欠陥人生 拳と刃 作:箱庭廻
解放されるというのは清々しい。
例えば一週間近く付けていた包帯がもういらないだとか。
指を動かしても痛くないだとか。
後は毎日の中華生活から解放されるとか(美味しいことは美味しいのだが、連続は無理だ)
万歳したくなるような開放感。
そして、俺は今日も部活に出ていた。
足で踏み込む、爪先で滑るように、或いは引っ掛けるように。
「っ!?」
振り下ろされる手刀、その手を廻すように振り抜いた手で払いのける――廻し受けと呼ばれる空手の技法。
そして、それと共に踏み込んだ足、爪先から踏み込んだ足の踵で床を叩いた。
震脚、衝撃を大地に流し込む。さらに払った手の上から己の手を添えて、握り締めて回避不可能にする。
とんっと俺の肩が、肘が、相手の体に接触。
その危険性に相手も気付くが、腕は掴んでいる、体重移動もやらせずに逃がさん。
「ふっ!」
呼吸法と共に勁を流し込んだ。
踵から足首に、足首から膝に、膝から腰に回った勁道の流れを沿って、練り上げた力をさらに捻りあげながら相手に叩き込む。
短い打撃音が、骨と肉と血を通じて体に痺れ込んでくる。
寸打、と呼ばれる技法。
距離にして三センチ程度で出せる発勁。
三ミリ程度で可能な分頸はまだ実戦では上手くいかず、ゼロ距離の零勁には成功したことの無い俺の短勁では最高レベルの密着距離打撃。
さらに螺旋を加えて、纏絲勁とする。
俺の得意の連携だった。
「ぐぅっ!」
打ち込んだ瞬間に掴んでおいた手を離し、相手が吹き飛ぶ。
トッタッタと数歩後ろに下がるように跳んで、腹を押さえて荒く息を吐き出していた。
勁は通った手ごたえはあったが、相手も心得たもので無理に耐えようとせずに後ろに跳んでダメージは軽減している。
「っう~、効くなぁ」
ケホケホと咳をして、呼吸を整えている相手――先輩部員が胸を押さえた。
「……大丈夫すか?」
「いや、大丈夫だ。しかし、勁ってのはやっぱりいやらしいなぁ。鍛えていても中身に痛みが来るし。外家の俺には分からん領域だ」
「まあ使っている力が違うだけですけどね。一々意識しないと勁の威力って激減しますし」
そういってぶらぶらと手を動かして、体の調子を確認する。
呼吸を整えて、動作に間違いが無かったかどうか頭の中で再確認。
……問題はねえよな。
勁道を開くのは大体五日ぶりぐらいになるが、力を流す感覚は、体の軋む感覚は、打ち込む手ごたえは記憶と合致する。
違和感は無い。絶好調なぐらいだ。
「前は結構いい線まで行ってたんだが、後輩のお前にここまでやられると自信なくなりそうだなぁ」
大学一年生の先輩は軽く笑う。
少林寺拳法一本のこの先輩とは以前までは十戦やって四勝六敗ぐらいが常だったのだが、ここまでは六勝ほどもぎ取っている。
身体能力や技術力が伸びたつもりはないが、俺は強くなっていた。
一皮剥けたということなのだろうか。
けれど、それでも……
「いやでも、古菲と比べるととてもじゃないんですが」
「……まあアレは例外だろうなぁ」
先輩と俺は共に視線をある方角に向けた。
其処には笑みを浮かべた古菲が年上だろう部員をガードの上から吹っ飛ばす姿があった。
相変わらずのデタラメな威力だが、最近は手加減を覚えたのか、吹っ飛ばされた部員も受身を取って、すぐに立ち上がると挑みかかる。
「行きます!」
「来いアル!!」
タンッと地面に踏み込むと、その部員はガクンと姿勢を低く落として――跳ねた。
体のバネを効かせての跳躍、距離にして三メートルはあるのにも一瞬で間合いを狭める。
