これからもっと盛り上がると思うと楽しみです。
リョウはマーシャが戦っているのをただ眺めていることしかできなかった。
いつもなら加勢するのだが思ったより傷が深いらしく痛みが増してきた。
さっきまでは夢中で戦ってたから気づかなかったようだ。
戦い始めればおそらく痛みも忘れられるかもしれないが、今はとても戦える状況じゃない。
回復魔法は使えないのかと思いそれらしい英語を言ったがうまくいかなかった。
やはり魔法はぶっつけ本番でうまくいくものではないようだ。
「(マーシャ…)」
ただ祈ることしかできなかった。
―――――――――――――――――――――――――――
今マーシャはビムと戦っている。
戦況はビムに傾いていた。
「さっきまでの威勢はどうしたぁ!?まだあの餓鬼のほうが強かったんじゃねぇか?」
「…!私はまだ本気を出してないわ!」
「殺さないためにか?ならさっさと本気ださねぇとすぐに誰とも分からない肉塊になっちまうぜ!」
「言ってくれるじゃない!」
マーシャのバトルスタイルは他の人と少し違い足を主体としている。
さっきリョウを助けた時も足でビムの頭をけ飛ばしたのだ。
足は手と違い強化してもスピードが下がったりなどデメリットはない。
なので、足を使うドールのほうが基本的に強いと言われている。
しかし、ビムは最初こそダメージを受けてしまったがそれ以降は攻撃を一切許さない。
「(こいつ、魔法使うくせにどんだけ身体能力高いのよ!?面倒ね)」
「そろそろいくぜ…」
するとビムの周りに球体が出現する。
リョウにした攻撃と同じだがマーシャはそれを見ていない。
「(できれば当たりたくないわね…)」
球体が迫ってきたので回避行動に移った。
ただ回避してるのも嫌だと思い、マシンガンを撃ち始める。
ビムは目の前に壁を作り出しそれを防ぐ。
「さっきから遠距離攻撃ばかりね!」
「魔法は近接攻撃のほうが少ないんだぜ」
「でもあなた、刀持ってるじゃない!」
「わざわざ動かなくても勝てる相手に対して動く必要ないだろう?」
「いちいじイラッとする口ね!」
「ほめ言葉だな。ほら、次だ!」
ビムの周りに輪っかのようなものができ、そこから銃の弾並の速さがある矢のようなものが次々に発射される。
これでは防戦一方だと思い、ビムに突っ込む。
矢が当たるがSバリアがあり、ドールも致命傷を受けるほどの威力はない。
一気に距離を縮める。
「あれれ、そんなにこの矢は威力ないのか」
「おかげで近づくことができたわ!これなら」
「俺が近接攻撃をできないと思っているのか?」
突然ビムの口調のトーンが変わりマーシャの動きが鈍る。
次の瞬間マーシャの目の前からビムが消え、背中から刺され、その刀は胸を貫いていた。
「あうぐ、ああぁあぁぁ…」
「へぇ、思ったより叫ばないな。いい悲鳴が聞けると思ったんだが。すでに経験ずみだったか?」
「…えぇ、これでも体を貫かれるのは2回目なの」
「そりゃ経験豊富でいいな。俺はないからたぶん叫ぶぜ。まぁ、俺に攻撃が通ることなんて100%ありえないがな」
マーシャはやばいと思っていた。
痛みのあまり手に力が入らなかった。
「さて、この状況に陥れば誰でもわかると思うが…お前はもう勝てない。今なら謝れば逃げる時間はくれてやるぜ?」
「ふざけたこと言ってんじゃないわよ…」
「降参しないのか?なら屈辱的な死に方してもらうぜ?」
「私がその屈辱的な死に方を受け入れると思うの?」
「今俺がお前を刺したところは急所は外してある。そう簡単には死なないが力は入らないだろ?」
「…ふざけたまねしてくれるじゃない」
「選択肢は2つだ。1つは俺がさっき戦った餓鬼を殺すまで逃げる。もう1つは裸にひん剥いて全国にテレビ放映をして俺の部下たちに好きにやらせた後、殺す。どちらにしても死ぬけどな」
