗っていた空中戦艦だと気づくのに少々時間を要した。それほどまでにそれは原型を留めていなかった。頭から地面に突き立った巨大な船体はひしゃげ、つぶれ、その半ばから二つにへし折れている。その節々からは電気が迸り、赤い炎がその躰を焼いている。モクモクと黒煙が立ち上り、日が傾き始めた夕闇の空をどす黒く染め上げる。

 

 

カスミの脳裏にコックピット内での光景が蘇る。

 

 

機体の中心点で光る赤黒い光。

収束する闇。

コントロールを失い吸い込まれる機体。

 

 

―――『聖杯』

 

 

 

「・・・聖杯とやらのことはよく知らないが、あの機械が二人の消失に関連していることは間違いない・・・あそこに行けば何かしら二人の救出に役立つ何かが得られるかもしれない!」

 

 

 

思い立ったが吉日。

カスミは墜落し、燃え盛る元空中戦艦の残骸の下へと走るのだった。

 

 

 

移動することしばし

 

カスミは息を整えながら眼前に聳え立つ金属塊を見上げた。

まるで巨大な塔のように地面に突き立つそれは遠目で見るよりもはるかに激しく損傷していた。

太陽の光を反射していた装甲は剥がれ破れ、中身を晒しており、轟轟と轟音を響かせていたエンジンは鳴りを潜め、燃え盛る炎の音に取って代わられている。戦艦ではなくただの金属塊になり果てている。悠々と空を飛んでいた面影は最早どこにもない。

 

それを取り囲むように多くのプレイヤーが人だかりを作り、何事かとそれを眺めたり仲間としきりに話したり動画を撮影したりしている。

そんな野次馬の間をかき分けるようにしてカスミは最前列へと向かう。

 

と、列の一番前に躍り出た所で行く手を複数の人間によって遮られる。

 

 

 

「申し訳ありませんがここは既に我ら『炎帝ノ国』が押さえました。探索ならば他を当たっていただきたい」

 

 

 

「『炎帝ノ国』?2大ギルドの一画がこんなところに来てまで何をしている?」

 

 

 

訝しげにそのプレイヤー達を眺めるカスミ。

実際、そのプレイヤー達は皆一様に同じような装備に身を包んでおり、何人もの人員が戦艦の残骸を守るようにしてぐるりと周りを取り囲んでいた。

その様はまるでイベント時の警備員の如くだ。否、実際に警備しているのだろう。カスミを含め中に入ろうとするプレイヤーを制止している。

 

今のところ言葉での静止で止まってはいるものの粘り続ければ実力行使も厭わない・・・見ているものにそう確信させるほどには警備している人員には真剣な様子が見て取れた。

 

さりとてカスミもおめおめとこの場を去る選択肢はない。何せ仲間の安否がかかっているかもしれないのだから。

 

 

 

「すまないが私もこの中に用事があるのだが」

 

 

 

「申し訳ありません。ギルド長より何人も中に入れるなと硬く言い含められておりますので」

 

 

 

『ギルド長』の部分を強調しながら武器を握る手に力を込める警備員。

逆らえばどうなるか分かるだろとばかりの対応だ。

それを見てカスミは一つため息をついた。

 

 

 

「やはりというかとりつく島もないな・・・ならば・・・『超加速』!」

 

 

 

「んな!?」

 

 

 

途端にカスミの姿が消失した。

驚き声を上げたギルド員。慌てて周囲を見回して見ればカスミの背中は既に残骸の塔の中へと消えていく所だった。

 

 

 

「侵入者だ!追え!決して御二人の元へ到達させるな!」

 

 

 

その叫びに呼応して幾人かの警備員が手に手に武器を構えバタバタと後を追うのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

中は元々複雑な通路が崩れ、塞がり半ば迷宮のようになっていた。地面に突き刺さっている為に中はその全てに傾斜がかかっており通路だったものは一転足を踏み外せば一直線に奈落へと落ちていく落とし穴へと変わっている。移動するのも一苦労だ。

 

 

 

「逆に言えば追っても撒きやすい訳だが、と」

 

 

 

カスミは跳躍。途中斜めになった壁(元は通路の床だが)を蹴り、向かいにあるドアの開いた部屋の中へとその身体を滑り込ませた。

パラパラと穴の下へと落ちていく小さな瓦礫を見送り息をつく。最初こそしつこく追ってきていた追っ手もその影すらも見えない。どうやら本格的に此方を見失ってくれているらしい。カスミにとっては僥倖である。

 

 

 

「随分上に上がってきたな・・・感覚的にはそろそろなんだが」

 

 

 

目指すは瓦礫の塔の頂点。元々の戦艦の中心部であった場所。

最初に例の光が発生したのは其処。つまりはあの奇妙な機械群・・・聖杯があったあの部屋があった場所。

 

