悪くはないので?と我ながら思っています。
合宿4日目…、は無かった。
生徒が襲われ、寺がほぼ全壊したのだ。
無理もない話だ。
今リョウたちは学校にいる。
明日から休みに変更になったのだが、その前に生徒全員に、特にリョウたちの班を中心に事情聴取を受けている。
リヨウは事情聴取を終え、部屋で休んでいる。
別に帰る家など無いので寮で休みを過ごすつもりだ。
「…」
「お疲れみたいだね、リョウ」
「そりゃな、昨日から全然寝てないんだぜ?なんで俺の周りはこう問題が起こるんだ?」
「前回の魔科祭の時は自分から突っ込んでいってたよな気がするけど」
「そこは突っ込むな」
「今回も死闘でも繰り広げた?」
「いや、俺自身はほとんど。魔力は使い果たしたけどな」
「ふぅん」
青龍を召喚できたのは誰にも話していない。
後でマクアドルには言っておこうと思うが、他に話すと面倒なのでミィヤと口裏を合わせている。
(そういえばミィヤはあの後どうしたんだろ?)
ほぼ全壊してしまった寺を思い出し少し気にする。
しかし、突然睡魔に襲われる。
まるでそのことは考えるなと頭が訴えてるようだった。
「クロ、悪いけど俺寝るから6時になっても起きなかったら起こしてくれるか?」
「わかった。ゆっくり休んでね」
「ああ。じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
布団の中に潜ると同時にリョウは眠りに落ちた。
「…ョウ。お…て」
声がする。
さっきまで思いっきり眠かったはずなのに少しも眠くない。
目がすぐに開いた。
「あっ。起きた」
そこには水でできた人型の物体がいた。
「お前は?」
「…私を忘れちゃうなんて。間違い訂正しなくていいかしら」
「?」
疑問を持ちながら周りを見る。
見覚えがある場所だった。
ビムと戦い、死にかけた時に来た場所だ。
つまり
「俺のドールか」
「やっと思い出した。女の子を忘れるなんて、一番やっちゃいけないことよ?」
「だって…お前、前と形も声も違うじゃん」
水で人の形ができていると書いたが、実際は頭だって髪は見えないし、しゃべり方が子供のようではないのに胸も平べったい。
声は以前の電子音とは違い、普通の女性の声になってる。
「あなたが2段階目になったんだもの。私も少しは人に近づくわ」
「へぇ、じゃあいつか姿がちゃんと見える日が来るのか?」
「それは、あなた次第」
声が再び電子音に変わる。
「どういう意味だ?」
「あなたに才能があれば見えるようになる」
「才能?」
「先生から聞いたはず。7段階目にたどり着くのはごく少数」
「言ってたな」
「7段階目までならないと私は見えない」
「この水は?」
「水!?」
「おそらく4段階目ぐらいには見えるようになる。気が短いから」
「それ関係ないでしょ!っていうか今回連れてきた理由からそれてるよ!」
「今回連れてきた理由?」
一瞬取り乱した水が落ち着きを取り戻す。
「そ。今回あなたをここに連れてきたのには理由があるの。とても重要な」
「それは?」
水が黙る。
姿の見えないもう一人のほうも何も言わない。
空気が重いような気がした。
「おい。なんだよ。溜められるとよけい心配になるじゃねぇか」
「いや、命にかかわることじゃないし危険はないんだけど」
「なら言えよ」
「…分かったわ。あのね2段階目になったとき出てきた4つのひし形の物体の名前覚えてる?」
「ヒニュスのだろ」
「あのね、実はそれ名前が違うの」
「仮の名前ってやつか」
どんなものにも名前はある。
本当の名前があるのに偽りの名前を使う。
(名前が重要ということは本当の名前を知れば…)
リョウがガッツポーズをとる。
(さらに強くなる!)
大抵はこのパターンが多い。
「で、名前は?」
「…ヒュニス」
「なるほど!ヒュニスか!…ヒュニス?」
あれ?
名前がほとんど変わってない?
そんなことある?
なんだか嫌な予感がするぞ?
「…もしかしてそれって」
「ミリーナが間違えて教えたの」
はい、来ましたー!
期待したらこれ!
この世界に来てからよく味わうようになりましたー!
