異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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正月前に投稿してからかなり空いたな…。
あまり遅く投稿していては内容を忘れられてしまう、だが2月は大変。

今回も場面が目まぐるしく変わるのはご容赦を。

……眠い。


対面

「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

柄にもなく叫ぶサク。

周りには機体の屍が積み重なっている。

初めて見た時こそ、攻撃が通らないこともあったがすでに慣れた。

首のわずかな隙間や、関節部分を狙えば比較的容易に有効打を与えられる。

 

それを考えられるほど、頭の中はいたって正常だった。

叫んではいるが、頭に血が上って何も考えられないわけではない。

ただ、怒っていないわけではない。

自分の主が命の危険に陥っているのだ。

 

冷たい関係なんかではない、サクにとって最高の主が命を落とすなどあってはならない。

 

「はぁぁ!」

 

声を出す。

なんて無駄な行為だろうと思っていた。

だが、今は分かる。

出てしまうのだ。

押しとどめようという気にもならない。

 

「?」

 

そんな中でも警戒は怠っていなかった。

最も、周りは敵だらけなのだから当たり前だろうが。

機体ではない違う何かの気配を感じ取る。

野生の感がまだ残っているのだろうか。

 

「貴方ならリョウ殿の居場所をご存知でしょうか?」

「……それだけ探るのがうまいなら自分で探せば?」

 

機体の群れの中から人が姿を現す。

 

その姿と臭いに思わず顔をしかめるサク。

もともと鼻が人より多少効く故、相手の香水の強さに気分が悪くなる。

顔は濃い化粧をしているのが一目瞭然。

正直言って近くにいるだけで不快だ。

まだオイルの臭いのほうがサク的にはマシである。

 

「私はここの構造をよくは知りません。そんな中で当てもなく探すのは愚の骨頂です」

「使い魔なのにしっかりしてるのね。でも私、イース・Y・イールの前じゃ無力」

 

…うざい。

何だろう、サクはどうもこいつが気に入らなかった。

容姿はもちろんのことだが性格も嫌なのかもしれない。

 

「ネーム持ちが自分の記号を言うのは礼儀だそうですが…その態度は何でしょう?」

「礼儀?違うわよ、ネームを明かすの目的は単に力の誇示したいだけよ」

「…合点がいきました。それでさっきから上から目線の態度をとっている―――」

 

自分のセリフの間であるにもかかわらずイースの目の前まで移動する。

早さ自慢である以上、不意を衝ければ相手が反応するのはほぼ不可能。

 

甘く見くびっていたのか相手の反応はサクと離している間と何ら変わらず思考が追い付いていなかった。

それでも気づくまで待つなんていうことをサクはしない。

一瞬で首を掻っ切る。

 

「!?」

 

気づいた時には時すでに遅し。

鮮血が噴出した瞬間、サクが後退する。

 

「私はリョウ殿の使い魔。卑怯だとしても主を守ることが私の―――」

「フフ…フフフ。所詮は使い魔」

「!?」

 

首を切り裂いたはずなのにはっきりとした声が聞こえる。

そしてイースもさっきまで苦しそうに抑えていた首から手を離し、手についた血を払っている。

首には出血した後のように血がこびりついている。

 

「貴方の攻撃は私には通らない。だからさっさと死になさい!」

 

正直通ってほしくないと一瞬思ったサク。

攻撃をするからには近づかなければならない。

一回近づくだけでもかなり不快だったのにと舌を打つ。

 

無数の機体とネームがいる。

圧倒的に不利なのは百も承知。

それでも……………

 

「待っていてください、リョウ殿」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「…………」

「フラット…」

 

フラットは彼を目の前にしても黙ったままだった。

ブレーベはどう声をかけていいかわからず、名前を呼ぶにとどまる。

 

「…………リョウ・アマミヤはどこ?」

「第一声がそれか」

 

呆れているわけではない。

むしろブレーベは苦笑していた。

 

「貴方なら場所を知っているでしょ?」

「そうだな、案内するのは造作もないことだ。でも…」

 

腰に引き下げていた刀を抜く。

ただ、構えはしない。

刃先は床に向かって伸びた状態で手に握られる。

 

「すまない。まだ、ダメなんだ」

「まだ?」

「そう、『まだ』だ」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「…おお、こわいこわい」

 