あそこに行けば何かしらの解決策が見つかるはず。根拠はないが何故かそう確信出来る。

 

カスミは照明の類いもなく薄暗い縦穴の頂点を睨み付ける。

と、その視線の先にチラと光る何かがあったような気がして目を凝らす。

じっと其方を睨み付けているとまた何か光った。それも今度は数回、チカッ、チカッと。

 

間違いない。あそこが目的地だ。

 

そう思い、足に力を込め跳躍。部屋や壁の僅かな取っ掛りなどを足場にして上へ上へと向かっていく。

近づくにつれて光は強くなってくる。

それと共に腹に響くような音と振動が縦穴を揺らしパラパラと瓦礫や塵が落ちてくる。

 

爆発音や大きな何かがぶつかりあうような音に混じり金属同士がぶつかり合うような音も聞こえてくる。

それは剣士であるカスミにとって聞き慣れた音。

 

 

 

「・・・この音・・・剣戟?上で戦っているのは剣士か?」

 

 

 

他の音からして剣士を含めたパーティーが何かしらとやりあっているのは間違いなさそうだ。

 

そんなことを考えている合間にも足を止めることはせず上を目指す。

そしていよいよ音と振動が酷くなってきたところで遂に目的地が視界内に入った。

 

縦穴の頂点にポッカリと口を開けた入り口。

ドアは既に吹き飛んでいるらしく中からは激しい戦闘音と爆発の光が見える。

 

 

 

「・・・あの高さはただの跳躍だと微妙か・・・一気に行くしかなさそうだな」

 

 

 

刀を抜き握る手に力を込める。

覚悟を決め、入り口へ向けて跳躍。

 

あと少しという所で重力に引かれた身体が急速に失速していくのを感じる。が、それは想定内だ。手に持った刀の柄を握り直し叫ぶ。

 

 

 

「【三ノ太刀・弧月】!」

 

 

 

スキルの使用に伴い、下から上への切り上げモーションが発生。空中での再加速したカスミの身体は入り口の中へと躍り込んだ。

迫る爆煙の中へ腕をクロスさせて顔を庇いながら突っ込み、そのままのスピードで煙の向こうへと跳んでいった。

 

空中へと投げ出される身体。

開ける視界。

 

 

 

「よし!上手く入れ・・・・・・な・・・・!?」

 

 

 

空中でカスミはあまりの驚愕に呆けたような声をもらし顔を歪ませることとなった。

 

カスミは今の今まで元空中戦艦の瓦礫の塔を登って目当ての機械まみれで薄暗い件のあの部屋へとたどり着いたはずであった。

 

しかし、開けた視界に映ったのは全く違う光景。

 

 

 

まずもって広さが違う。

前に見た部屋もそれなりに広さはあった筈だがコードや配管が這いまわり積み上げられた機械が部屋を圧迫していて寧ろ息が詰まりそうな狭苦しい印象を見るものにあたえていた。

 

今目の前に広がっているのは数百人は楽に入れる程の広い空間だ。

機械の類いなどは一つとしてなく、代わりとばかりに細やかな装飾の施された壁や調度品へと成り変わっている。それら自体がかなり豪華なものだがなにより目を引くのはそれら全てが黄金色に光り輝いていることである。

円筒形の底面にあたる場所には広大なステージがあり、それを取り囲むように客席が設置され上へ上へと積み上げるようにして伸びていく。その頂点である天井にはこれまた豪奢な装飾を施された巨大な天窓があり、柔らかな光があまねくステージ全体に降り注ぎ、まるでスポットライトの如く演者を照らし出す。

 

 

『豪華絢爛』

 

 

そんな言葉がぴったり似合う、そんな光景がカスミの眼前に広がっていた。

 

 

・・・全く予想外の光景を突然見せられた人間の反応は幾つかあるがカスミは眼前の情報を処理しきれずに思考停止に陥るタイプである。

 

 

故に失念していた。

 

 

その場所が爆煙渦巻き剣戟が響く戦場であることに。

 

 

 

 

ズルリと

 

 

 

黄金色に囲まれたステージの一画。

ヘドロのような粘着質な黒い液体が現れ広がり、高級感漂う石畳を汚していく。

まるでタールか重油のようなそれは見る間に量を増していき水溜り程の大きさからあっという間に小さめのプール程にまで広がった。その中央部分がグググと盛り上がったかと思えば、空気を切り裂くスピードで伸ばされる。

 

空中で呆けているカスミへと。

 

その切先は鋭く尖った刺状に変化し硬質的な輝きを放っている。このままでは串刺しの憂き目合うのは火を見るより明らかだ。

 

迫る身の危険に流石に気を取り直すカスミ。

が、今は空中。更に言えばスキルを放ったクールタイム(後隙)中だ。

当然ながら回避は出来ず、先ほどのようにスキルのモーションを利用して無理矢理空中移動するのも難しい。

 

