魔法士ゆかり【未完】   作:湯ノ川

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Ⅱ.ⅹ 蜂巣

「ほぅ?おめェさんが・・・。どうだ?俺の町は。楽しんでるか?」

 

 翌日の深夜。生命は眠りに付き、静かな暗闇が町を覆う。黒いフードを被った部下であろう人間に案内されて向かったのは、町のハズレにある大きな建物。以前は酒類を売っている店だったのだろうか?床には散乱した瓶の破片が幾つも転がり、その棚には今も幾つかの瓶が立ち並んでいた。

 

 私達は今、その地下に居る。

 

 地下には大きな椅子、玉座と呼んでも差支えの無いそれにふてぶてしく座り、さも当然かの様に話を始める一人の男が居た。私達をここまですんなりと通した事から、何か策略の様な物は用意されているのだろうが、こちらとしては好都合。私達の目的、その男の懐に潜り込む事には、無事に成功したのだから。

 

「楽しむ?ご冗談を。二人も刺客を差し向けておいて、良くそんな事が言えますね」

 

「かははっ!その内の一人はおめェの横に立ってるじゃねぇかよ。なぁ?"火垂"よォ」

 

「うるさいわ。そんなんええから、はよ本題といこうや」

 

 陽気に笑うその男こそが、我々が倒すべき相手、この町を裏側から総べるもう一人の王『雀蜂』なのだ。

 

「本題ぃ?構わねぇぜ?てめぇらは俺に何の用があるんだったか」

 

「このッ───!」

 

「茜さん。ストップ」

 

 ここで感情的なっては向こうの思う壷。私達の目的はあくまでも妹さんの奪還にある。それは忘れてはいけない。

 

「・・・・・・チッ。まぁええわ」

 

 おぉ、流石は茜さん。熱くなるのは早いが冷めるのも早い。

 

「こちらの要求は三つ。一つ、うちの妹、琴葉葵の解放。一つ、蜂、お前の身柄の確保。一つ、一分一秒でも早く(なるはやで)死ね」

 

「そういう事です」

 

 ・・・・・・んん?最後の一つは何かおかしいなぁ。

 

「かかッ!テメェ等正気かァ?」

 

 雀蜂が右手を上げると、隠密系の魔法でも使っていたのか、周囲の暗闇から黒いフードを被った連中がぞろぞろと湧いて出た。

 

「まず一つ目。妹はテメェが仕事をきちんと終えれば返す。そういう約束だろぅ?」

 

「・・・せやからウチはあんたの前に"月の魔法士"を連れて来た。それで仕事は終わりのハズや」

 

「あぁそうさ。テメェがそいつを置いてここを出て行けば納品完了。妹は解放するとも」

 

「茜さん一人で帰れば良い、と」

 

「それは無理やな。ウチ等は皆、"三人揃って"皆で帰るんや」

 

「・・・・・・三人、だと?」

 

「そうですよ?」

 

 地上へと繋がる唯一の道である階段から、コツッコツッと音が鳴る。

 

「ブンブンと町を飛び回る。薄汚い虫さん?」

 

「テメェ・・・・・・ギルマスか」

 

 この町を表側から総べる、雀蜂と対となる王『夜明け』の名を冠するギルドマスター。

 

「さとうささら。調停者として、平穏を乱す者を捕らえに参りましたよ」

 

「・・・随分と勇ましいじゃねぇか」

 

「貴方こそ、随分と冷静ですね?貴方の戦力は今ここにいる人間だけなんですよ?それに」

 

「それに、それももう片付いたしな」

 

 ささらさんが繋ぎ、茜さんがそう紡ぐ。

 

「コイツら、全く力を感じひん・・・。土属、創造魔法(クリエイト)か」

 

「ご名答。やるじゃねェか」

 

 雀蜂は賞賛と共に手を叩き笑ってみせた。

 

「火垂よォ?おめェウチに居た時より力を上げたか?」

 

