異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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いやぁ…、まぁその…学習能力がなくてすみません。
早く更新できない自分が情けないです。


真似事

真っ白な空間。

常に垂直に黒い線が引かれているにも関わらず、その白は意識のうちから黒を消し去っていた。

長く続くその空間の中にいるとおかしくなってしまいそうだ。

悪趣味すぎるといってもいい。

同じような場所を通っていると時間が長く感じる。

もしかして私はここをすでに何時間も走っているのではないか。

焦りが彼女の足をより一層早めていた。

 

「リョウ…」

 

マーシャは自分の足を使って走っていた。

ドールを使って飛んだほうが早い。

だが、それではまるで進んでいる気がしないこの空間にの圧力に負けた。

こっちのほうがまだ安心していられる。

安心は言い過ぎかもしれないが。

 

やがて空間が広くなった。

通路のような形ではなく、円形の空間。

ただ、その奥にはまたどれだけ続くか分かりそうにない廊下が見える。

 

足を踏み出そうとしたその時

 

「!」

 

直観だった。

嫌な感じがしたからその足を後ろに下げた。

目の前を一本の鉄パイプが通り過ぎる。

死にはしない、だが戦闘不能になりかねない一撃。

 

「あら、Sバリアが消えてるのは知ってるのかしら?」

 

声の主の顔など確認するまでもなかった。

大して長い時間見ていたわけではない。

だが、嫌というほどその顔は脳裏に刻まれていた。

 

「S…!」

「ここに来たってことは…検体希望者ってことでいいのよね?」

「何を言ってるの?」

「そのまんまよ。ただリョウ・アマミヤとは待遇が違って選択肢は与えないけど」

「言いたいことが見えてこないけど別にいいわ。リョウの場所に案内して」

 

抑えていた笑いが吹き出たかのように笑うS。

 

「それは訊いてるんじゃなくて、決まり文句として言ってるのよね?」

「今の私は手加減できる自信ないわよ?」

「確かに私は攻撃型のネームじゃない。あの巨乳幼女に勝つことはできない、でもEの力を応用すれば貴女くらいどうってことないのよ!」

「E…?」

 

Sの腕から鉈が出現する。

マーシャは知らないがミィヤのそれと同じ形をしたもの。

あくまでも形のみが同じでただのでかい鉈。

 

ところがSが鉈を振り回すと同時に鉈の長さが変化する。

短くなるのではなく、さらに長く。

ドールの装甲で止めるマーシャだが、長くなったにもかかわらずSのそれを振るスピードは遅くならない。

 

「なによ、これがよくわからないけど応用?」

「見栄はらないで懇願したら?そうすればこれだけにとどめてあげる」

 

そう言うと空いている左手を動かす。

その手の動きはまるで糸につるした人形を操っているかのようだった。

そして何かが形成されていく。

初めは何かわからなかったがすぐに人型の泥人形であると気づく。

形だけを見れば上出来であろう。

 

「私のネームは似せる対象さえあればこうやって一から作ることもできるの。森羅万象全てをね!」

「たかだか1人増やしたくらいで勝ったつもり?」

「ええ、今にわかるわ」

 

ネームは持っていても1人1つ。

これは絶対である。

だが、確かにマーシャの目の前で新たな何かが出来上がっていた。

命があるかはわからない。

だが、こんなことをいともたやすくこなすのはどう考えてもSの範疇外だった。

クロのネームを持っているようだと、自分の仲間を侮辱された気分になる。

 

「裏切り者と同じような魔法だなとでも思った?」

「…なんのこと?」

「悪いけどあんなチャチな物とはわけが違うわ!言ったでしょ、私はありとあらゆる物…万物を似せるという形で作り出すことができるの!元の素材が必要となるOなんかと一緒にしないでよね」

「それはこっちのセリフよ、あの子と貴女のネームは別物よ」

 

泥人形が前に出る。

バランスが取れていないのか頭は垂れ下がり、手はいびつな方向に向いているが確かにマーシャのもとへ一直線に向かってきていた。

なんの武器も持たず、泥人形はマーシャにとびかかる。

だが、それはマーシャにとって邪魔になることすらなかった。

 

とびかかってきた泥人形の腹に一撃蹴りを入れる。

それだけで泥人形は破裂するかのようにばらばらになった。

その間にもSは鉈を振り回すがグネズトに訓練されたマーシャにとってSのそれは脅威ではない。

 

「それで本気?」

「調子に乗ってるんじゃないわよ!」

 

Sの周りに再び人形が形成されていく。

不思議なことにそれしかない。

人海戦術は悪くないがそれでもやりようがあるだろう。

マーシャとしては疑問が残るが都合はよかった。

足のドールのパーツにエネルギーを使う。

Sバリアが使用できない以上、もう出し惜しみをする余地はない。

マーシャの足から放たれた斬撃ともとれるほどの威力を誇る衝撃波は泥人形に当たるとそれを粉砕する。

 

