受付のお姉さんに案内されてやって来たのは、冒険者ギルドの裏手にある小さな広間だった。
「はい。それでは適性検査を始めますね」
亜麻栗色の髪をなびかせて彼女は振り向きざまにそう言った。
「は、はいっ!」
この人・・・よくよく見れば凄く可愛い、というか若いですね。歳は・・・同じくらいでしょうか?人って落ち着いただけでこんなにも綺麗に見えるものですか。
「どうかしました?」
「い、いえ。それで、何をすればいいんでしょうか?」
「そうですね、まずはジョブを決めたいと思います」
「あれ?検査はどうしたんですか?」
「・・・・・・・・・あっ」
"・・・・・・・・・あっ"?
「ごめんなさい。もう無理です!」
そう言って、受付の少女はケラケラと笑い始めた。
まさかコイツ・・・。
「適性検査って言うのは嘘です。ちょっとからかってみようかなって・・・あ!駄目!やめて?!その拳を降ろして!!」
マジでコイツ・・・・・・。
「まぁ、私は心が広いのでこれくらいは許しますよ」
「そ、そうですよねー!心が広い──」
「でも次は無いぞ」
「は、はい・・・・・・」
ゆかりさん。少しずつ、自分のことがわかった気がします。普段は知らない人と話すのって苦手なんですけど、言える時は言える。そういう人間だったらしい。
「そ、それではー!気を取り直しまして・・・貴方のお名前を教えていただけますか?」
そして、もう一つ。私は私の事を理解した。
「私は、ゆかりです」
「ゆかりさん。改めてようこそ、冒険者ギルドへ。貴方にはいくつかの質問に答えて頂く形になりますが、答えられない物は答えずとも構いません」
この突然入る真面目な雰囲気になるの、ずるいですよね・・・。
私は、可愛い女の子にめっぽう弱かった。
「わ、分かりました」
「それでは始めて行きましょう」
広間に設置された、ベンチに座りながら話を続ける私達。どれくらいの時間が経ったのだろうか。
「なるほど。どうやら貴方は"魔法士"向きのようですね」
「魔法士、ですか?」
「はい。冒険者と一括りに言っても沢山のジョブがあります。ですが、ほとんどの冒険者は基本職である三つの中から選ぶことになります」
「三つ・・・」
「前に立ち、敵の
自分でもそうは思うが、人に言われるとこう・・・無性にカチンときますよね。いや、多分実際その通りなんですけど。
「ですのでオススメとしては魔法士なんですけど・・・」
「どうかしました?」
「魔法士って。人気ないんですよね」
「へぇ。そうなんですか?」
後衛からズバズバ魔法を当てて敵を仕留めるとか、そういうの人気ありそうですけどね。隣の芝生は青い、と言うことでしょうか?
「魔法って、INT依存ですし魔力量が余程高くないと役に立たないんですよ」
「あぁ。確かにそうですね。魔法なんて強いもの程必要になる魔力の値が増えますからね」
・・・・・・・・・あれ?
私、どうしてそんな事を知っているのでしょうか・・・。
今聞いた話は、全てすらすらと頭の中に流れ込んで来ていた。初めて聞くこともあるはずなのに・・・。
うーん?前居た世界・・・で良いのでしょうか?魔法なんて物はなかったはず・・・・・・・・・はっ!あにめ?げぇむ?なんだか良くは分かりませんが、そういうので聞いた事があったのでは?
と、言うことは?この無駄知識を活用すれば私はこの世界でもやって行けるということでは?!
そういえば前の世界で異世界転生なるものを見たことがありましたね。今の私はその状況に置かれている、と。
「なんだか、やけに詳しいですね?」
「えっ、あぁ。一応そういう知識はあったみたいです」
「そうですか・・・で、如何ですかね?別に剣士や弓士の道も無い訳では無いですけど」
「うーん、どうしましょうかね」
「あっ、じゃあ先に魔質の確認しときましょっか!」
「ましつ?」
「はい、ちょっと待っててくださいね」
勢いよく立ち上がった彼女はギルドの方へと向かい、片手に水晶玉を持って帰ってきた。
「これですこれ!これに手を置いてから、御自身の魔力をイメージしてください!」
「は、はぁ・・・」
よく分からないが、とりあえず言われた通りにやってみよう。
何か大切な事のようですし、ここは素直にやっておきますかね。
「お、おぉ?」
手を置いた水晶が、様々な色に光り始めた。
「あの、これは?」
「あ、これはですね。魔力の質、属性を測れるんですよ」
「属性ですか?でもそれがジョブと何の関係を?」
「魔力の質は大事ですよ?剣士や弓士も、スキルを使う際には魔力を消費しますからね。例えば、盾持ちの近接職なら地の属性と相性が良いです!けれど逆に、風の属性とは相性が良くありません。同じスキルでも効果や消費魔力が全然違うんですよー」
「あぁ、なるほど」
マキさんがそんな事を言っていた。魔力は大きく分けて"火""水""風""土"の四種類があり、他の属性はこの四つの派生や、微妙な調整による合成なのだとか。
属性がスキルに影響する・・・魔質が火であれば火の魔法は使える。が、それだけになってしまう。なるほど、だから魔法士の人気が低いという事ですか。
「うーん?」
「どうしました?」
「なかなか安定しませんね。光が強いので魔力は多いと思うんですけど・・・」
光が強ければ強いほど、魔力が多い。という事は赤く光れば魔質が火、ということになる。
「四属全て・・・いや、その光り方じゃないですし・・・」
「属性ってそんなに何種類も持てるんですか?」
「あ、はい。この水晶で分かるのは基本の四属だけですけど、魔質が火と水なら半分くらいが赤で半分が青って感じですかね」
「そんな感じなんですか」
つまり四属全てが使える人間は、この水晶が四分割されてそれぞれの色で光るって事ですよね?