少し離れた位置からマグタランは呟く。

目線の先には、手が付けられた状態ではないクレアが相手を壁に叩きつけている。

最も、すでにそれは死んでいるのだが。

 

「………………………」

 

壁に血が広がっている。

叩きつけている相手は人間なのだ。

 

一人でやりあうのを覚悟していたのだが、別々の転移装置を使ったにもかかわらず同じ場所に出たクレアとマグタラン。

敵は…名前すらよく覚えていない。

セリフの途中でクレアが頭を握りつぶしてしまった。

自信はあったように見えたからネーム持ちだったのだろうがそれすら聞けていない。

 

今では胸の2つの隆起のおかげで女性だということが判断できるだけ。

 

機嫌が悪い原因はもちろんあの、ナタリーとかいう女だ。

リリアに本格的に手を出そうとしている以上、潰したいのだろう。

 

「クレア…そいつ、もう死んでるぞ?」

「……そうですね」

 

恐る恐る声をかけたが思ったより素直に聞いてくれた。

ヌチャっと嫌な音をたてながら地面に落ちる。

 

「そんなに気分が悪いなら加勢すればよかっただろう?」

「これでも社会人です。一般常識はわきまえているつもりですので、上司の命令には逆らえません」

「変なところで素直な奴だなぁ」

「ですから、八つ当たりをしているのです」

「その怒りは親玉に会うまで取っておいてくれ…」

 

一瞬、本当に今のこいつなら誰も勝てないのではないかと錯覚してしまったマグタラン。

 

「ですが道順がわかりませんね」

「まぁ、それはな」

 

マグタランが少しの間とはいえ、傍観してた理由。

怖かったの他に、道に迷ったというのがある。

転移装置というのは便利になるものではあるが行き先が分からなければ逆に困る。

どこに進んだら正解なのか不明だからだ。

それらしいものに2、3回足を踏み入れたが逆戻りしただけ。

これではまるで閉じ込められてしまったようだ。

 

敵の数が少なかったのが不幸中の幸いだろうか。

 

「侵入者迎撃用か、ただ俺たちが方向音痴なだけか…。どちらにしても急がなくちゃいけないのにな」

「この壁さえなんとかできれば話が変わってくるのですが…」

 

一見何の変哲もない壁を軽くたたくクレア。

相変わらずそれにはFの力が加わっている。

これほどまで広範囲に魔法を使って消耗はひどいはず、なのにさっきはそのそぶりは見せなかった。

 

「Pの時といい、何か細工がしてあるのかもな」

「ネーム持ちの数も気になります。20近くはいると聞いていたのですが」

「外に全員出て行ったとは考えにくいしなぁ……、だめだわからん」

 

諦めて思考を停止させる。

今は悩むより体を動かすべきだろう。

 

「とりあえず移動だ。次見つけた敵は生け捕りにして道案内をさせる、それでいいな?」

「分かりました」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「待っていたぞ、グネズト」

「…………」

 

グネズトの目の前にカザキ。

予想外の対面に少し混乱したが状況をすぐに飲み込む。

 

「…お前がいじっていたのか?」

「転移装置の移動先は俺の意思で好きなところに変更できるからな。予想くらいできたろ?」

 

浅はかだったと後悔する。

彼の意思で移動できるということはリョウの居場所にたどりつくことはないということではないか。

 

「どうだ、古巣に戻ってきた感想は?」

「黙れ。すぐに終わらせてやる」

「これは驚いた。リョウの代わりがお前に務まるのか?」

「……」

「無理だろうな、お前はドールを持っているわけでもないし」

 

広い空間にカザキの声が響く。

 

「それに彼女さんもいるだろ?」

「何?」

「大したもんだよ。それだけ長い年月生きているとやることはやっても相手を作るなんて発想は消え始めるんだけどな」

「話が見えないぞ」

「いやなに、たとえどんなに強固な城壁を持つ城でも内側から攻撃されればつらいだろうなと思ってな」

「そんな危険のある経路なんて―――」

「なら見てみるか?」

 

おもむろにカザキが宙に画面を開く。

鮮明に画面を移すそれはだれかの視点だった。

 

「お前たちは構成を知らないだろ、瞬間移動魔法の」

 

映し出されていたのは自分の部屋。

―――の面影が残る残骸。

 

「Pの進入時の洗浄はしっかりしたはずだが」

「焦らないな、流石だ。だが違う、もっと前から忍ばせてもらってたよ」

「もっと…?」

 

