欠陥人生 拳と刃   作:箱庭廻

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五十八話:言葉を交わすばかりで

 

 

 

 

 言葉を交わすばかりで。

 

 

 

 

 

 看護婦の仮装か、それともなんかの催し用の衣装か。

 いずれにしても外人には間違いないブロンドヘアの少女が、ネギ先生に話しかけている。

 

「皆がパトロールしている時に、女生徒とデートとは結構な身分ですね。最終日ではないとはいえ、本来なら確率は60~80%あるんですよ。少し軽率過ぎます」

 

 険相な表情。腕を組み、叱りつけるような態度。

 知り合い、だろうか?

 僕は様子が分からずに足を止める。

 背後を見れば桜咲が慌てていて、他の三人が首を捻っている。

 アドバイスを求めるのは無理そうだ、と人ごみに紛れながら様子を見ていたのだが。

 

「違います! 僕たちは、別にデートというわけじゃ……!」

 

「いずれにせよ、ここは危険区域です。少し離れるか、場所を変えて下さい」

 

 危険区域?

 その言葉に思い出す、三森から貰ったガイドマップに書かれていたマーク。

 そういえばここらへんも含まれていたなと考えた。

 そんなことを考えていたら。

 

「あ。この人数値が危険域です! 告白の危険性があります!」

 

 赤髪の少女が、宮崎という少女に何か携帯のようなものを突き出して、声を荒げた。

 あ、なんかトラブルの予感。

 

「え?」

 

「ちょ、ちょっとまってください! いきなり言い出されても、失礼です!」

 

「っ、先生危険です。その人からすぐ離れてください!」

 

 何も分からない顔の宮崎さんに、事態を飲み込みつつも少し戸惑い気味のネギ先生。

 

「とにかく、ちょっと貴方離れて――」

 

 そういって金髪の少女が、宮崎さんの肩を掴み。

 

 

「あー、ちょっといいかなっ」

 

 

『!?』

 

 大股で歩み寄って、右手を上げて話しかけた。

 のだが、何故か殆ど全員がこちらに眼を向けている。

 別に普通に話しかけただけなんだけど……まあいい。

 

「何の御用でしょうか? 生憎こちらは少し今込み合っています、ナンパや道案内の類は後にしてください」

 

「そうですよー。ちょっと今忙しいんですが」

 

「いや、別にそういうわけじゃないんだけど」

 

 看護服の少女と箒の少女の言葉に、僕はさてどう説明したものかと一瞬考えて。

 

「た、短崎さん!?」

 

「あ、あの……ネギ先生 もしかして、この人……」

 

「知り合いなんですか?」

 

 誰ですか? といわんばかりの視線をネギ先生に送るブロンドヘアの少女。

 

「僕は短崎翔。国大付属高校の二年だけど、そちらは?」

 

 自己紹介を兼ねて、会話のペースを取り戻す。

 少しだけ苛立った態度で、だけど咳払いをすると。

 

「高音・D・グッドマン。ウルスラの二年です」

 

「佐倉愛衣です。女子中の二年です」

 

 片方は同い年か。

 宮崎さんやネギ先生が、成り行きに様子を見ている。

 下手に口出されるよりはずっといい。

 

「ウルスラねぇ。学年と学校から見て、ネギ先生とはあまり接点なさそうだけどどういう知り合い?」

 

「え、えっと……」

 

 佐倉と名乗った少女が戸惑う。

 突然の質問に、予測してなかったという感じ。

 だけど、グッドマンさんは落ち着いた様子で。

 

「個人的な交友です。知り合った経緯は貴方に説明する理由がありますか?」

 

 静かに告げた。

 こちらの眼を見ながら言う、上手い言い訳。

 そう言われると普通は追求出来ないんだけど。

 

「パトロールとか告白阻止ってことは"世界樹関係でしょ"」

 

 ある程度の事情と想像は付いているからこう言える。

 

『っ!?』

 

 佐倉さんとグッドマンさんとネギ先生の顔色が変わった。

 

「魔法生徒、ですか?」

 

「でもお姉さま、私も知らない顔です。名前も聞いたことがありません」

 

