魔法士ゆかり【未完】   作:湯ノ川

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一年以上経ってるってマジですの?
いやごめんなさい。一年前の僕と反りが合わなくて目を逸ら続けてました。


Ⅱ.ⅸ 覚悟

 ゆかりさんが挙げてきた案は、要約すると"ゆかりさん自身を囮にする"と言うものだった。ゆかりさんを捕らえたという体で茜さんが雀蜂と接触、その後私が魔法を使い茜さん達と合流し、雀蜂を撃破する。

 

 でも、本当にそう上手く行くんですかねぇ・・・。

 

 相手は長い間、この町を裏から支配し続けてきた男、組織のボスだ。そう簡単に行くとは思えない。

 

 けれど、彼女が言うと何故か信じられる気がするのだ。彼女の言葉には、彼女という存在には、何か不思議な力を感じる。

 

 それも月の魔力、人を魅了する月の魔力という事なのかもしれませんね。

 

 考え事に深ける私の髪を、夜の冷たい風が吹き抜けては消えて行く。

 

「・・・期待、してもいいんですよね?ゆかりさん?」

 

 私の声は誰に届くでもなく、街を洗う風に乗って消えていった。

 

 ◇

 

「で?今これは何してるんですか?」

 

 雀蜂一派の幹部を退け、この町の闇に挑む事を決意した私達は・・・。

 

「え、夕飯ですけど・・・・・・?」

 

 次の日、いつも通りの日常を過ごしていた。

 

「いや、そうでなくてね?」

 

「まぁまぁささらん。ほら、これとか美味しいで?」

 

「えぇ・・・・・・」

 

 ここは先日もお世話になったささらさんイチオシのあのお店。伺ってみるとここは『林檎の森』というお店だそうだ。

 

「いや!そうじゃなくてですね!作戦がどうとか!そういう話をする為に集まったんじゃないんですか?!」

 

「んー?違うで~」

 

「んな・・・ッ!」

 

「今日はウチとゆかりさんでまたわんころシバいて来たからそのお疲れさん会や」

 

「ゆ、ゆかりさん・・・?」

 

「あー、はい。まぁそんな感じですね」

 

「で、でも!何かきちんと策を練らないと雀蜂一派が──」

 

「あぁ、それ。もう無くなったで」

 

「・・・・・・・・・はい?」

 

 あぁ、ささらさんが茜さんに完成に振り回されている・・・・・・。正直、見てて凄く楽しいのでこのまま黙っておこう。

 

「実はな、今日ウチとゆかりさんで探索出とった時に一派から接触があってな?ウチとゆかりさんの二人で明日ん夜にアイツん所行って、葵を返して貰えるって流れらしいんや」

 

「は、はぁ?まさかそんな戯言を信じてるんですか?!相手はあの雀蜂ですよ?!」

 

「そんなん言うてもなぁ。実際、葵の居場所知っとるんわ雀蜂だけやろう?せやからまぁここは和平で済ますんもええかな、て」

 

「・・・・・・本気で言ってるんですか」

 

 空気が凍る。比喩ではなく、周囲の温度が急激に下がっていくのが分かった。少し生ぬるかった店内全ての温度が、寒気が感じられるまでに至る。

 

「・・・やめーや。迷惑やぞ」

 

「ここまで来て、奴に泣き寝入りしろと?」

 

「そうは言うとらんやろ。ただ、争わんでええって事は無駄な血が流れへんっちゅうことや。うちらかて危険が少ないならそれに越した事は───」

 

「そんな事でッ!!」

 

 突如大声を上げて立ち上がったささらさんの身体は、少し震えていた。寒さからではない、怒りや憎しみ、そういった感情を強く感じた。

 

「・・・ささらさん?」

 

「ッ!・・・・・・すいません。私は・・・・・・」

 

「・・・やっぱ、組織となんかあったんやな」

 

「・・・・・・・・・はい」

 

 ささらさんはゆっくりと話してくれた。組織とこの街、長くに渡る因縁。ささらさんの父親、先代ギルドマスターの死。その死には組織が強く結びついている事。もう何人も組織との対立で命を落としている事。やはり自分でどうにかするしかない、そう思っていた時に現れた一人の魔法士、その魔法士は月の魔力を操ること・・・・・・って。

 

「私の事ですか」

 

「・・・はい。ゆかりさんの月の魔力。他者の魔法を打ち消す力さえ有れば、私は・・・・・・私は、父さんの仇が取りたいんです。黙っていて、すいませんでした」

 

「そうならそうと言うといてくれれば良かったのに」

 

「で、でも、こんな自分勝手な理由で・・・」

 

「うちは妹を助けたい。ささらんは父親の仇を。ゆかりさんは友達の手伝いを。みんな自分のエゴで動いとる。それでええやん」

 

 そういう茜さんの表情は、柔らかく優しい、お姉さんの様な表情だった。

 

「けどな、やっぱうちは殺すんは反対や」

 

「・・・・・・非人道的だからですか」

 

「違う。報復の問題や。殺せば殺しに来る。殺されれば殺さなくてはならない。そんなの・・・・・・」

 

「茜さん・・・・・・」

 

「・・・・・・分かりました。なら、約束しましょう。私達は、誰も殺さないし、誰も殺されない。みんなで生きて、また、ここでお酒を飲みましょう」

 

 そう言って笑うささらさんの表情は、何だか重りが取れたような、吹っ切れた顔をしていた。

 

「そんならうちも賛成や。悪党共はみんな捕まえて、葵を助ける。乗ったで」

 

「茜さんの妹さんを助けて、みんなでまたここに、ですか。分かりました。ささらさん、茜さん。作戦は少し変更になりますが、大筋は変わりません。私と茜さんで雀蜂の元へ。ささらさんは魔法を使い潜入。三人で一気に制圧後、雀蜂を捕え、妹さんを救い出す。それでいいですね?」

 

「あぁ、異論は無いで」

 

「私もです」

 

「それなら、明日に備えて」

 

 各々が持つコップをカチンと打ち付けて、それを一気に飲み干した。

 

 私達は、みんな生きて帰るんだ。誰一人、欠けることなく・・・・・・。

 

 ◇

 

 その時は、思いもしなかった。

 

 まさか、あんな事になるなんて・・・・・・。




なーにが、次回激闘、だバーカって感じで書き始めから辞めたくなりましたが、何とか今の僕があの時の僕と和解出来たので形になりました
もうちょい頻度よく上げていきたいですね
失踪する時には十中八九この作品は消えているので消えてたらそういうことだと思っておいて下さい
それでは、機会があればまた次回
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