魔法士ゆかり【未完】   作:湯ノ川

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Ⅱ.ⅱ 明けの欠月

「おー。いっぱいありますね」

 

 鼓屋は手前のエリアはオーダーメイドの受付や、簡単な修復。刃の研磨を依頼する事が出来る。そして私達が居る奥のエリア。ここには、つづみさんのお父さんが打った武具がずらりと並んでいた。

 

「ナイフが欲しいって話でしたけど、具体的にどんなのが欲しいとかあるんですか?」

 

「いえ、あまり武器に詳しい訳では無いので・・・。初心者にも扱い易い物が良いですかね」

 

「そうですか・・・。うん。さとう、向こうの棚からダガー何本か出してくれる?あとククリを一本・・・あ、ソードブレイカーも」

 

「了解!ちょっとまっててねー」

 

「それじゃあ、ゆかりさん。取り敢えず握ってみて下さい。どれがしっくり来るとか、どれくらいの重みがいいとか、そういうのを教えて頂ければそれに近いものから徐々に絞り込んでいくので」

 

「分かりました」

 

 ささらさんが運んでくる物の握った時の重み、刃先の重さ。重心のブレ等。様々な点をつづみさんの話で照らし合わせていく。あまりにも時間が掛かってしまった為、ささらさんは途中でギルドの仕事へ戻ってしまった。アシスタントの居なくなった私達は私が気になる物を手に取り、それに近いものをつづみさんが探す、の繰り返しだった。

 

「ここら辺のは凄く手に馴染む感じでしたね」

 

「やっぱりダガー系統。そして、グリップが浅めですか。重さとかは大丈夫でした?」

 

「はい。重さは特に気になりませんでしたね」

 

「うーん。それなら・・・これとかどうです?」

 

 そう言ってつづみさんが用意してくれたのは、余計な装飾の無い、黒を基調とした刃に赤のラインが映える、握り部分も余計な力の入らない形のダガーだった。刃は、どこか三日月を思わせる背の反り。グリップの先には取り回しを向上させるためのリングが添えられていた。

 

「お?・・・おぉ!なんだか凄くしっくり来ますよこれ!」

 

「良かった。それは父の作品でも滅多に売れない部類の武器なんですよね」

 

「へぇ。これで売れないですか?」

 

「何せその武器、魔力を通せないんですよね」

 

「魔力を?」

 

「えぇ。他の武器なら魔力を通すことで能力を発揮する事が出来たりするんですけど、そのダガー。それだけは材料が違うんですよね」

 

 ・・・なんか聞いたことありますね。もしかしてこれ・・・・・・。

 

「もしかして、このダガー。月の?」

 

「おや、よく分かりましたね。それは月の欠片と呼ばれる鉱石をベースに作り上げた物らしいです」

 

 あぁ、やっぱりですか。

 

 やっぱり、魔力を通せない。という性質を持つのは月に連なる物だと、安易に予想が着いた。

 

「あの、これ」

 

「あぁ、やっぱりダメですよね。丁度いいのはそれだと思ったんですけど」

 

「いえ。これが欲しいです」

 

 私の言葉を聞いたつづみさんは、豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていた。

 

「良いんですか?」

 

「はい。もともとメインで使う訳では無いので」

 

「でも、魔法士のゆかりさんなら魔鉄鋼とかの方がいいんじゃないですか?」

 

「私の魔質では、魔鉄鋼の力を引き出せません。それに・・・」

 

「それに?」

 

「好きなんですよね、"月"」

 

「・・・・・・・・・そうですか」

 

 つづみさんはそれだけ言うと席を立ち、一本のペンを手に戻って来た。

 

「つづみさん。それは?」

 

「これは、所有者登録の為のアイテムです。このペンを通して鋼に魔質を流し込み、名を刻む。これを行わないと、盗難等の被害に遭う可能性もあるんですよ」

 

「魔力で名を刻む・・・あぁ。だから売れないんですか」

 

「はい・・・。父の商品の中でもトップクラスの駄作ですよ」

 

 月の魔力を帯びた鉱石を、炎を使い加工をすることは出来る。が、希有な月の魔力に対して魔力で名を刻む事が出来るのは、月の魔力か陽の魔力くらいだろう。例え、月や陽の魔質をを持つものでも、それを正しく扱える者でなければ魔力として行使することは出来ない。

 

「さぁ。ゆかりさん。これで名を。それが出来ないのであれば、それはお譲り出来ません」

 

「は、はい・・・」

 

 月の欠片で出来た刃に、ペン先を突き立て、自らの魔力を流し込んで行く。

 

 集中・・・集中・・・・・・!

