でもこんなこと書くと書けなくなるんだよなぁ。
合宿3日目
リョウたちは朝6時に起床して飯を食べている。
今日は特別起きるのが早い。
理由は今日リョウたちの班は巫女のいる寺に参拝に行くからだ。
もともと恐ろしい数の生徒が来ているので早くから行かないと間に合わないのだ。
しかし、寺を見たいという生徒の数は実際少ない。
理由はほとんどの人が神様を信じていないのと、巫女を気味悪がっているからだ。
神様を信じているだけならまだ普通に接するのだがこの世界の巫女は他では類を見ない召喚士だ。
召喚する神もこの世界の人から見れば怪物にしか見えないらしく、特に科学側の人は巫女を人とも思わないことさえある。
偏見が強いのだ。
「なんであんなものまた見なきゃいけないのかしら?」
「気味悪いよね~」
「せっかく巫女自体は可愛いのにな」
リョウの先輩たちが少し離れたところで話しているのを飯を食べながらリョウは聞いていた。
「リリア」
「なに?」
「巫女さんって、どうしてあんなに嫌われてるんだ?」
「一般的には神様を信じてるからとか、化け物を召喚するからとか言われてるけどね」
「お前は違うのか?」
「私は嫉妬だと思うわ」
「嫉妬…」
「魔法側にいけなかった科学側の人と同じよ。自分にないものを持っているからじゃないかしら」
「ここの人は嫉妬深いんだな」
「まぁ、これは私の意見であって本当かどうかは分からないけど」
「へぇ。先輩はここの巫女さん見たことありますか?」
突然話を振られたマグタランは「ちょっと待って」と言う代わりに手で合図し、飯を口に押し込む。
食べ終わると
「一度来たことあるからねぇ。見たことはあるよ」
「どんな人です?」
「一言でいえば美人だよ。特徴的なのは長髪の黒い髪。めった見ないほどきれいだよ」
「神様は見ました?」
「あいにく。それは絵でしか見ていないんだ」
「やっぱり人前でホイホイと神様を出したりはしないのね…。でも何か問題を起こせば」
「何か企んでると思ったらすぐにクレア先輩にいいつけるぞ?」
「それは勘弁!」
きれいな土下座態勢に入るリリア。
一瞬で変わったもんだからリョウは止めることさえできなかった。
人前でこんなことすれば「男子が女子を土下座させてる」とひどいようにしか見えない。
「ちょ、リリア。やめろよ。他の人見てるから!」
「まじでクレア先輩には。まじでクレア先輩には。まじで…」
リリアの耳に話が入っていない。
「ちょ、マグタラン先輩も手伝ってくださ…」
後ろを見るとそこにあるのはマグタラン先輩が食べた後とみられる茶碗と箸のみだった。
いち早く状況を判断し逃げたようだ。
(あの野郎…)
先輩に対して失礼かもしれないがそう思ってしまう。
リリアは未だに土下座したままだ。
周りもだんだんざわつき始める。
「リリア?分かったから。クレア先輩には言わないから!」
「マジでお願いします。マジで…」
「だから、分かったっていってるじゃん!マジでこっちからもお願いだから早く」
「おい」
静かな声で、しかし怒気が確かに含まれた声がリョウに投げかけられる。
すぐ横にクレアが立っていた。
「せ、先輩…!」
「お前、リリアに土下座をさせるとはどういうことだ?」
「いや、これには事情が!」
「今朝は早くて俺もいらついているんだ…。そんな中俺のリリアに手を出すとはいい度胸だな…」
「いや、手は出してないですよ!?」
「黙れ。問答無用!」
クレアの回し蹴りがリョウに炸裂した。
それはある人から見れば正義の鉄拳に見えた。
しかしある人から見れば理不尽な攻撃にしか見えなかった。
「…そろそろね」
ここはリョウたちが来る予定になっている寺だ。
1人の巫女がぼーっとしながら寺の縁側に座っている。
「ミィヤ?そろそろ生徒が来る時間ですよ?」
「分かってるわ」
「あまり気乗りしてないようね」
「そりゃそうよ。なんで私があんな無粋な生徒の相手をしなきゃならないのよ」
「口が過ぎるわよ」
「本当のことを言っただけよ。言いたいことは言わないと体に良くないし」
「はぁ。生徒たちの前でそんな態度とらないでくださいよ?」
「それくらい私も分かってるわよ。でも…憂鬱だわ」
「何事もよく考えましょ?ね?」
「…そうね。誰か変わった人が来ることを祈りましょう」
「…長い。長いわ」
「この石段。どれくらいあるんだよ」
「428段あるそうだ」
「なんでそんなにあるんだ…」
「5キロと比べればいい方だ。黙って歩け」
リョウたちは今、石段を登って寺に向かっている。
もうすぐ着くだろうと思いながら歩き続けている。
これもリョウにとっては長いだけで苦ではないのだが他の生徒にとっては大変なようだ。
「リリア。あともう少しだからさ」
「それ3回目よ?」