 顔を突き合わせて相談する二人。

 多少はペースを崩せたかな。

 

「え、あの。短崎さんは魔法生徒じゃ――」

 

 と思った時、ネギ先生が間違いを訂正しようとしたので。

 僕は右手を上げて、制止する。

 

「まあ詳しいことは三森に聞いてくれる?」

 

「三森? 彼、ですか?」

 

 知っている、という程度の反応でグッドマンさんが顔を上げる。

 まあ面倒は彼に押し付けて、用件だけ通そう。

 

「まあそこらへんはいいんだよ。僕が言いたいのは、あまり力技を使うなってこと」

 

「え?」

 

「いきなり告白しそうだから離れろ、そんな警告されても難しいよ。常識的に考えて。それに、えーと宮崎さんだっけ?」

 

「あっ、はい」

 

 ビクリと肩を震わせて、小柄な少女が返事を返す。

 ……年上だからかねぇ。怯えられるのは少し意外だったけど。

 

「ちょっとここ危ないから」

 

「危ない、ですか?」

 

 宮崎さんが戸惑っている、まあ知らないっぽいな。

 軽く周りを見渡す。

 後ろの四人組(+くっ付いているオコジョ)以外にはこちらにジロジロと眼を向けている人はいないし、小声で喋っても聞こえるほどの至近距離には誰もいない。

 

「ここらへんで、恋愛関係の告白すると、ネギ先生の立場が危なくなるからやめたほうがいいよ」

 

 さすがに三森に言われたとおりおかしくなると伝えるわけにはいかないので、そう言い換えた。

 

「危なく? え、ええ!?」

 

「た、短崎さん!?」

 

 二人組の少女は息を飲み、ネギ先生と生徒の二人組が慌てている。

 だけど、まあしっかり伝えておこう。

 

「どうせネギ先生も配置かなんかの連絡来てるでしょ? 来てなかったら、そこのグッドマンさんなり、三森なりに聞いて、影響の無い場所でデートの続きしてくれる?」

 

「え、で、でも。のどかさんが告白なんて、し、しないですよ!」

 

「わ、わわわたしもしませんっ!」

 

「……説得力がないんだけど」

 

 バタバタと慌てる二人。

 初々しいといえば初々しいんだけど、危ないからね。

 

「何が判定に引っかかるか分からないし、普通のお喋りでももしかしたら引っかかるかもしれないよ? そこらへんビクビクしながら付き合っていても楽しくないと思う」

 

 警戒した目つきでこちらを睨むグッドマンさんと佐倉さん。

 それを無視して、年下の少年少女に忠告した。

 

「だから、楽しんでると思う宮崎さんには悪いんだけど。本だけ買って、ネギ先生の言うとおりの場所に移ってくれるかな?」

 

 出来るだけ怖がらせないように笑顔を浮かべて、穏やかそうに聞こえる声で宮崎さんに伝えた。

 

「あ、は、ひゃいっ! ぅぅー」

 

『……』

 

 ――噛んだ。全員が少しだけ沈黙した。

 けど、見て見ないふりをして、お願いねと付け加える。

 真っ赤になって口を押さえながら、こくこくと頷く彼女。見たところいい子そうだし、分かってくれてはいるみたいだ。

 

「ネギ先生も気をつけて。うっかり間違えた、なんて言っても手遅れになったら意味が無いから」

 

「は、はいっ」

 

 強めに睨みつけて、しっかりと告げておく。

 

「じゃ、行っていいよ」

 

「え? えーと」

 

「ほら」

 

 僕は手を振って、ネギ先生を送り出した。

 さっさと行けと指示をする、ネギ先生と宮崎さんが歩き出す。

 

「こら、待ちなさい!」

 

「待ってください!」

 

 慌てる二人の女学生に、僕は眼を向けて。

 

「えーと、まだ何かあるのかな?」

 

 眼を細める。

 少しだけ口調を強くする。

 

「いきなり出てきて、話を途中で終わらせないでください! 大体貴方は何なんですか」

 

「ただの通りすがりの知り合いだよ、ネギ先生のね」

 

 本当に知り合い程度なのだが。

 僕は顎を掻き、少しだけ声を強めた。

 