箭疾歩(せんしっぽ)と呼ばれる中国武術の歩法、姿勢と頭の位置が移動することから知っているものならばそれの動きは予測出来る。
だけど、早い。
ほぼ数瞬で死角へと飛び込むように入り、流れるように踏み込んだ足を軸足に切り替えて、肘を打ち込む。
遠慮は無い、それが侮辱であり、なおかつそれでは太刀打ち出来ないことを彼は知っているのだろう。
流れるような動作、それに古菲の口元が僅かに歪んで。
「アル!」
奇妙な掛け声。
その肘に一瞬手の平を叩き付けたと思った瞬間、古菲の位置が入れ替わっていた。
部員が目を丸くした瞬間に、流れるような動作と共に古菲が背後に立っている。
捌いたのだ、それも違和感を感じさせないほどに滑らかに。
受け止めた肘を引き寄せるように下げた瞬間、古菲は軸足を僅かに曲げて、打ち込まれる方角――すなわち相手の内側とは逆の外側、相手の視界からすれば死角に回り込んだ。
背丈の小さい古菲だからこその技法。
相手としては打ち込んだ先には古菲はおらず、視界から消えたのも察知出来なかったに違いない。
「どこに!?」
「ここアル!」
声に気付いた振り向くよりも早く、古菲の足が部員の足を払っていた。
方向転換に使う軸足の流れに沿って、ポンッと軽く払っただけなのに、まるで爆風でも浴びたかのように浮き上がる。
そのまま床に叩きつけられる――と思えた瞬間、救いの手が入る。
袖が掴まれたのだ、古菲に。
おかげで頭を打たずに、バタンと両足だけが着地するように床を叩いた。
「いい踏み込みだったアルが、もっと相手を観察するといいアルヨ!」
コクコクと部員が頷くと、古菲は楽しそうに微笑んでその手を離した。
床にしりもちついて座り込んだ部員は立ち上がり、古菲に頭を下げるといそいそと他の部員との散打に入る。
その後も他の部員が挑みかかっては簡単にのされていった。
それらを見て、はぁっとため息。
「どう見ても勝てる気がしねぇなぁ」
「言わないで下さい。ウェイト差が馬鹿馬鹿しくなるでしょうけど」
「俺彼女相手に五分持った記憶ないんだよなぁ。二分ぐらいならなんとかいけるんだけど」
「攻めてですか?」
「何言ってるんだ、逃げオンリーに決まってるだろ! でも、ラインまで追い詰められてボコボコにされた記憶があるな」
「……悲しいですね」
「言うな。空しくなるから」
と、会話しながらダラダラと互いに手を交わし、足を交わし、散打をする。
先ほどの部員の真似をして箭疾歩からの長勁を叩き込んだが、分かりやすかったらしくあっさりと捌かれた。
左手で中段に叩き込んだ発勁の手を下受けされて、踏み込んでいた左足を軸足に、右足で蹴り上げる。
三合拳の一つ、下受蹴。
「ぐっ!?」
脇腹に打ち込まれる右足をこちらも左手で受け止めるが、手が痺れる。そして重い、ウェイトの乗った痛みが肉を打つ衝撃と共に伝わってくる。
さらに先輩は笑いながら踏み込み、顔を狙った打撃。
「っ!」
それをスウェーで避けるが、流れるようにもう片方の手が閃く。
その動きを見た瞬間、俺は手を手刀に変えて振り下ろしていた。
「お?」
「逆蹴地一ですね」
逆腰に叩き込むような打撃の一撃、上段の一撃で注意を引きつけて打ち込む連攻。
剛法連攻防の基本であり、足技から始まる連攻防の地王拳。
逆蹴地一、その守者の反撃の流れのままだった。
「ま、基本をやってみようと思ったんだが、通じんか」
「そりゃあ、ね」
と、そこまで告げて先輩は離れた。
「ふぅーちょっと疲れた。休憩するわ」
「え?」
「ちょっと休憩な、俺は休む。そろそろ部活終了時間だし、もういいべ」
ひらひらと手を振って、道場の隅にまで歩いていく先輩。
嗚呼、俺の貴重な練習相手が!
