バレンタインの状況は私が中継するわよ!
こんなおいしいネタがたくさん落ちているところ、1つたりとも逃がすものですか!
ちなみに私とクレア先輩のからみはほとんどないわよ。
ま、そんな期待してた人はいないと思うけど、一応ね。
バレンタイン当日。
日曜日で休日だ。
午前中、寮の中(女子寮)は盛り上がっていた。
それぞれが好きな形のチョコを作り交換し合ったのだ。
それは盛り上がって当然だろう。
「これかわいいね」
「でしょ?この細かい部分、苦労したの~」
「私のも見てよ!」
地球以上の盛り上がりだ。
行事が少ないこの世界にとってはとても目新しい行事。
一時は活気を取り戻した(女子は)ように見えた。
しかし、今は時間が変わって午後。
なんか張り詰めた空気が漂っていた(女子寮に)。
午前は女子同士、午後は男子になんて決めた人は誰もいないのだがいつのまにかそうなっていた。
本命を渡す予定はなく、友チョコや義理チョコのみを渡すはずの女子も本命を渡す女子に圧倒されて騒ぐことができない。
まるで嵐の前の静けさが漂う。
マ「…リリア」
リ「なに?」
マ「なんでこんなに張り詰めた空気なの?」
リ「いや、私も少しは考えてたんだけど…ここまでとは思わなかった」
マ「異常よ?自分の部屋にいるはずなのになんでこんな空気が伝わってくるのよ?」
リ「なら私の部屋来る?同じ部屋の人、本命は渡さないらしいからかなりほんわかしてるわよ?」
マ「それも少しね…。っていうかなんであんた、私たちの部屋来てるのよ?」
リ「同じ部屋の人が本命ないってなると面白みに欠けるのよ。で、あなたたちは2人とも本命があるじゃない?面白そうだなって思って」
マ「大事なところ蹴り飛ばすわよ」
リ「私女子よ!?何男子と同じ感覚で言ってるのよ?」
本命がないリリアはかなり気楽だ。
いや、普通がこれなのだがこの世界のバレンタインは何の行き違いか、戦争といっても過言ではないような状態になってしまった。
フィリアに至ってはかなり緊張していて、周りが目に入っていない。
スノーが呼びかけるが応える様子は全くない。
リ「フィリアまであんなに…。バレンタインは恋の応援じゃなくて感謝の気持ちを伝えるに変更しておくべきだったかしら?」
マ「私もそう思うわ。なんか明日から心配よ。いろいろと」
リ「ま、修羅場はそれはそれで面白いからありなんだけどね♪」
カメラを持ち出すリリア。
ここでも記者魂?とやらは燃えているようだ。
マ「そういえばあんた、クレア先輩には上げたの?」
リ「ええ、もちろん。危うくお持ち帰りされるところだったわ(震え声)」
マ「いっそのことされてしまえばいいのに」
リ「それはひどいわよ!?絶対にいい男に人見つけるんだから!」
リリアにとっての今回のバレンタインの恐怖は去った。
後は傍観者として、新聞部の1人として、生徒に面白記事を提供するのみだ。
リ「じゃ、私そろそろ行ってくるわ」
マ「もう行くの?」
リ「少しは早めにいかないと。いつ来るかわからないしね。修羅場なんて最初から最後までこれに収めたいし」
マ「なら私も準備しようかしら」
リ「がんばってね、応援してるわ」
マ「ありがとう。最善は尽くすわ」
リ「あと、フィリア。ちゃんとケイトのところに向かわせなさいよ?」
それだけ言うと部屋を出て行った。
マーシャがフィリアを見たが、未だにスノーの呼びかけに応える様子はない。
いくらなんでも緊張しすぎだ。
マ「…まず起こしますか」
フィリアの解凍を始めた。
―――――――――――――――――――――――――――――
リ「はい、これどうぞ」
リョ「ありがとな」
ク「ありがとー♪」
リリアが男子寮に到着し、今リョウたちにチョコを渡したところだ。
リリアはここに来て気づいたことが1つあった。
「にしても…ここもずいぶんな空気ね」
「分かるか?普通に戦闘前より緊張感がすごいぜ?」
「地球でもこんなかんじなの?」
「なわけないだろ。もっと楽しい行事だよ」
「そうよね…。伝え方を誤った私の失態ね」
男子寮でも同じく、女子ほどではないが気が張っていた。
男子にだって好きな女子のタイプはある。
その子が来てくれないかなと思うと少しは良く見せようとする。
やがてそれが緊張になる。
「いや、お前は悪くない。ここの人たちが地球とは違う感性を持ってた。ただそれだけだ」
「でも、これはもともと活性化のために始めたのよ?これじゃある意味再び戦争を始めるためにやってるみたいじゃない…」
「確かにここの女子はアグレッシブな人が多いからな。廊下でドールを展開なんて普通にあるんじゃないのか?」
「アグレッシブって?」
「攻撃的って意味だよ」
「そう…。ええ、まさにそうね。変な方向に進まないといいけれど…」
よかれと思いやったことが裏目に出る。
別に珍しいことではないかもしれないがリリアとしてはそれの発案者であるため、責任を感じているのだ。
「大丈夫だ。なんとかなるさ」
リリアの頭をなでる。
リリアはされるがまま。
サクが少しやきもちを焼いているがリョウは気づいていない。
「あんた、こんなこといろんな女子にやってるの?」
「嫌だったか?」
「無意識のうちなのね…。今までそれで勘違いしてきた女子が何人いるのかしら」
「どういう意味だ?」
「別に。何でもないわ。あっ、これ渡しておくわね」
持っているカバンから一枚の紙を取り出した。
紙には「アンケートに協力してね?」と書いてある。
「なんだこれ?」
「もらったチョコの数書いてくれない?もちろん、友と本命は分けて」
「かまわないが…。お前俺が地球にいた頃のチョコの数聞いただろ?」
「甘いわね。今までのあなたの行動を見たら惚れたって人は結構いるはずなのよ。それを考えるとこの部屋、チョコに埋もれるわよ?」
「そんな漫画みたいな話、あるわけないだろ」
「まっ、楽しみにしてるわ。私はこの紙男子全員に配らないとだから」
「結構な数だな?」
男子だけでも軽く5000人はいる。
それを一人で?