そしてこの地味な間違いは逆に恥ずかしい。
「恥ずかしい気持ちは分かるけど、ちゃんと覚えてね?」
「…他には?」
「ない」
「マジで!?それだけ!?」
「ええ。間違えて何度も自分の一部の名前を呼ばれるのが嫌だったから今言った」
「それくらいで呼ぶなよ!今俺寝てたんだぞ!?」
「リョウ。ある人があなたを間違えてリュウとずっと呼んでたらどう思う?」
「直させる」
「それができなかったら?」
「…意地でも」
「私たちも意地でも直したいの!唯一名前がついている部分を間違った名前で呼ばれるなんて絶対嫌なの!」
「私は気にしてない」
「あなたの体ではないものね!」
だんだん話がそれ始めたようなのでリョウが切り出す。
「おい」
「なによ?」
「ならもう帰らせてくれないか?眠くないけど寝たいんだ」
「大丈夫。今現実のあなたは寝てるわ。襲われても起きないわよ」
「なおのことよくねぇな。ともかくここの世界にいれば確かに眠くないけど疲れてはいるんだよ」
「そうねぇ…。確かに用事も済んだし、いいかしら」
「じゃ、頼む」
「分かったわ。じゃあ戻すわね」
視界が揺らぎ始める。
そんな時、水が聞き捨てならないことを言った。
「あっ、言い忘れてた。な…でも、…ヤが…る…いわ…」
最後のほうは聞き取れず、そのままリョウの意識は落ちた。
「…ョウ。お…て」
体が揺れている。
さらになんだか騒がしい。
「ねぇ、まだ起きないの?」
「うん…。かなり疲れてるのかな?」
「まったく。クロ、どきなさい。私が起こすわ」
次の瞬間顔に冷たい何かがかかる。
「冷た!?」
「ほら起きた」
リョウが目を覚ます。
肩から上がびしょ濡れである。
「マーシャか、どうすんだよ!濡れたじゃねぇか」
「リリア」
「はいよ」
リリアが乾燥機(ドライヤー)を持ってきた。
スイッチが入り、リョウに暖かい風が送られる。
「そんなんじゃどれだけ待っても…ってあれ?」
さっきまで濡れていたはずの部分がすでに乾いていた。
「え、ええ!?嘘!?」
「嘘じゃないわよ。低温蒸発水だもの」
「なにそれ?」
「この水の蒸発する温度がものすごく低いのよ。だから乾燥機だけで乾くわけ」
「すげー…」
「それより早く支度しなさいよ」
「なんで?」
「飯食べに行くからよ。いろいろ聞きたいこともあるし」
あまり訊いてはほしくないのだが腹は減っている。
仕方ない。
「分かったよ。着替えてから行くから先行ってて」
「はいリョウ君!その前にあなたにお願いがあります!」
「?なんだ、リリア」
「着替えてるところ、写真に撮っていい?」
「変態」
一蹴した。
「ああ。先に言うけど私がほしいわけじゃないのよ?」
「じゃあなんでだよ?」
「あなた、自覚ないかもしれないけど結構人気あるのよ?噂ではファン部活(クラブ)もあるかもっていわれてるくらい」
「そうなのか?」
「そうよ!そこで私は閃いたの!あなたの着替えなんてとればうまくいけば破格の値段で売れるのではないかと!」
「新聞部は関係なしか?」
「めっちゃいいもの撮れたら載せるわ!で、どう?」
「嫌に決まってんだろ」
「え~…。売り上げの2割はあなたにあげるわよ?」
「それでもだよ!ほら、さっさと出ていけ。交渉不成立だ!」
「う~…。じゃあもう一つ」
「なんだ?」
「これもかなり需要があると思うの。おそらくリョウの着替えより!」
「それは?」
「裸でクロとリョ―――」
次の瞬間リリアが転移装置の方に思いっきり突き飛ばされて部屋からいなくなった。
マーシャが思いっきり蹴ったのだ。
「ごめんなさい。さすがにクロには聞かせたくなくて」
「気にするな。お前がやらなければ俺がやってた」
「2人とも、リリアはさっき何が言いたかったの?」
「クロ、あなたが知るべきではないことよ」
それだけ言うとマーシャは部屋を出て行った。
「ん~…。ダメかしら?やっぱり」
「何度も言うが駄目だ。俺の写真集なんて出ようものなら俺は不登校になるぞ?」
「寮で生活するのに不登校って…」
着替えを済ましたリョウは食堂に行きマーシャたちと食べている。
食堂で、レックスやフィリアとも合流した。
「なんでそんなに写真集出したいんですか?」
「儲かるにおいがするからよ」
「今までそんなこと言ったこと一回も無かったのに…、どうしたんですか」
「いろいろよ!」
いろいろよ!といっていたリリアの声は震えていた。
何か知られたくないことがあるのだろう。
おそらくあの人が噛んでるんだろうなぁと思いながらリョウはそれを流す。
「なぁ、話変わるんだけどよ、リョウの班は襲撃にあったんだろ?」
「そうだけど?」
「実際どうだったよ?強かったか?」
「襲撃を仕掛けてくるだけはあったよ。俺だけじゃ死んでたな」
「そうそう。なんでもあんたの班の4,5年は精鋭がそろってたんでしょ?」
「らしいね。俺自身もあの後知ったよ」
「いいよなぁ。俺もその班にいたかったぜ」
「でもその班にいても1年生は全員撤退だったわよ」
「それは…嫌だな」
「それよりも、青龍が2体同時に召喚されてたって話本当ですか?」
リョウが一瞬びくっとする。
このことはミィヤと内緒と決めている。
「それがなぁ、俺も見てたわけじゃないからよく分からねぇんだよ」
「そうなんですか。でも2体も召喚されてたなんて嘘っぽいですよね」
「私のところからじゃちょっと遠いのよね…。近かった人は…」
「ケイトになら近くで会ったぞ?」
「それなら後で電通でも使って訊いてみるかな」
「そうしなさい。ところでリョウ、さっきの話に戻るんだけど…」
クロとリリア以外『戻らない』
「うぅ…」
とうとう黙ってしまった。
ここまでくると同情したくなる。
だからといって写真を撮らさせてあげるわけではないが。
「さて、じゃあ私は食べ終わったしもう部屋に戻るわ」
「じゃあ、私も」
「そうか。まぁ、明日から楽しんでくれよ。俺は寮にいるけど」
「明日から楽しむ?何言ってるの?」
「へ?」
あ、やばい。
なんか嫌な予感がする。
この先の言葉を聞いてはいけないと頭が言ってる。
「リョウさん、聞いてないんですか?」
「休みは半分になったわよ。月・水・金は午前中のみだけど授業あることになったし誰も家には帰れないわよ。警戒するためですって」
この瞬間、リョウは真っ白になり停止した。
この瞬間を逃すわけにはいかないといわんばかりにリョウに襲い掛かったリリアを止めるということで少し騒動があったのは別の話である。
リリアが少し人格崩壊しているような気がしますが、そういうわけじゃないんです。
リリアが焦っている場合は、大抵原因となる人が一人いるんです。
お分かりだと思うのでここには書かないことにします。
これからもよろしくです。