「どっちも選ぶわけないじゃない。アタシはあんたに勝ってこの惨劇を終わらせる」
「減らず口を…。お前が選ばないなら俺は2つ目にしたいからそうするぜ?」
「なめたこと言ってんじゃないわよ!」
マーシャは手足に力が入らないので代わりに手榴弾を使う。
爆発が起き、マーシャのドールの手のパーツが壊れる。
「(いくらあいつでもこの近距離で手榴弾を食らえば…!)」
「ゲホッ、ゴホッ!~ったく、手間かけさせんじゃねぇよ」
「なっ…」
マーシャの予想に反してビムは無傷だった。
「な…、なんで」
「お前魔法のことも俺のことも全然知らないだろ?俺は爆発魔法が得意なんだよ。そしてたまに出る例外を除いて自分の得意な魔法は打ち消すのも得意なんだよ」
「そんな…」
「いいねぇ、その絶望した顔。じゃあ、次は悲鳴を聞かせてくれよ。会場の真ん中でさ」
――――――――――――――――――――――――――――
マーシャが抵抗しているのが見える。
嫌がって必死でビムから離れようとしているのが見える。
しかし、リョウは限界だった。
いろいろ試したが傷は癒えず、痛みは増し、血がどんどん流れていっていた。
「(助けなきゃ…、俺が)」
そう思うのに体はいうことをきかなかった。
意識が遠のいていった。
「…ウ。お…」
声が聞こえる。
するとリョウの意識が突然クリアになった。
「リョウ!起きろ!」
耳元で大きな声が聞こえる。
目を開けると目の前に人が…いなかった。
ただ靄のようなものがかかっている。
「やっと起きましたね…。のんびり屋さんなんだから」
声は男か女かもわからないような電子音で、その靄は人のような形をしていた。
「…なんなんだ?」
「もはや誰だ?でもなく、なんなんだ?ですか」
「だって俺には靄しか…」
「そうですね。確かに私の姿はあなたにはただの靄にしか見えないと思います。だってまだ1段階目ですもの」
「アンタはだれだ?ここはどこだ?」
「ここに名前はありません。そして私にも名前はまだありません」
そこまで話し、リョウはマーシャのことを思い出す。
「そうだ!あんた、早くここから俺を連れ出してくれ!マーシャが…!」
「行っても無駄。貴方じゃ勝てない」
似ているようだが、違う声がする。
「そんなの分からないだろ!俺はあいつを助けなくちゃいけない!」
「なんで?」
「あいつは俺が負けたから戦った。それで負けたんだ!だから…」
「だから戦うの?負けるとわかってるのに戦うの?」
「そんなの分からないって言ってるだろ!」
「たった数分、しかも寝っ転がってただけで強くなれるわけないでしょ!?」
最初の声に戻る。
「…!」
「私たちはあなたに死んでほしくないの」
「それでも、俺は…」
「分かってるわ。貴方と過ごしてきた時間は短い。でも貴方は分かりやすい性格してたもんね」
「(過ごしてきた時間?)」
「どんな敵が相手でも手を抜かない。いいように見えるけどフィリアちゃんのときはさすがにひどいと思ったわよ」
「…なんで知っている?」
「言ったはずよ。私たちは貴方と時間こそ短いけど過ごしてきた。朝も夜も一緒だった」
相手の姿が靄であるためどんな顔をしているのか、何を考えているのかわからない。
「俺はあんたらを知らない」
「そんなことないわ。だって私たちは貴方によって創られたんだから」
「…?」
「鈍いわね…。少しなら構わないけど鈍感な男子は嫌われるわよ?」
「意味が分からない!あんたたちが自分について教える気がないならそれで構わない!だけど今はマーシャが大変なんだ!」
相手の声が変わる。
「さっきも言った。戻っても、あなたは死ぬだけ」
「だが俺が何もしなくても俺は殺される!」
「…」
「それなら俺はマーシャを助けるためにこの命を使う!」
「なぜ、そこまでこだわるの?」
「俺は、もともとこの世界の住人じゃない。違う世界から来たんだ」
