異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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お久しぶりです…はい。


1歩

一見は人と人との殴り合い。

グネズトとカザキのお互い一歩も引かぬ互角な戦い。

だが、ぶつかり合う音からは人それとは違い、金属音がする。

 

「どうしたグネズト、腕が鈍っているようだが?」

「……」

「ああ、済まない。俺が強くなっているだけか」

 

最後に拳を交えたのはいつだったか。

模擬戦闘は何回かやった覚えがあるが、最後は確か殺し合いそのものだったような気がする。

 

ただ、一つ間違いなく言えるのがグネズトはカザキに勝ったことがない。

戦闘の技術面で考えれば、グネズトのほうが上。

だが、肉体的な面で考えればカザキのほうが上。

 

同じ、金属を交えた体と考えていたらすぐに鉄屑に変えられてしまう。

 

そのためのリョウだ。

ミリーナの思惑通りにいけば対峙できる。

だが、その本人は今どこにいるかもわかりはしない。

 

仮にカザキと対峙したとしても他に誰かいると思ってたのにグネズト一人だ。

他を当てにしていたつもりはないが少しは楽になってたであろう。

 

「なぜ?」

「?」

 

ミリーナに聞いた時から疑問に思っていた。

彼女がほしいと言うことはそれを操りたいからだろう。

 

「お前は以前研究者だったと聞いた」

「それが?」

「死んでしまっては元も子もないだろ」

「いくつか誤解をしているな。確かに俺は死ぬつもりはない、だがお前のその言い方ではまた何かいじくりまわしたいと言っているように聞こえる」

「違うのか?」

「俺は、頼まれた夢を叶える。そして自由になる」

 

何かの言い回しか、それに聞こえた。

というよりそうしか解釈ができなかったグネズト。

 

「分からなくてもかまわん。仮に理解はできてもそれは本当の意味での理解にはならないだろうしな」

 

一瞬、考えようかと思ったがグネズトはやめた。

無駄だ。

どの道を通ろうと、カザキは殺さなければならない。

 

グネズトの体に大した機能はついていない。

強靭な肉体、長時間ではないが飛ぶことができる。

だがそんなこともこの世界ではいくらでも代用できるものがある。

 

正直このままいけば負け戦なのは百も承知だ。

だが引けない、引きたくない。

グネズトは拳に力を入れた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「(あいつ…!)」

「ほら、そんなに逃げ回らないでください。慣れてるとはいえ、1人でこの数操作するのは骨が折れるんですよ?」

 

笑みとは裏腹に、マーシャを確実に殺そうと包囲網を狭めていくT。

勿論兄である。

相変わらず、人の死体を使っている。

それも腐敗など気にせず。

まだ死後間もないのか、きれいな肌をした女性。

どうやって殺されたのか、腹から腸がはみ出しところどころ肉が抉れている男性。

頭がないなんてザラで、断面図がくっきりと見える。

しかし、人の体の中身なんて見たいと思う人は少ないだろう。

マーシャもその一人だ。

 

女性といえども軍人。

慣れているつもりではあったが、いざ数のある物を目の当たりにすると吐き気がしてくる。

 

ただ、馬鹿にはできない。

それだけやり手だ。

さっきのSとは比べ物にならない。

能力が違うからとかそんな話ではない。

場数を踏んでいるからか、天性の才能なのか知ったことではないが近づくことがままならない。

 

遠距離はできるだけであってマーシャはあまり得意ではない。

決定打に欠ける一撃はあまり好きではないのだ。

 

「いいのですか?そんなゆっくりしていると恋人がどうなるかわかりませんよ?」

「付き合ってないわよ!」

「言ってみたかっただけです」

「絶対に殺すわ」

 

ジーク(T兄)は指揮に長けている。

それはなんとなくわかった。

人海戦術とはよく言ったものだが、ただの人形ならば数で圧倒されてもどうにでもなるだろう。

だが、ジークの場合この死体をやろうとするとあれの攻撃範囲に入るといったようにカバーされている。

死ぬのなんて、それ以上に体が傷つくことが怖くないというだけでもかなり厄介であるにもかかわらず連携が取れているというのはチートの領域だ。

さらにあくまでも操っているのはジーク一人なのだから思考も1つ。

使いようによってはうまく事が運ぶかもしれないが連携という意味では最悪だ。

 

そんな中でも不幸中の幸いだったのがSが手を貸さないこと。

仲間意識はないのか。

問いただすつもりはないが。

 

マーシャは死体の包囲網が狭まりつつあることには気づいている。

殴っても減らない死体。

むやみやたらに動くこともできない。

 

エネルギーを使用して衝撃波を放つ。

選択肢としては遠距離が一番だと結論に至った。

敵の数が減ろうが減るまいが一瞬は足が止まる。

 

Sの時の斬撃とはうって変わって敵にあたるとそれは爆発する。

防御なんて考えていない死体は文字通り破裂する。

マーシャは死体の上半身が存在していた場所を通り抜ける。

 

全身から汗が溢れ出ていた。

それを一つ距離を詰めた今実感する。

少しの安心が彼女に体温の感覚を戻させた。

少しだけTの表情が変わった.

