別ゲーの推しキャラを再現する為に器用度に極振りしたいと思います。 作:風邪引きピエロ
──────走る。
──────走る。
ただただ走る。
立ち並ぶ木々の間を縫うように走り抜ける度、枝葉が身体を打つ。
天を覆う葉の隙間から僅かに差し込む明かりを頼りに走る。
電脳の仮想空間であるにも関わらず、緊張と焦りで喉がひりつくように痛む気すらする。
しかし、足を止める事は出来ない。
何故ならば
バキャッ!!
「くっ!?」
今まさに通り過ぎたばかりの木の幹に大穴が開き吹き飛んだ樹皮や木片が宙を舞う。
それを確認するや否やカスミは土や泥にまみれるのも構わず横っ飛びに転がった。
ダダダダ!!
その頭の上を幾筋もの光が通りすぎ、周囲にあった樹木を削り取っていく。
そのまま姿勢を低く保ちながら木の根本に身を隠し、カスミは呼吸を整え内心歯噛みする。
『厄介な!?近付こうにもこうも隙が少なくては迂闊に飛び出せん!』
木々の隙間から僅かに見える敵をじっと観察する。
彼我の距離はざっと50m程か。
全身を包み込むような赤黒いオーラを身に纏い、
二挺の火縄銃を手元でくるくると回しながら気負わずリラックスした姿勢で立っている。
一見隙だらけのようでいてその実、眼は獲物を仕止めるチャンスを伺う肉食獣のように爛々と光っている。
なにもなく飛び出せば容赦なく蜂の巣にされるだろう。
『PVPのイベントでよりにもよってあんなのに遭遇とは私も運がない・・・とは言うものの勝算が無いわけでもないか』
周囲をぐるりと囲んでいる木々のおかげで射線を切り、身を隠せる。
徐々にではあるが近づくことは出来る。
そして、此方の射程距離に入りさえすれば・・・
『【超加速】で一気に距離を詰めて、斬る!』
カスミの奥の手の一つ。目にも止まらぬ速さでの移動が可能になるスキル。
それであれば、あの程度の距離などあってないようなもの。
一瞬で刀の間合いにまで行けるだろう。
・・・だが
『相手も私が何としても近付こうとする事など百も承知。当然、なにか隠し球があると警戒しているだろう・・・加えて』
考えながら、カスミは傍らにあった石ころを拾い上げると明後日の方角に放り投げた。
ダダダッ!!
投げた石が空中で銃撃を受け、破片を撒き散らしながら四散した。
『この反応の良さ・・・【超加速】による不意打ちだけでは対処される可能性が高い・・・』
すぐにその場を離れ、別の木陰まで移動しながらも思考は止めない。
『・・・あと一つ・・・奴を崩せるだけの『何か』が必要だ・・・』
そう考えるカスミの耳に、突然『ピンポンパンポーン』というなんとも気の抜ける音が飛び込んできた。
『参加プレイヤーの皆様、お疲れ様です!ここで途中経過を発表致します。上位3名はこちら!』
1位 ペイン
2位 ドレッド
3位 ノブナ
『倒した際にはなんと得点の3割が譲渡されます!3人の位置はマップに表示されていますので最後まで諦めず頑張ってくださいね!』
「・・・まさかトップ3の内の1人とはな・・・道理で動きが玄人じみているはずだ」
そんなものを相手にせねばならない自分の不運を改めて呪いながら、ふと気づく。
『・・・もしかすると、これは使えるかもしれない』
そう考えたカスミは早速行動を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
運営からの途中経過発表は勿論、ノブナの耳にも届いていた。
『現状3位とは・・・もう少し上かとも思うたがその程度か。最初の『三千世界』ぶっぱに思った程プレイヤーを巻き込めておらなんだか・・・或いは上位2名がそれ以上に狩っておるのか』
頭の隅っこでそんな事を考えつつ、ノブナは油断なく周囲を観察し続ける。
『・・・なんとも慎重な奴じゃ。餌にもとんと食いつかぬ』
先程から、わざと気を抜く素振りをみせたりと『つり』を試しているが、乗ってくる気配がまるでない。
『とは言え、時間は有限。そろそろ焦れて手出ししてくる頃合。なにかしらの隠し球を持っておるのは間違いないが・・・はてさて何をしてくる?』
とノブナが相手の出方を推測しようと思考を巡らせていた、その時
「いたぞアイツだ!!一斉にかかれ!!」
「む?」
4人のプレイヤーのグループがそれぞれ別方向の森の繁みから飛び出し、ノブナに突っ込んできた。
どうやら第3位である彼女を倒し、ポイント奪取を狙う連中らしい。
その身に刃が迫るのを見ながらしかし、ノブナは慌てる事なく小さく呟く。
「【単独行動】」
身体が軽くなる感覚を覚えながら、迫る刃をしゃがんでかわす。
相手からすれば突然標的が目の前で消えたように見えた事だろう。
無防備に晒された顎に銃口を押し当て射撃。