「甘いわよ!」

 

ところが粉砕したはずの人形が一瞬で元に戻る。

ただ、一体というのが引っかかるところだが。

マーシャは予想していなかったことに驚き、動作が遅れる。

 

その間に人形はマーシャに絡みついた。

ねっとりとした人形のような材質の人形はマーシャにへばりつき離れようとしない。

そうしている間にSは鉈を振り下ろす。

巨大な鉈は確かにマーシャの頭をとらえていた。

体を均等に切り落とせるはずだった。

 

だがその刀は止められた。

あろうことかマーシャの手で。

 

「!?」

「この粘着質な何かで私を止められるとでも思ったの?」

 

Sが危惧していたのはマーシャの足だった。

彼女の攻撃の主体は足であることぐらい理解している。

だからこそ分からなかった。

なぜ彼女は自分の攻撃をドールを装備しただけの()で止めることができるのかと。

 

「確かに足技のほうが得意って言う自負はあるけど、別に努力すれば腕だって強くなるわ。それに…」

 

マーシャは足に力を籠めると粘着質な何かを力のみで引きはがす。

無理やり形状を崩されたからかそれはボロボロと形を保てないのか崩れていく。

 

「何を真似たのかは知らないけど鉱物でもない物体なんて力技でどうとでもなるわ」

「……!」

「本当に戦いの素人みたいね。だからもう一度だけ訊くわ、リョウの所に案内する気は?」

 

思い付きだった。

でもいけると思っていた。

話しの通じないほどぶちぎれていたりすれば予想外のことがあるかもしれない。

だが、今の相手は何だ。

少しイラつきが見えるがそれ以外はいたって平常ではないか。

そんな相手なのに自分は勝てない。

 

「な、なめた口きいてんじゃないわよ!言ったでしょ、森羅万象全ての物質を真似て創り出すことができる。いくらあんたでも…」

 

鉈を手放し、新たな物質を創造する。

それは黒く、大きく、重厚感があふれる兵器。

自分で創り出したにも関わらず重いのか、ズシンと音をたてながら地面に銃を置く。

マーシャ自身は今まで見たこともない形をしていた。

 

機関銃というには弾倉が見当たらず小さい、そしてただの銃というには大きく取っ手の前方には取り外しできそうな円形の何かが銃口とは垂直に取り付けられている。

 

「銃弾は見えないでしょ?Sバリアも使えないならこれであなたは終わりよ!」

「…見たところ重さのあまり扱えてないようだけど?」

「それくらいのハンデがあったほうが楽しめるもの!」

 

Sが引き金を引く。

銃口は確かにマーシャを向いていたが反動のせいか、狙いを大きくそれて壁に向かって銃弾は走った。

弾は壁に直撃すると大きな爆発音と同時に燃え上がる。

普通なら壁が壊れていてもおかしくはないのだがFの力のおかげか傷1つついていない。

 

「ハンデ…ねぇ」

「……!」

 

顔を真っ赤にしたSが再び引き金を引く。

今度は反動に備えてしっかり構えていた。

マーシャはそれに反応してとりあえず左によける。

 

普通の銃弾なら間違いなく、当たっていたであろうタイミング。

しかし、Sの武器は銃というより大砲のような攻撃をしてくる。

生身では見てよけるなんて確かにできないが、ドールがあればそれからでも0距離じゃない限りよけることはできる。

 

Sは外したのを理解するとすぐに銃を構える。

接近を試みるマーシャに明らかに恐怖していた。

 

「避けてんじゃないわよ!」

「無茶言うじゃない?さっきまでの余裕はどうしたのかしら」

 

安い挑発。

マーシャだって普通はしないことだが今は別。

相手が乗ってくれると踏んだ。

 

Sは何の躊躇もなく引き金を引く。

もともと当たりにくいのだから狙いを定めたり、慎重になるべきところなのに頭に血が上っていた。

 

「!?」

 

銃弾を避けたマーシャはすかさずSに接近する。

鈍足な弾を撃つ銃なのだ。

一発の間隔もそれなりにあるのではないかと予想した。

実際、連射してこないところを見ればそうなのだろう。

慌ててマーシャに銃口を向けるが一足遅い。

 

鈍い音と痛みがわき腹に走る。

そのまま横の壁まで5mほどバウンドなしで飛ばされる。

 

「…丈夫な体してるのね」

 

驚いた表情でSを見るマーシャ。

咳き込み、吐血しながらも立ち上がるS。

 

「いや…治してるのかしら?お得意の真似ることで」

「それもあるけど…攻撃の直前に、鉱物を創造すればこれくらい…!」

 

バランスなんてお構いなしにSは銃を構える。

それでもSはマーシャに当てなければ気が済まなかった。

しかし

 

「!」

 

マーシャは何もしていない。

なのに引き金を引くと同時に銃が爆発する。

 