「でもこれ、瞬いてるじゃないですか?なんなんですかねこれ」
「いえ、私に聞かれましても・・・」
もしかして私、魔質がどれにも当てはまらないとか?魔法の才能、ないんでしょうか・・・?
それなら少し残念だ。せっかく魔法が使える世界に来たというのに魔法が使えないなんて、冷めたピザと一緒じゃないですか。
「うん?ゆかりさん。もう少し強くしてもらっていいですか?」
「え、あ、はい」
強く・・・まだコツとか掴めてないんですけどね。まぁやってみましょうか。
目を閉じて、意識を自分の中へと集めていく。そうすると、わずかながら自らを流れる魔力の流れを感じとれた。
えーっと・・・これが魔力だから・・・・・・こう?
その時だった。パキンと何かが割れるような音がした。
「え?」
「え?」
私達が何事かと思った時には、もう既に手の下の水晶玉は真っ二つに割れていた。
「うそ・・・」
「え、あ!違っ!わざとじゃなくて、その・・・」
私がそれを言い終える前に、受付さんは走って行ってしまった。
やってしまった。これ、弁償とかになるんでしょうか・・・。お金、マキさんから借りれるかな・・・。
それからしばらくして、受付さんは真面目な表情をし、ゆっくりと歩いてきた。
「ゆかりさん」
「ひゃいっ!」
「あなたの魔質が、判明しましたよ」
「ごめんなさいほんとわざととかじゃ・・・はい?」
「あの水晶、名前を"月光石"と言いまして、魔力を結晶内で飽和する性質を持つ石なんです」
「月光石?」
「はい。月光石には、強い"月"の魔力が蓄えられていて、月の魔力は四属、それに連なる魔質全てを飽和。つまり無力化しちゃうんです。そしてその月の魔力を蓄えた月光石を砕くことが出来るのは"聖女"や"聖者"が持つ"陽"の魔力。そして同じ性質を持つ月の魔力だけ」
「月の魔力・・・」
「はい。月光石が砕けた時の最後の光は淡い紫でした。それが魔質の色という事ですから、貴方の魔力は激レア中の激レア。月の魔力で間違いありません」
月の魔力・・・。四属全てを無効化する性質を持つ・・・?
「えっ、それ、めっちゃ凄くないですか?」
「そーなんですよー!私、初めて見ました!」
「ま、まぁ?ゆかりさんは天才ですからね!当たり前ですよ!」
「さっすがゆかりさん!これはもう魔法士になるしかないですね!」
・・・・・・ん?
「え?魔法士なんですか?そんな希少な魔質なのに?」
「え、だって魔鋼剣の火とかも消しちゃいますからね。それってただの剣ですよ」
「えーっと、つまり・・・?」
「貴方は魔力を持つ武器が使えません!更にー?月の魔力はレア過ぎて月の魔法なんて誰も知りません!」
「あ、あは、あははは・・・」
どうやら私は、魔力と相性が悪い。つまり・・・
「貴方は、魔法の使えない魔法士という事になりますね!」
「あぁ・・・もう・・・勘弁して下さい・・・・・・」
魔法の使えない魔法士が、ただのポンコツが生まれた瞬間だった。
皆さんこんにちはー!さとうささらです!今日は不貞寝したゆかりさんの変わりに後書きコーナーを努めさせていただくことになりました!それにしても、強すぎるが故に最弱なんて、ゆかりさんらしいですよね!
あ!お気に入り登録をしてくれた方々!ありがとうございます!私もうp主と同じくらい嬉しいです!頑張ります!
と、私が語る事はあまりないのでこのくらいですかね?早く正式な出番が欲しいですよー。
それでは皆さん、機会があればまたお会いしましょう!さよならー