「少し言っていいかな?」

 

「……なんですか?」

 

「説教とかなら後でやってくれるかな?」

 

「は?」

 

 考えながら僕は言う。

 なんでこんなこと、と冷静な部分が囁くけれど、見ていられないという感情部分もある。

 

「多分、ネギ先生に説教とか注意するつもりだったんだろうけど。それは後でやっておいて欲しいんだ」

 

「何故ですか?」

 

 僕の意図が分かったのか、グッドマンさんが眉間に皺を寄せた。

 ここまでの話し方や言葉の内容から直情的になりやすいけど、真面目な人なんだろうなと推測。

 佐倉さんがおろおろしているけど、僕はグッドマンさんに目を向けて。

 

「ネギ先生は一応教師だよ? 生徒の前で、説教とかされたら面目とか不味いでしょ」

 

「ですが、彼は子供ですよ。子供だからって甘くしておけば、ミスをするに違いません。だからこそ」

 

「それでも一応教師だ。子供だからって甘くしちゃいけないってのはまあ僕も同意だけど、それにもう少しやり方を考えてくれよ」

 

 噛み合わない主張。

 少しだけ苛立つ、けど、怒ってはいては駄目だと自分に言い聞かせる。

 自分は当事者じゃないし、ある程度弁えるべきだと自覚する。

 けど、それでも言わないといけないことがあるから口を挟んだ。

 

「楽しくデート……デートっていうのもなんだな、買い物とかしている最中にいきなり怒られて、しかも告白しそう? そんな理由で腕ずくで引き剥がしてどうするんだよ」

 

 最後の部分だけ怒りを篭めた。

 楽しみに、楽しさに、茶々を入れたりするのは正直気にいらない。

 必要かもしれないけど。

 危なかったかもしれないけど。

 

「やりかたぐらい考えてくれ。ネギ先生はあの年にしては聡明だし、宮崎さんはまあ大人しそうだから、ネギ先生の指示には従うでしょう? せめて温和に忠告して、場所を変えさせればよかったじゃないか」

 

「それが出来るならしていました!」

 

 こちらの主張に、憤然とグッドマンさんが髪を揺らして吼えた。

 

「ですが、私たちは未然の事故を防ぐのが仕事です。告白しそうな人間がいれば、速やかに止めるのが役目です!」

 

「そうです! それが私たちの役目ですし、そんなことをしていて告白されたらどうするんですか!?」

 

「だからって、過剰な反応したら火に油注ぐようなものじゃないか。あんなやりかたをしたら反発して当然だよ」

 

 言葉を重ねるが、終わらない。

 互いの言葉は分かるのに、妥協点が見えない。

 男と女の差異か。男は夢想家のロマンチスト、女は現実主義のレアリスト。

 僕の考えは甘いのだろうか?

 

「常識的に考えなよ。注意されて、その後すぐに告白したりなんかする人間がいると思う? 馬鹿じゃなければ、普通はしないよ。しかも、こんな浪漫のないところで」

 

 こんな古本市で、しかも人だらけの場所で、あの気弱そうな少女がするだろうか?

 女性の心はわからないから万が一するかもしれないけれど、それでも。

 多少注意とかされたら、普通はしない。最低でも場所を変えるまでは、絶対にしないと思う。

 だから。

 

「それに詳しいことは知らないけど、ネギ先生はなんか悪いことでもしていたの? パトロールとか言っていたけど、サボってたとか?」

 

 一応確認するために質問する。

 それだったら事態は違うし、こっちが悪いことになるのだが。

 

「……風紀を乱していましたわ。パトロールは他の人のスケジュールまでは知りませんが、多分担当時間ではない――と思います」

 

「それなら軽い小言だけでいいじゃないか」

 

 グッドマンさんの言葉とかで、まあ大体事態が読めた。

 まずネギ先生と宮崎さんがデート? をしていた。

 そんで、ネギ先生を押し倒すように宮崎さんがこけた、まあそういう事故が起きた。

 それでグッドマンさんと佐倉さんがパトロールしていて、見かねて注意した。

 注意していた時に、宮崎さんが告白しそう。多分あの携帯みたいな機械で判断していて分かり。

 慌てて離れさせようとして、手を出してしまった。

 というところか。

 