「今回は本当だよ。ほら」
リョウが指をさした方向には鳥居見えた。
間違いなく石段の終わりを示すものである。
するとさっきまでうだ~…としていた生徒たちはテンションが上がり歩行速度が上がる。
鳥居を過ぎるとそこには大きな庭と寺があった。
「へ~、広いなぁ」
「本当ね。森林だから地価が安かったんじゃない?」
「それもあるけど庭が広い本当の理由は神様にあるらしいよ」
「こんなに必要なんですか?」
「詳しくは知らないけど、召喚するためのスペースだったかな?」
「そんなに必要なんですか」
とても広い庭を進んでいく。
普通に豪邸と言ってもいいくらいの広さがある。
しかし、地球とは違い少し奥にある寺以外そこには建っていなかった。
おみくじだったり場所によってはお土産屋さんだってあってもいいはずなのにそこにはなかった。
客寄せについては本当に考えていないのだろう。
寺の前まで来ると5年生の先輩が前に出る。
「よし。じゃあここからは自由行動だ。庭の散策をするもよし。寺の中を見るもよし。時間が来るまで各自楽しんでくれ。ただし、犯罪に当たるようなことはしないでくれよ?じゃ、自由時間だ」
それを聞くとみんなそれぞれ行動を始めた。
「リョウ。あなたはどうする?」
「俺は寺の中を見てみるよ。少し興味あるし」
「じゃあ私も行こうかしら。お寺の中でいい記事が見つかるといいんだけど」
「しっかり撮ってこいよ?俺は用事があるから別行動だ」
「了解しました、先輩!」
「期待しているぞ」
リリアの顔が笑いながら少しひきつる。
この言葉にはおそらく深い意味があるのだろう。
リョウは考えないことにした。
「じゃ、行こう。リリア」
「ええ。ここで引き下がったらおしまいだわ…」
寺の前まで来ると久しぶりに見る木でできた建物を見て懐かしく感じた。
この世界に来てからは扉と言う概念はほとんどなく転移装置を使えば目的地だった。
しかし、この寺にはそんなものはついていない。
横にスライドするドアに手をかけ開く。
この感覚は本当になつかしいものだった。
リリアは物珍しそうに見ている。
「扉なんて久しぶりに見たわ。しかもこれ横に動かすのね」
「リリアの家は扉がないのか?」
「いや、あるわよ。ただかれこれ10ヶ月ぐらい帰ってないし。それに横に動かすものじゃないし」
しゃべりながらカメラで扉を撮っている。
「リリア。いくらなんでもこれくらいじゃ記事にはならないんじゃ」
「一応のためよ。何かに使えるとも限らないし」
しゃべりながら奥へ進む。
寺の中は日本でも見るようなものとあまり変わりはなかった。
地獄絵のようなものが飾ってあったり、住職らしき人がいたりだった。
しかし、肝心の巫女が見当たらなかった。
「いないわね、巫女」
「だな。やっぱり忙しいのかな」
「神様を呼び出せる選ばれし者だものね」
「選ばれし者…か」
そう言われると親近感を覚える。
リョウはミリーナに選ばれた。
ここの巫女もおそらく何かに選ばれた。
スケールは天と地のさがあるような気がするが気にしない。
「ねぇ、リョウ。あれって何?」
「あれ?」
リリアが指をさした方向には地獄絵があった。
「何って、地獄絵だよ」
「地獄絵?」
「こうして生きてるうちに悪いことをしたらあんなところに死んだあと連れていかれるぞってやつだよ」
「胡散臭いわね。死んだ後に世界があるの?」
「それは死んでみないと分からねぇよ。でも、あれを見てこんなところにいかないためにもいいことをしようって思わないか?」
「信じてないしそんな気は起きないわね」
「そうかよ…」
この世界の人にこういうたぐいの絵は意味がないようだ。
すべて確証がない限り信じない。
そういう人がとても多い世界だ。
「ねぇ、じゃああの蛇みたいなのはなに?」
つづいてリリアが指をさした方向にあったのは青龍が書いてある絵だった。
「あれが青龍だよ」
「ここの巫女が使役しているっていう?」
「そうらしいね。8体いる神の一つだよ」
「8体?4体じゃなくて?」
「詳しく言うと8体いるんだ。東西南北の他に」
「ちょっと、あなた!」
リリアと話していると声をかけられた。
後ろを振り向くとそこには…巫女がいた。
「巫女、ですか?」
「そうよ。私はここの巫女をやっているミィヤ・ケリニアス。それよりあなた!」
「俺か?」
「そうよ。ちょっと来なさい!」
「は?なんで…ってちょっと!」
寺で働いている人らしき人に腕を掴まれる。
「何すんだよ!」
「あまり時間はかけないし、痛い目にもあわせるつもりはないわ。お願いだから黙って連れてかれて頂戴」
落ち着いた目を巫女はしていた。
なんの理由もなくただ捕まえたわけではないようだ。
「分かった」
「リョウ!」
