「あ、おかえりなさい。良いの・・・あったみたいですね」
「もしかして、顔に出てました?」
「はい。それはもう、とても分かりやすかったですよ」
私、そんなに分かりやすく顔に出るタイプだったんですね。
「それで、どんなのにしたんですか?」
「あぁ、これですよ」
腰の部分に付けたホルスターから欠月を抜き放ち、カウンターへと置いた。ちなみにこのホルスターは、つづみさんからの交友の証としてプレゼントして貰った物だ。
本当に、あの人には頭が上がりませんね。
「カッコイイのを選びましたね!」
「そうでしょう?この子、なんと月の欠片で出来てるらしいんですよ!」
「月の欠片・・・」
その名前を聞いたささらさんの表情が、苦い物になったのが分かった。
「どうかしました?」
「・・・・・・いえ。月の欠片と言うのは、名前は綺麗に聞こえますけど怖い噂みたいなのがあるんですよ。古代から、月の光に魅力された者はその精神を破綻させると言われてました。その魅力された人間は、悪魔憑きだなんて言われてたみたいです。そしてその人間は月に近づく為にその欠片を追い求める。って、まぁおとぎ話みたいなものですけど」
「そんなのがあるんですね・・・」
「まぁゆかりさんなら大丈夫だと思いますよ。なんせ月の魔力を宿してるんですし。それより、この後は依頼を受けるんでしたよね?」
「あぁ、はい。何か良さそうなのありますか?」
「うーん。あ、これなんてどうです?東の森のゴブリン退治!」
「ゴブリンですか」
ゴブリン。漢字で表すと小鬼。邪悪な心を持つイタズラ好きの精霊の一種とされる。人を襲う事もあるが、人間に友好的な部族も存在するポピュラーな魔物で、光るものを集める習性がある。
「はい。特に指定もされていないので何体か倒せば任務としては完了ですね。依頼主は近くの村の方となっています。初心冒険者にはオススメの依頼ですよ!」
「そうですね。まずはそれを受けましょうか」
「お一人で行かれるんですか?」
「そうですね。パーティを組む人も居ませんし、とりあえず一人で行ってみます」
「分かりました。くれぐれも無理はしないでくださいね」
「はい」
ゴブリンは初心者にでも狩れる相手だ。魔法や欠月を試すのには丁度良い相手だろう。
ささらさんとのやり取りを終え、私は東の森へと向かった。
「こう見ると、なかなか広い森ですね」
東の森へと足を踏み入れた私は、早速標的であるゴブリンを探して周囲の散策を始めた。探し始めて数分。なんなくその姿を目に捉えた。
「お、居ました居ました 」
標的は一体のみ。森を流れる渓流の傍で座り込み、何かをしているようだった。
「さて、まずは・・・月の弾丸!」
私の掌から放たれた弾丸は、ゴブリンの無防備な背に直撃するも、大したダメージには至らなかったようだ。突然攻撃を受けたゴブリンは傍に置いていた錆びた剣を手に、身構えようと試みるも身体を蝕む月の魔力により身動きが取れずにいた。
「ごめんなさいっ!」
私の振るった欠月はゴブリンの首元へ吸い込まれるように突き刺さり、やがてその活動を停止させた。
「・・・ふう。やれば出来るものですね」
元の世界ではごく平凡な人間であった私だが、他の命を奪う事で明日を生きていかなければならない。その状況が私を強く突き動かした。
「さて、証明となる品を持って帰るんですよね」
何を持って帰れば良いのか分からないが、とりあえずその爪を採り次の獲物を探すべく再び森の中を進んでいく。しばらくして三体のゴブリンを発見出来た。
「よし!月の弾丸!」
一体に命中した際、傍にいた二体がこちらに気付きこちらに向かい走ってきた。もう一度月の弾丸を放つも、その性質上ゆっくりとした動きで飛んでいくそれを、ゴブリンは軽々と回避してみせた。
「あっ!躱すんですか?!」
近づいて来た一体が振るう棍棒を、身体を捻ることで躱すことに成功するも、もう一体が振るう棍棒を躱しきることが出来ずに肩を掠ってしまう。
「痛!こっの・・・!」
お返しに欠月を首元を目掛けて力任せに振るい、それを躱すために体が仰け反ったところに目掛けて月の弾丸を放つ。その弾丸を受けたゴブリンはその体を一瞬硬直させるもすぐに自由を取り戻した。
「魔力が少な過ぎた?」
一度大きく飛び退き、ゴブリンとの距離をとる。そのタイミングで最初に硬直させたゴブリンも自由を取り戻し、二体と合流した所で戦闘は振り出しへと戻った。
さて、どうしましょうか・・・。
月の弾丸で動きを止めようにも、ふわふわと漂う弾丸はおそらく容易に躱されるだろう。
まだ魔力の込め方も安定してませんし、ここは無理出来ませんね・・・。それに、こんなにゆっくりじゃまた躱されちゃいます。
どうしたものか。ゴブリンの動きに目をやりながら考える。
もっと早く?もっと小さく?もっと魔力を・・・これだ!
手のひらを向けるのではなく、指を一体立てて手を銃を模した形にし、指先に力を込めていく。
魔力は多め、大きさはそこそこで、速度を重視・・・!
指先から放たれた小さな月は突っ込んで来た一体の動きを完全に静止させ、他の二体にも同じ様に弾丸を叩き付ける。先程とは違い、素早く相手に飛翔する弾丸を躱すことが出来なかったゴブリン達は驚愕した顔を見せるも、その無防備な体に欠月を振るう事でその命を削り着ることが出来た。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・ふう。よし、これなら戦闘中でも何とか使えそうです」
ピコピコと点滅するスキル覧を確認すると、月の弾丸は月の銃弾へとアップグレードされていた。
「月の銃弾。言い得て妙ですね」
素早く戦利品を取得し、次なる獲物を探して更に奥へと進んで行った。
「ふう。まぁ、こんなものですか」
ゴブリンを見つけては銃弾を浴びせ、欠月でとどめを刺す。それを繰り返していくうちにゴブリンの爪は二十本に近い数が集まっていた。
「さて、そろそろ町に──ッ!」
何者かの気配を感じ、思わず周囲を確認するもその姿を視界に捉える事は出来なかった。
気のせい・・・では無さそうですけど・・・。何かを仕掛けてくるわけではないので敵ではなさそうですね。
これ以上は考えても仕方がない。私は一応素早く町へと戻るべく足を進めた。
「今のを気付くんかいな・・・末恐ろしいでホンマに」
あの子、見たことの無い魔法を使っとったけど、固有魔法か何かか?これは攫うとかは無理そうやなぁ・・・。
木の影から、赤い髪の少女がその姿を表した。
まぁそれならそれでやりようはある。まずは相手に取り入る所から、やな。
そして再び少女は木々の影へと消えて行き、森には普段の静寂が訪れていた。
本日の後書きコーナーはお休みとさせて頂きます。
「また、ですか」
「なんだか後書きコーナーで言うことが思い浮かばないんだってさ」
「まぁ良いですけど。あんまりサボってると読んでくれてる人に怒られるんじゃないですか?」
「まぁ程々にって事ですね」
「そうですね。それではささらさん」
「はい!」
「「ばいばい!」」