「まあ働いている最中に、遊んでいる姿を見たらムカつく気持ちは分かるけどさ」

 

 正直私怨だろう、それ。

 少し脱力しつつ。

 

「いるのはネギ先生だけじゃないんだから、場所とタイミングは変えたほうがいいだろうし、後でしっかりと言いつけたほうが賢明だったと思うよ」

 

 ゆっくりと噛み砕くように告げた。

 多分使命感か正義感が空回りしただけだ。

 同年代の高校生なら、よほど性格が捻じ曲がっていない限りきっと分かる道理。

 

「む」

 

 グッドマンさんがさすがに冷静になってきたのか、少し表情を変えた。

 

「怒っては駄目だとはさすがに言わないから」

 

 宥めるように僕はそう言った。

 まあここらへんで手打ちにしないか、という提案。

 それにグッドマンさんが少し悩むように眉間に皺を寄せて、唇を突き出すと。

 

「ん~……そうです、わね」

 

 かなり不満そうにしつつも、グッドマンさんが首を上下に揺らした。

 

「悔しいですけど、そちらの言うとおりですわ」

 

 はぁーとため息を吐いて、彼女が非を認めた。

 

「えーとお姉さま? どういうことなんでしょうか?」

 

「私たちがやりすぎたってこと。まあ私たちが間違っていたわけではないけれど、少し過剰でしたわ」

 

 失敗ですわね、と肩を落とすグッドマンさん。

 佐倉さんが、頑張ってお姉さま! と励ますが、んー。なんだろうね、この二人。

 苗字と外見からして姉妹じゃなそうだし、ミッション系によくありがちな義姉妹だろうか?

 マリア様が覗いてる、みたいな。

 ……なんか違うかな?

 

「まあこっちも関係ないのに口出ししたしね、お詫びといってはなんだけど軽く屋台の食事とか、缶ジュースぐらいなら奢るよ?」

 

 正直対立関係のままだと後味が悪いので、和睦の提案をしてみる。

 それぐらいなら懐も痛くないし。

 

「ご好意は嬉しいですが、いいですわ」

 

「あ、大丈夫ですから」

 

 けれど、二人は首を横に振って断った。

 残念。

 

「まだ仕事がありますので」

 

「のでー」

 

 そういって踵を返し。

 

「ですが、いずれ縁があれば借りを返しますわ」

 

 その言葉には少しだけ怒気が混ざっているような気がした。

 やっぱりまだ怒ってるなぁ。当たり前だけど。

 

「いや、いらないんだけど」

 

 嫌な予感しかしません。

 

「では」

 

 黄金色の髪を優雅に流し、グッドマンさんと、そのお付きの佐倉さんも人ごみの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ろ姿が完全に消えたのを確認し、僕はふぅーと息を吐き出して。

 

「大丈夫ですか、先輩?」

 

「うぉ!?」

 

 背後から掛けられた声に、変な声を上げてしまった。

 気を抜いた瞬間だったから、思わずビクリとする。

 

「す、すいません!」

 

「後ろからは不味かったやね」

 

「あ、桜咲? と近衛さん?」

 

 後ろを振り返ると、そこに居たのは桜咲と近衛さん。

 他の二人はどこに?

 

「アスナさんと早乙女さんなら、ネギ先生たちのほうに行きましたよ」

 

 僕の視線に気付いたのか、桜咲がそう解説してくれた。

 二人はここにいるのは、一応僕を心配してくれてのことらしい。

 嬉しいね。

 

「しかし、少し意外でした」

 

「意外?」

 

 僕の問いかけに、桜咲が言いにくそうに言った。

 

「あ、はい。あの、短崎先輩は……ネギ先生のことを嫌っていると思ったのですが」

 

「え? そうやったの?」

 

 近衛さんが意外そうに首を傾げていて、僕は苦笑する。

 桜咲はまあ僕の態度をずっと見ていたから、そう思っていてもしょうがない。

 事実だし、友人というほどネギ先生とは仲がいいわけじゃない。

 だけど。

 

「んー、嫌いっていうか。まああまり関わりたくなかった、"かな"?」

 