次いで後ろから迫って来ていた敵に振り向き様一発。その胴体に風穴を開ける。
即座に両手の銃を交換。
挟み撃ちの形で左右から迫る二人に同時に発砲。スキルによって威力精度共に上がった銃弾が過たずその肩から上を削り取っていった。
瞬く間に新手を処理しつつ、意識の大半は最初に相手していた着物姿のプレイヤーへの警戒に向けられていた。
と、その警戒心に反応があった。
仕掛けてくる。
長年様々なゲームで培ったゲーマーとしての勘でそう確信したと、同時にガサリと近くの繁みが音をたてた。
『そこ!』
即座に反応し、其方に銃口を向け撃つ。
しかし、
『あれは・・・刀の鞘か!』
撃ち抜いたのは黒の鞘。
一瞬遅れて着物姿が飛び出してきた。
もう一方の手に握った銃を其方に向けて発砲。
「【超加速】!!」
着物姿のプレイヤーがその身体がぶれて見える程のスピードで一気に距離を詰め、飛来した銃弾を紙一重で潜り抜けた。
『疾い!?銃の補充・・間に合わん!?』
「とった!【一の太刀 陽炎】!」
迫る白刃
自信の姿がその刀身に映りこんでいるのが見える程に近づくそれを見て
ノブナが笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチリ
「え・・・」
自身の眉間に押し当てられた冷たく硬い感触にカスミの口から思わず間の抜けた声が洩れた。
が、次の瞬間にはその感触の正体に気がつき、
咄嗟に技をキャンセルして身をよじる。
ガァンッ!!
「くぁ!?」
顔のすぐ横で発せられた轟音と衝撃に脳が左右に揺さぶられるような感覚がし、視界がぶれる。
無理矢理避けたせいで体勢を維持出来ず、そのまま地面に倒れこんでしまう。
歪む視界のまま、見上げればそこには空中に静止した状態で銃口から白煙を昇らせている火縄銃があった。
「な、なんだこれは・・・」
「───【秘密兵器】」
「は!?」
非現実的な光景を見て絶句しながらも、なんとか反応して横に転がる。
それを追いかけるように次々と現れた銃によって弾痕が形成されてゆく。
『駄目だ、逃げ切れない!?』
「く、【三ノ太刀・弧月】!」
咄嗟にスキルを使用し、モーションを利用して空中に飛び上がる。
「よく避けた。が、終わりよ」
「な・・・・・」
上から。
下から。
左右から。
空中に飛んだカスミを包囲するように数多の銃がその暗い銃口を彼女に向けていた。
「上下左右360℃、しめて1500挺の一斉射撃・・・避けれるものなら避けてみよ」
ノブナが広げた掌を握り込むと同時
銃弾の雨がカスミの身体を呑み込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「───だぁー、しんど~」
着物姿のプレイヤーが光となって完全に消滅するのを確認してからノブナはガックリと肩を落とす。
全身を疲労感が包み、ズキンズキンと頭が痛む。
原因は明白、【秘密兵器】だ。
ただ並べての射撃ならばそこまでではないのだが、今のように相手を囲い込むような挙動・・・それも数多くの銃を用いてであれば話は違う。
相手の動きを読む洞察力。状況に合わせて瞬時に銃を配置、運用する判断力と空間把握能力。
一挙手一投足に目を光らせる集中力。
それら全てをフルに用いての技だ。
当然肉体的精神的な負担は比べるべくもない。
「回避主体のプレイヤー狩りのために用意した方法だが・・・まさかさっそく使わされるとは」
「ああ、まったくさっきの姉さんには感謝しねぇとな」
「な、ガッ!?」
ズブリと、
ノブナの胸から二対の白刃が生えた。
視界の隅に映るHPバーが消え去り、身体が光に包まれ消失していく。
身体をよじり後ろを見れば黒髪黒目、褐色肌の短髪の男性がノブナの胸から引き抜かれた飾り気のない二本の短剣を仕舞い込むところだった。
「・・・貴様、『ドレッド』か」
「アンタを放っておくと後がめんどくさそうなんで不意討ちさせてもらった。さっきの姉さんが集中力削いでくれて助かったぜ。ま、悪く思わないでくれ」
「・・・いや、戦場に卑怯もくそもない。気を抜いた儂が間抜けだったというだけのことよ。だが・・・」
最早殆んど消えかけながらも、ドレッドをその赤い双眸で見据えながらノブナが言葉を紡ぐ。
「儂は借りは返す主義故、次に会う事があれば覚悟するがよい」
そこまで言った所でノブナの身体が完全に消え去った。
その場に残されたドレッドは一つ舌打ちをしたのち面倒くさそうに頭をかく。
「・・・普通なら負け惜しみと流すんだがなぁ。ありゃ本気だな。面倒くさそうな奴に手を出しちまったかなぁ」
そうしてしばらく考えたあと
「・・・ペインの奴に押し付けられたり・・・しないよなぁ」
ため息をつきながら、その場を後にするのだった。