「嘘」
「本当だ。来てすぐはここがどこだかわからず、ただただ彷徨っていた。そして体力に限界がきたとき、あいつは俺の前に現れた」
今でも鮮明に思い出せる。
あの時は確か死にかけでぐったりしていたはずなのに、きれいに覚えている。
きれいに思い出せる。
「言葉は荒いし、男子があーだこーだって言うし、頑固だ。でも俺はあいつに助けられた。あいつがいなきゃ今の俺はいない」
「でも…」
「彼女にこの世界のいろいろなことも教わった。感謝してもしきれないんだ。だから助ける。それに…」
「それに…?」
「俺はまだあいつに何もしてやれてない。恩を作ってばっかりだ。だから俺はその恩を返す」
「…何を言っても無駄なようね」
「私はだから言ったじゃない。絶対助けたいって言うって」
嬉しそうな声だった。
「だから、帰らせてくれないか」
「今すぐ帰しましょう。貴方の居場所のへ。でも私たちも貴方を死なせたくない」
「だから、力を貸す」
「あなたに合った力をね♪」
「どういう意味だ?」
「貴方はまだ力を出し切れていない。まぁ、出せるわけないけれど。だからその少しを解放してあげるって言ってるの」
リョウには何を言っているのかさっぱりだった。
「彼女の力はまだ無理だけど。恥ずかしがりやさんだよね」
「そんなのじゃない」
「…何を言っている?」
「ここを出ればすぐに分かるわ」
電子音のような声がかすれ始める。
リョウの意識がぼやけ始めているのだ。
「焦らなくていいわ。元の場所へ戻るだけだから。私も力を貸すけど最後は貴方ががんばらなくちゃいけない。だから頑張って。…死なないでね」
「お前は…いったい?」
そこでリョウの意識が途絶えた。
――――――――――――――――――――――――――――
「いや!離しなさいよ!」
「口がうるさいな…。手足に力入らないくせに」
「ビムさん!何とかなりませんか!?」
「おまえらなぁ、いくら俺が万能だからって何でもかんでも注文すんじゃねえよ」
「俺はこっちのほうが好きだけどな!」
レックスの倒れているところから少し離れたところでマーシャがひどい目に遭っていた。
数分前、クリティウス姉妹とレックスが敵と戦ってるときビムはマーシャを連れてやってきた。
三人全員で襲い掛かったが、歯が立たなかった。
格の違いもあったが三人とも疲れ切っていたのだ。
レックスは、刀がSバリアを貫くことを知らず見事に食らってしまい、クリティウス姉妹は魔力の残量がほぼゼロだった。
「その前にお前ら、俺今からテレビ中継しなくちゃなんねいからしばらく待ってろよ?」
「校内放送ですか?」
「いいや、全国だ」
「俺たち一気に有名人じゃないすか!」
「そうだ。その折角の晴れ舞台に途中からなんて残念極まりないだろう?」
「分かりましたよ。待ってますから急いでくださいよ?」
レックスに声は聞こえていた。
でも体がピクリとも動かない。
「(動けよ!なんで動かねぇんだよ!くそ…)」
周りには助けてくれそうな人はいなかった。
「おし、準備出来たぞおめぇら!」
「遅いっすよ、ビムさん!」
「いや、カメラ自体はすぐ見つかったんだが回線を繋げるのに苦労してな」
「ていうか、ビムさんはいいんですか?」
「俺は好きな女にしか興味ねぇよ。誰でもいいわけじゃねぇんだから」
「男前っすね、ビムさん」
「まぁな、じゃカウントするから始める準備しろよ」
「いつでもいいっすよ!」
「いくぜ、3、2、い」
1とカウントしようとしたときビムは思いっきり吹っ飛ばされ、部下も何か変な形の物体によって一緒に吹っ飛ばされる。
マーシャは何が起きたか分からなかった。
「大丈夫だったか?」
リョウがマーシャを抱えていた。
いい調子です。
半年50話も夢ではないのかもと思い始めました。
これからも頑張ります。
リョウが最後やけにかっこいいような気がする。