「いや、あとレックス、シューレス、ケイトのところには行くけど他はすでに転送済みよ」
「便利だな。科学は」
「そういうことだから、ま、頑張ってね~」
リリアが部屋を後にする。
「リョウってモテるの?」
「さっきの話聞いてたろ、クロ。俺はそんなモテないよ。チョコまみれになるならおそらくお前宛だよ」
「そんなわけないじゃん。僕、こんな頼りない、身長もないただの男子だよ?」
「いや、ショタ枠で行けると思う」
「えっ?」
「すまん。何でもない」
と、リョウは1つ、少し楽しみにしていたことを思い出す。
「そういえばお前ら、なんかチョコ作るとか言ってなかったか?」
クロが笑顔を、サクがギクッっとした顔をする。
「覚えててくれた?」
「当たり前だろ。一応楽しみにはしてるんだぜ?」
他の男子なら絶対に楽しみにはしない。
相手がクロだから少し、楽しみにしているのだ。
「ちゃんと作ったよ。だけどそれは最後にね」
「そうか、サクはどうなんだ?」
「も、もももちろん!ししっかり、作っております!リョウ殿!」
「そ、そうか?じゃ、お前らのは最後にもらうよ」
サクの声が震えていたのはあえて触れない。
が、もし渡してくれた時、ただの板チョコだと少しショックだ。
使い魔にそれほどの人とは思われていないということになる。
「あ、あの、リョウ殿」
「なんだ?」
「私、スノーとクゥにチョコを渡してきたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわないよ。本命か?」
「違います!友です」
「そうかそうか。なら早く行ってこい。クゥはともかく、スノーはフィリアと行動してたら見つけるのが大変だぞ?」
「そうですね。では行ってきます」
サクもその部屋を出ていく。
「…リョウ」
「なんだ、クロ?」
「サクの声、さっき震えて―――」
「それ以上言うな」
切に忘れたという展開以外を願うリョウだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
フィリアはケイトの部屋に繋がる転移装置の前について唖然としていた。
(お、思ったより人が多い!)
2、3人くらいならライバルがいてもおかしくないよな、なんて思ってはいたが軽く20人はいる。
実は大半が傷の治療をしてくれた感謝を込めたチョコを持ってきているのだがフィリアにそんなこと分かるはずがない。
(ケ、ケイトさん、思ったよりモテるんですね。でも、ここで引き下がるわけにはいきません!私だってケイトさんを想う気持ちはそこらの人には負けないはずです!)
変な対抗心を燃やすフィリア。
と、ケイトの部屋に3人で一緒に入っていく女子の姿が見えた。
(さ、3人!?みんな一緒がアリということですか!?そんな、強すぎます…!)
もちろんこの3人、ただの友チョコを渡しにいっただけなのだが今のフィリアにそんなことは分からない。
30分ほどしてようやくフィリアの出番が来る。
一歩踏み出ればケイトの部屋。
よく考えればケイトの部屋に入ったことがない。
幸い、今後ろに人はいない。
悩む時間はたっぷりある。
(何を言いましょう?とりあえず、こんにちは?いや、一気に告白してしまわないと後には言えないような気がします。でも…)
考えていると背中を押された。
転移装置に足が入る。
「えっ?」
後ろを見るとリリアがいる。
超笑顔だった。
「り、リリ」
言い終わる前に移動してしまった。
気づけばケイトの部屋の玄関。
ケイトは奥にいるのか、見当たらない。
インターホンを押してないことを思い出し呼びかける。
「ケイトさーーん。いますか?フィリアです!」
「はーい、今…ってフィリア!?少し待ってて!」
ドタバタと音がする。
そして思い出す。
何も話題を考えていない。
(私がお邪魔してるっていうのに何も考えてない!?これは致命傷?)