故に出来ることと言えば刀を構え迫る刺の切先を逸らそうとすること位である。

 

ぐんぐんと迫る黒い刺。

 

そのスピードはカスミの力で逸らせそうにはとてもではないが見えなかった。

 

万事休すかと思いながらそれでも身体を捩ろうとしている時、

 

 

 

「【爆炎】」

 

 

 

静かな声が響きカスミの眼前まで迫った刺の先端付近で爆発が起きた。

 

その爆風に押されるようにして何とか刺の攻撃を逃れる。

が、攻撃はそれで終わった訳ではなかった。

 

爆煙の中から今度は複数本の細い槍のように変化した刺が飛び出し、落下していくカスミの後を追うように伸びてくる。

 

其を見咎め今度こそはと握る刀を構えようとしたカスミの、その眼前を

 

 

 

 

赤い風が通り過ぎた。

 

ふわりと僅かに香る薔薇の香りが鼻孔を擽る。

 

 

 

と同時、パキリ・・・と

 

 

 

黒い刺に幾筋もの線が入りそこからひび割れ最後は硝子細工が砕けるような音ともに砕け散った。

 

 

 

「・・・な、なんだ?」

 

 

 

訳も分からず体勢を整え、石畳の床へと着地するカスミ。

 

 

 

「・・・随分と派手な登場だな。侵入者」

 

 

 

そこにかけられる冷たい声。

刀を構えながら其方へ身体ごと向き直る。

 

赤色の髪と同じ色の瞳。衣装にもそれに合わせたかのように赤を基調としたものが中心だ。手には装飾の施された杖。明らかに魔法の使い手が持つそれである。

空いた掌に小さな炎を灯しながら剣呑な雰囲気を纏った瞳をカスミへと向けてくる。

 

 

 

「助けてもらった人間に対して随分な対応だな?」

 

 

 

「・・・突然有名人が目の前に現れたんだ咄嗟に身構えてしまう位は許して貰いたいな」

 

 

 

言いつつカスミは刀を持つ手を下げ、目の前の人物に視線を向け直す。

 

 

 

「・・・【炎帝】。二大ギルドの長がこんなところで何をしている?」

 

 

 

「それは此方の台詞。初回イベント6位がここに何のようだ?わざわざあの警備を突破してまでなど余程の事がありそうだが?」

 

 

 

探るような目で此方をねめつけてくる女性プレイヤー。

 

・・・『炎帝』ミィ。

 

かの二大ギルドの一つ『炎帝ノ国』の長にしてNWO内の一握りの上位層にその名を冠す正真正銘のトッププレイヤーの1人である。

 

外の警備員の言葉から予想していたとはいえ、そんな人物との会合に冷たい汗が一筋背中を伝うのを感じながらカスミは言う。

 

 

 

「何、ちょっとした野暮用だよ」

 

 

 

「野暮用?」

 

 

 

「ああ・・・『聖杯』、と言ったか?ソイツに用がある」

 

 

 

「・・・知らないなそんなもの」

 

 

 

 

『聖杯』と聞いた瞬間、ミィの眉が僅かに動いたのをカスミは見逃さなかった。

彼女は嘘をついている。そう思い言葉を紡ごうと口を開きかけた時、それよりも早く別の声が割り込んできた。

 

 

 

「フム・・・ただの火事場泥棒かと思えば余と同じく『聖杯』を狙う者であったか」

 

 

 

カスミがそちらに目を向けるまでもなく、声の主がミィの側へと姿を現す。

 

 

一見すれば鮮やかな赤色のドレスに身を包んだ女性である。身長は150㎝ほどだろうか、小柄である。

艶めいた金髪が天井からの光を受けてキラキラと光って見える。

磨き上げた陶磁器のような白い肌と美貌はドレスと相まって舞台の女優のようにも見える。

 

が、その右手には特徴的な形をした剣が握られており、真紅に染まったその刀身を輝かせている。

 

現れた女性は自身に満ち溢れた表情で胸を張りそれこそ舞台役者の如く高らかに宣誓する。

 

 

 

 

 

「・・・良い!好敵手のいない戦場は楽ではあるがいい加減飽いていた所である。貴様にはこれよりこの余―――『ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマ二クス』と直々に剣を交える栄誉を与える!」

 

 

 

 

 

「・・・正体は隠しておくようにってあれだけ言っておいたのに・・・はぁ・・・」

 

 

 

その後ろでミィが小さな声で呟きながら鎮痛な面持ちで深い深いため息を吐くのだった。

 

 

 

 





この話で溜めてたストックが切れました。
年末も近くなってきており多忙が予想されますので更新遅くなると思います。申し訳ありません。
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