そう思って手を伸ばして、引き止めようとしたときだった。
「あと、後ろ見てみろ」
「え?」
後ろを見た。
……死体の山、否。屍共の山だった。
比喩表現としては間違っていない。
わらわらとのされた連中が山済みだった。
部活終了時間になると、もう時間もねえしとばかりに古菲に玉砕覚悟で挑む連中が大量に出てくるので珍しくも無い光景だった。
そして、その横でパンパンと手を払って笑っている古菲が、ギラリとこっちを見ましたよ?
「ナガトー! 勝負アルー!!」
そういって手をブンブン振ってくる古菲の顔は獲物を見つけた肉食獣か、或いは肉を前にした犬か。
まあ余り変わらない違いだった。
はぁっとため息を吐いて、俺は向かう。
「しょうがねえな」
まだ勝てる自信などない。
どうせぶっ飛ばされるだろう。
けれど、俺は諦めないで挑むのはやめない。
「やってやるよ」
俺は息を吸いながら、古菲の前に歩み寄った。
礼をして、構える。
そして、俺は楽しげに笑みを浮かべる古菲に息を吐き出しながら、挑んで――
結局、二分と経たずにぶっ飛ばされた。
目が覚める。
チャイムの音と共に。
「っ、いてて」
見開いた先が道場の天井だと理解すると同時に俺は起き上がろうとして、背中に走る小気味のいい痛みを覚えた。
少し背中を打ったようだ。受身を取ったはずだから大したことはないのだろうが、地上三メートルの位置からの激突は慣れたとはいえ痛いものがある。
背中を摩りながら起き上がると、既に部活の終了時間らしく全員がわらわらと着替えのために更衣室に向かったり、早い奴は学生服に着替え終えている。
古菲も既に着替えに行ったのか、姿は見当たらない。
「あー、俺も着替えねえと」
そう思いながら、他の放置されて気絶したままの連中を爪先で蹴って起こし、俺は更衣室に向かった。
所詮男の早着替えである、五分も掛からない。
一応準備してある打ち身用湿布を背中に張って、俺は制服も乱れたままに道場を出た。
と、道場の外に出たときだった。
なにやら部員たちと古菲が道場の外で群れていた。
ガヤガヤと喋りながら、他の部員が揃うのを待っている様だ。
「なんだ?」
今日は何か集会とかあったっけ?
俺が歩み寄り、知り合いの部員に話しかけた。
「なぁ、なんでお前ら残ってんだ?」
「あ? 長渡知らないのか、ってそういえば休んでたっけ? 来週から部長修学旅行なんだよ。それで一週間近くいないから、いない間頑張っているようにって飯奢ってくれるんだって」
「え? いや、古菲の財布大丈夫なのか?」
幾ら古菲が化け物じみた戦闘能力を持っているとは、その身分は年下の中学三年生である。
財布の中身も大したことがないはずだし、タカるには少々気まずい相手だ。
けれど、俺の声が聞こえたのか、古菲はこちらを見て笑うと。
「心配ないアルヨー! これがあるアル!」
そういってジゃーンと取り出したのは超包子の食事券。
しかも、ドリンク券も加えて扇のように持っている。部員たちの数と比べても余るぐらいだった。
「お、多いな!?」
「用心棒のお礼金アル。さすがに食べきれないから困っていたアル。せっかくなら一緒に食べたほうが美味しいアルネ」
伊達に用心棒はやっていなかったらしい。
超包子には連絡済みアル、と古菲が笑って告げると、部員たちが「さすが部長ー! 太くないけど太っ腹~!」「愛してるー!」「ただ飯―!」と正直な声を上げていた。
体育会系とは大体こんなもんだ。
俺は苦笑しながら、全員揃ったことを確認して移動し始める部員たちに混ざりながら移動を開始した。
超包子への道を部員同士のお喋りな声が響き渡り、二・三名ほど気が短いらしい連中は走り出してさっさかと超包子に向かっていった。席取りでもする気なのだろう、その様子に俺も苦笑いして、古菲も楽しそうに笑っていた。