「なんなんやお前・・・・・・?」

 

「火垂が離脱。蟷螂が戦闘不能。もう幹部も居ないはず。大量に居た部下もクリエイト・・・。それがバレたって言うのに、何なんですかその余裕は!」

 

「テメェら、一体何の話をしてやがる?」

 

「・・・は?」

 

 雀蜂が指をパチンと打ち合わせる。奴が腰掛けていた椅子が、残っていたクリエイトによって生み出された部下達が、この地下空間に存在する、ありとあらゆる物がゆっくりと砂へと姿を変えて行く。

 

「そもそも、幹部だの何だのってのは部下共が勝手に決めたもんだァ」

 

 立ち上がり、一歩、また一歩と此方へ向けて歩み始めた。

 

「俺は気に入った奴に好きに生きる為の名を与えてやっただけに過ぎねぇ」

 

 その手の中には、いつの間にか生み出されたであろう大きな戦斧が握られていた。

 

「組織なんてモンはテメェら光の人間がキメたもんだ」

 

 全てが溶けて産まれた砂は少しずつ集まり、やがて大きな物へと姿を変えていく。

 

「アイツらが俺に何を求めてたのかは知らねぇが、俺にとっちゃあ奴等は仲間でも部下でも、駒ですらねェんだよ」

 

 大きな翼を持ち、強靭な脚部で血を踏み締め、鋭い爪は人程度なら容易く引き裂くだろう。

 

 その姿は・・・。

 

「ど、ドラゴン・・・?!」

 

「創造魔法『地竜』」

 

「その魔法は・・・・・・ち、違う。そんなハズ、ない・・・・・・」

 

「ささらん?!しっかりせぇ!」

 

 突如膝をつき、呼吸が荒くなっていくささらさんに、茜さんが駆け寄って行く。

 

「役者は揃った。そろそろキメようや」

 

 私は、その『竜』から目が離せなかった。

 

「光と影。この町の行く末をよォ!」

 

 石と砂で形を整えただけの竜が、けたたましく咆哮を上げる。

 

 ささらさんはダウン状態。茜さんも萎縮。平気なのは私だけ?

 

「・・・・・・た」

 

「あ?」

 

 違う。こんな物を目にして、平常心なんて保てるハズがない。

 

「燃えてきた、って言ったんです──よッ!!」

 

 相棒である欠月をホルダーから抜き放ち、地竜に向けて叩き付ける。流石に岩石で身体を構築しているので、欠月の刃は簡単には通らない。

 

「チッ、流石に硬いですね」

 

「おいおい。一人で挑むってのか?コイツはかつて先代ギル──」

 

「うるさいですよ」

 

「・・・・・・あ?」

 

 ごちゃごちゃと雑音が耳につく。どうでもいい。今はただ、このワクワクと共に躍りたい。

 

「本物じゃないのが、ちょっと残念ですけどー。まっ、良いです。この世界には竜が居るって事が分かりましたし」

 

 "この世界"?自分の言葉が、少し心に引っ掛かる。だが今は戦闘中。呼吸を整え、思考を切り替えていく。

 

「茜さん。ささらさんを後ろへ」

 

「わ、分かった!けど、ゆかりさんは?」

 

「私はですね」

 

 大きく息を吸い、一拍置いて吐き出しながら再び眼前の竜へと肉薄する。

 

「竜狩りと洒落こみますよ!」

 

 激闘始まる店の地下。偽りの竜の爪と少女の振るうナイフがぶつかり、甲高い音が響く渡る。

 

「さぁ、ひと狩りいこうぜ」

 

 真夜中は未だ、始まったばかり。




前回の僕とは上手く和解出来た気がします。
戦闘描写が大の苦手なのでたまに、というか頻繁に日本語のエイムが失われたりしますが大目に見て貰えると幸いです
次回もこのくらいの頻度で出したいと思いましたまる
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