魔法士ゆかり【未完】   作:湯川ユノ

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お久しぶりです。


Ⅱ.ⅶ 夜明け

 ひ、非常に気まずい・・・・・・!

 

 ここは「さとうの宿」。私が使わせてもらっているお宿で、ささらさんのお母さんが経営している場所だ。

 

 そこの一室。普段は誰も利用していない部屋に、私達は居た。

 

「あ、あの・・・・・・」

 

「ゆかりさん。ちょっと待っててくださいね」

 

 表情は笑っているようにも見えるが、その目は全く笑っているものではなかった。

 

 うぅ。ささらさんが怖い・・・。

 

 先程、私が目覚めた時からささらさんとことねさんは何やら揉めている様子で、私が声を掛けようとすると決まってこう返ってくるのだ。

 

「それで、貴方はゆかりさんをどうするつもりだったんですか」

 

「う、うちは・・・・その・・・・・・ゆかりさんに手伝ってもらおうと・・・」

 

「手伝う?貴方を?ゆかりさんに犯罪者になれと?」

 

「あ、いや・・・その・・・」

 

 もうヤダ。この空気・・・・・・。ことねさんは私を助けてくれたんじゃないんですか・・・・・・?でもささらさんはことねさんに対してすっごい怒ってますし・・・。それにあの男の人はもうあの場には居なかったですし・・・・・・・・・?

 

 駄目だ。眠らされていた間に何があったのか、さっぱり分からない。

 

 でも、こんな空気のまま放置されるのは真っ平御免だ。

 

「さ、ささらさんっ!」

 

「ゆかりさん。ちょっと待って───」

 

「聞いてくださいっ!」

 

「あ、・・・・・・・・・はい」

 

「ことねさん。良ければ聞かせて貰えませんか?今溜め込んでいる事を、貴方の言葉で」

 

 それに私は、この人が悪い人には思えなかった。今もこうして、下唇から血が滲むほど悩んで、噛み締めている人が、悪人であるはずが無いのだ。

 

「う、うちは・・・・・・・・・分かった。全部話すわ」

 

 そうして、ことねさんは話してくれた。火垂という人の、英雄とまで呼ばれた人の話。自らの事。妹の事。そして、雀蜂という男の事。

 

「そういう訳や。うちの本名はあかね。琴葉茜や。ごめんな?嘘ついてて。本間はゆかりさんを雀蜂ん所に連れて行ったそん時に、刺し違えてでもアイツを殺してやろうと思っとった。けど、ゆかりさんは想像よりも遥かに強い人やった。せやから、うちはゆかりさんに手ぇ貸してもらおう思たんや。でも、まさか準備しようと思った時に蟷螂が出てくるとは思っとらんかったけどな」

 

「そういえば蟷螂さん?あの人は私を眠らせた後、どうしたんでしょうか?」

 

「蟷螂はゆかりさんを眠らせた後、近くにいたその人と戦闘になりましてね。そこに私が駆けつけたという訳です。まさかギルドの前で戦闘行為をおっ始めるなんて思ってませんでしたよ。蟷螂は私と・・・茜さん、でしたっけ?茜さんとの挟撃を警戒して何処かに行っちゃいました」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。ねぇ、あかねさん?(・・・・・・)

 

「あ、・・・あぁ。そうなんよ」

 

 この時、部屋の温度が少し下がった気がした。

 

「さーて、うちはもう話すことは無いから、次はあんたの番やな?──ささらさん?」

 

「ッ!」

 

「ささらさん?」

 

「なんや。その感じ、やっぱり話しとらんのやな?あんたはうちらの界隈じゃ人気者やからなぁ?この町の、インティウムの"守護者"が一人。"調停者"のささら。こういうた方がええんかな?『夜明け』の二つ名を持つギルドマスター殿?」

 

「コイツ・・・・・・」

 

 窓枠に嵌められたガラスが、少しづつ凍てついて行く。

 

 これは・・・氷の魔法?ささらさんは、私と同じ魔法士?

 

「なんや。そう怒ることないやん?大事な友達に隠し事ってのは、失礼な話やろ?」

 

「それを貴方が知っている。それ自体が問題なんですよ」

 

「おいおい堪忍してーや。うちかて元蜂ん所の幹部やで?裏の情報くらい回ってくるもんや」

 

「さっきまで死にかけていた人とは思えませんね。やはりここで処分しておきましょうか?」

 

「処分、ねぇ。さっきの蟷螂みたいに、か?」

 

「え?処分?蟷螂さんを?」

 

「・・・・・・決めました。貴方はここで消しておきましょう」

 

 ささらさんの口からは、聞き慣れぬ言葉が紡がれていく。

 

「おまっ、正気か?!こんな所でLvⅢ?!みんな死んでまうで!?」

 

「調整するのでご心配なく。それでは、さようなら」

 

 そして、私の視界は白に満たされていく───。

 

『グラキエース』

 

 その言葉は、私の耳に届くことは無かった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・えっ?」

 

 それを口にしたのは、私でもなく茜さんでもない。

 

 魔法を発動したはずのささらさん自身だった。

 

「ど、どうして・・・?貴方・・・!」

 

「う、うちやないで。うちの火じゃあんたの氷は止められへん。今のを止めたのは・・・」

 

 二人が私を見る。手を銃の形に見立て、その銃弾を打ち終えた後の私の姿を。

 

 そして何かを感じ取ってなのか、ささらさんは一歩、二歩と後退り、茜さんは苦い笑いをこぼしていた。

 

「いい加減に───してくれませんかね?」

 

「「は、はい・・・・・・」」

 

 私の心は、怒りに燃えていた。




「みなさんこんにちは。結月ゆかりです」
「みなさんこんばんは!さとうささらです!」
「そしておはようさん。琴葉茜やで!」

「いやー。今回の更新は遅れに遅れたなー」
「そうですね。お読みいただいている読者様達には申し訳ない気持ちです」
「こんなマイペース投稿ですが、これからもよろしくお願いします」

「それではみなさん」
「ばいばーい!」
「さようなら~」


「え?これで終わり?!うちの初回やのに?!」

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