そうして、二十人近くの部員が超包子に辿り付いた時には【歓迎 中国武術研究同好会様】という面白がったようなロボリがあった。
超包子の屋台の周りにはどこからか借りてきたのだろう、臨時用らしいパイプ椅子と長机の上にはシーツが引かれていたものが置かれて、屋台の中では調理人である四葉五月が忙しそうに鍋を振るっていた。
「いらっしゃいネ!」
そして、屋台の前にはオーナーである超 鈴音がいた。
あともう一人見覚えのある奴が忙しそうに皿などを並べていた。
「うぉ、凄いアルネ」
「そりゃあ育ち盛りが沢山くるナラ、これぐらい当然ヨ。じゃんじゃん食べるといいネ」
そう言って、超は古菲の差し出した食事券を受け取り、俺たちの人数を数えて、その枚数分だけ引き抜いて古菲に返す。
結構な人数なだけあって、残り十枚ぐらいになったようだが、古菲は大して気にした様子もなくそれをポケットに押し込んだ。
「じゃ、座るアルヨー」
古菲がそう告げると、全員がわっと散らばった。
そうして部員たちがそれぞれの席に座り、俺も席に座ったんだが……その席はある奴が必死に皿を並べているところだった。
「おい、短崎。お前なにやってんだ?」
ある奴とはすなわち俺のルームメイト。
つまり、短崎だった。
「……見て分からない? バイト中だよ!」
そして、その格好に問題が合った。
「お前、なんで割烹着なんだ?」
何故か短崎は割烹着と布巾を頭に付けていた。
その格好で屋台とテーブルの間を忙しなく往復している姿はバイト中の学生というよりも給食のおばちゃんみたいだ。
「いやー、エプロンの予備がなくてね。泣く泣くオーナーが用意したこの格好で、バイトしてるんだよ」
と、短崎は皿を並べながら告げるが。
「お前……恥ずかしくないのか?」
「気にしたら負けだよ。うん。だから、気にしないで。動きには支障ないから」
そういってスタタタと移動しまくる短崎の姿は正直不気味だった。
重心にズレがないことがその高速運びの秘密らしく、安定感のある動きで食器を運んでいく。
超の奴も手伝って、ほどなく食器が並べ終わる。
ほかほかとした肉まんを契機に、野菜たっぷりのスープやら、上手そうなチンジャロースやら家庭にありそうだけど、豪華だと思えるメニューが揃っている。
美味そうだった。
連日夕食にここには通っているが、目にしたら涎が口の中に溜まるのもしょうがないだろう。
「じゃ、食べるアル!」
『おおー! ゴチになります!』
古菲が号令を上げて、部員たちが一斉に手を合わせていただきます。
そして、バクバクと食事が開始されて、俺も食べ始める。
にぎやかな部活の宴会の始まりだった。
楽しいときは瞬く間に過ぎる。
一時間ぐらいだろうか、大体の皿が空になったころには皆が満足そうに腹に手を当てて、うめーなどと思い思いの感想を告げていた。
そんな部員たちの様子に超は笑っていて、屋台の中の四葉もどことなく嬉しそうに微笑んでいたのが見えた。
やはり料理が褒められるのは嬉しいのだろう。
短崎はその間にも空になった皿を片付けて、テキパキと洗い場に運んでいっている。
サービスだといわれて、出されたどことなく甘い漢方茶を全員で啜っていると、不意に古菲が声を上げた。
「あ、そうアル!」
ポンッと、古菲が手の平を叩いた。
それに皆が古菲に目を向ける。
全員の視線が集まったのを確認すると、古菲はカバンを開けて、用意しておいたらしいメモ帳を取り出した。
「来週から京都に修学旅行にいくアル。なんかお土産で買ってきて欲しい人いるアルか?」
部長としての責任感か、それともお人よしなのか、古菲がそう告げると皆は顔を見合わせて、悩むように会話を始めた。