ただチョコ渡して帰ればいいのに頭がこんがらがる。
ケイトが玄関まで来た。
「すみません。お待たせしました」
「いえ、呼び鈴鳴らさず入った私が悪いんです。それで、あの、その、…これ」
チョコを差し出す。
一応本命なのだが恥ずかしさのあまり、手紙がなければチョコに「好き」的なことを書いているわけでもない。
「ありがとうございます。作るの大変だったでしょ?」
「いえ、そんなことないですよ。楽しかったですし…」
「…」
話が続かない。
2人とも顔を赤らめて嬉しそうにしているので、第三者がいれば「お前らもう付き合っちゃえよ!」と間違いなく言うはずだ。
「あの、じゃあ私はこれで…」
「あっ、うん。チョコ、ありがとう」
「いえ、では」
「あの―――」
ケイトに呼び止められる。
「もしよければ今度お茶でもどうですか?」
願ってもない誘い。
フィリアに断る理由なんてない。
「ぜひ!」
「楽しみにしてるよ」
「はい!」
チョコを渡せただけでなく、デート?の誘い。
告白こそできなかったが、フィリアにとっては上出来だ。
フィリアが部屋を出るとリリアが待っていた。
「うまく行ったようね?よかったわ」
「リリアさん、ひどいですよ」
「いいじゃない。その様子だとうまくいったんでしょ?」
「それは…」
もじもじとする。
リリアはなごむが今はそれどころではない。
「まぁ、いいわ。じゃ、私もケイトにチョコ上げに来たから」
「えっ?」
「安心しなさい。友チョコよ」
「そ、そうですか。じゃ、私は…」
逃げるようにしてその場を後にしたフィリア。
おそらく部屋での出来事を聞かれると思ったのだろう。
だが、今までフィリアとはよく一緒にいたリリア。
大した情報を本人から聞き出せないのは知っている。
ならばどうやって聞くか?
もう一人の知っている人に聞けばいいのだ。
呼び鈴を鳴らし、ケイトの部屋に入る。
「こんにちは~」
「こんにちは、リリア。ご機嫌だね?」
「そりゃ記事のネタが目の前に転がってるんですもの」
「ネタ?」
「さっさと甘~いフィリアとのさっきの出来事教えなさい」
ケイトが止まる。
が、顔が赤くなったりはしない。
「…あれ?もしかして何もなかった?」
「ええ。そうですね。チョコはもらいましたけどそれ以外は特に」
「嘘っ!?冗談でしょ?私、ここを長い間、はってたのよ?」
「ですけど何もない物はないですし。残念でした」
「…」
リリアが一枚の写真を取り出す。
チョコを作っているときのフィリアだ。
ある意味これは賭けで、要らないとなれば本当に気がないことになる。
「…」
ケイトは黙ったまんま。
(…読み、外れたかしら?)
「それ見せてどうするんですか…?」
「…読みが、外れた…!」
肩を落とすリリア。
苦し紛れの言い訳を言う。
「いえ、私、この学校の女子のかわいいところを撮った写真集を出すことにしたんだけど、それにあなたの知り合いのフィリアも出るっていうことを知らせようかと思ってね…」
「…」
ほとんど無反応。
「それだけ宣伝しようかなって…」
「…何枚?」
「へ?」
「フィリアさんは何枚写ってるんですか?」
…食いついた?
「予定では3枚ほどだけど?」
「…発売日は?値段は?」
食いついてる!
リリアの読みは間違っていなかったようだ。
「発売日は11月2日。4500銀よ」
「…分かりました。それじゃ…」
「ちょっと!フィリアとの出来事教えなさいよ!」
「いや、何もないですし…」
「顔が変わってなくても、口調に変化あったし!絶対何かあったでしょ!?」
「…別にないよ」
「今意識して話したわね!?そこまで口が堅いなら私にだって考えがあるわ!」
カバンから一冊の本を取り出した。
「この秘法中の秘法!これを上げるわ!」
「…!それは!」
「これ一枚よ。このタイプの写真は」
ケイトが悩んでいる。
「他にもこの時の写真、あるわよ?」
「…見せてもらえますか?」
本をぺらぺらとめくる。
と、一枚が目に留まったようだ。
「…これ」
「えっ?そんなのでいいの?」
「そうだね。これが一番自然だ」
「私は構わないけど…。これ上げたら本当のこと話してよ?」
「約束するよ」
「決定ね」
その後、ケイトはしばらく上機嫌であり、リリアも面白いネタを聞き同じく上機嫌だったので、一部で少しの間、付き合ってるのでは?という噂が流れたそうだ。
最近小説情報を確認して気づきました。
お気に入りが29で止まってるなぁ、と。
記憶に間違いがなければ結構な間、29のはず。
30の壁は大きいですね…。
これからも頑張るのでよろしくです。