 

「で、出来ました!」

 

「うそ・・・本当に、月の魔力を・・・?」

 

「出来ましたよつづみさん!」

 

「・・・・・・・・・そうですね。はい。これでこのダガーはゆかりさんの物になりました。またメンテナンス等の際にウチに持ってきて下さいね」

 

「この子、名前とかあるんですかね?」

 

「えっと、うーん。お父さん、思い入れがあったりするとつけてる時もあったかな?そのダガーのウィンドウを開いてみれば分かると思いますよ」

 

 ウィンドウ?あぁ、ステータスの魔法でしたっけ。武器の情報を確認するウィンドウを展開する、と。

 

 ダガーの表面に指を二本添え、なぞる様に横へ斬る。

 

「お、出ましたね。えーっと・・・つづみさん。これ、なんて読むんですか?」

 

「どれどれ?」

 

 あ、良かった。武器の情報覧とかは他の人も閲覧出来るんですね。

 

「多分ですけど、欠月(かけづき)じゃないですか?」

 

「欠月・・・」

 

 何かを確かめるように、何度のその銘を口にする。

 

「あの!つづみさん!これ、いくらくらいするのでしょうか?」

 

「そうですね・・・。希少な鉱石を使っているのでユキナ銀貨三枚くらい・・・でしょうか?」

 

「ユ、ユキナ銀貨三枚・・・・・・」

 

 銀貨が三枚。と、言うことは銅貨が三百枚必要となる。

 

「あ、あの・・・少しまけて貰えませんか・・・?」

 

「と、本来なら言いたいところですけど」

 

「え?」

 

「さとうが一人の冒険者にここまで肩入れするなんて、珍しいですからね。この代金は、出世払いでも良いですよ?」

 

 意地悪そうに、からかうように微笑んだその仕草にドキッとさせられる。

 

 普段クールな子がこう、ふと見せる笑顔って凄く可愛いですよね。

 

「良いんですか?」

 

「はい。その代わり、いつかこの鼓屋を繁盛させて下さいね?」

 

「・・・はい。必ず」

 

 その後、つづみさんに改めて礼を告げ、急ぎ足で鼓屋を後にした。

 

 さぁ、ようやくです!武器もあるし、魔法もある!ようやく始まる!私の、異世界生活が!

 

 

 

 

 

「ふーん。あの子かいな?蜂もあんな小さい子に興味持つようになったんか?」

 

「雀蜂様、だ。口には気をつけろ」

 

「へいへい。で?あの子をどうしろて?」

 

「今日は・・・うむ。五日後の夕暮れ。南の洞窟だ」

 

「・・・・・・うちには関係のない話やけどな?あの子を連れていったら、オタクら何するつもりや?」

 

「それをお前が知る理由はない」

 

「ま、ええわ。葵のためや。やれと言われればやる」

 

 もう、何人も巻き込んできた。今更、止まることなんて出来ない。

 

 なぁ、葵?きちんと無事で過ごしてるか?うちな・・・ようやく、葵と普通の暮らしが出来そうなんや・・・・・・。

 

「さぁ、行こか」

 

 動き出す。悪意の波が、引いてはまた、寄せて行く。

 




『本日の後書きコーナーは諸事情によりお休みさせていただきます』

「・・・なんですかコレ」
「ま、まぁしょうがない・・・かな?」

「まぁそうだね。休みなら休むしか無いし。それじゃあさとう」
「うん。つづみちゃん!」

「「ばいばい!」」
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