だがそれは焦りではなく、及第点を取れたことを褒めることからきている。

敵であるにも関わらず褒めた。

褒めるだけ余裕がある。

 

ただ、何度も同じくはいかない。

決して死体は学習しない。

Tが改めて死体の配置を変える。

無数に存在する駒ならばいくらでもやり直しがきく。

 

欠伸が出るT。

 

再び敵が目の前に立ちふさがる。

ガン見するつもりはないが、一瞬見えたそれは千切れかかった腕から骨が見えていた。

腹に外傷はなかったように見えたが、頭に何か長いものが刺さっていたように見える。

 

足に再びエネルギーを籠める。

しかし、次は相手に向けて放つことはない。

その場で暴発するかのように爆音と同時に視界が悪くなる。

死体の足が止まった。

Tがまたしても予想していなかった行動に対応できなかったのだ。

マーシャが再び前進する。

一歩一歩が大事なのだ。

近づければ勝てるはずだ。

接近戦ではそれなりの自身があるのだから。

 

「!?」

 

しかし、直後に足に何かが絡まり地面に叩きつけられる。

一瞬、以前と同じく地面から何か生えてきたのかと錯覚したが違う。

確かに手に握られている感覚だ。

しかし、その手からは精気を感じられずひんやりとした嫌な感じがした。

どんなに戦いに集中していてもこればかりは反応してしまう。

 

ぎりぎりで反応したのか、相手も倒れながら確かにマーシャの足をつかんでいた。

その手からは死んでいるとは思えないほど強い握力が発揮されている。

メキメキと骨が悲鳴を上げているのが分かる。

すぐにマーシャはその手を引きちぎる。

案外簡単だった。

力を入れて逃げようとしたところ、腐っていたのかブチブチと音がしたと思ったら足が軽くなったのだ。

 

足が握られている感覚はあるがそれを引きはがしている時間はない。

近づいてきていた敵を起き上がる勢いと一緒に吹き飛ばす。

ところが蹴り飛ばしたと思った敵が吹き飛ぶことはなく、ただ敵の体をマーシャの足が貫通する。

ひんやりとした液体が自分の足にかかり、血の生臭いにおいが広がるのが分かる。

なぜ、死んでいるのに、蹴られるだけで体が貫けるほど腐敗しているというのに立つことができ、血がまだ液体なのかと疑問を持つ。

しかし、そんな疑問をかき消すかのように足に激痛が走る。

 

死体がゾンビのごとくマーシャの足にかみついたのだ。

マーシャはすぐにさっき暴発させたかのように見えた方法で爆発を行う。

死体の顔が吹き飛び体も下半身のも大体が吹き飛び血がマーシャに降りかかった。

 

「自慢の足が台無しですねぇ?」

「これくらい…!」

「もう一本の足もダメになりますよ」

 

突如、傷ついていない足に大きな圧力がかかる。

さっき無視した手が力を込め始めたのだ。

人間、ましてや死体とは思えないほどの力を発揮する。

 

「細かくなった部分は操れないわけじゃありません。ただ支配するのをやめていただけ、意識すればこうやって手だけでもできるんですよ」

 

再びマーシャの足が悲鳴を上げる。

さっきまで感覚で感じていた骨のひしめきだったが耳に聞こえてくるようだった。

痛みの強さに無視することができず引きはがしにかかる。

エネルギーの爆発は生憎、つかまれている部分が太ももに近いため使うことができない。

 

マーシャが苦痛に顔をゆがめている中、Tは黙って座っているSに声をかける。

 

「そういえばS」

「なによ」

「なぜ、リョウ・アマミヤを殺さないのです?」

「別に。ただ人手がほしかっただけよ。殺せとは言われてないでしょ」

「何をするかはだいたい想像がつきます。機体がいくらでも―――」

「私の手伝いをさせるなら最低限自我を持った型を使わせてもらわないと」

「もしもがあっては面倒なんですよ。現にあの赤毛一人にも勝ててないじゃないですか」

 

睨みつけるようにTをみるSだったがTはなんとも思っていないのか、そっぽを向いたままである。

Sも反論はできないとわかっているのか口では何も言わない。

 

「うぁぁああああぁ…」

 

マーシャが痛みに耐えかねて声を出し始める。

骨の音もボキボキと痛々しい音が本格的に響き始める。

あまりの力の強さにマーシャの腕力ではどうしようもなかった。

 

「この程度でリプトを殺そうなんて…随分な考えを持っていたようですね。身の程を知れとはまさにこのことです。以前生きていられたのはやはりリョウの力が大きいようですね」

「あんたに何…が!」

「一目瞭然じゃないですか。貴女はここで―――」

 

しゃべりかけたところでTが頭を抱える。

うめき声をあげながらフラフラとよろけ始める。

それと同時にマーシャの足にかかっていた圧力が弱まる。

急いで引きはがすとそれを遠くへ投げた。

 

「こ、これは…?」

「T、いったいなにやっで―――」

 

Sの口から血が吹き出る。

何が起きているのかわかっていない様子だが、口から血が出れば意味はなくとも口を押えるだろう。

だが、Sが口を押えても滝のように血があふれだしてくる。

 

何が起きたのかわかっていないのかSは口を押えることしかできず顔から血の気が引いていく。

突然の事態に恐怖している。

 

体もどういうわけか治らないらしく手が震え始める。

血だまりができてそれが広がり始める。

 

「まさか…Eが?」

 

頭痛が収まってきたのか独り言をつぶやくTだが、全身から汗が吹き出ている。

 

「よくわかんないけど、チャンスってやつ?」

「…いいえ、この程度の戦力低下なんて無意味。貴女はチャンスをすでに取りこぼしました」

 

マーシャは再び前進する。




すみません、ネーム紹介はまた今度で…。
まぁ気にして読んでる人はいないと思いますが書けない理由は無くしてしまったから。
書いておいた紙を。
それぐらいは書いておかないと流石にね。
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