思い当たる節がなく黙るグネズト。

画面は依然、辺りの状況を映していた。

だが目の前に来た軍の人間を移すとそれを最後に画面が暗くなる。

 

「分からないか?まぁ、もしかしたらお前には話してないかもしれないからな。だが、それより分かるか?今、お前らの拠点は攻撃を受けている」

「お前らもだ」

「勘弁してくれ、頭数もそろえられてないくせに攻撃なんて冗談は」

 

何も言い返せない。

確かに襲撃するというには数が足りな過ぎた。

それに今自分たちはバラバラに行動している。

単身で動いているといっても過言ではないだろう。

 

「裏の部隊?とやらはよほど追い詰められなければ出てこないだろう。そのころにはこちらの準備も整っている」

「…つまりまだ完ぺきではないんだな?」

「……失言だったか」

 

何を準備しているのかは分からないがグネズトがやることは変わらない。

彼はカザキを殺すために来たのだ。

 

「いいのか、彼女が心配ではないのか?」

「あいつはそんな簡単なことでは死なない。それに彼女もお前のいう裏の部隊だ、あいつ自信が戦闘向きではなくても周りがいる」

「そうか…なら頼むぞ、少しの間な」

「俺も少しの間であることを願おう」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ガッチャガッチャと音が聞こえる。

金属がぶつかり合う音。

リョウの腕と足に繋がれたそれらが外れることはなかった。

 

「…チ」

 

何もできない自分に腹を立てる。

ミリーナは自分を選んだ、いなければならないパーツだと。

変えてくれる人だと。

なのに自分の今の状況は酷いものだ。

 

うんともすんともいかないドールの入った腕輪を見る。

 

さっきみた夢の内容は覚えていた。

夢ではないだろうが未だにあれが現実なのかあるいは自分の妄想ではないのかと思う。

強制的にパワーアップさせる方法は死の淵に立つこと。

そんなことできるはずがない。

自分の意思で死の淵に立つなどまっぴらごめんである。

 

そして少しだけ見えた影の顔。

あれは―――

 

「おや、Sはどこに行ったんですか?」

 

聞き覚えのある声に背筋が凍る。

顔を向けるとそこにはジーク立っている。

 

「お前…!」

「おまけに殺してすらいない…まぁ、その状態じゃ何もできないと思いますが」

「何しに来た?」

「お前がそれを言いますか?まぁ、来た理由は戦力補充ですよ」

「……」

 

端的に言えばリョウの死体を貰いに来たということだろう。

意志があるのかどうか不明だが、こいつの下にだけは絶対につきたくない。

 

「結局殺すのだから俺が殺しても何の問題もない…だがSのことですから解剖目的。下手に手を出してはあとが面倒ですね」

「殺し合いでもすればいいだろ」

「あちらがどう思っているか知りませんがこちらには仲間意識かあるんですよ。最も、意見が食い違えばすぐにでも殺しますが」

 

ジークはリョウの周りを歩く。

腕を組みながら悩んでいるようだ。

 

「しかしまぁ、落ち着いて話すのはこれが初めてですね。異世界の住人でしたっけ?」

「お前に話すことなんて何もない」

「しっかり敬語使ってるんですから少しは心を許してくださいよ。これ、結構だるいんですよ?」

「……ふん」

 

突然ジークはリョウにナイフを突きつける。

顔こそ笑っているが恐怖しないはずがない。

 

「少しは話す気になりましたか?」

「……っ」

「折角話ができるんですからしないと損ですよ?Sが戻ってきてからでは―――」

 

隣のマジックミラーに突如、何かがぶつかる。

突然の出来事に2人の視線はそちらを向く。

 

誰か人がぶつかったのか或いは何か物なのかは暗くて分からない。

しかし、しばしの沈黙の後に大きな衝突音が聞こえる。

間違いなく誰かがぶつかり合っている。

 

「ずいぶん早い帰還ですね」

 

ため息をつくジーク。

話す時間はなくなったようだ。

 

「少し付き合って貰いますよ、リョウ・アマミヤ」

「…くそったれ」




ネーム紹介



T(死体を操る)
条件として死体であることを満たしていれば大抵のものは思いのまま。
ただ、命を与えているわけではなくラジコンを操作しているような感覚であるため自分で命令する必要がある。
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