「アアアアアアァガフッ!?」

 

はじけ飛んだ自分の右腕の痛みに耐えかねる。

痛みのせいで魔法に対する集中が切れ、代用していた内臓の一部が消え内部にまで痛みが走る。

 

「(銃に対する集中を切らしてたか。くそ…!)」

 

人体の構造は理解している。

だから作る中で一番得意なのは人だ。

最も、脳だけは未だによくわからないところが多いため自律した人間を作り出すことができない。

だが内臓、ましてや表に出ている手などのパーツは簡単すぎてあくびが出る。

 

痛みにに耐えながらすぐに体を新調する。

細部までこだわっている構造のおかげで問題なく機能する。

痛みも消えた。

 

「いい加減諦めて。貴女じゃ私には勝てない」

「……」

「分かってるならリョウの場所を―――」

 

Sの指が変に動いた。

マーシャはそれを見逃さない。

 

間に合う距離だと判断したマーシャは懐に飛び込む。

だがマーシャは創り出されたものを見てギョッとする。

手のひらサイズの楕円形の爆発物、手榴弾だ。

 

接近するのを躊躇してしまった。

その隙にSはそれを投げると後ろへ後退する。

投げられた爆発物を前に回避姿勢をとるマーシャだったが、いつまでたっても爆発しない。

偽物をつかまされたことを理解すると、すぐに追尾行動に移る。

 

道は一本だった。

追いかけるのは容易だが、逆に誘い込まれているようで嫌な感じがする。

 

「逃げたって私のほうが速いわよ!」

「なら早く追いついてみなさいよ」

 

しかし、鬼ごっこは長くは続かなかった。

再び開けた場所に出たかと思うと行き止まりだったからである。

奥には窓のようなものがあり、扉が一つ。

あの扉を開けたらまた広い空間が続いていますとは考えにくい。

壁は相も変わらず白が目立っている。

 

「袋のネズミ…ってわけじゃなさそうね?」

「ええ、もちろん」

 

そう言うとSは何かを投げる。

マーシャの足元に転がったそれらはさっきと同様、手榴弾。

ここで偽物をつかませる理由がないと判断したマーシャは後ろへ飛び退く。

案の定それらが爆発して視界を悪くする。

 

そしてマーシャにはSの次の手がなんとなくわかった。

素人だから、一度自分も通った道だから。

そして、袋のネズミではないといったが背水の陣である以上後がないことに変わりはないから。

 

砂煙の中から2つの銃弾が現れる。

さっきと同様、決して速くはないが威力ある。

煙幕で見えなくすればあたるだろうと考えるなんて何年前の自分のことだろうと、苦笑する。

マーシャは迷わず、煙幕をくぐる。

すでにあの銃の連射速度は分かり切っている。

煙幕を抜けた時、Sの驚いた表情が目に入る。

 

まさか真正面から突破するなんて思ってもいなかったのだろう。

マーシャの足が今度はSの腹に入る。

何の防御姿勢もとっていなかったSは後ろへと飛ばされ窓に激突。

魔法こそ解除されなかったものの、再び咳き込み吐血する。

 

「終わりよ」

「ふ…ざけてんじゃないわよ。これから、だっていうのに!研究も!」

 

単純な岩を作り出す。

投げるが当たり前ながらマーシャには当たらない。

 

「検体も!」

 

再び鉈を創り出し叩きつけるがマーシャは片腕でそれを防ぐ。

 

「人生も!」

 

マーシャはもう問うつもりはなかった。

確実に仕留めるつもりで接近しようとしたその時。

 

一つの扉が開いた。

視界に入ったそれを見て足を止める。

 

「S…ずいぶんな姿ですね」

「T、なんでいるの?」

「侵入者撃退のため、が一番簡単な理由ですね。貴女と違って腕には自信がありますし」

「…!」

「だけど不思議だ。なぜ弟はこいつと戦わなかったんでしょう?」

「???」

 

顔は見たことある。

だが話したことはない。

リョウと戦っていたのは確かに記憶しているが知らない。

ただ、嫌な感じがする。

強いとか実力の問題ではなく、嫌悪だ。

恐怖も混ざっているような気がするが違うのだろう。

 

「ご存じないですか?リプト・T・エリオスって言うんですけど」

「T…!」

「あー、そっちで覚えてたんですか」

 

思わず後ずさりする。

相手の家族構成なんて知る気はなかったが兄弟なのだ。

おかしいのは間違いない。

それ以前に弟のことを分かっていながら何も思っていないあの態度。

敵対心を抱かないわけがない。

 

「そんな身構えなくてもいいですよ」

「…なんでかしら?」

「どうせ、すぐに終わりますから」

 

 




ネーム紹介



U(炎魔法強化)
炎魔法が強くなる、扱いやすくなるなどPやAとはあまり変わらない。
ただ、自然の法則には逆らえないため酸素がなければ長時間火を起こすのは不可。
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