「リリア。心配するな。時間も取らせるつもりはないみたいだしすぐ戻る」
「聞き分けがいいわね。じゃあ来なさい」
「あんた!」
リリアが巫女に声をかける。
「何よ?」
「リョウがいいというから何も言わないけど、リョウに何かあったら許さないわよ」
「…覚えておくわ」
それを言うとリョウは巫女に連れてかれた。
リョウは客間らしきところに連れていかれた。
牢屋みたいなところでないところから、そこまで疑われているわけではないようだ。
しかし、巫女のボディガードらしき人が2人ほど近くで待機している。
「単刀直入に訊くわ」
巫女がすぐに話を切り出した。
「なんで神が8体存在することを知ってるの?」
「は?」
「このことは私たち巫女の中でもかなり上位の機密事項よ。なぜそれをあなたが知ってるの?」
「なんでと言われましても…」
リョウにとってこの状況はかなりまずかった。
リョウがこのことを知っていたのは地球にいたころにいろいろあって知ったのだ。
そのことを巫女に話しても信じてくれるはずはない。
むしろ馬鹿にされてると思い何かされるかもしれない。
神を召喚できる巫女に勝てるとはとても思えない。
「っていうかあなた、何かが違うわね…」
「?」
「たぶんこれは「気」ね」
「気、ですか?」
「この感じ、前もあったわ。でも5年くらい前の話だし…。誰から感じたのかしら。サリス」
「はい」
するとサリスというボディガードらしき女は大きな本を取り出し、ページをめくる。
「このあたりかと」
「ここらへんね…。えーっと、あった!名前はマクアドル。この人は知ってる?」
「俺の教師だ」
「接点はそれだけ?」
「…ああ」
「隠し事は得しないわよ?」
「…」
「知ってること言うまで帰さないわ」
「時間はとらないんじゃなかったのか?」
「事情が事情よ。申し訳ないけどあなたが努力した分だけ早く帰れるわ」
リョウは迷った。
話すべきか否か。
信じてくれるかどうかはともかく言えば帰れるかもしれない。
でも最悪逆鱗に触れかねない。
考えているリョウにめんどくさくなったのか巫女は
「別にね、「気」はどうでもいいのよ。問題はなぜ隠された4体の神をあなたが知っていたのかだから。そこだけでも教えてもらえない?」
「…時間がほしい」
「状況分かってる?あなた下手すれば死」
「お前こそ分かっているのか?人前で早々と俺を連れ去らったんだぞ?」
「…」
「俺が帰らなければ大ごとになるぞ?それこそお前らを毛嫌いする奴らはこれを口実に攻撃しかねない。いくら青龍がいるとはいえ数にはかなわないだろ?」
巫女は考え始めた。
サリスという隣の奴も何かしら助言している。
答えが出たのかリョウの方をむく。
「分かったわ。今晩あなたの野宿しているところに伺うわ。それでどう?」
「明日じゃダメか?」
「あまり時間はあげたくないの。逃げるかもしれないし」
「…分かった。今晩の0時でいいか?」
「いいわ。じゃ、帰ってもらいましょ。サリス、ノリス。彼を連れの所まで案内してあげて」
「はい」「了解しました」
それだけ言うと2人はすぐに立ち上がり、半ば強引にリョウを部屋から連れ出しその部屋を後にした。
「準備はいいか?」
「いつでも構わない」
「Oの魔法は稼働しているんだよな?」
「確認済みだ」
夜中の10:30、彼らは作戦の最終準備に取り掛かっている。
順調なようだ。
「バルドスはどうなった?」
「問題ない。あれくらい何体いようと死体なら問題ない」
「やっぱりお前は怖いな」
「そうか?」
口では隣の男と話しながらも頭はリョウと戦ってみたいということでいっぱいである。
今回の作戦、はじめは何も楽しみがなかった。
そこに現れた楽しみ。
嬉しくないはずがない。
「じゃ、俺は所定位置につくぜ」
「わかった。作戦開始の0時まではそこで隠れていてくれ」
「分かってる。間違っても見つかるなんてことはねぇよ」
「ならいいが…。分かっているな?今回の作戦は」
「巫女さん殺害が目標、だろ」
「分かっているのなら構わない。邪魔なら他も攻撃してかまわないができる限り静かに行うんだ」
「寝泊まりしているところをバルドスで奇襲する時点で静かに行うのは無理だと思うがな」
「仕方ないだろ。あそこにいる生徒たちは作戦の邪魔だ。やるしかない」
「分かってるよ。じゃ、俺はいくぜ」
男は所定位置に向かった。
残ったTもやることが残っているので少し急ぐ。
完璧にこなさなければ戦いに参加は出来ない。
「やらなければならないことをやらない奴に自由はない」というのが彼の持論だ。
戦いが始まる1時間と30分前の話だった。
次から書けるかな、アクション。
楽しみだ。
俺自身が一番楽しみにしているような気がする。
何はともあれ今後ともよろしくです。