「え? ああ、部長の修学旅行、京都なんですね」
「京都か~。生八つ橋食いたいなぁ」
「八つ橋は必須だなぁ。よし、食いたい奴手を上げろー」
先輩の部員が音頭を取るように告げると、わっと大勢が手を上げた。
八橋の魅力は高かったらしい。正直なことだった。
古菲が八つ橋とメモ帳に書き込む。忘れないようにメモ帳を用意していたのかと俺は今更気が付いて。
俺は音頭を取った先輩に声を掛けた。
「じゃ、俺こっち数えるんで」
「じゃあ、俺はこっちで」
手を上げた奴の数を俺は右側を数える。
先輩が数えた奴と合わせて、22名だった。そんなに八つ橋食いたいか、お前ら。
「22アル……ネ」
と、古菲がメモ帳で書き込んでいるのを見て、俺はそれにちょっと手を伸ばした。
「古菲、ちょっと貸せ」
「?」
「それだけだと忘れるだろ。あ、先輩。八つ橋って十個入りが基本でしたっけ? あと値段は」
「確か520円ぐらいだったかな? 一応消費税も考えて550円ぐらいで見ておいたほうがいいな」
「了解」
550×22= 12100円と書き込んでおく。
「さすがにこの数だと高いな。まあなんとかなるか? 宅配料金も考えて、と。おーい、誰か封筒持ってね?」
「あ、俺持ってるわ」
と、鞄から無地の封筒を持ってきた奴から一つ貰い、八つ橋代と書いておく。
数と値段も忘れずに記入して、俺は古菲に一言断った。
「じゃ、カンパさせるけどいいな?」
「カンパアルか?」
少し呆れた。
こいつ全部自腹で払う気だったのだろうか。
さすがに中学生に全て払わせるわけにはいかない。中学生だけで少人数ならともかく、高校も大学の先輩もいるのだ。
部長といえど子供に払わせるようでは心が痛むだろう。
「さすがにポケットマネーじゃ高すぎるだろ。金は出すから、買ってきてくれるだけでいい。てわけで、オラぁ! 550円ずつお前ら出せ、あと部長が可愛い奴は宅配料金も考えて100円多く出すように」
『らじゃー!』
わらわらと八つ橋希望の連中が集まり、財布から取り出した硬貨を入れていく。
何度か両替などで手間取ったが、見る見るうちに封筒が硬貨で一杯になり、重たくなった。
さすがに一万二千と百円である。数が半端ない。
これって、買う時店員が迷惑にならないか?
「……超、スマンが」
「はいはい、分かってるネ。カケル」
超の奴が苦笑して、短崎に呼びかけるとレジから一万二千円を取り出した短崎が俺に札を渡し、俺はしっかりと数えた硬貨を短崎に渡す。
「ひ、ふ、み。しっかりありますね」
「さすがに詐欺らねえよ」
「了解。しばらく両替には困りそうにないや」
と、短崎は呟いて、レジにお金を戻しに入った。
俺は札を封筒に入れて、さらにじゃらじゃらと百円+善意の宅配代の入ったそれを古菲に渡す。
「じゃ、これでいいよな」
「助かったアル、ナガト」
「まあ手間でもねえしな。ああ、あとうっかり忘れたりしないようにな、気をつけろよ?」
「だ……大丈夫アルヨ!」
その間はなんだ。その間は。
はぁっと少し息を吐いて、超を見た。
そういえばこいつ、古菲と同じクラスだったよな?
「超、悪いが」
「ハイハイ、ネ」
ひらひらと手を振って、了解のポーズを取る超。
それに古菲は少しだけ怒ったように頬を膨らませると。
「超も酷いアル!」
「悲しいけど、古はバカイエローネ。不安は隠せないヨ」
と、肩を竦めて、ふっと笑った。
それに古菲は怒ったように手を振り上げると、超は「甘いネ! 逃げ足だけなら天下一品ヨ!!」 と逃げ出す。
「待つアルー!!」
それを追って、古菲は走り出した。
グルグルと屋台の周りを回りだす二人を見て、部員たちが、四葉が、短崎が笑って。
「やれやれ」
と、俺も肩を竦めて……少しだけ笑った。