「かな?」

 

「まあ知らない顔でもないし、困っていたら口ぐらいは貸すよ」

 

 それぐらいなら安いものである。

 

「そこまで薄情ではないつもりだから」

 

 と、言葉を終わらせた。

 あまり訊ねられても、理由なんてそこまで明確じゃない。

 思わず口を挟んだのが実情だった。

 

「はぁー、そうなんや」

 

「ま、そんなところだね。って、こんな時間か」

 

 もう時間は五時を過ぎようとしている。

 寮に戻る時間はなさそうだ。

 作務衣姿でいくしかない、かな?

 

「ち、着替える暇は無いか。桜咲」

 

「え? なんですか?」

 

 声をかけると、彼女が首を傾げる。

 

「どうする? もう時間だけど、どうせなら一緒に行く?」

 

 肩に背負った竹刀袋を叩くと、あっという顔を桜咲が浮かべた。

 

「あ、もうそんな時間ですか!?」

 

「せっちゃん、もしかして忘れてたん?」

 

「い、いえ、そういうわけじゃ」

 

「どう見てもうっかり忘れてました。本当にありがとうゴザイマスー」

 

「ゴザイマスー」

 

「た、短崎先輩! からかわないでください!」

 

 棒読み口調で伝えると、桜咲が真っ赤になって手を振り上げて、近衛さんとポカポカ叩いている。

 年下の子供だと実感するほのぼの。

 僕は笑って。

 

「で、どうする?」

 

「あ、えーと……すみません。ちょっと先に行っておいて貰えますか? 一応アスナさんたちも心配なので」

 

「えー、せっちゃん。一緒に行けばええのにー」

 

 ペコリと頭を下げる桜咲に、近衛さんがなんか含んだ声で言うが。

 

「ん、まあそれでもいいよ。先に事前受付は済ませてるしね、遅れなければいいんじゃない?」

 

 僕は竹刀袋を背負い直すと、出来るだけ和やかに聞こえるように。

 

「じゃ、また」

 

「あ、はい! それでは、また!」

 

 別れを告げて、立ち去る。

 

 

 と思ったのだが。

 

 

「あ~。そうやっ!」

 

 背後から聞こえた近衛さんの言葉に足を止めて。

 

「ん?」

 

「短崎先輩、今日占いの館来なかったやろ?」

 

「あ」

 

 少しだけ怒った顔つきの年下少女の言葉に、動きを止めた。

 あ、まずい。

 

「……ごめん。忘れてた」

 

 頭からすっぽ抜けてました。

 プンプンと怒った表情と頬を見せる近衛さんに、ごめんなさいと即座に謝る。

 

「まったくもう、来なかったからハンカチ忘れてもうたわ」

 

「あーじゃあ、また今度でいいよ」

 

 妥当な提案のつもりだったんだが、近衛さんは首を横に振ると。

 ビッと指を掲げて。

 

「折角なら占いもしたかったし、明日! 明日午後二時からの予定開けておいてくれへんか?」

 

「二時? 桜咲、本戦まで言ったら午前中に終わるっけ?」

 

「本戦は確か明日の午前8時からですから、多分……終わるかと」

 

 自信なさげに呟くが、四時間もあれば終わるかな?

 予定をざっと考えるが、明日はライブ見に行くぐらいで大体空いているし。

 問題は無いか。

 

「うん。多分大丈夫」

 

「よし、それなら明日二時。図書館島に来てくれなー、図書館探検部の探検大会があるんや」

 

 そこで会いに来てなぁ。

 と付け加えられる。

 

「え? んー、まあいいか」

 

 どうせ空いているし、問題はないかな。

 僕は頷いて。

 

「出来るだけ行けるようにするよ」

 

「絶対来てな!」

 

 近衛さんの訂正文。

 僕は右手を上げて、降参するしかない。

 

「分かった。絶対に行くから」

 

 そういって僕は頷いた。

 約束をして――

 

「せっちゃんもセットでなー」

 

「エエッ!?」

 

「何故に!?」

 

 さらりと追加条件を加えた近衛さんに、ダブルでツッコこんだ。

 

 

 

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